クィーンズ・ルール   作:よなみん/こなみん

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続き


刺客者

零とあった日の夜。俺は服装を整えていた。動きやすい服装を整え、帽子を被ると外に出る。フード付きのジャンパーを羽織り、下は完全にジャージのクソ陰キャの服だったが、別にモテたい願望もないのでこれはこれでいい。

 

莉亜はいつの間にか消えていた。優柔不断な奴だなとは思うが、あの言葉を思い出すと、いつどこにいても不思議じゃない。

 

外の様子を少しだけ伺う。周りには誰もいない。夜中にいるのはランニングするもの、戯れるもの達だった。

 

勇気を振り絞り、外に出る。もう少しで夏なのか暖かい空気が体全体に染み渡る。少し歩くと前とは何か違う空気が俺の頬を撫でる。そしてその後に来るのは生臭い・・・汚い臭い。普段なら絶対に嗅ぐことの無い非日常の臭いだった。その次に来たのは肉だった。初めはぐちゃぐちゃになった食べ物かと思ったが違った。そこに転がっていたのは間違いなく人間の肉だった。腐った・・・まるで何か毒にでもやられた内部腐敗による死亡だった。

 

不思議に思い。一回は「間違いかな」とそこから逃げてしまうが臭いが俺の後を追いかけてくるようにまとわりついてくる。まるで俺を逃がさないように。まるで俺を誘っているように。

 

そその臭いは変わっていった。初めは嫌な。まるで「死」を予感させるものだったがそれも次第に変わっていった。今度は死ではなく、まるで「生」の臭いだ。女性の臭い・・・。

 

俺は誘惑に負けてしまった。臭いに釣られて人気のない方に入って行ってしまう。

 

さらに臭いのする方向に進んでいく・・・完全に裏路地に入り、その臭いは桁違いに増していく。

そして奥、そこには巣のようなものが広がっていた。

 

「なっ・・・!」

 

直ぐに声を引っ込め辺りに身を隠す。まるで蜘蛛の巣のようなここは多くの人間が捕らえられていた。人間・・・中には〈異能者(フォーリナー)〉もいるかもしれないが。

 

その時、女性の悲鳴が聞こえた。しかし、悲鳴は継続はせず、聞こえると同時に消え去る。そして俺の足元にその叫んでいたであろう女性の首が飛んできた。最終的にその首は後に飛んできた謎の鋭いものによって回収されてしまう。

 

「なんだ・・・?」

 

うっすらと影が見え始める。長身に大きな女性の象徴。そして見事にくびれたボディが何より目を引いた。さらに1番目を引いたのは瞬時に伸び縮みするその腕だった。まるでムチのように詭弁に扱う彼女、時には人間の肉すら切り裂いた。

 

その速度は異常だった。異能者(フォーリナー)の補正なのか分からないがしかし、普通の人間には恐らく高速で目の前を何かが横切ったとしか認識できないレベルだ。気がついた時には死んでいる。というのが正しいかもしれない。だからここの人達から悲鳴が聞こえないのか。

 

「なんだ!?」

「あら・・・まだいるのね?それも上物の」

「っ!?」

 

その瞬間。無意識に俺の身体は動き始める。突然彼女とは逆の方向に走り、目の前にある鉄棒を掴み逆上がりをかましてみせる。飛んできたムチのような腕はそのまま戻っていってしまう。

 

・・・これはやばいのではないか?俺はまともに戦うすべを身につけている訳では無い。それに今回は完全に油断していた。慌てすぎて頭が正常に働いていない。

 

「・・・逃げなきゃ」

「どこへ逃げる。間抜けめ」

 

そう言いながら出できたのは莉亜だった。彼女は鉄棒に器用にぶら下がっているがスカートが捲れている。見たくない。

 

というより。どこへだと?そんなもの決まってるじゃないか。そう思ったが莉亜の言っている言葉を瞬時に理解する。

 

そう言えば〈異能者(フォーリナー)〉は身体能力をその異能(アクション)によって大きく変化させる。中には身体能力を一部低下させる物もあると莉亜から聞いていた。

 

そうこうしていると次の攻撃が容赦なく飛んでくる。ムチのような腕は俺のいる鉄棒を確実に掴んでくる。俺は急いで手を離しその下に降りる。足に大きく負担がかかるが気にしている場合ではない。そのまま路地の出口に向かって走り出す。

 

「あら・・・逃がさないわよ」

 

怪しくも妖艶な言葉と共に風を切る音が聞こえる。莉亜が同時に「伏せろ!」と声をかけ、俺の体を引っ込める。すんでのところで相手のムチのような腕は俺の顔を掠める。

 

あと数センチ。あと数秒遅かったら俺は・・・不安が頭を汚染していく。

 

「あっぶね!」

「愚か者!油断するでない!」

「お前は楽でいいよな!」

「わしも必死じゃ」

 

心の中で皮肉は言う。今はこの状況をどうにかしなければならない。俺は必死に相手の攻撃を避けながら光さす街中まで走ろうとする。少なくとも光のある街中ならきっと誰かは気づくだろう。

 

しかし、光が近づいて来たところで俺の足は止まってしまう。急に止まったので俺は衝撃でその場に倒れ込んでしまう。顔は何とか守るが胸や下半身・・・はかなり痛い。

 

しかし恐怖はそこからだった。向こうにいたはずの女がいない。おかしい。さっきまで鉄棒の上から手を伸ばしてきて・・・

 

「下じゃ愚か者!」

「―――っ!」

 

反応が遅れた俺は突然飛んできたムチを躱すことは出来なかった。そのままムチは俺の目玉を抉り、そのまま飲み込むように身体に取り入れる。そうすると手のひらのような所に目玉が浮かび上がる。

 

あまりの痛さに俺は悶絶した。体が声にならない叫びをあげようとするが俺は唇をキツく噛んで必死に堪える。噛みすぎて血が出るが目玉を取られた痛みよりはマシだ。

 

しかし俺の目から血があまり出でいない。綺麗な早業か、あるいはこれも〈異能〉の力だろうか・・・。

 

「・・・生きとるか」

「お前が生かしてるのか?」

「・・・当然じゃ。どれ、()()()()()()

 

俺の意識は黒に落ちる。まるで電源が切れたように意識が落ちるが・・・俺は次に起きた時は視界が変わっていた。

 

まず失ったはずの目が復活していた。左・・・左目はしっかり敵を捉えていた。そのまま体は俺の意志とは反対に敵に向かって突撃していく。

 

「向かって来るのね!威勢のいい子供が!」

「・・・行くぞ!」

 

俺はその手に剣を()()ながら目の前の敵に向かって走っていく。敵は女性。歳は・・・30ぐらいだろうか。体型は痩せ型だ。しかし、彼女のスカートの中から魔力を感じる。嫌な予感がするが・・・やるしかない。

 

まずは一閃。速攻で剣を振るう。走った速度で剣を振るい女の首を狙っていくが、ムチはそれをさせてはくれず、俺の腕を貫こうとする。

 

刀身を横にしそのままムチを切ろうとしたが突然固くなる。まるで木の大木に止められたように固く、そして頑丈で、そして湾曲している。

 

「何っ!?」

「〈薔薇庭の姫(ローズ・ガーデン・プリンセス)〉には勝てないのよ!愚かだと教えてあげるわ!」

「・・・硬いんだ。まるで百万の矢だな」

 

一本では矢はすぐに折れてしまう。しかし、百万も矢があれば、それは固く、簡単に折れることはなくなる。ようはそれの原理だ。あのムチも、恐らく多くの物質・・・ムチが集まってできたものだろう。

 

パターンをとにかく変えたい。その一心で反対に飛ばされる身体を無理やり立て直し、地面に足が着いた時には俺は次の攻撃を可能にしていたが、その前にムチが高速で飛んでくる。

 

下から飛んできたムチは高速で俺の剣を手から落とす。突然のことに俺は慌てて後ろに下がり相手から距離を取る。

 

「逃げないで?私の餌になってもらうから」

「ごめんだね。俺は生き残ってみせる」

 

新たに剣を()()し、その先で撃ち合う。

 

夜は明けない・・・、まだ今日は終わらない。

 

 

 

 

 

 

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