ガウ攻撃空母
大きな部屋の中央にはまあまあな大きさの正六角形のテーブルがある。
それを囲うように立っているのは少年と二人の少女と黒い服の女性だ。
少年がテーブルのスイッチを入れると地球儀のホログラムが出てくる。
直ぐに大西洋に点が出てきてアベルと表示される。
その点は北極に向かって移動を始める。
ロイ「奴への尋問でアベルは今北極付近にいることが分かった。
幸いなことに北極には海底要塞がある。そこで漸減戦を仕掛ける。
主力の一部と要塞で長期的にアベルを北極に留めれる。
勿論一週間かそこらだがね」
真冬「では、我々はどうする?北極での戦いには間に合わない」
ロイ「不明艦の捜索だな。アベル達が北極に向かっているのなら、
南方で陽動作戦を実行している艦隊がいるはずだ。
となると目に留まる大型艦を使うだろう。」
真白「となると…残るのは武蔵」
武蔵、その一言でもう一人の少女、明乃は緊張する。
だがそれは、無駄に終わる。
真冬「いいや。トラック北方とアドミラルティ諸島で大型艦の発見報告が来た」
ロイ「武蔵は確定、もう大型艦はないからそれに近い物だろう」
真白「可能性があるとすればシュペー…」
ロイ「ソロモン海を索敵していた航空隊が撮った映像だ」
地球儀のホログラムは、六方向対応の映像を流す。
黒い海の中に一隻の船が航行している。
映像を拡大すれば黒い海は深海棲艦、船はシュペーであることが分かる。
明乃「これはシュペー…」
ロイ「つまり武蔵がトラック、シュペーがアドミラルティ諸島」
真冬「戦力を二分して一つは…」
ロイ「ああ。俺と晴風はシュペーを確保する。お前は武蔵を」
真白「改インディペンデンス級でも武蔵相手は無理です!!」
今後の方針が固まりかけたとき、真白が反対する。
相手は世界で二隻しかない46㎝砲搭載艦である大和型の武蔵。
一方は新型とはいえ小さな船。勝ち目などは無いに等しい。
ロイ「試験としてやるのも良かったが、場が場だ。
偵察部隊が来るまでの時間稼ぎを頼む。具体的には…」
真冬「…ゴクリ」
ロイ「武蔵の射程ギリギリを維持、部隊が来るまで耐えろ」
真冬「それだけか?」
ロイ「それだけだよ。…まじで、それだけ」
そう言ってロイはポケットから黒い球体を取り出す。
ロイ「部隊が到着したら白くなる。持っておけ」
渡し終えるともう一回ホログラムに目を移す。
ロイ「アベルが態々大西洋から北極に向かったということは、太平洋を目指しているはずだ。
武蔵も北上を開始するはず。こいつらが合流するのは恐らく…
そのため、ウォイルと軽空母とはここで別れる。
二人には援軍部隊襲撃をやらせる。流石に全ての深海棲艦が集まったらまずいからな」
決戦の場を予想する。それを聞いた後、全員は退室していった。
地球儀のホログラムは回転をやめない。
北極に向かう点は動くのを止めない。
――
ロイ「じゃあな真冬、試験前にくたばるんじゃないぞ」
真冬「そっちこそ、しぬんじゃねえぞ」
互いに毒を含んで言い合うが、その顔は互いに笑顔をである。
べんてんの姿が見えなくなってからロイは動きだした。
ロイ「横七は散開して捜索、晴風はアドミラルティ諸島に行く」
真白「どうしてです?、全戦力を集中させれば、シュペーはすぐに」
ロイ「…RATs感染艦と考えられる行方不明艦が、南方で立て続けに発見されている。
トラック程では無いが、上陸されたりRATsが広がると面倒だ。早急に手を打つ」
ミーナ「…」
ロイ「それに、シュペーには忘れ物をしているからな、取りにいかないと」
――
アドミラルティ諸島海域
ロイ「深海電探に異状なし。シュペーは見つけれたか?」
マチコ「いいえ。まだです」
まゆみ「…右舷後方の海上に、人がいます!?」
明乃「人?」
芽依「教官の知り合いですか?」
ロイ「付近で活動中の部隊はいないがなぁ?、見てくる」
志摩「うぃ?」
幸子「あれが罠で、既に包囲されてたら笑えないですね」
鈴「なんでそんな怖いこと言うの!!」
真白「だが本当なら一大事だ。警戒しろ」
海上で晴風に背を向けているのは、女性だった。
近付くにつれロイは、彼女が艦娘だと気づいた。
可笑しい。
陛下はこの世界に送る際、深海棲艦も艦娘もいない、とおっしゃった。
目の前にいる艦娘が誰か分からないが警戒をしといて悪いことは無い。
ロイ「動くな。砲を置いてゆっくりと回れ」
艦娘「んん?」
言ったが動かない。そこでロイは一度空砲を撃ち、もう一度言う。
ロイ「動くな。砲を置いてゆっくりと回れ!!次は頭を撃つ」
艦娘「ふふふ。今度は自分から頭を準備するのか、ロイ?」
謎の艦娘は、一気に振り向く。
その動きを見たロイは脚に撃とうとしたが、直ぐに横顔を見て銃を落とす。
ロイ「お前は…加古…」
加古「そう。古鷹型巡洋艦の二番艦、加古って言うんだ、知ってた?」
ロイ「加古…加古…」
銃に構わず加古の元に駆け寄り、抱く。
その瞳からは大粒の涙が流れ出ていく。
ロイ「この大馬鹿が、今まで何処に居やがった、探したんだぞ!!」
加古「うん...うん...」
ロイ「だけど、本当に会えて、会えて、会えて・・・」
次の言葉を言う前に、ロイは血を吐いた。
ロイ「ガッ!…どうしてだ、加古ぉぉぉ!!」
ダメージの理由は心臓が抉られたから。
そして抉ったのは、目の前にいる加古だった。
加古「やっぱ変わんないよねえ、会ったら直ぐに泣く所とか、18年前から成長していない」
ロイ「ガホッ、ガホッ」
加古「ウザイんだよね。何も考えてなくて。自分しか頭になくて」
ロイ「なにを言ってるんだ、加古。お前、なにかおかしいぞ」
加古「そういう所だよ。自分はなんでも知っているみたいな感じで、
ホントは全然わかってないんだよ!!」
視界が優れない。眼前の人物は誰だ。確か大切な人の様な気がする。
下を何故か見てしまう。見る気は無いのに。
何か黒い物が下から迫ってきている。それを隠すように青黒い水が垂れてくる。
しっかり見るため、霞む目をなんとか正常に作動させ、青黒い水を掻く。
見えてきたのは、黒と白が使われた、不気味な生き物。
何故かは分からないが、ホルスターに手を当て、本来そこにあるべき物を探す。
だが見つからないかったようで、次に腰にある中華包丁のような刃が長い物を持つ。
そして水中の不気味な生き物に刃先を向けて、引き金をひく。
その音で目が醒める。
ロイ「深海棲艦!!、加古、一旦ここは…加古?」
辺りを見渡すが、何処にも加古はいない。
ロイ「…帰投する」
――
晴風
ロイを置き去りにしてシュペー捜索をしていた晴風は、とうとうシュペーを発見した。
マチコ「シュペー付近に深海棲艦を発見。数11」
明乃「シュペーにも深海棲艦の護衛が。距離をとって。もし接近してくるなら退避する」
真白「一応、対深海棲艦用に改修されているとはいえ、危険です。もっと距離をとるべきかと」
芽依「けど、もし深海棲艦を見失ったら危険じゃない?」
幸子「確かに、もし潜水するところを見逃して急接近されたら」
鈴「じゃあ近付いても逃げても危険ってこと!?」
志摩「けど…まだどっちの射程にも…入ってない」
ミーナ「テア…、危険じゃが、シュペーを止める策ならある」
明乃「それって、今朝説明してた…」
シュペーにはかなり大きな弱点がある。
それはボイラーから蒸気を供給するパイプが露出しており、
ここを撃てば燃料が使えなくなるのだ。
史実ではこれが理由で自沈したと技術将校は語っている。
そのパイプは、対深海棲艦用に改修されていない晴風の砲でも充分に破壊できた。
しかし、武蔵や比叡程の火力は無くても、晴風には十分に脅威だった。
マチコ「深海棲艦が、こちらに向けて動き始めました!!」
明乃「急いでこの海域を離脱する。敵に牽制砲撃を行って」
幸子「牽制レベルの火力ではありませんがね」
真白「それはいいことだ」
鶫「ロイ教官から合流地点を送られました。第四戦速で30分です」
鈴「30分間、む、無防備になる…」
志摩「けど…11隻なら…何とか」
芽依「そんな心配しなくていいかも、あいつら戻ってく」
真白「私達を無視して…どこを目指しているんだ?」
明乃「…合流地点を目指す。第二戦速」