ひまかの恋物語   作:プットティラーノザウルース!!

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黒と金と、ピンクは盲目

 誰かに相談できたら、何かが変わったのだろうか。変わったとして、何が好転したのだろう。俺はひまりと一緒にいるといつもそんなことを考えてしまう。俺は、俺だけの問題にしたからダメだったのかもなと。

 だけど、逆に俺にはひまりのような信頼できるヒトなんていない。ひまりにはカレシも、仲の良い幼馴染もいる。信頼できる誰かがいる。俺にはそんなやつ誰も思いつかない。

 

「それじゃあ、今日も送ってもらってありがとっ!」

「いいよ、何かに巻き込まれないんなら、それに越したことはないよ」

 

 いるとしたらひまりだけど、俺は、ひまりのことをきっとただの後輩だなんて思ってない。ただの後輩なら、こうして送らないと心配になんてならないし、手を振るひまりに対して、笑みは浮かばない。

 相手がいたとしても、俺はひまりに特別な感情を抱いている。寝取るつもりなんて微塵にもないし。

 

「おい」

 

 そんなことを考えながら帰ろうとしたその時、俺の後ろにはいつの間にか、一人の男が立っていた。俺より少し高い身長とでかい肩幅。染めたであろう金髪、鋭い目つき。どっかの不良が何かしらで絡んできたのか? という疑問を口に出す前に不良は俺に敵意の籠った視線を送ってきた。

 

「お前……ひまりとはどういう関係だよ」

「……は?」

 

 コイツ、ひまりの関係者……たぶんコイツがカレシか。俺がひまりの周囲をちょろちょろしてるから、気に入らなくて出てきたってとこか。それとも偶々見ちゃっただけか。どっちでもいいけど、俺は嫌いなタイプだってのは見ただけでわかった。

 

「どういうも、バイト先の先輩……ですけど」

「バイト先の……なら、あんまりひまりに近づくんじゃねぇ」

「お近づきになれてると思われてるのか……なるほど」

「なんだてめぇ」

 

 なんでこんな敵意を向けられているのか、なんだか冷静になってしまった。慌てることなく、俺はごめんなさい、と一言だけ謝意を述べた。

 ──こんなやつがカレシか。ひまりってあんまりカレシのことを話したがらないイメージはあったし、デートの写真とかも妙にカレシの匂いのしない、噓くさいものが多かったのも、もしかしてこういうことか。ひまりはコイツと上手くいってないのか。

 

「もうひまりに近づくな」

 

 束縛の強いヤツだな。あんまりお近づきになりたくないタイプだし、会話もしたくないから去っていくけど、絶対にその言葉にうなずくことはなかった。

 誰がアンタの言うことなんて聞くかよ。アンタは、ひまりを苦しめてるんじゃないのか。

 俺は、帰路につきながら一通だけメッセージを追加することにした。もし、もしだけどひまりがその気なら、俺に助けを求めてほしい、なんて。

 ──そうしたらもう、俺はアノトキみたいな失敗はしないで見せるよ……花音。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰った私は、今日のことを回想しながらベッドにダイブした。いっぱいトミーさんとおしゃべりできた。いっぱいトミーさんは笑ってくれた。嬉しさと幸せが混ざりに混ざって、私の視界にチカチカと星みたいに瞬いていた。

 

「はぁ……すき、すきだよぉ……」

 

 あふれ出たスキが、私の口から洩れてくる。頑張って蓋をしようとしても、無尽蔵にあふれてくるトミーさんへの好きは、こうして吐き出さないとどうにかなっちゃいそうなくらいに大きく膨れ上がっていた。

 

「あれ?」

 

 枕にそのあふれちゃった好きを吐き出すこと数分後、私のスマホがピカっと光って、メッセージアプリの通知が映し出された。差出人はトミーさん。ユーザーネームがそのまんま、トミーなのがちょっとかわいいなと思う。

 そんなトミーさんから送られてきたメッセージは、すごく不思議なものだった。

 

「お疲れ様……()()()()()()()()()()()()()()()()()……? え、えっ!?」

 

 なんで、どうして!? 

 トミーさんは私にカレシがいると思ってるからこんな誘い方はしてこない。極力、私とトミーさんがなんでもない関係に見えるように繕おうとすらする。今日だって、半ば無理矢理一緒に帰ったくらいなのに。

 嬉しさよりも戸惑いが勝っていた。だって、昨日まではフツーのトミーさんだったのに、今日になったらいきなり、こんなことをいい始めるんだもん。しかも一緒に帰ってる時まではフツーのトミーさんだったのに。

 そんな思考をぐるぐると巡らせていたら、ドンドンと強めに部屋のドアを叩かれた。この音は、()()()だ。そう思って私はやや不機嫌そうにドアを開けた。

 

「……なに?」

「もうあの男と帰ってくるのはやめろ」

「……あの男?」

「そうだ。黒髪でひょろいヤツだ」

 

 トミーさんのことだ。つまりコイツは今さっき、トミーさんと会って、そもそもトミーさんと私が一緒に帰ってたのを見てたってこと? それで私がいない間にトミーさんにつっかかってきたってこと? 

 ──ホント、サイッテー、クズ、嫌い! 私の邪魔をするんだ、すぐに! 

 

「もう! なんでそういうことするの!? カレシ面しないでよ!」

「してない! オレはただひまりを──」

「──それが余計なことで、カレシ面っていうの! そーゆーのキモいから、やめて」

 

 コイツは唖然とした表情で信じられないみたいなオーラを放ってくる。当たり前じゃん。人の恋を邪魔するなら馬に蹴られてなんとやら、だよ! 

 けど、全然退くこともなく、そういうんじゃねぇんだよ、と逆ギレしてくる。私、もう子どもじゃないもん! 

 

「いーやひまり、高校生はまだまだ子どもだからな?」

「はぁ? バイトのひとつもしないでフラフラしてる大学生サマのクセに!」

「んだよ!」

「事実じゃん! バカ!」

 

 ドアを勢いよく閉め、私は頬を膨らませながらスマホを再びメッセージアプリの画面に変え、トミーさんに返事を送った。

 ──また、是非一緒に行きたいです。空いてる日を教えてくれたらすぐに! 

 

「……もしかして、トミーさん……アイツのことカレシとか思ってるのかな?」

 

 アイツは最悪のクズだし私が他の男のヒトと仲良くしてるとすぐつっかかるし、デリカシーもない最低なヤツだからそんなこと考えもできないよね。でも、逆に言えばそれはチャンスな気がした。

 たぶん、トミーさんはアイツに対していい印象を抱いてない。それまで影もカタチもなかったカレシじゃどうにもならなかったけど、アイツが偽カレシになってくれれば……そんな邪な考えが私の中に浮かび上がった。

 

「ふーん、今日だけは褒めてあげるね……」

 

 ドアの向こうでまだムスっとして待ってるだろうあの不良頭に小さな声で呟いた。なんだ、たまには私にとって有意義なことしてくれるんじゃんって。

 私の敵は花音さんだ。こんなところで、こんなバカみたいな嘘で立ち止まってたら、あっという間にトミーさんを盗られちゃう。私はずっとずっと、トミーさんが好きだから、負けたくないから。

 ──この時点で、私はものすごく大きくてドロドロとした黒い感情に巻き込まれてることに全然気づくことができなかった。トミーさんを好きになっているということがどういうことか、トミーさんを振り向かせるってことがどんなことなのか、私は、何一切気づくことができなかった。恋は盲目、私だってこうやって汚いところがあるのに、私は、肝心のトミーさんの、キレイなところしか、好きなところしか見えてなかった。

 

 




そろそろこの金髪が誰なのかわかってきたヒトもいるかなーと思ってます

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