リボルキャリーを呼び出したダブルは既に絶滅したはずの恐竜の攻撃に曝されていた。ダブルの体が上空へと吹き飛ばされ、ダブルが落ちてくるのを待つ様に吹き飛ばしたダブルの真下で口を開いている恐竜の怪物。
「くっ!」
『ちょっと、リボルキャリーはまだ!?』
何処かデジャヴな光景…ドーパントとダブル…以前のシャークドーパント戦の時とは完全に立場が逆のその状況。以前は必殺技『ジョーカーエクストリーム』を討ち込む位置にドーパントが、トドメを刺されるドーパントの位置にダブルが存在していた。
だが、
「っ!? マオ、トリガーを使う! 黙ってやられるか!」
『ダメよ! トリガーは威力が強すぎるわよ! こんな状況で撃ったら、龍斗まで危ないわよ!!!』
「他に手は無い! あいつが倒れるのが先か、オレが倒されるのが先か…勝負だ!!!」
『…仕方ないわね…。地獄の底まで付き合うから、しっかり、エスコートしてよね!』
「気に入ってもらえるかは分からないけどな!」
互いにそんな言葉を交し合い、
『ふう。間一髪…エスコートしてもらうのは良いけど、地獄の底は勘弁して欲しかったからね。』
「確かに…。地獄の底に行きたくは無いしな。っ!? …あいつは何処に…。」
リボルキャリーに吹き飛ばされたはずのティーレックスドーパントの姿を探すがその姿は“地上には”無かった。
「くそ、何処に!?」
『っ!? この地響き…下よ!』
マオの警告が響くと同時にリボルキャリーの下から現われたティーレックスドーパントがリボルキャリーをひっくり返す。…当然その中にはマオの体も…。
『…なんだか…何処かに頭ぶつけた気分が…。…って、私の体ぁー!!!』
「…せ、せめて、次から何処かに固定しておいてくれ…。」
『変身ポーズが格好悪いじゃない。』
二人がそんな会話を交わしている間にティーレックスドーパントは猛スピードでリボルキャリーに迫って行く。
『って、きゃぁぁぁぁあ! 私の体がぁ!?』
「っ!?」
それを一瞥すると
リボルキャリーは回転したリボルバーハンガーによって姿勢を正し、横転状態から回復する。
『ダメ! 逃げられちゃった!!!』
「く! 攫われたか!」
ティーレックスドーパントの潜って行った穴へと近づくが、地響きさえも完全に遠ざかってしまっていた。完全に逃げられた。それを悟り、ダブルは悔しそうな声を上げる。
探偵事務所
「ふぇ~ん。やっぱり、散々ぶつけちゃってた~。痣になったら、どうしよう。」
鏡に向かって涙目になりながら、そんな事を言っているマオに龍斗は軽く溜息を付きながら、彼女の手当てをしていた。
「オマエなあ…せめて、何処かに体を固定しておけって。」
「うぅ…。可愛い私の顔が傷物なっても、龍斗はいいの~? はうぅ~。」
「…自分で可愛いとか、美少女とか言うか? まあ、別に痕は残りそうにないし、大丈夫だろう。」
尚も言葉を続けそうなマオの頭を撫でながら冷静に言葉をそう返す龍斗。
新たに現われたドーパントに付いて調査を始め様と考えていた龍斗の耳にラジオから聞こえてきた戸川の名前が聞こえてきた。
『本日11時15分頃、風谷港埠頭にて、風谷港第一埠頭で男性の遺体が発見されました。男性は風都在住の戸川陽介さん、22歳。埠頭の作業員が作業中に水に浮かんでいる戸川さんを発見し、110番通報しました。』
「…これって…別のガイアメモリを持った共犯者に口封じされちゃったって事?」
「口封じされた…か。」
それは、戸川が遺体で発見されたと言うニュースだった。
龍斗が事件現場へと着くと、事件現場では既に警察が戸川の遺体を調べていた。
「…共犯者が口封じの為に殺した…か。確かに、ストーリーとしては成り立つな。…そう決めつけるのは早いか…。」
龍斗が自分たちに与えられた情報から考えられる推測を組み立てていくと、依頼人の『都村 真理奈』が現われた。
「探偵さん…。うわああああああああん! 陽介が…陽介が!」
彼女の戸川の遺体を確認したのだろう。そのまま泣き崩れる。
(…また…泣く人が出たのか…。それに、犯人も助けられなかった…探偵なんて名乗れる程じゃないか。)
「ん?」
何と言葉を掛けるべきと迷っていると妙な殺気を感じてしまう。
(な、なんだ!?)
少し離れた場所では…
ピシ…
(…なんだか…気に入らない…。って、もう少し離れなさいよ!!!)
例によって簡単な変装をして、そんな龍斗達を離れた場所から睨んでいるマオの姿が有った。
…どうでも良いが、全身に纏っている幹部クラスのドーパントでも逃げ出しそうな黒いオーラと、彼女が掴んでいる近くの壁にヒビが入っているのは見ない事としよう。
龍斗は落ち着いた依頼人、都村と話しながら歩いていた。
「えーと、それじゃあ、あの服はあなたが…。」
「ええ。あの服はあの服を私がデザインした物…。でも、ウインドスケールには最低の上司が居たの。私のデザインを奪って自分の物にしたのよ。それを訴えた陽介がそれに抗議したら…。」
「彼がリストラされた。」
「ええ。私も結局その後、ウインドスケールを辞めたんだけど…。私は大好きなこの街に合う服とかを作りたかっただけだったのに。」
喫茶店
「Oh good! Oh beautiful……。」
喫茶店のテラスでウェイトレスの写真を撮っている少年の肩を叩く。
「よう、自称情報屋。頼みが有る。」
金を取り出しながら、少年…同じ学校のクスラメイトである少年、《隼一》へと話し掛ける。
「ん? 龍斗か。どうせなら、お前と偶に一緒に居る可愛い子の写真撮らせてくれればいいのにな。」
「…聴くのか、聴かないのか、どっちだ?」
「んだよ、ブログの街で見かけた可愛い子とか…風都の美少女…。」
「…他を当るか…。」
呆れながら振り向いてその場から立ち去ろうとする龍斗を隼一は慌てて止める。
「ま、待て! 待てって! 聴くよ、聴くって!」
「…始めからそうしろって…。…ここ最近、ガイアメモリを売ったって言う売人と買った客を調べてくれ。」
流石にミュージアムの構成員…と言うよりも幹部がそんなブログを読んでいるかは、これ以上無いほどに疑問だが、マオの顔は広く知られないほうが良いだろうと考えれば、それに越した事は無い。
龍斗は隼一に捜査を依頼する。
ガイアメモリの売人についての調査を依頼した後、龍斗は一週間前に起こった事件現場に来ていた。
「ここは…一週間前の事件現場か…。何か手掛かりが有ればと思ってたけど…。」
既に警察の閉鎖が解かれたそこは、工事が始まっていた。そんな中で、一つの部屋に入った時、勝手に扉が閉まってしまう。慌てて扉に駆け寄るが、扉は引いても押してもびくともしない。
「くそ! おい!!! 誰か居ないか!?」
ドアを叩いても誰も気が着いた様子は無い。
「…どうする…?」
変身して破るべきかと考えていると、後から呻き声が聞こえてきた。ゆっくりと後を振り返ると、そこにはティラノサウルスの頭に手足が生えた様な怪物…ティーレックスドーパントの姿が有った。
「っ!?」
襲いかかってくるティーレックスドーパントの体当たりを上に跳んで避ける。
更に体当たりを仕掛けて来たティーレックスドーパントを横に跳んで避け、スタッグフォンに疑似メモリを差し込む。
『STAG!』
「…これ以上嗅ぎ回るなって事か…。そっちがそう来るなら…こうさせてもらう。」
スタッグフォンに疑似メモリを差し込み、ライブモードに変形させ、ティーレックスドーパントへと跳びかからせる。現存する三種のメモリガジェットの中で最も攻撃力の高い護身端末のそれの攻撃はティーレックスドーパントの動きを止めさせる。
「サービスだ!」
『BAT!』
コウモリ型ロボットに変形したバットショットがフラッシュを焚きながらティーレックスドーパントの周りを飛翔する。
そして、二機のメモリガジェット達は水で塗れた場所までティーレックスドーパントを誘導すると、スタッグフォンが電線を引き千切り、
「おまけだ。受け取り拒否はさせる気は無い。」
感電させる。漏電による一瞬の停電の後、床に大穴を開けてティーレックスドーパントは逃げ出していた。
「また、逃げられたか…。」
「龍斗、大丈夫!」
そんな時、部屋のドアを開けてマオが部屋の中に入って来た。
「……マオ……。お前、本当に…自覚あるのか、自分が狙われてるっていう?」
入って来た彼女を呆れを含んだ視線で位置べしながら溜息を吐き、龍斗は思わずそう呟いてしまった。
「おーい、龍斗、だいじょ…おお! その子は!?」
そこに来た隼一が声を掛けようとした時、マオの姿を見てデジカメを取り出す。思わずそんな友人の態度に呆れながら、マオの前に立つと。
「おぉーい! なんで邪魔するんだよ!」
「そんな事より、どうだったんだ?」
「…ちぇ、風都の美少女特集って言うブログ「いいから、話せ。」…。はいはい。」
龍斗の言葉に続きを促され、彼が依頼していた情報を告げる。
「ああ。ガイアメモリを売っていた売人と戸川が会ってるのを見たって言う人は居たぜ。」
その言葉を聞くと龍斗とマオの表情が変わった。
「それで、売人の特徴は?」
「黒いスーツに、白いスカーフ、そのスカーフに一点だけ、血のような模様が着いてる男って事だけだ。」
「…客は戸川だけだったのか…?」
「ああ、そうらしい。」
風都の某所…
隼一の言葉に有った売人が企業の社長らしい人物にガイアメモリを売っていた。
「じっくりご覧下さい…。安い買い物ではない…。」
秘書らしい男がそれを一つ手に取り、社長らしい男に見せる。
「これで…私は本当に超人になれるのかね?」
「超人? 陳腐な言葉ですね。…どちらかと言うと、神に近い。」
それを聞いた男は嬉々とした顔でガイアメモリを選び始めた。
同じ頃、園咲家では……ミッドチルダへ戻った凍也を除いた家族が揃い話をしていた。その話題の中心はガイアメモリの売人である『須藤 霧彦』。
「興味ありますわぁ、霧彦さんって人…。…史上最高の販売業績を上げたガイアメモリのセールスマン。何より、凍也さん以外でお姉様に付き合って生きていられた男性ってだけで、とっても貴重。」
カップを持ち、そう言った妹を睨む冴子。
「人を化け物みたいに言わないで、若菜……。」
「チッ。……でも、楽しみね。そうでしょ? お父様。」
「もちろんだよ。だが…冴子…。…彼は園咲の家に相応しい男かな? まあ、凍也ほどではないだろうが。」
若菜のその言葉に男性…『園咲 琉兵衛』は飼い猫のミックを撫でながら同意する。
「そんな事はありませんわ、凍也にも劣らないはずです。」
冴子は微笑みながら頷き、そう答えるのだった。
龍斗達は地下駐車場を改造した部屋に居た。
「マオ、地球の本棚に入ってくれ。」
「OK!」
その場で一回転し、龍斗の方へと向き直ると目を閉じ、意識を本の世界へと飛ばす。ドーパントの情報を含む地球上の全てと言って良いほどの知識の存在する場所へと。
ツインテールで紫のドレスを纏いながら、マオは相手の使ったガイアメモリを言う。
「…まずは、『ティーレックス』。」
キーワードに該当しない本や本棚が飛んでいく。
「検索を始めましょう。検索項目は戸川を殺した犯人の名前。キーワードは?」
「一つ目は前回と同じ『ウインドスケール』。」
該当しない本と本棚が飛び去っていく。
「次のキーワードは多いぞ。」
そう言ってドーパントに襲われたウインドスケールの支店を上げていく。該当しない本棚が次々と飛び去っていく。それを眺めながら、マオは龍斗に訪ねる。
「…なんで、襲われた支店を?」
「…隼一の情報だと、ガイアメモリを買ったのは戸川一人だった。恋人である依頼者が共犯者だとしたら、一緒にガイアメモリを買ったはずだ。だとしたら…依頼人は犯人じゃない。ティーレックスのメモリの持ち主は共犯者ではなく、戸川を利用していたと考えたら…。最後のキーワードは出てくる。」
「最後のキーワードは…?」
「…『 』だ。」
最後のキーワードをいった瞬間、一冊の本を残して全ての本が飛び去っていく。その本を手に取りそれを捲ると意識は元に戻る。
「…ティーレックスに合う体質で、キーワードに該当する人って…誰?」
ホワイトボードに書かれた名前を見て疑問を持つマオ。
「…刃野さんから、戸川と依頼人が居た当時のウインドスケールの社員の名簿を見せてもらった。それは…この人物が該当する。」
「本当に誰? 推理小説だと反側じゃない…これって。」
「前・中・後の三編じゃあ、中編から犯人が登場するのも有った話だ。依頼人も以前はウインドスケールのデザイナーだった。そして、この人物は当時のウインドスケールの…依頼人と戸川の上司だ。」
「この話しになってから登場した人物が犯人って反側じゃない?」
「その辺は触れないで居てやってくれ。問題はどうやって呼び出すか…。」
龍斗のその言葉に僅かに考え込むとマオは、
「だったら、依頼人に呼び出してもらって、囮にもなってもらえば「このバカ!!!」…。うっ…な、なによ…?」
龍斗の怒りの感情を露にした怒鳴り声にマオは一歩後ろに下がる。
「お前…本気でそんな事を考えているのか?」
「…だ、だって…。」
「…推測で直接的な証拠もガイアメモリ程度しかない。だったら、直接呼び出してガイアメモリを見つけるしかない。その方法として依頼人に呼び出してもらうのはいい…だけどな…。依頼人を危険に曝す気か?」
「…で、でも…私達よりも、依頼人に直接問いただして貰えれば確実性も…。」
「上がるだろうな…だけどな…。」
そう言って龍斗は『ジョーカー』『メタル』『トリガー』の三つのメモリをマオに着き返す。
「…本気でそんな事を考えているなら、オレはお前の力は借りない…。」
そう言ってスタッグフォンを取り出すと龍斗は部屋を出ていく。
「なによ…なんだって言うのよ…。…龍斗のバカ!!!」
一人取り残されたマオはそう叫ぶのだった。
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