俺はたぶん転生者なんだと思う、身に覚えのない記憶があるのだから。その記憶には特典という知識があった、その知識通りに身体を鍛えれば特典が身に付く。…俺が生きる世は戦国、死が直ぐ近くにある。だから俺は鍛える、死にたくないから。力ある者だけ生き残る弱肉強食な戦国の世、弱い者は生き残れない。だから俺は鍛える、そして身に付けた力。『オロチ』という名の武力を更に高める、生き残る為に。
俺が住まう地は忍の里、火影一族が治める隠れ里。僅か一〇歳ながら里で五本指に入る程の強者が俺、身に付けた『オロチ』という名の武力がこの地位を築いた。しかし里の者達から嫌われている、…呪い子と。『オロチ』の力で里を守り尽くしてきたのに俺は嫌われる、住む家も里の端に追いやられ一人で生活せざるを得ない。…強さこそがこの里の全てだろう? 俺は里の者に嫌われるようなことをしたか? …分からない。親のいない俺には分からない、分からないんだ。
そんな俺に友好的なのは三人のみ。この里の長である桜火様とその側室の麗奈様、そしてその息子の紅麗のみ。二人の息子である紅麗も俺と同じで虐げられている、…呪い子として。彼からしてみれば同じ境遇故の同情か? まぁそれでも俺にとっては嬉しいことである。…ただ俺には親がいない、故に虐げられているとはしても両親のいる紅麗が羨ましい。…少なくとも二人が健在の内は守って貰えるのだから、…しかし俺には無い。…俺だけがこの里で一人、…独りなんだ。
………様々な任務を幼い身でやり遂げる。里の者は任務で俺の死を望むが残念、俺は強者故に生き残り続けている。…がそんな日々も終わりらしい、遂に火影の里が攻められる時。…滅びの日、里の者が死んでも今更どうでもいいが麗奈様と紅麗だけは救いたい。そう思い敵だらけの里中を駆けて二人を探す、邪魔な者は『オロチ』で焼き払いながら走り抜ける。途中、麗奈様の亡骸を発見した時は涙が出た。手厚く葬りたいがその暇がない、しかしこのままでは亡骸が晒され麗奈様の尊厳が…。そう思った俺は『オロチ』の力で彼女の身を焼き払う、祈りを乗せて………。
麗奈様を葬った後、怒りのままに敵を蹂躙。俺の身も既にボロボロであるが止まらない、…紅麗は何処だ!? ………そんな時に見付けた紅麗の姿、彼は変な空間へと吸い込まれて。それを見た俺は痛む身体を無視して…、
「………紅麗!!」
俺は彼の名を叫び手を伸ばす。
「ぐ…紅蓮!!」
彼もまた俺の名を叫んで手を伸ばす。そんな俺達に、
「紅麗! …紅蓮!?」
と俺達の名を叫ぶ女の声が聞こえたがどうでもいい。
俺は紅麗へ手を伸ばすも及ばず、それどころか視界が黒に染まっていき………。無理しすぎたか、今頃になってガタがきてしまったようだ。紅麗、…すまない。………俺は。
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…またいつもの夢を見た、ここ最近同じ夢ばかり。妙にリアルな夢、…俺が忍びか。………まぁ実際この夢を否定出来ない、現に夢の中の俺が使っていた『オロチ』とかいう力を認識しているし。それに身体能力も夢と同じで人外、…炎使いの忍びが俺。…がしかし、記憶が無い故に何とも言えない。確かに俺の名は紅蓮、夢の中の俺もまた紅蓮。同一人物の可能性はある、記憶に無いが妙にしっくりくるし。しかし今の俺は立迫紅蓮、両親がいる。血だらけの俺を助けてくれ、他人の俺を家族として迎え入れてくれた大恩人。夢の中の俺と今の俺は違うんだ、違うが何故にこうも気になるんだ………。
…気になる理由は分かっているんだ、俺が…父さんが火影を調べているからだって。俺達親子は『火影忍軍』を調べている、そう…俺の夢に出てきた者達のことだ。父さんを中心に、俺は日雇いの仕事を転々としながら密かに『火影忍軍』を調べている。故にここ数年、家には戻っていない。連絡すらしていない、…『火影忍軍』関連は山奥が多いからな。そのお陰で『火影忍軍』が使っていたとされる『魔導具』を数点入手出来たのだから、…父さん喜ぶだろうな。
まぁ『魔導具』を入手してからあの夢を見るようになった、そして…俺の力が発現したんだ。思い出すように目覚めた力、夢で見た『オロチ』っていう名が俺の心を乱す。忘れてしまったナニカを、大切なナニカを思い出そうとしている。それが夢で見た光景と言うなら、…早く全てを思い出したい。夢が俺の失った記憶だと言うなら、それを記憶であると受け止めたい。…このモヤモヤを何とかしたい、紅麗なる人物と会いたい。ただただ俺は、切にそう願う。
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今日は数年ぶりに我が家へ帰る。ある程度の成果、『魔導具』を入手したしね。それに夢のお陰か、俺の炎…『オロチ』も手足の如く行使出来るようになった。父さん驚くぞ、チョロっとしか出せなかった炎が自在に行使出来ると知ったら。…やはりというか何というか、俺は『火影忍軍』に関連する男みたいだ。やはり夢の中の紅蓮は俺なのかね? 『オロチ』を行使すればする程、『火影忍軍』を知れば知る程そう思うようになった。『火影忍軍』の炎術士、俺はそれに間違いない。
…まぁとにかく、我が家へ急がねばならない。妙な胸騒ぎがするんだよ、急がねば取り返しの付かないことになるような。…父さんと母さんは健在だよな? 何事も起きてないよな? それだけが気になって仕方がない、…仕方がないんだ。
………雨の降る中、家路を急ぐ。俺の『オロチ』が騒ぎ立てる、故に急ぐのだ。…そして辿り着いた先で見た光景、母さんが見知らぬ男に傷付けられていた。
………貴様、…誰に何をしていやがる!!
俺は『オロチ』の力を行使、雨をも蒸発させる紫炎を出す。その紫炎を全身に纏い、母さんを襲った暴漢へと突貫する。身体から木の根のようなモノを出して母さんを傷付けた悪漢、…一撃を喰らわしてやる!!
突如乱入した俺に驚き停止したのは好都合、…ぶっ飛べ!!
「…鬼焼き!!」
悪漢の懐へ潜り込んだ俺は、紫炎を纏ったまま一回転して舞い上がる。夢の中の俺が使っていた技、『オロチ』が目覚めた時から鍛練してこの身に馴染ませた技。怒りにより紫炎の出力が安定しないが、…ただじゃすまない。案の定、
「ぐぎゃあああああっ!!?」
身体から生えていた木の根は紫炎に燃やされ、自身も炎に焼かれながらぶっ飛ぶ悪漢。…悪漢の仲間がいるけれど、そんなことよりも!
「………母さん!!」
全身を貫かれた母さんを抱き締めるも反応がない、………が心臓は動いている! 俺は直ぐ様救急車を呼ぶ、自分で運べば早いだろうが下手なことをして死んでしまったら…! 騒がしかった周囲が沈黙し、雨の音だけがこの場を支配した。
救急車が到着し母さんは搬送された、近くに倒れていた男子高校生も共に病院へ。俺も一緒に行きたかったが姿の見えない父さんが気になった、母さんがあんな目に遭ってしまったのだから父さんも………!
家の中がメチャクチャになっていた、当然…父さんの姿はない。母さんがあんな目に遭ったのだから父さんも襲われたのでは? …嫌な予想が当たってしまった。…この状況下で考えられることは一つ、あの悪漢とその仲間達に襲われて拐われた。…普通に教師をしている父さん、それを支える母さん。普通過ぎる程の家庭、そんな両親が襲われる理由。…『火影忍軍』のことを調べていたからか? だったら俺の所にも来る筈だが…、俺の存在には行き着かなかった? いや、襲うぐらいだから知っている筈だが…。まぁ数年姿を消していたからってことなんだろうが、…許せんよなぁ。この借りを返さねばなるんだろ、…絶対に。
…何はともあれ先ずは母さんだ、母さんの下へと行き安否を確認しなくては!