嫌な予感がする、そう脳が私の全身に呼びかけている。
あの戦いの後、黒羽風香は戦闘に加勢した仮面ライダーワードと共に敵の力で消えてしまった。
連絡もつかず、死んだとも断定できないことは前にもあったが、今回は、その時よりも状況は最悪だ。
「雪菜、大丈夫だったか?」
「朔弥、私は問題ない。だが黒羽が。」
戻ってきた私を出迎えたのは金剛寺朔弥だ。彼は私と同期に当たる。火縄の変身者だ。昔は、互いに苗字でさん付けだったのに、今では下の名で呼び合う程になっている。まぁ、それだけ信頼できると思っているのだろう。もちろん黒羽風香も信頼している。今回も戻ってくると信じている。
「話は聞いている。とりあえず、中で作戦会議するとの事。」
私達は、すぐさま会議室へと歩き始めた。
「それにしても、随分大きくなったね。ゴン君。」
雪菜達が、心配しているその間、風香は1人の青年の頭を撫で回していた。
青年、塾屋ゴンも、彼女との再会を喜んでいる。
2人の関係、それは2人が共に小学生の頃まで遡る。
それは風香が酷く父に叱られた時だった。
家を飛び出し、家の近くの公園のブランコに座って泣いていた。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
その時声を掛けたのは、ゴンだった。
2人は、その後徐々に親睦を深めていった。
最初は毎日のように遊んでいた。しかし、風香が中学生になった頃、彼女の門限が厳しくなり、外で遊ぶことすら許されなくなり、2人の会う回数は減っていってしまった…
「とにかく、元気そうでよかった…」
ゴンが呟いた。
「再会の喜びに浸るのもいいけど、そろそろここがどこなのか…それを考えないとね。」
風香は立ち上がった。
ゴンも彼女に続いて立ち上がった。
川のせせらぎが気持ちよく流れている隣を2人は歩き始めた。
少し歩くと、街に出た。大きなショッピングモール。両側6車線の大通り。多色に発光する広告の電光掲示板。全てが今と殆ど変わらない都会の風景だ。
2人は電光掲示板の広告を見ていた。そこには『A-SEC』と言うマークと、綺麗な面立ちの男が映っていた。風香はその顔に見覚えがあり、見入っていた。
すると、掲示板に映されていた広告が、『本日、2005年5月5日の天気。晴れ、しかし午後から一時的に雨が降る。』と映し出された。
「2005年…?」
周りの人は、午後から雨が降ることを気にしていたが、2026年から来た2人にとっては2005年と言う年に驚きを隠せなかった。
「一体…どう言うことなんでしょう?」
2人は顔を見合わせ、夢ではないかともう一度画面を見たが、やはり変わらない。
掲示板が再び変わった。今度は、どこかの施設の紹介動画だ。
『この都市に住む皆さんは未来を手にしています。でも、ここでは更なる未来が創り出されています。』
どこかで聞き覚えのある男の声と共に純白の施設とその中の様子が映し出される。実験室、様々な新技術、そこで働く白衣を着た人達。
『皆さんの未来は、このアトランティス科学実験場にあります。』
その声と共にガッツポーズをした中年の男が映し出された。
「社長!」「博士!」
「「ん??」」
2人は同時に声を上げた。その画面に映っていたのは、少し若いが、紛れもなく白夜総三だった。
「タイムジャッカーについて何か分かったか?」
風香達が2005年にいる頃、2026年では敵の捜索及び情報収集が行われていた。
雪菜は、部下の魚津に現状を聞く。
「えーっと…」
魚津は歯切れの悪い雰囲気を出していた。
「何か問題でも?」
雪菜は魚津に早く話せと言う圧力を遠回しに掛けた。
「あの、笑わないで聞いてくださいね…」
魚津は、彼女を怒らせるのではと遠慮気味に言う。
「この状況で笑っていられるか…とにかく話せ。」
「分かりました。」
魚津は調べた内容を話し始めた。
要約するとこのような感じだ。
タイムジャッカーとは、かつてテレビで放送されていた仮面ライダーの一つ、仮面ライダージオウに登場する敵組織の事。彼らはアナザーウォッチと呼ばれる時計型のアイテムでライダーの歴史を奪う。
実際、アナザーフォースのレックスもフォースのアナザーウォッチを手にしていた。
「なるほど、テレビの中の敵組織を名乗る存在か。」
「そして、風香達の居場所は、恐らく『別の時間』ではないでしょうか?」
魚津は説明の後に自身の意見を混ぜた。
「確かにあり得るな。それにライダーの歴史を奪うのなら、それが関係する時間かもしれないな。」
雪菜は、そこから更に推測する。
「あり得るとしたら、風香が初めてフォースに変身した日、或いはジョーカー設立日だと…」
雪菜は、声に出さなかったが、もっと前なのでは、と思った。
雪菜は知っている。私達よりも前に仮面ライダーがいた事を。
「レックス、計画は順調のようだな。」
夜の街を見下ろす屋上に、冷たい風が過ぎていく。
「ああ、貴殿がアナザーウォッチをくれたおかげで。」
そう言ってレックスはそこにいる白いスーツの男にアナザーフォースウォッチを見せる。
「弟のオームもそろそろ動き出す頃だろう。」
「アナザーワード、でしたね。」
「我も、行くとしようか…」
そう言うとレックスは、風に乗って行ったかのように消えて行った…
「…」
白スーツ男は、後ろに人がいることに薄々気づいていた。
「…盗み聞きとは、よくないですね。」
そう言うと、後ろから男が現れた。黒の上着の内側から緑のインナーが少し見えている。
彼の腰には、サバイブバックルがあった。
「…仮面ライダーウォーズ、山田康介さん。」
その男、山田康介は白スーツ男を見据えていた。
「親父が死んだタイミングを好機と見て活動を始めたのか。」
「それはそうですよ。彼はタイムマシンすら作ってしまう程の超人だ。警戒に越したことはない。」
白スーツ男は、康介に近づく。
「良かったですよ。君が父親に匹敵するほどの頭脳をお持ちでないようで。」
康介は鼻で笑うと、右手に持っていたウォーズキーを構えた。
「そうだな。確かに頭の良さなら劣るが、油断しない方がいい。」
そう言うと、変身シークエンスを始めようとした。しかし、男の腰に巻かれているものが目についた瞬間、動きが止まった。
彼の腰には、アルファサバイブバックルがあった。
「そのベルト…お前もアイツらの仲間か…」
「ええ。そうですよ。」
[ウォーズキー…][施錠…]
白スーツ男は「変身」と呟き、赤黒い牢獄に施錠、そして剣で切り裂くことで異形の姿へとその身を変える。
[仮面ノ絶望…仮面ライダーネガ・ウォーズ…]
錆びたような色の体、不気味に光る黒の複眼、左胸のマーク、黒く突き出た触覚。まさにネガのウォーズだ…
「ネガウォーズ…なんでまた。」
康介は既に2回ネガウォーズと敵対し、撃破してきた。今度はもう現れない、そう思った矢先の出来事に動揺を隠せない。
「変身者は1人じゃないんですよ。」
白スーツ男は、康介に迫る。
「何、またアナザーフォースが現れた?」
連絡を受けた朔弥が声を上げた。どうやらまたアナザーフォースが現れたようだ。
「僕達も行きましょう。」
「ああ」
3人のライダーは、アナザーフォースが暴れている地点に急いで向かった。
現地では既に何人かの隊員が戦闘に入り、アナザーフォースと共に暴れるホッパーを着実に倒していた。
既にライダーに変身していたアーサー達は、隊員達にホッパーを任せアナザーフォースに特攻する。
前に出たアーサーは剣をアナザーフォースに突き出した。彼はそれをメイスで押さえつけ、右脚で彼女の身体を蹴り上げた。
アーサーは、左に転がるが、すぐに体勢を立て直し、迫る。
アナザーフォースは、応撃しようと構える。そこを火縄の弾丸とホープの矢が接触、火花を散らす。
その攻撃に一瞬揺らぎ、下がるアナザーフォースにアーサーは一太刀入れる。
「よし、いける!」
アーサー、火縄、ホープは必殺技を発動させようと構える。
しかし、それを後ろから迫る大量の影によって防がれてしまう。
増援のホッパーだ。
「どこから来たんだ…」
火縄が、掴みかかってきたホッパー振り払おうと弾丸を頭に撃ち込む。
「この数、私達だけで対応できるのか…」
アーサーには3体ホッパーが行動を阻止するように迫っている。
「よそ見していいのか?」
その声に3人が注目する。アナザーフォースは地面にメイスを突き刺した。
すると周りを巻き込むほどの地割れが発生、3人に絡みついていたホッパーごと吹き飛ばした。
アーサー達は地面に倒れたまま、立てずにいる。
「そろそろか…」
アナザーフォースはトドメを刺そうと構える。
その時、ドスンと何かが倒れる音がした。
アーサーが顔を上げると、ウォーズが倒れ込んでいた。
「ウォーズ…」
そう呟いた声が彼に聞こえたのか、反応した。
「大丈夫か…お前ら。」
更にウォーズの目の前にはかつてフォースと異界の戦士が倒したはずのネガウォーズがアナザーフォースの隣に並んでいた。
「こんな所で会うとは奇遇ですね、レックス。」
ネガウォーズは余裕そうに言う。
「灰田…こいつはなんだ?」
レックスは男の名を呼び、ウォーズについて聞く。
「裏でコソコソやってたんですよ…私達の計画をかぎつけて。」
ウォーズが立ち上がろうとするところをネガウォーズは見逃さなかった。銃弾を撃ち込んだ。
ウォーズが倒れ込んだのを見たアナザーフォースがネガウォーズに聞く。
「こいつら、殺すか?」
「そうですね、もういいでしょう。」
アナザーフォースはメイスを構えた。
今度こそ終わりだ、そう周りが覚悟した。
「間に合ってくれ…」
そう誰かが呟いたと同時に、メイスは強大なエネルギーと共に振り下ろされた。
とてつもないエネルギーを纏った攻撃は、4人のその身に迫った。
その時、炎の絶壁が攻撃を抑え込んだ。
最初は、火縄が行ったと思った。しかし、彼は他のライダー達と同様倒れている。
その主が誰かはすぐに分かった。
炎の絶壁を操るように巨大な斧を持った戦士が立っていた。
その炎が消えていくと、攻撃をしたアナザーフォースが驚きの表情を浮かべていた。
「なんだと…」
更に、炎の戦士の隣にいた氷の戦士が、今度は氷柱のようなものを敵に発射させ、隙を作る。
敵が迫ろうとした時には、ライダー達の姿はなかった。