ハイスクール・フリート   若き人魚と転生者   作:ロイ1世

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題名を考える頭


行方不明の

合流地点

 

晴風は先に到着していたロイを回収し、シュペーを探す。

 

晴風 海図室

 

ロイ「シュペーと遭遇し退却。発見場所はここか」

 

ピンにシュペーと彫り、発見場所に刺す。

続いて無線を耳に当て、海図に矢印を書き込む。

 

ロイ「地元住民の報告を傍聴した所、南西に向かったようだ」

幸子「ソロモン海に固執しているように見えます」

真白「確かに、シュペーはソロモン海を中心に発見されている。 

 何か守りたいものでもあるのか。それとも…」

ロイ「奴らの目指す場所は多分サボ島及びフロリダ諸島南方、

 ガダルカナル島北方に位置するこの海峡だ」

明乃「ここに何かあるの?」

ロイ「…鉄底海峡、多くの艦が沈んだ場所だ。何があるかは分からない。

 寧ろ、この世界では沈んでない。なら何故行く」

幸子「…確か、何処かの直教艦が沈んだと聞きました」

真白「しかし、それが理由とは考えにくい。沈んだのは先月末だろ」

ロイ「取り敢えず、行ってみなければ分からない。

 晴風は海峡北西に向け移動を。こちらはガウ機動部隊を展開する。

 解散。敵はソロモン海海戦を再現しようとしているなら、夜戦を仕掛ける。

出来る限りお前たちは休んで当日に備えろ」

 

そう言って部屋を出たロイは、とある倉庫に行く。

他の部屋には無いカードキーによる施錠がされている。

カードキーを挿して開錠し、中に入る。

 

そこは黒い箱が積まれ、中心にはベットがあった。

しかしそのベットは普通の物ではない。

寝転がり縁のスイッチを押すと、何本もの管が出てきて刺さる。

管の中には緑色の液体が流れており、ロイの体に入っていく。

 

「マスター、入ってもよろしいでしょうか」

 

扉を叩く奴が来た。

声からしてミーナだろう。

ロイは体を起こして管を戻す。

 

ロイ「入れ」

 

その一声を掛けると扉は自動で開いた。

 

ミーナ「…マスター、シュペーへ突入する際に、ワシも同行させてください。

 艦長を、皆を、助けたいんです!!」

ロイ「晴風はシュペーと対峙どころか海峡突入もしない。

 よってその願いは叶わない。帰れ」

ミーナ「じゃが、何もしないのは耐えれん!!」

ロイ「何を言っても決断は変わらない。帰れ」

ミーナ「どうしてじゃ!!、シュペー内に凶暴化した生徒がいることは分かっている。

 じゃが、既に特効薬が開発されているならワシも力になれる」

ロイ「甘ったれたことを言うな!!、ガキでRATsの対処が出来るなら、

 今頃北極に跳んでいる。厄介なのは深海棲艦だけではなくて、RATsだ」

ミーナ「RATsが?、確かに直に触れると狂暴化し、電子機器を狂わす。

 おまけに集団が集まればネズミ算的に狂暴化する。

じゃがそれだけじゃないのか?」

ロイ「RATsの研究についての資料は既に美波教諭に渡した。

 詳しくは教諭の元に行けばわかる。だが決断は変わらない、覚えておけ」

ミーナ「失礼します。マスター」

ロイ「ああ、後。マスター呼びはやめろ。提督か教官にしてくれ」

 

医務室

 

美波「そういうことか」

ミーナ「ああ。早くその資料を」

美波「いいや、色々と含めて話したいからな。これを見てくれ」

 

そう言うと美波は冷蔵庫から青黒い液体の入った試験管を3本取り出す。

 

美波「これは深海棲艦の血だ。教官に頼んで提供してもらった」

 

一本の試験管をミーナに見せる。

深海棲艦に関する物は全て回収するロイだから、これは珍しい。

 

ミーナ「そっちの二本もか?」

美波「今から説明する。だがここから先は晴風全員が知っていた方が良い。

 私は資料を持って行くから、ミーナさんは教室の使用許可と皆を集めて」

 

 

――

美波「このAの試験管には先日、教官に提供された巡洋艦級の深海棲艦の血液がある。

 そしてこのBの試験管には、RATsの血液が入っている。

Bの方から報告するが、難しいと理解できないと思うので、ざっくりとしたものにする」

 

黒板に映写機を使って映像を出す。

 

美波「これがRATsの血液だ。この赤い物が赤血球。これは白血球。

 そしてこの緑色が、狂暴化の原因と思われるウイルスだ。

そして通常なら血しょうが流れているが、こいつにはない。

血しょうの代替物と思われるのはこの青いものだ」

 

映像には色々な物が記されている。

 

美波「そしてAの試験管、深海棲艦の血。Bと同じ青い血しょうの代替物がある。

 このことから、RATsに深海棲艦と同じ血が流れていることが分かる。

そしてこの青い血は、皮膚を鋼鉄のように堅くし、傷の治癒能力も高い。

何より一番の問題は、これが大量にあれば深海棲艦を作ることが出来るんだ」

麻侖「何を言っているんだ?」

美波「…RATsが沢山居れば、RATsだけで武装した深海棲艦が出来る」

洋美「輸血パックが幾らあっても人間はできない…」

果代子「相手はネズミ算的に増える鼠。つまり艦の中には」

美波「潜在的に深海棲艦がいる。それも沢山」

ミーナ「だから突入にワシを同行させてくれなかったのか」

明乃「あの~、Cの試験管には何が?」

 

一斉に注目が美波に向く。

興味を持った目で見られるが、美波の顔は暗い。

だが話し始める。

 

美波「これは、教官の血液だ」

真白「教官って、ロイ兄さんの!?」

美波「そうだ。そしてこれにもこの青いのが流れている」

明乃「ちょっと待ってよ…それってつまり、裕兄は」

真白「よしてくれ。確かに兄さんは強くて、復活する。だがそれだけだ。決して深海せ

ロイ「そうだ。俺は深海棲艦だ」

 

美波の発表で混乱が生じ、明乃や真白が否定しようとする中、彼は現れた。

 

志摩「うぃぃ!?」

芽依「嘘!!」

幸子「そんなことが」

 

床から、まるで染み出した水のように現れた。

 

ロイ「ミケ、お前の知る知名裕一は何処にもいないぞ」

明乃「えっ、何を言うの裕兄?」

ロイ「魂は知名裕一からロイ・ヴィッフェ・ヒドルフに代わった。

 肉体も艦娘を経た後、深海棲艦となった。さあ、知名裕一は何処に行った?」

明乃「あ゛あ゛」

ロイ「…明日だ。鉄底海峡突入時間は0300。晴風は北側でシュペー脱出を防止する。

 我々は東側からウォイルと軽空母と合流。奇襲を掛ける」

幸子「…御二人は別作戦の為、いないと聞きました」

ロイ「ああ。ウォイル達の目的はハワイ及びその周辺海域の深海棲艦の殲滅だったが、

 ウォイル及び隷下の第61ガウ航空隊の戦力では対応すら出来ない為、南下してもらった」

真白「…」

ロイ「それでは、おやすみ」

 

――

横須賀 ブルーマーメイド日本支部

 

真霜「以上が、横七主導で行われた比叡制圧作戦の結果よ」

「凄い。死者無しで戦艦を制圧…」

「RATs感染者も全員容態は安定しているらしいわ」

 

真霜「う、うん」

 

今この場は、比叡戦の報告が発表されていた。

比叡乗員及び晴風乗員に、死者はおらず、

鏑木美波の作ったワクチンは、RATs感染者を救った。

この結果は、ブルーマーメイドの士気を一気に向上させた。

 

何しろ、この一か月深海棲艦によってブルーマーメイドは、

ドック内に籠り横七の改装作業を待つしかなかった。

 

世界的に見ればまだましな方かもしれない。

           要求

米国は横七に技術提供を要請し、ホワイトハウスが一時占領された。

 

ロシアは横七支部を特定しようとして逆鱗に触れ、陸軍基地が爆破。

また海軍造船所と付近の道路が地雷原となり、作業が出来なくなった。

 

東アジアの某国は、深海棲艦との友好を目指し閣僚が海に出て行方不明、政情が不安定に。

 

国連は深海棲艦に戦いを挑み完敗。一部島国から撤収を開始した。

 

こうした中、情報開示はされていないが、改装されたのは日本のみである。

 

苦難を耐え忍んできたブルーマーメイドにとって、勝利の二文字は魂の欲するものだった。

 

真霜「ワクチン増産の目途が立ち、改装作業が完了しつつあるため、

 我々は行方不明艦の捜索活動に参加することになったわ」

「とうとう、べんてん以外も参加出来るようになるのか」

「長かった。けどこの一か月、シュミレーションで訓練は欠かしてないわ」

「カッコイイところ、見せましょ?」

真霜「横七からの情報では、全ての艦がフィリピンのマニラ沖に集まる動きを見せているそうよ。

 現在南下中の敵総帥アベルも向かっていると思われる」

「まさに地獄…」

「そんな中から子供を救うのが我々の仕事さ」

「全ての軍隊を連れていってマッニィラ♪」

真霜「私達は集結中の行方不明艦を各個制圧する。出来なかった分はマニラで〆る。

 その際は横七が深海棲艦を引き付ける。

この作戦は速度が大切である。索敵、移動、救助。

全てを速やかにこなして。尚、作戦名は『バーシアス作戦』。各員、一層奮起せよ」

 

 

ああ、そうそう。

因みに、比叡戦時にも作戦はあったらしいよ。

名前は、『ゲテモノカレー作戦』だよ。




わりかしまじ。

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