初めて彼女と話した時、あの日こそが、僕にとっての最高の日だった。
学校に入学したてのころ、彼女は完全に孤立していた。
彼女自身が無愛想なのもあったけど、何よりも彼女は異質過ぎた。
纏う空気が、周りと全く合っていないのだ。
彼女が一言発するだけで周囲は飲まれ、彼女以外は喋ることが出来ないほどだった。
でも、僕は何だか彼女が自分と似た者同士な気がしてた。
だって、彼女には
「朽花さん、で合ってるよね?」
「はい、私が朽花ですが」
「今暇だったらさ、ちょっと話さない?」
「ええ、構いませんが」
これが僕と彼女の、最初の会話だった。
4月15日 AM 12:30
「朽花さん、今から聞くことは他の人に話さないでね」
「良いですけど、何でですか?」
「もし勘違いだったらとっても恥ずかしいからさ、それでね、聞きたいことって言うのはさ.....君、僕と同じ異能力者でしょ」
「あら、貴方も異能力者だったのですか、全く気づきませんでした」
「やっぱり、良かった~、予想が外れてたらどうしようって真剣に悩んでたんだ~、外れてなくて良かった」
それから僕らは、互いの能力について教えあうことにしたんだ。
「へえ、橘さんの能力は、他の人には聞こえない音が聞こえて、その音で相手がどんな人間か判断出来るんですか、便利ですね」
「うん、でも無差別に音を拾っちゃうから、聞きたくない嫌な音まで聞こえちゃうんだよね」
実際問題、彼女に出会うまで気持ち悪い音ばかり聞いて来た。
両親でさえ、とても醜くて耳障りな音がしてた。
でも、彼女だけは違った。
彼女だけは、とっても綺麗で、美しい音が聞こえて来たんだ。
本当は他にも能力があるんだけど、それを言ったら怖がられそうだしやめておこう。
「じゃあ、今度は私の番ですね、私の能力は千里眼、過去や現在、未來や平行世界を見渡すことが出来ます」
「何それ、君の方がヤバいじゃん、ようするに何でも見えちゃうのか、それ結構大変じゃない?」
「はい、見たくないものものまで全部見えてしまうから、今まで怯えられるのが怖くて、誰にも言えなかったんです」
「そっか~、でも良かったよ、僕だけじゃなかっただね、それを知れただけでとっても嬉しいよ、それが君みたいな可愛い子なら尚更さ!」
「可愛い...ですか、何でしょう、とても変な気分です」
「えっ!、なんで?」
「今まで、そんなことを言う人は一人もいませんでしたから」
「嘘!、君とっても可愛いのに~、今まで会ってきた人たちはみる目がないね」
「そうでしょうか?、大抵の人は私を見ると怖がって逃げてしまうので」
「じゃあさ朽花さん、一度思いきっきり笑ってみなよ、そしたら皆君の友達になってくれるよ、きっと」
「そうですか...なら、最初の友達には、貴方がなってくれませんか?」
「良いよ、ていうか最初からそのつもりだし、だからさ、笑顔、笑顔、お願い!」
「はい、それでは」
そう言った彼女の笑顔は、やっぱりとても綺麗で、可憐だった。
この時の会話がきっかけとなり、僕と彼女は一緒に学校へ通うくらい仲良くなった。
でも、何故か彼女は、僕以外に友人を作ろうとしなかった。
しかも、僕と友達になってから、余計に人を寄せ付けなくなった。
一体何でだろう?。
祿乃side
彼はとても不思議な人だった。
他の人は皆、無愛想な私に寄り付きもしなかったのに、彼だけは私に話しかけてくれた。
彼だけが、私を可愛いと言ってくれた。
だから私は、彼以外のことがどうでもよくなった。
彼さえいれば他はいらない、彼だけが私を理解してくれる。
ねえそうでしょ?
橘さん。
橘side
6月1日 AM7:40
「祿乃ちゃん、お待たせ~」
「ふふっ、大丈夫ですよ、私も今来たところですから」
「よ~し、じゃあお喋りでもしながら行こっか」
「はい、行きましょう」
僕は、この後に起こる事件のことを今でも後悔してる。
何で、祿乃ちゃんを一人にして、救急車なんか呼びに行っちゃったんだろうって、この一件さえなければ、彼女が変な連中に目をつけられることもなかったんだ。
「頼む、話だけでも!」
「何度も言わせないでください、お引き取りを」
「あれ~、何してんの祿乃ちゃん」
用事があったのから祿乃ちゃんの家に行ってみたら、昼間の上から降ってきた女の人がいて、祿乃ちゃんがとってもも嫌そうな顔をしていた。
しかも、まずいことに、祿乃ちゃんからすっごく嫌な音がしていた。
間違いない、祿乃ちゃんめちゃくちゃ怒ってる。
その後、なんとか女の人には帰って貰らい、祿乃ちゃんの機嫌も良くなった。
そして、勉強を教えて貰うことを口実に、彼女のの家に留まったんだけど、外がかなり暗くなってきたから家に帰ることにしたんだ。
でも、この時気づけば良かったんだ。
帰り際の彼女からは、何故か少し悲しい音がしていたのに、僕はそのまま帰ってしまった。
次の日、彼女がいなくなってしまうとは知らずに。
ねえ祿乃ちゃん、何処にいるの?。
君の音が聞こえないよ。
君がいないと僕は駄目なんだよ。
帰ってきてよ、戻って来てよ。
.....祿乃ちゃん。
さてさて、雲行きが怪しくなって参りました。
彼はどうなることやら。
次回もお楽しみください、ようやく、ようやく、戦いが始まる。