『風都』…そこは、日本の何処かに有る最先端の科学とエコの街。
「だが、そんな街に、科学では解明できない様々な怪事件が多発する。そんな怪事件を解決するのが…。」
「…龍斗~、掃除しないの?」
明らかに掃除していますと言った格好の龍斗に、読書していたマオがそうツッコミを入れた。
「先生にここを預かってるからな…。…毎週学校が終わった後の掃除は欠かせないけど…。」
「何時もの事だけど大変よねー、ご苦労様~。」
「って、お前も少しは手伝え!」
「私は頭脳労働専門だから♪」
「ああ、はいはい、そうだったな!」
そう叫んで龍斗は掃除を再開する。
「ところで、ここを掃除するのって何時もより早くない?」
「ああ、久しぶりの依頼だ。」
そう言って龍斗は携帯電話をマオに見せる。
「携帯サイトでの依頼の受付ね、そんな妖しげなのに、何時もながら…よく依頼が入るわね。」
「さあ、藁にも縋りたい人ってのは結構居るらしいからな。それに、これで受ける依頼は飽く迄『ガイアメモリ』……『ドーパント』が絡んでいると思われる事件だけだ。」
「それで、受けた依頼は全部ガイアメモリ絡みだから、流石は探偵見習って所ね。」
「そうだな、まだまだオレは高校生で半人前、ハーフボイルドな半熟卵だよ。依頼人が来る前に掃除を終わらせるからな。」
「ハーフボイルドって、私は誉めたつもりなんだけどね~。」
そう言って掃除を再開する龍斗と、読書を再開するマオ。
そして、丁度掃除が終わった時、ベルが鳴り響き、
「あの、こちらですか?」
「ようこそいらっしゃいました。」
依頼人の女性が事務所の中に入ってくる。
依頼人の名は『都村 真理奈』。依頼の内容は『人探し』、失踪した恋人を探してくれと言う物だった。既に依頼を受ける旨を伝えていた事も有り、当然ながら、龍斗はその依頼を受ける事になった。
「失踪した恋人の名前は『戸川 陽介』。…事件に巻き込まれたか、それとも…。」
「何ブツブツ言ってるのよ。」
その言葉に後を振り向くとそこには帽子を被って眼鏡を付けた簡単な変装をしたマオの姿があった。
「って、マオ! お前、何着いて来てるんだ!?」
「早めに検索できた方が言いと思ったから♪ それで、情報は手に入った?」
「狙われてるって自覚有るのか、お前は? 会社をリストラされた事が有力らしい。…失踪の原因としてはな。」
龍斗の言葉にマオは面白そうな笑みを浮かべる。
「ふーん、『失踪の原因としては』ね。そ・れ・で、龍斗は元々この事件にガイアメモリが絡んでいるから引き受けたんでしょうから、失踪した理由は別に有るって考えてるんでしょう?」
「ああ。恐らく、リストラされたのは失踪の理由じゃない。失踪の理由は…。」
二人がそんな会話を交わしているとパトカーが走って行く。表情を変え視線を交わらせると頷き会い、龍斗とマオはパトカーが走って行った方向へと向かって行く。
現場らしい煙の上がっているトンネルの近くに着くと龍斗はポケットの中からデジカメを取りだし、
『BAT!』
疑似メモリであるバットメモリをデジカメ『バットショット』に差し込み真上に放り投げるとデジカメからコウモリ型へと変形し、上空からトンネルの中に入っていく。
そして、携帯電話『スタッグフォン』を取り出すとそこには、バットショットの撮影している現場の映像が映し出されている。
そして、龍斗はマオの手を引きながら、野次馬に紛れて立ち入り禁止のテープの近くまで近づいていく。
そして、龍斗達が人込みに紛れた時、一台の高級車が通りかかり、そこから女性が顔を出した。
「…チッ。」
入り口付近で通行止めされ、人込みの中に紛れた事も有り、龍斗とマオの存在に気付かず、その女性は忌々しげに舌打ちをした。
「うわ~…凄い事になってるわね。」
「そうだな。」
スタッグフォンに映し出されている映像を見て、二人は思わずそんな声を上げてしまう。ビルの一部が沈み込む様に落ち、その下にあったトンネルの中へと見事に侵入してしまっているのだ。
ビルに書かれている会社のロゴは『WINDSCALE』。
「ウインドスケール。戸川が働いていた会社か。」
「へ? くぉらぁ、お前ら! また首を突っ込む気か!?」
バットショットから送られてくる映像をスタッグフォンで確認していた龍斗達に気が付いた刑事が声を上げて近づいて来る。
「どうも、真蔵刑事。」
「お仕事ご苦労様♪」
知り合いなのだろう、にこやかに笑顔を浮かべて挨拶する龍斗とマオの二人。そして、刑事の一人が真蔵を押さえる。
「その辺にしておけ。ったく、事件が有る度にお前らが居るな。おい、こっちに来い。」
そう言ってテープを潜り刑事に付いていく龍斗とマオ。連れられて行ったのは事件の最前線と言う場所。そこは普通では有り得ない状況だった…ビルが溶ける様に沈み込んでいた。
「何時もありがとうございます、刃野さん。」
彼の相棒である『真蔵 俊』とは仲は良くは無いが、彼、『刃野 幹夫』とは情報交換する程度には仲が良いのだ。
龍斗の言葉に「おう。」と答え、刃野はビルの一角を指差した。
「見てくれ。あれが四階だ。話によると鉄骨が溶けない限りは、あんな風にはならないそうだ。」
「…ドーパントか…。」
龍斗の掌の上にバットショットが止まり、デジカメ型へと変形する。変形したバットショットで現場の写真を撮影する。
「その可能性が高い。先週から数えて似た事件が三件。最も、ここまで派手な物は初めてだがな。」
そう言って刃野は封筒を龍斗へと手渡す。龍斗はそれを受け取り、素早く懐へ収めた。
「じゃあな、高校生探偵、何か分かったら連絡よろしく!」
刃野はそう言って現場検証へと戻っていった。
事件現場から離れた二人は先ほどの封筒の中身を確認していた。
封筒の中に入っていたのは、これまでの事件現場の写真。どの現場も先程の事件現場と同様、戸川の働いていた企業、ウインドスケールの支店の物、そして、商品タグの入った服装の写真。
「どれもこれも、全部探し人の働いていた企業か。」
渡された写真に視線を落していたマオが、楽しそうな笑顔を浮かべながら龍斗の言葉に続く。
「今回も龍斗の読み通り、私達の出番って風向きね。」
「そうだな。それで…どう思う?」
「興味深いわねぇ♪ ワクワクするわ。」
「じゃあ、早速ガイアメモリの検索を頼む。」
「りょーかい♪」
敬礼のような仕草でマオが答えた瞬間、トンネルの中に何かを発見し、龍斗の目付きが鋭くなる。体勢を変えて右手を伸ばしてマオの前に移動する。
「やっぱりいいか。」
「そうね~、私の出番取らないで貰いたいんだけど。」
「まったくだ。…ガイアメモリの正体は…。」
「「マグマ。」」
二人の言葉が重なって響いた瞬間、トンネルの中に見えた燃え上がる炎の様な人型の異形の影…足元は地面のはずがグツグツと沸騰していた。そして、その怪人は二人へと目掛けて炎を放った。
「逃げるぞ!」
「OK!」
龍斗の叫び声と同時に二人が居た場所を炎が通過した。次の瞬間に残っていたのは、融解した地面だけとなっていた。炎を放った怪人はそれを確認し、踵を返して暗闇の中へと消えて行った。
「セーフ。」
先程まで龍斗達が居た場所の真上、龍斗はそこへマオを左手で抱えながら右腕の腕時計『スパイターショック』から発射されたワイヤーで逃れていたのだ。
「あと少し遅かったら危なかったな。」
「そうね。」
両腕を龍斗の首に廻しながらマオはそう答えた。
「…………所で、マオさん?」
「なに?」
「いい加減離れてくれないか? 降りられないんだけど…。」
「ん~もう少しだけ♪」
龍斗に抱きつきながら何故か嬉しそうに答えるマオ。
結局、それから数分ほどそのままの状態が続いたのだった。
広大な土地に、その中央に建つ豪華な建築物。家と言うよりも、屋敷と呼ぶに相応しい洋風の建築物。
表札には金色のプレートに『Sonozaki』のアルファベットが刻まれていた。
その中で行われている晩餐会、そこで初老の男性と若い女性が談笑していた。そこに別の女性が慌てて入ってくる。
「遅刻者はクビよ、若菜。私の企業ではね。」
談笑していた女性が威圧を交えながら、そう言うと、若菜は『チッ!』と舌打ちし、テーブルを見廻す。
「あら、あの子もまだ来ていないんじゃないんですの?」
「ああ、あの子からは少し遅れると連絡があった。」
まだ一人来ていない者が居るのだろう、それを問いかけるが、初老の男性が若菜の問いにそう答えた。そして、それで落ち着いたのか、テーブルに着いた。
「だって、渋滞だったんですのよ? 久しぶりの晩餐会の日に。ホントに腹立たしかったわ。」
「ビルが溶け、人が死ぬ。この街ではよく有る事だ。ま、我々の仕事の所為だがね…。」
初老の男性が膝の上のネコを撫でながら、そんな笑い事にならない事を笑いながら言った。
「あれはマグマのメモリでしょう……いったい、誰が売ったのかしら?」
「最近、非常に販売業績の良い若手が居ると聴いたんだが?」
女性…冴子を見ながら言う男性に、冴子は微笑みながら建ち上がり報告する。
「お父様…。」
「なんだね、冴子?」
「実は私……。」
ガイアメモリのスイッチを押し、
『TABOO!』
腰のベルトらしき物のスロット部分に装填し、その姿を女性的な印象の有る異形の存在…『タブードーパント』へと姿を変えた。
「結婚したい人が見つかったの。」
それを聞いて思わず若菜は驚きの余り立ち上がる。
「そうですか、姉さん。おめでとうございます。ご結婚の日取りが決まったら連絡下さい、その日は何があっても帰還させていただきます。」
第三者の声が響き、その声を聞くと同時に男性の膝の上に居た猫がドアの所に佇む少年へと駆けて行く。
「お父様、ただいま戻りました。ですが、あちらで仕事を抱えている身ですので、余り長居出来ない事をお許し下さい。」
少年は一礼すると、初老の男性へと謝罪の言葉を口にする。すると少年の足元にネコが擦り寄っていた。それを見て少年はネコを抱きかかえる。
「ミックも元気にしてたか? ゴメンな、まだ遊んで上げられないんだよ。」
飼い猫…ミックを撫でながら少年がそう言うとミックは一度鳴いて自分の場所だと言わんばかりに、彼の頭の上へと止まる。
「いい、いい。それで、仕事とは大手の取り引き先かな? それとも、投資先の方かな?」
「両方です。晩餐会の時に仕事を持ち込んでしまう無礼をお許し頂ければ、報告したい事があるのですが?」
自分の席へと移動して座する前にそう言うと男性は無言のまま続きを促す。
「ミッドの方で、時空管理局が『ガイアメモリ』の存在に気付き始めました。先日、局員に目撃された事が原因でしょう。」
「なるほど、今ごろ気付くとは、随分と遅い事だ。」
「ええ。それで、奴等の方で専属の捜査員として私を任命しました。お蔭で今まで以上に仕事が遣りやすくなります。」
「そうか。それは良かった。」
少年の報告を聞き、男性は楽しそうに笑いはじめる。
「お蔭で投資先の方に多く時間を避ける様になりました。」
「あら、仕事熱心なのは良いけど、
「な!? 何を言うんですか?」
少年…凍也は顔を赤くしながらそう答え、ダブルドライバーに似て居ながら、メモリの挿入口が『X』を描く様に『四つ』存在するバックルを取りだし。
『SOL!』
太陽を連想させる黄金のガイアメモリ『ソル』を見せながら、凍也は…。
「恋愛も、仕事も、全力で楽しんでいますから、ご心配なく。」
そう宣言し、その姿を異形の戦士へと変える。
その姿はタブードーパントとは違い異形でありながら、神々しささえ持ったその姿は何処かダブルと似ていた。…それも当然だろう…何故なら、それはダブルと同じ『仮面ライダー』なのだから。
「ふ、ふはははははは…。」
晩餐会の会場には、男の笑い声が響き渡るのだった。
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