ドーパントが一人の女性に近づいていく。そんな時、
『LUNA MAXIMAM DRIVE!』
素早く女性が取り出したバットショットにルナメモリを装填、飛び出したバットショットがドーパントの周りを飛び回りながら、ルナメモリの力を持ったフラッシュがドーパントを照らす。
「へへーん、だ!」
素早くカツラを取って変装を解いた女性……沙羅は素早くドーパントから離れる。
「よお、やっと見つけたぜ、忘れさせ屋さん」
ルナメモリのマキシマムドライブのフラッシュにドーパントが怯んでいる隙に、隠れていた龍斗達と沙羅が合流、龍斗は忘れさせ屋のドーパントを一瞥しながらそう告げる。
「『
忘れさせ屋、改め『コレクトドーパント』は改めて龍斗達へと向き直る。
「ぐっ……。お前は、名探偵の所の助手見習いじゃなイカ……」
「っ!? そう言われると妙に頭に来るな。……っ!? それよりも、お前……先生や兄さんの事を知っているのか?」
「さあな」
「コイツの正体だけは分からなかったわね……。それに、沢山の記憶を一人の生き物が受け入れられる訳がない」
そう、複数の記憶……複数のガイアメモリの力を安全に扱えるのは僅かな例外のみ……具体的に言えば、ガイアメモリで変身する仮面ライダーのみだ。
「それじゃあ、お化けなの?」
「そんな訳ないじゃない」
「うーん、幽霊とかだったらマオちゃんは一度見てみたい気がするのよね~」
「そこ、ボケてる場合じゃないだろ!」
思わず女性陣三人に突っ込みを入れる龍斗。改めてコレクトドーパントへと向き直り、
「返してもらうぜ、お前が今まで奪った記憶を!」
「良イのカイ、返しても? 頼まれて奪った記憶は兎も角、オレ達が奪った記憶の中には忘れたい記憶も有るんじゃなイカ?」
「人の記憶盗んどいて何言ってるのよ!」
「そうよ、みんなから思い出を盗むなんて酷い事して」
「どんな記憶だって、それは大事な思い出だ。どんなに辛い記憶だって……忘れたくても受け入れて、それを受け入れて前に進むしかないんだ」
沙羅、双樹、龍斗の順にコレクトドーパントの言葉に反論する。色々とコレクトドーパントの言葉には引っかかる物が有るが、それを考えるのは後にして、今は目の前のドーパントを倒す事が最優先だ。
それに、出来れば忘れたい記憶も有るだろう。だが、それは受け入れた上で前に進んでいくしかない。
「行くぞ、マオ!」
「オッケー、龍斗!」
『CYCLON!』『JOKER!』
『CYCLON!/JOKER!』
「「変身!」」
「よっ」
「ほいっ」
倒れるマオの体を受け止めて回収していく沙羅と双樹の二人を背景に緑の風を巻き起こしながらダブルへと変身する龍斗。
「『さあ、お前の罪を数えろ!』」
『龍斗、あいつの能力は記憶の吸収……正確には記憶の収集って所ね。多くのガイアメモリの記憶を内包出来る、間違いなく失敗作のメモリ』
マオの言葉の意味は理解できる。以前戦ったキメラドーパントも動物限定とは言え大量の記憶を一つのメモリの中に内包していたせいで使用者は命さえ無事だったが、廃人同然となってしまった。
通常の人間の記憶ならばまだしも、触れただけで相手のガイアメモリの記憶を奪う事さえ出来る能力を使い、相手のドーパントの能力を奪う事が出来る。
『幾ら強い反則級のドーパントって言っても、長所と短所は同じ。その一つは大量のメモリの同時使用に近いリスクだと思うけど……相手からはそれは感じられないのは分かるわよね?』
「ああ。あいつはアームズやティーレックスの二つに、ヒート、メタル、トリガーの三つの記憶まで奪った割りに、随分と元気そうだぜ」
『……多分、方法は分からないけど、何かリスクをゼロにする方法を用意しているんだと思うわ。あとは検索した事で分かったことだけど……光弾も触れた瞬間も、“一定条件下でだけ”相手は記憶を奪う事が出来る事。それが唯一の弱点』
「ああ……行くぞ、マオ!」
『オッケー!』
コレクトドーパントの漆黒の体の中で唯一他の色をもった頭部の仮面が光ると同時にコレクトドーパントの腕に炎が燃え上がる。
「はぁ!」
ぶつかり合うのは風を纏ったダブルの拳と炎を纏ったコレクトドーパントの拳。
『嫌な気分ね、私のメモリの力同士で戦うって言うのは』
「オレも、結構同感だな」
コレクトドーパントの体を蹴ってダブルが距離を取ると今度は黒いメタルシャフトを出現させる。その能力の組み合わせとしてはヒートメタルだ。
『ヒートメタル!』
「だけどな……サイクロンジョーカーの方が勝ってる面も有る!」
ダブルの最大の強みは右と左のそれぞれ三つずつ存在するハーフチェンジによる九つの姿とファングジョーカーを含めた十の能力を状況に合わせて扱う事が出来ること。
だからこそ言える、サイクロンジョーカーの強みはバランスの良い扱い易さだけではなく、サイクロンジョーカーでヒートメタルに勝てないと言う訳もない、と。
ダブルはコレクトドーパントの振り回すメタルシャフトを紙一重で避けながら的確に反撃を当てていく。
『ふふん、やっぱり……使えるってだけで使いこなせるって訳じゃないみたいね』
「まして、元々こっちの力なんだからな、それは!」
「な、なにを!」
「『ヒートメタルの弱点はスピードだ(よ)!』」
叫び声と同時に放たれたダブルのハイキックがコレクトドーパントの頭部を蹴り飛ばす。
「ぐっ……だったら、それも奪い取るだけだ!!!」
トリガーマグナムを取り出すが、残念ながらサイクロンジョーカーを相手にそれは、
「間違いだぜ!」
相手が引き金を引く前のトリガーマグナムの射線から逃れると同時にキックを放つ。
「このっ!」
焦ってコレクトドーパントがトリガーマグナムを放とうとしても、ダブルはそれよりも早く射線から逃れ、反撃を放つ。
「甘い!」
『(……分かった事の一つは、コレクションした地球の記憶を使っている時は、自分の能力は使えない事。それにあの光弾のエネルギーを相手に当てる事が記憶を奪う条件、同時にそれは撃ち出すだけじゃなくて体に纏う事も出来る。だから、このドーパントが私達の能力を使っている時が一番攻撃し易い上に安心して攻撃できる)』
これが予めドーパントキラーと言えるコレクトドーパントについて検索した結果知りえた事実から導き出された対策の一つ。そして、対コレクトドーパントに必要な情報はもう一つ。
『(何処かにコレクションした記憶を集めている器官がある。能力を多く使わせれば其処が分かる筈)』
(そこを破壊できれば……)
相手のドーパントの記憶が『蒐集』の記憶であるが故に『蒐集』した物を納めておく場所が無くなると言う事は記憶を集める事が出来なくなる、結果的に能力を封じる事と言う訳だ。
「これでどうだ!!!」
痺れを切らしたのか打ち出してくるのが通常の弾丸から火球に変わる。ヒートメモリの力を上乗せしてより火力を高めたのだろう。
(焦ってきた)
『(この調子なら)』
「吹き飛べ!!!」
ダブルの能力では使い慣れているダブルには勝てないと判断したのだろう、トリガーマグナムを消して今度はコレクトドーパントの腕を四つの発射口の有る四角い物に変わる。恐らくはアームズメモリの能力で作り出した武器……。
「っ!? ミサイル!?」
『此処からが本番ね!』
コレクトドーパントが放つミサイルを前に進む事で回避する。それを迎え撃とうと両腕を肥大化させるコレクトドーパント。
「龍斗、分かったよ! あいつの頭のCDみたいな所が他の力を使うたびに光ってる!」
戦場に響く沙羅の声に反応し仮面の奥で笑みを浮かべるダブル。先程から牽制に利用したバットショットからルナメモリを排出後ギジメモリに交換して先程から戦闘中のコレクトドーパントを撮影、その映像を沙羅達のスタッグフォンへ送り、戦場から離れていた二人に相手の変化を調べて貰っていたのだ。
「『良し!』」
「なに!?」
コレクトドーパントが沙羅の言葉に驚いて顔を触っている。相手の反応からして其処が蒐集した記憶の保管器官なのだろう。沙羅の言葉に
「ぐっ!」
『やっぱりヒートを取られたのは痛かったわね、ルナじゃパワー不足だし』
「へっ、だったら……一発でダメなら、十発でも百発でも叩き込むだけだ!」
パワーなら上がるだろうが、流石にマオを主体とするファングジョーカーと言う選択肢だけは無い。ジョーカーメモリの記憶が奪われても変身不能と言う大問題だが、万が一ファングメモリの記憶まで奪われたら最悪の上に最悪が重なってしまう。
保管器官への攻撃を受けた事に怯んだコレクトドーパントに対してダブルは更に空中廻し蹴りからアッパーへと繋げる。
「ガッ! グッ! この程度の攻撃じゃムダだと言うのが分からなイカ?」
「分からねぇよ!」
『これでどう!?』
緑色の風を纏った拳、“サイクロンブロー”がコレクトドーパントの頭へと叩きつけられる。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
その一撃によって罅が入ってくるコレクトドーパントの頭部のCDの様な器官。
「こ、このぉ!」
弱点を知られた事への焦りか、それとも一度は勝った相手に圧倒されている事への苛立ちからか、そんなダブルへと記憶を奪う光弾を放とうとするが、
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!! な、なんだこれは!?」
頭部のCDの罅から光が零れていく。同時に其処から飛び出していく多種多様の色を持った無数の光。その中の赤と銀と青の光がダブルの元へと向かっていく。
『っ!? ヒートメモリが元に戻った!?』
「ああ、トリガーとメタルのメモリもだ!」
光が自分の中に消えた事に気付いてコレクトドーパントに記憶を奪われたメモリを取りだし、それを確認してそんな声を上げる。
「力が……オレ達の集めた力と記憶が……」
自分の中から抜け出していく記憶なのだろう、無数の光へと未練がましく手を伸ばすコレクトドーパント。恐らく、ダブルの攻撃でダメージを受けた所に自分の能力を使おうとした事が決壊させてしまう原因となってしまったのだろう。
「『これで決まりだ(よ)!』」
『JOKER MAXIMAM DRIVE!』
素早くジョーカーメモリをマキシマムスロットへと装填する。ガイアウェスパーの響きと共にダブルは緑の風を纏いながら上昇していく。
「『ジョーカーエクストリーム!!!』」
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!!」
絶叫を上げてジョーカーエクストリームの直撃を受けたコレクトドーパントは爆散する。それと同時にコレクトドーパントから飛び出した“コレクトメモリ”は上空で砕ける。これでメモリブレイクが完了。
少なくとも、『忘れさせ屋』の起した犯罪は警察では裁けないだろう。だが、これで二度とロストメモリー事件は起こる事は無い。事件は完全に解決した。
「やったね、龍斗、マオちゃん」
「これで終わったわね」
「ああ」
そう言って
「さてと。犯人の顔を見せてもらいましょうか?」
『ふふ~ん』と笑いながら爆煙が消えていく、コレクトドーパントになっていたガイアメモリの持ち主が居るであろう方へと視線を向ける。それに釣られて他の三人も其方を見ると……
「「「「……………………」」」」
目の前の光景に思わず絶句する。だが、それもまあ仕方ない事だろう。…………何故なら、
「「「「イカ…………」」」」
倒れているのは人間サイズのイカだった。まあ、『大王イカ』と言う巨大なイカが地球上には存在て居るので、人間サイズの大きさのイカは居ても不思議でないだろうが、色々と他に突っ込み所は存在している。
主に、
・何で地上に存在しているのか?
・イカがドーパントに変身してたの?
とか。
目の前に倒れているイカの体に大量のコネクターが浮かび上がり全身を真っ黒に染めて行き、最後は跡形も残らずその場から消えて行った。
「…………」
「ね、ねえ、何あれ……?」
「……ガイアメモリの複数使用のリスクなのか? それに、あのイカは……」
消え去っていくイカを見ながら震えている双樹と、目の前の光景に震えながらも搾り出すように疑問の声を上げる沙羅。そして、比較的落ち着いて疑問を声に出す龍斗。
「あのイカが何かは分からないわね。それと、消滅についてはドライバー無しでガイアメモリの複数使用って言う無茶に対するリスク、リバウンドよ。でも……」
一つだけ疑問が残っている。謎のイカだからなのかは疑問だが、メモリブレイクされる所か下手をすれば26を超えているあのガイアメモリの記憶の量から考えると、一度体外に排出された時点でリバウンドが起こっていても不思議ではない。そんな疑問をマオは飲み込む。
(……あのイカはミュージアムじゃない?)
(……。龍斗め、よくも我々が折角手に入れた強力なガイアメモリを。奴とは何れ決着をつける時が来るだろう。お前の兄や師に代わってな)
電柱の上で双眼鏡で龍斗達の様子を覗いているコレクトドーパントだった謎のイカ。これがマオの疑問の答えなのだろう。…………あのイカは量産型だ、と。
「「街を泣かす奴は許さない」」
あの日見た過去の夢の続き。スカルとウイングの二人の仮面ライダーは幼い日の龍斗へとそう答える。
『WING MAXIMAM DRIVE!』
先ずはウイングが先に動く。マキシマムスロットへと装填させたウイングメモリのマキシマムドライブのガイアウェスパー。ウイングの背中にその名の通り翼が出現、天空を舞いながら上空から破壊活動を続けているイカを撃破していく。
「龍斗、覚えておけ。男には守るべきものを守らなきゃならない時が来る」
スカルボイルダーの後部をタービュラーユニットの試作品と言うべき飛行パーツを装着した飛行型スカルボイルダーへと乗り込むスカル。ウイングに他のイカを任せ、狙うべき相手はタダ一体。
『イカカカ……燃え尽きろ、我等が新世界の為!』
風都タワーの頂上の立ちながら高笑いを続けているイカ達の指揮官各のイカへと向かう。
『SKULL MAXIMAM DRIVE!』
「そこでどう動くか、長い男の人生全てが決まる瞬間だ」
飛行型スカルボイルダーの上に立ちながら胸部から紫色の光の髑髏を出現させ、それを追うように跳躍するスカル。
「スカルエクストリーム」
紫色の髑髏の光と共に放たれた必殺キックがイカの指揮官を撃破する。
―ああ、そうだよな。先生……―
その姿を憧れの目で見つめる幼い日の龍斗。逃げ出していくイカ達の姿からスカルの勝利を確信するウイング。そして、未だに頭痛と現実と戦っているシュラウド。
「龍斗ー」
呼びかける声に目を覚ます龍斗と笑顔で自分を覗き込んでいる双樹の姿が目に入る。ロストメモリー事件についてのレポートを纏めている間に眠ってしまったのだろうと思いながら、自分を起してくれた双樹へと視線を向ける。
「起きたー? 晩ごはん食べよ。今日は沙羅ちゃんが作ったんだよ」
「今日だけだぞっ」
「そっ、早く食べましょ♪」
「んー……そうか」
「さあさあ、食べに行こ」
龍斗とマオの二人だけだった場所に新たに吹いた二つ風。少しずつ変わって行く日常も悪くないと思っている。
だが……
微かに顔を赤くして期待するように見ている沙羅とニコニコとした笑顔で見ている双樹、興味深そうに見つめているのはマオ。目の前には形の歪んだ生クリームと苺の乗ったホットケーキらしき物体。
プルルルル♪ プルルルル♪
鳴り響く電話の音。
「あ、電話。オレが取って来るから……」
「私が取るから三人とも食べてろ」
「はい……」
色々と思う所はあるが、それなりに楽しいと思える変わり始めている日常を楽しむ。
「はい、鳴海探偵事務所です」
また、次なる出会いは、
『ACCEL』
更に重なっていく。
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