「ロイ教官が…燃えた」
「何故だ、あれに可燃性など無かった筈だ」
医務室にて驚きに包まれる二人。
しかし、伝声管から伝えられた叫びはそれを越えた。
「魚雷発射管が動いてるよ!!」
「水雷員、何をしている!!」
「私達何もしてません!!勝手に動いているんです!!」
「魚雷が発射しました!!」
――
科長がトリガーハッピーなことで有名なのが晴風の水雷科だ。
しかしその科長でさえあんぐりと口を開け絶句している。
つい先程起きた魚雷が勝手に発射された件。
当初はヒューマンエラーかRATsが疑われたが直ぐに晴れた。
水雷員はしっかり返事をしてきたし通信妨害が起きていない。
それに現在、魚雷は深海棲艦の間を縫って動いていたのだ。
この世には誘導魚雷という物があるが、晴風は搭載していない。
横七では通常魚雷の補給以外は水雷に関することはされていない。
六連装魚雷発射管もなしになった。
理由としては、そもそも横七があまり魚雷に関する研究をしてこなかったのが原因だ。
曰く
「魚雷使う?」
「いやー、ミサイルで良くね?」
「だな、初期艦隊は今のままでいいか」
のように必要性を感じなかったかららしい。
それ故に主砲は換装したが魚雷は対深海棲艦に適さない可能性大とされ外された。
一応一度だけ、一度だけであるが議題に挙がったことはある。
しかし夜戦に参加させる訳にはいかないし晴風は初夜戦でやらかし過ぎた。
兎も角、そんな高性能な魚雷は積んでいないのである。
「何処に向っているんだろ…」
「魚雷の進行方向には敵本隊と思われる巨大なのが10…20以上います!!」
「一本だけじゃ、無意味なのに…」
――
横須賀駐屯地司令部
「デルタ武器庫が陥落、後退に成功したスパルタンがα要塞にて指揮を執っています」
「α要塞って…もうすぐじゃないか!?」
「次にもう一度武器庫を挟んでいる、まだ時間はある」
「車庫を完全に守るにはこの司令部で止めるしかない、しかしこのままではじり貧だ」
横須賀の全体マップを見ながら司令官付き妖精は考える。
逆転の鍵である横八艦隊を直ぐにでも参戦させたいが、衛星兵器を破壊しなければ出落ちになる。
かといってそれを破壊する手段が何なのかに悩まされていた。
「重火力水上部隊では遅すぎて衛星兵器の的になるし到達できるかも怪しい」
「かといって航空戦力は敵の防空網を突破できるのかが怪しい」
「やはり数の差が厳しすぎる。横八を投入してでも破壊するべきではないか?」
「それをすると出落ちになる、だから如何しようと悩んでいるのだ」
立案担当は悩んでいた。それどころか会議は堂々巡りを始めていた。
「下水道などの比較的安定している場所に就いているスパルタンを使うべきか」
「それいいな、それをすれば刺し違えかもしれんが破壊できるやもしれん」
「馬鹿が、15人しかいないんだぞ。仮に1、1交換できても6つ余る」
「それに一部は第二戦線の武器庫で包囲されてるからな」
「下水道のも、あそこが突破されれば秒で横須賀は落ちますよ」
「もし提督が御無事なら、また特攻紛いのをすればいいんでしょうが…」
既にロイが晴風に収容されたことは伝わっていた。
勿論、火が付いたなど夢にも思っていないが…。
「あれを見ろ!!晴風が魚雷が撃ったぞ!!」
「マジか、只の高校生かと思ってたけど、勇気あんじゃん」
「伝声管の音を拾ったが、如何やら事故らしいぞ。水雷員はなにもやってないらしい」
「てかあれ、魚雷が深海棲艦を避けて進んでるぞ」
その声を聞いてスクリーンを見る。
本当に魚雷が深海棲艦を避けて進んでいた。
それを見てとある妖精が閃いた。
「分かったぞ、ゴーストを使うんだ」
「ゴースト?」
「確かに魚雷並に速いが空爆を受けたら一溜りも…そういうことか」
「どういうことだ」
「航空戦力で敵の注意を引きつつ爆撃機などを墜とす。
一方でゴーストが最高速度で突進。衛星兵器を破壊する」
「待て待て、第一に航空戦力なんてあるのか?」
「ありますよ、それも沢山」
「ッ!!副司令官、いつお戻りに…」
「今です。航空戦力ならば横八艦隊と横須賀のを除いてもかなりあります」
「環太平洋一帯は深海棲艦の攻撃を受けていない…そういうことですね」
「はい。旧式の航空戦力全てを用いてでも破壊しなさい」
「勿論です、プロですから」
環太平洋一帯、つまるところインド洋と大西洋に接していない全ての土地の部隊の使用を許可された。
これならば、物量に勝る深海棲艦に一泡吹かせれる。
如何に旧式とはいえ、それはバンシーとフェートンなどに比べれば、だ。
必ず勝てる、負ける要素は空気中の二酸化炭素濃度よりも低い。
立案室処か司令部全体まで戦勝ムードが溢れ始めていた。