名残の花、桜人の唄   作:森熊ノ助

3 / 4
さあ、今回は『彼』の物語にございます。


情景

初めて彼女と話した時、あの日こそが、僕にとっての最高の日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校に入学したてのころ、彼女は完全に孤立していた。

彼女自身が無愛想なのもあったけど、何よりも彼女は異質過ぎた。

 

纏う空気が、周りと全く合っていないのだ。

 

彼女が一言発するだけで周囲は飲まれ、彼女以外は喋ることが出来ないほどだった。

 

でも、僕は何だか彼女が自分と似た者同士な気がしてた。

 

だって、彼女には()()()()()他の人には無い才能があったから。

 

「朽花さん、で合ってるよね?」

 

「はい、私が朽花ですが」

 

「今暇だったらさ、ちょっと話さない?」

 

「ええ、構いませんが」

 

 

 

 

 

これが僕と彼女の、最初の会話だった。

 

 

 

 

4月15日 AM 12:30

 

「朽花さん、今から聞くことは他の人に話さないでね」

 

「良いですけど、何でですか?」

 

「もし勘違いだったらとっても恥ずかしいからさ、それでね、聞きたいことって言うのはさ.....君、僕と同じ異能力者でしょ」

 

「あら、貴方も異能力者だったのですか、全く気づきませんでした」

 

「やっぱり、良かった~、予想が外れてたらどうしようって真剣に悩んでたんだ~、外れてなくて良かった」

 

それから僕らは、互いの能力について教えあうことにしたんだ。

 

 

 

 

「へえ、橘さんの能力は、他の人には聞こえない音が聞こえて、その音で相手がどんな人間か判断出来るんですか、便利ですね」

 

「うん、でも無差別に音を拾っちゃうから、聞きたくない嫌な音まで聞こえちゃうんだよね」

 

実際問題、彼女に出会うまで気持ち悪い音ばかり聞いて来た。

 

両親でさえ、とても醜くて耳障りな音がしてた。

 

でも、彼女だけは違った。

 

彼女だけは、とっても綺麗で、美しい音が聞こえて来たんだ。

 

本当は他にも能力があるんだけど、それを言ったら怖がられそうだしやめておこう。

 

「じゃあ、今度は私の番ですね、私の能力は千里眼、過去や現在、未來や平行世界を見渡すことが出来ます」

 

「何それ、君の方がヤバいじゃん、ようするに何でも見えちゃうのか、それ結構大変じゃない?」

 

「はい、見たくないものものまで全部見えてしまうから、今まで怯えられるのが怖くて、誰にも言えなかったんです」

 

「そっか~、でも良かったよ、僕だけじゃなかっただね、それを知れただけでとっても嬉しいよ、それが君みたいな可愛い子なら尚更さ!」

 

「可愛い...ですか、何でしょう、とても変な気分です」

 

「えっ!、なんで?」

 

「今まで、そんなことを言う人は一人もいませんでしたから」

 

「嘘!、君とっても可愛いのに~、今まで会ってきた人たちはみる目がないね」

 

「そうでしょうか?、大抵の人は私を見ると怖がって逃げてしまうので」

 

「じゃあさ朽花さん、一度思いきっきり笑ってみなよ、そしたら皆君の友達になってくれるよ、きっと」

 

「そうですか...なら、最初の友達には、貴方がなってくれませんか?」

 

「良いよ、ていうか最初からそのつもりだし、だからさ、笑顔、笑顔、お願い!」

 

「はい、それでは」

 

そう言った彼女の笑顔は、やっぱりとても綺麗で、可憐だった。

 

この時の会話がきっかけとなり、僕と彼女は一緒に学校へ通うくらい仲良くなった。

 

でも、何故か彼女は、僕以外に友人を作ろうとしなかった。

 

しかも、僕と友達になってから、余計に人を寄せ付けなくなった。

 

一体何でだろう?。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祿乃side

 

彼はとても不思議な人だった。

 

他の人は皆、無愛想な私に寄り付きもしなかったのに、彼だけは私に話しかけてくれた。

 

彼だけが、私を可愛いと言ってくれた。

 

だから私は、彼以外のことがどうでもよくなった。

 

彼さえいれば他はいらない、彼だけが私を理解してくれる。

 

ねえそうでしょ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橘さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橘side

 

6月1日 AM7:40

 

「祿乃ちゃん、お待たせ~」

 

「ふふっ、大丈夫ですよ、私も今来たところですから」

 

「よ~し、じゃあお喋りでもしながら行こっか」

 

「はい、行きましょう」

 

僕は、この後に起こる事件のことを今でも後悔してる。

 

何で、祿乃ちゃんを一人にして、救急車なんか呼びに行っちゃったんだろうって、この一件さえなければ、彼女が変な連中に目をつけられることもなかったんだ。

 

 

 

 

「頼む、話だけでも!」

 

「何度も言わせないでください、お引き取りを」

 

「あれ~、何してんの祿乃ちゃん」

 

用事があったのから祿乃ちゃんの家に行ってみたら、昼間の上から降ってきた女の人がいて、祿乃ちゃんがとってもも嫌そうな顔をしていた。

しかも、まずいことに、祿乃ちゃんからすっごく嫌な音がしていた。

間違いない、祿乃ちゃんめちゃくちゃ怒ってる。

 

その後、なんとか女の人には帰って貰らい、祿乃ちゃんの機嫌も良くなった。

 

そして、勉強を教えて貰うことを口実に、彼女のの家に留まったんだけど、外がかなり暗くなってきたから家に帰ることにしたんだ。

 

でも、この時気づけば良かったんだ。

 

帰り際の彼女からは、何故か少し悲しい音がしていたのに、僕はそのまま帰ってしまった。

 

次の日、彼女がいなくなってしまうとは知らずに。

 

 

 

 

ねえ祿乃ちゃん、何処にいるの?。

 

君の音が聞こえないよ。

 

君がいないと僕は駄目なんだよ。

 

帰ってきてよ、戻って来てよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.....祿乃ちゃん。




さてさて、雲行きが怪しくなって参りました。

彼はどうなることやら。

次回もお楽しみください、ようやく、ようやく、戦いが始まる。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。