ヴィルヘルムスハーフェン校
ここは今、絶賛春休みである。
だが、とある教室では、定員オーバーレベルで人が集まっており、
椅子が普段は横一列八個なのに対し、十三個も並んでいる。
それに加え、縦七列なのに対し、十四列ある。
はっきりと言おう。満員電車に近い状態だと。
それでも黒板のある前方は比較的に空間がある。
そしてそこには、黒のトレンチコートを着て仮面を付けたロイがいた。
何故こうなったか、それは数時間前に遡る。
ロイ『それにしても暇だな』
ミーナ「・・・すまないが、儂は次の遠洋実習で日本に行く。
だから日本語で会話をしたいんじゃが、いいじゃろうか?」
ロイ「いいよー、それにしても、このシュペーって船、
本当に巡洋艦なのか怪しくなるレベルだよねー」
ドイッチュラント級装甲艦、
史実では全て沈んでいるが、それでもしっかりと活躍はしている。
28㎝3連装砲二基、15㎝単装砲八基、それに加え、魚雷を持っている。
ポケット戦艦とも言われるが、しっかりとした巡洋艦である。
ロイ「だが確か、何処かに弱点があったはず・・・」
ミーナ「そ、そんなことよりこっち・・・」
ロイ「何所行った、ミーナの奴」
思うのも無理ない。少し背を向けていたら、もうそこには姿がないんだから。
ロイ「おーい。ミーナ、どーーーーこ、いったあああ?」
ミーナ「すまない。こっちじゃ」
ロイ「落ちたのかよ・・・」
シュペー甲板から落ちて、その反応は無いと思ってしまうミーナだが、
それでも無事であることには変わらない。
ミーナ「すまない。足を滑らせてしまった」
ロイ「全く、ドジだな」
ミーナ「うるさい!!、だが・・・もし水が入っていなかったらと考えると・・・」
ロイ「それについては、運がいいな、お前って」
ドックでは水を抜いて作業をする。
そうしなければ普段海水に浸っている部分の整備が出来ない。
だが今日は機関部の点検のため海水が引いてあった。
もし水が無かったら・・・、恐ろしいことになっていた。
ロイ「これ羽織っておけ。寒いだろ」
ミーナ「すまない。今日中には返すよ」
ドイツでは春の到来が遅い。そのため3月下旬でも十分クソ寒いのだ。
ロイ「ああ・・・今日の昼前にはもう出発するんだ、
だからその・・・すまないが、次会う時まで持っていてくれ」
ミーナ「なんだ?、またドイツに来るのか?」
ロイ「いや・・・勲章は貰ったけど嫌われてるから来れそうにないな・・・」
ミーナ「確かに・・・そうだったな」
昨日の演習の後、ロイはドイツ首相から
黄金柏葉・剣・ダイヤモンド付騎士鉄十字章を授与された。
他にもドイツ軍で最高の称号であるマスターの称号も与えられた。
だがゲルマンマーメイドを壊滅状態にまで貶めたため、
ドイツで海岸都市に入ると、警察が護衛・・・というよりも見張りを付ける。
大半の市民も嫌っている。ロイの入国禁止を求め、失敗したが署名活動も行われた。
そんなため、必要最低限しかドイツ・・・というよりもヨーロッパには来たくないのだ。
ミーナ「しかし、コートが無いとワイシャツ姿か。・・・似合わないな」
ロイ「そこが問題よ。どうすればいいと思う?」
ミーナ「うーむ。新しいのを買うとか?」
ロイ「そうだな。正門前にいるから、シャワー浴びて着替えたら来てくれ」
こうした感じで海水に落ちたミーナにコートを貸したら、
自分のコートが無くなり、それの代わりに黒のトレンチコートを買って着たのだった。
その際ミーナが昨日の演習について疑問を持っている者が多いと知り、
急遽先日の演習のネタ晴らしのため、教室を借りたのだ。
ロイ『昨日の演習を見てきたとして話を進めるから、よろしくな』
こうして始まったネタ晴らし、主な要点は
・何故姿が見えなかったのか
・何故全ての艦船を沈めれたのか
・最後の発砲と潜水艦の爆発は何か
・そもそもどうして最後の最後になって再び姿が見えたのか
の主に四つとなる。
ロイ『一つ目、これは最後のとも繋がるから言うが、
あのスキッパーは海に潜れる。砲撃が当たる数秒前、
黒煙で視界を遮り潜航した』
テア『スキッパーで・・・潜航・・・』
ミーナ『い、異常すぎる・・・』
ロイ『二つ目はそれぞれのケースで話すか。
最初の戦艦3隻は底に爆弾をしかけて・・・ドカン。
巡洋艦と残りの戦艦は海中から魚雷を何回も叩き込んでドカン。
駆逐艦も同じだが、こっちの方が楽だった。
そして潜水艦は・・・耳だ』
テア『耳?』
ロイ『そう耳。潜水艦の機関から出てくる音を聞いて、
そこを狙って徹甲水中弾を発射。それで機関を破壊した』
ミーナ『滅茶苦茶過ぎる・・・』
ロイ『そうじゃないと、マスターの称号は貰えない』
冗談で言ったつもりだが、納得した一同。
その後コートは返すことが出来ず、トレンチコートで日本に帰国したロイ。
シュペー副長室
テア『そのコート、サイズが合わないが本当にミーナのなのか』
壁に掛けてある黒が基調で所々緑の線が入ったコートを見ながら言う。
ミーナ『いいえ、私のじゃないです。返せないから持っているんです』
テア『じゃあ誰のなんだ、彼氏が出来たとか、そういう話は聞かないが・・・』
ミーナ『マスターのです///』
テア『ロイのか!?』
始めは誰のコートか分らなかったものが、ロイのだと分かり驚くテア。
ミーナは顔を少し赤めて下を向いている。
ミーナ『この前、少し色々あって借りているんです』
テア『ああ・・・、だからトレンチコートだったのか』
ネタ晴らしの日、服装が少し違ったのを、少し違うのに変えたと思っていたテア。
ミーナ『それで、今回の遠洋実習は日本で、それで返せると思ったから』
テア『わざわざ寮から艦に運んだのか』
ミーナ『はい・・・』
テア『しっかりと、返せるといいな』
ミーナ『はい!』