「赤空さん…貴方の意志は、我々が継ぎます。あの憎きフォースをこの手で始末し、地獄へと送り届けてやりますよ。」
第49話 ♣︎3:歴史が奪われる
そこでは、2人の少年少女が朗らかな陽の中で遊んでいた。
その笑顔は、見ているこっちも温まるほど朗らかで、幸せなものだ。
まるで夢のようなひと時だ。苦しい現実から離れ、2人でただ戯れる…その頃がどれだけ楽しかったか…
「風香さん…」
少年が少女の名を呼ぶ…
「…香さん…」
「…香…ん…」
その声は、徐々に離れていく…少女は、手を伸ばし、少年を掴もうとする。
しかし、その手が見えなくなるほどの暗闇が彼女を襲った。そして、身体を迸る激痛が彼女を悲痛な現実に呼び寄せた。
「大丈夫か…黒羽?」
彼女は、部屋の長椅子から滑り落ちていた。先程の激痛はそれだろう。その長く綺麗な髪を起こすと、先程の夢でみた少女をそのまま大人にしたような顔だった。黒羽風香、それが彼女の名だ。
「すいません…雪菜さん。」
そんな彼女に手を伸ばしたのは、劔橋雪菜。風香とは対照的に短髪で切り揃えた髪で真面目さを醸し出す彼女は、風香の上司に当たる。
「本当、こんな大変な時に寝れるとはいい度胸ね。」
そう言って彼女は真面目そうな見た目からは総三できないような大きな欠伸をした。
彼女達が居るのは、ジョーカーから程近い病院だ。
何故彼女達がここに居るのか。
それは、彼女の直属の上司であり、このジョーカーの社長に当たる白夜総三が、意識不明の状態で発見され、搬送されたのだ。
現在、医師による治療を受けているのは深夜、2人は眠気と戦いながら社長の帰還を待っている。
その時だった。目覚ましのように大きな音が病院の廊下で鳴り響いた。音源は雪菜の携帯だ。
すぐさま、通話ボタンを押し、青い携帯を耳元に当てた。
そして、何度か頷くと電話を切り、風香を見た。
「行くぞ、この近くで怪人が大量発生している。」
半起き状態の目がばっちりと開いた風香は、すぐさま立ち上がった。
そして2人は廊下を走り出し現場へ向かった。
「「変身!!」」
[check!][change!rider Force!][change!rider arthur!]
2人の戦士が現場の広場に到着した時には、一部のオブジェクトが破壊されており、人も血を流して倒れている。しかし、肝心な怪人の姿がない、
「なんてことを…」
アーサーー雪菜はこの光景を見てそう呟いた。
「一体誰が…」
フォースー風香はそう周りを見渡した。
その時、目の前に立ち尽くす人の姿ある事に気が付いた。
大丈夫ですか?そう言って駆け寄ろうとしたフォースをアーサーは静止させた。
「何かおかしい…」
その人影は、右手にあるものを構えた。
何か時計のようなものだ。
その影は少しずつ前に進んだ。そして、街灯に照らされた時、その姿が初めてはっきりと見えた。
どこかの民族風の衣服に身を包み、濃い顔の男が立っている。
「誰だ…貴様!」
男は口を開いた。
「我が名は、タイムジャッカーのレックス。」
そして、レックスは手に持っている時計を構えた。
「そして、フォースだ。」
[フォース…]
その時計には、禍々しい顔が描かれていた。そのスイッチを押すと、男の身体に変化が起きた。
何かどろっとした液体のようなものが徐々に身体を侵食し、そこへ風のように拘束具が装着、ボロ布のようにくたびれたその姿は、フォースであり、フォースでないもの、アナザーフォースだ。
「本来ならフォースだけの予定だったが、余計なのがいるか…」
そう言って彼はアーサーを見据えた。
「ホッパー、アーサーを足止めしろ。」
そう言うと、ホッパー達が、何体も現れ、アーサーに向かって迫った。
隣のフォースには目もくれず、一心不乱に迫る。
アーサーは、ホッパーの攻撃に剣で対抗する。
「黒羽、気をつけろ。あの男、何を考えているか分からないぞ。」
「はい、でも、今戦わないとまた被害者が出るかもしれない。だから例え罠でも戦います!」
フォースはそう言ってロッドを構えた。
「分かった。お前ならそう言うと思っていた。雑魚は任せろ!」
アーサーはそう言うと、ホッパー達を引き連れ、場所を移動する。
フォースはアナザーフォースに向かって走り出す。
ロッドの先端がアナザーフォースの左肩に振り下ろされた。
アナザーフォースは少し後ろに揺らぐが、殆ど支障がなく、すぐさま武器を構えた。
先端に針地獄のような鋭さと大量の棘を持つメイスを構えたアナザーフォースは、フォースの鎧のない部分を狙って振り下ろす。
フォースはその攻撃を寸前に避けると、その勢いを活かして再び攻撃を試みる。
ロッドはメイスと擦れ合い、火花を散らす。
2人の戦力は互角、フォースはアナザーフォースを圧倒するため、ユナイトドライバーを装着する…しかし、本来ならそこで起動する筈なのに、全くもって起動しない。
動揺しているところに、蹴りを入れられ、フォースは倒れてしまう。
「何故使えない…」
「簡単な話だ。我がフォースの歴史を徐々に吸収しているからだ。時間が経てば経つほど我の力は増し、お前の歴史は消える。」
「そんな事させない!」
フォースは立ち上がり、身構える。が、アナザーフォースはそれよりも早くメイスをフォースに叩きつけた。
フォースは、強く地面に叩きつけられてしまった。
フォースの目の前にはメイスがすぐそこまで迫っていた。
このまま殺さんとするその一撃は、フォースの脳天に雷の如く打ち付けられる…筈だった。
そのメイスは、一つの盾によって寸前のところで防がれていた。
2人のフォースは、間に入ってきた謎の仮面ライダーに驚愕を浮かべていた。
「誰!」
風香は、そう聞くのに対し、レックスは、待ってましたと言わんばかりの期待の声で言い放った。
「待っていたぞ…ワード!」
ワードは、右手の矛でアナザーフォースを振り払う。
「大丈夫ですか?」
ワードは、フォースに手を伸ばす。
その手をフォースは握り、立ち上がる。
「何故…ここに?」
「『ある人』に呼ばれて。そしたら、たまたまこの状況を見かけて…」
「理由はどうであれ、加勢に感謝する。」
「遊びはここまでだ…」
アナザーフォースは、力を込めた拳をゆっくりと開いた。
すると、フォース達の後ろに、空間を裂いて謎の隙間が現れた。それは徐々に広がり、フォースとワードを飲み込もうとした。
その力に2人の足は地面から離れ、一言も発する隙もなく空間の裂け目に消えていった…
「今日はとりあえずここまでだ…」
そう言うとアナザーフォースは、撤退した。それに合わせ、アーサーに群がっていたホッパー達も煙のように消えてしまった。
その頃、先程2人がいた病院に別の男がいた。
「親族の方ですか?」
1人の女性看護師が聞く。彼はうんと頷くと、父親はもう助からないことを聞かされ、最後に顔を拝むかどうか聞かれた。
彼は、父親が助からない事に関しては何も表情を変えなかった。そして、他にするべきことがあるので、と父親の顔を見ずにその場を後にした。
「ここは…」
風香が目を覚ますと、先程とは別の場所にいた。見覚えのない川沿いの土手だった。日は南の空に浮かんでおり、とても暖かい日だった。
彼女の隣には、ワードだったと思わしき青年が寝ていた。
「大丈夫?」
その声で青年は、顔を上げた。
その顔は、あの少年を思わせるものだった。
「初めまして…じゃないですよね…?風香さん。」
彼は彼女の名を言った。どうやら彼も気づいたようだ。
「…もしかして、ゴン君?」
風香は、彼の名を口にした。