ハイスクール・フリート   若き人魚と転生者   作:ロイ1世

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黒い海の中心で

本隊の中心で、私は今までのことを思い出していた。

 

前世では不俱戴天の敵をあのババアだと思っていた。

何せ未来を確実ではないが予知し、人望も実力もあった。

まぁ、宣伝工作によって容易に蹴散らせたのだが、仕留めることは出来なかった。

 

しかし今はそれも違う。二人いたのだ。

二人目の不俱戴天の敵はロイ・ヴィッフェ・ヒドルフだ。

前世でも、人間の癖に深海棲艦を容易く皆殺しにしていた。

初めてその情報を知った時は幾分か先の超科学力で武装した人間と思ってはいた。

しかし、実際に対面して分かった。自ら選んだ護衛を倒され痛感した。

 

こいつは、あのババアと同じ強敵で生かし続けるのは愚策だ…と。

だがあの拠点では勝つことは出来なかっただろう。

サシでの勝負において、一番拙いのは相手の実力を測っていないのに戦う事。

だから陛下近衛部隊と交戦予定の艦隊に合流した。

 

これはババア+ロイという最悪タッグを組まれる可能性があった。

しかし精強な部下を連れていれば問題ないと思っていた。

現実は、ロイとその一味のみだけで殲滅されるというものだったが。

 

重要なのは今世だ。何故かは分からないが私は転生に成功した。

肉体はダメだったから、恐らく魂のみと思っていたがそれは杞憂に終わった。

 

幸いなことに、部下も連れていたし他の深海棲艦はいない。

最初の不俱戴天の敵がいる王都も確認されなかった。

 

なので、ここで慢心せず真の不俱戴天の敵を排除した。

具体的に言えばロイ・ヴィッフェ・ヒドルフの抹殺である。

部下がドイツでヒドルフ家を探し、見つけたら誕生日に家目掛け砲撃する。

誕生日にした理由だが、調査によって富豪以外は家で過ごすのが当たり前らしい。

パーティーで家に招くことはあっても他人の家で行わないように。

 

結果としてはやりすぎた。

砲撃を戦艦6人で何回も斉射したので遺体も消し飛んでしまい死亡確認が取れなかった。

まぁ、遺体になっている時点で確認するなど無駄だが。

 

かくして私は不俱戴天の敵を破り後は人間に化けた部下によって地球の女王になるのを待つだけ

 

 

の、筈だった。

 

まさか、ロイが生きていようとは。

ブルーマーメイドに入ったことで察知できたが、如何やってあの砲弾の雨の中生き抜いたのか。

 

謎だ…謎ばかりだ。

 

奴が自前の潜水艦を持っているということは、きっと艦娘や妖精がいるのだろう。

それはつまり、大規模な戦争の勃発を…違うな、休戦状態が終わるだけだ。

 

最後に砲を使ったのが8年前だった―それも6人だけで全体は10年前の前世が最後―我々は急ぎ訓練をした。

作戦記録映像から奴は昔には劣るが今の我々には勝ち目のない程の実力を持っていた。

一度、ドイツの協力者に演習中に事故として殺すよう命じたが、返り討ちにされた。

 

兎も角、8年かけて訓練をした我々は、RATsという憎きアメリカ製のB.O.W.も使い挑んだ。

結果は劣勢というよりは惨敗の方が正しい。

部下には散々勝ってるよな、と迫ったが現実位見ている。

 

我々は生命力と元からある力に物言わせただけの、脳筋集団に過ぎない。

スペードも元は海底に廃棄された某国の巨大空母を弄ったにすぎない。

 

それに対し相手…横七は肉体は脆弱だがそれを補う科学…知性で戦っている。

機械の兵士は鋼鉄の体である我々にすら勝る肉体で、そこに武器を持つ。

 

大昔の人間は槍や弓で武装しマンモスを狩っていた。

しかし横七はマンモスと同じ力の人間を銃で武装しマンモスを狩る。

例えるなら、まさにこれだろう。全く、ふざけたものだ。

 

ジリ貧で負けるのは確定しているから、北米を統括している奴にロイの遺品を直させた。

これは王都捜索中に発見したものでスーツと隕石―のような衛星兵器―を手に入れてた。

 

スーツは期待外れであったが、衛星兵器は大当たりだった。

元々は北極を突破する為だけの付添い艦隊が、余裕で太平洋に入れた。

これもあの青い光の束がSoFや海底要塞を破壊したからだ。

 

そうして、今私は地球の女王の椅子―になる予定の―に座っている。

ロイを失った横七など赤子でも捻り潰すことが出来る。

魚雷が一本守りを突破した迫っていたが、結局消えた今、脅威など存在しない。

前世の世界へ行ける方法を探し、舞い戻ってもいいかしれない。

 

だがそんな妄想は空気を読めない部下によって打ち壊された。

 

「敵機襲来!!全方向より大規模な航空隊が接近中!!」

「チッ、今更航空戦力を投入しようが既に大勢は決した。無駄だというのに何故抗う?」

「各員対空戦闘用意、機動部隊は発艦を急げ」

「戦艦、重巡洋艦に命令。レーダーを対空仕様に換装、徹甲弾は三式弾に変更せよ」

「いいのですか?敵の水上部隊をまだ撃滅していませんよ」

「横七の水上艦は潜水艦隊に一任する、それに航空機はロイの次に脅威よ」

 

速くて当てにくくて見つけにくい、その癖破壊力は戦艦よりも上。

それが横七の航空機だ。

 

大西洋にいた頃、この世界では初の空母のみの航空戦が行われた。

私達も横七と同じ数揃え、練度も高めた。戦術も一番勝率の高かったのを使った。

それで挑んだ航空戦はキルレ240。

一機も撃ち落とせなかった。それなのにこっちは全滅した。

更にはおまけと言わんばかりに空母を襲われ、海に沈んでいった。

 

あれを数値化するなら、対空は三桁を越えていても可笑しくない。

 

しかし今いるのは幸いなことに旧式、前世でよく見たレシプロ機だ。

数は我々以上にあるが、こちらには熟練の精鋭航空隊と破れない防空網がある。

苦戦を強いられても、味方撃ちしなければ勝てる。

 

「第一波と交戦中の友軍機から善戦中との報告あり」

「数機抜けたそうですがツ級ラインにて撃墜したとのことです」

「このまま続けなさい、陸戦隊、調子はどう?」

「第三大隊が敵司令部の手前まで進軍中、後続を待って仕掛けるようです」

「ありがとう。偵察本部、横七本島の大まかな位置は掴めた?」

「はい、南太平洋で浮島を見たとの証言を得ました、恐らく横須賀を目指しているかと」

「…陸戦隊に直ぐに終わらせるよう伝えて」

 

かの島がどれ程の戦闘力を有しているのかは全くもって分からない。

だが頭を過るのは横須賀でのSoF戦という一方的な虐殺。

 

きっと空を飛べる要塞なのだろう。

かつて空の要塞と謂われた軍用機と比べるとそれが小石に見える位に。

それがここに来たら逆転される。

横七本島はゲリラと化した横七の拠点として戦わずに終わってほしい。

 

「高速で迫る物体が3機、水上レーダーが探知しました!!」

「潜水艦隊、出番よ」

 

応答がない。

 

「聞いてる!?潜水艦隊、直ちに水上目標を撃破して!!」

「来ます!!」

 

水飛沫を派手に纏いながらスキッパーに似た何かはやってきた。

 

「撃て、撃て、撃てえぇーッ!!」

「突破する、速度を上げろ!!」

「もう限界に近いですよ!!」

「それでもだ!!」

 

護衛と指揮組が機銃掃射をするも弾よりも速いのか一向に当たらない。

それらは風の如く場の空気を変え、去っていった。

 

私は部下を怒りを孕んだ目で見る。

 

「なんだ今のマヌケな戦い方は、それで護衛が務まると思っているのか!?」

「申し訳ございません、何分、レーダーとの連携が取れなくて」

「レーダーが無ければ戦えないのか貴様らは!!」

「おやめください。対空モードのレーダーを発動していると銃口が上がってしまうのです」

「それを乗り越えてこそ一人前だろうが、お前らよりも人間の方が腕は良いぞ!!」

 

釈明をしようとすればそれだけ私の中に怒りが溜まる。

 

対空レーダーによる銃口の上昇なんて訓練生でも知っているし対処できる。

無能しかいないのか、ここには。

 

「兎も角、あの連中が目指すのは衛星砲群でしょう。あれの破壊が目的の筈です」

「だったら直ぐに砲群護衛隊に連絡しなさい!!」

「していますが…既に戦闘状態なのか応答しないんです」

「高速の駆逐艦群を増援に送ります」

「間に合うものか…」

 

そう呟き、衛星砲がある方角を見る。

 

やはり、黒煙が天に向かって伸びている。

波も爆発の衝撃を受けて荒いものがやってきた。

 

「空を見ろ!!一帯が黒く塗りつぶされているぞ!!」

「全員、あの黒に向けて砲撃しろ!!」

 

あの空を知っている。

アスンシオン島海域で見た空だ。

 

中から何が出てくるかは分からない。

しかし大方の予想は付く。横七の増援だ。それも沢山。

 

今回のはSoFのよりも大きい。何十倍もある。

 

始めはオレンジと白の浮遊物が外周に現れた。

次にそれらよりも内側に各地で見かける横七の輸送機を見た。

そしてSoFが8隻、中心を囲うように顔を見せる。

 

既に地獄なのだ、やめてくれ。

衛星砲が破られた以上SoFを墜とす手段がない。

 

しかしそれを嘲笑うかのように、中心からもう一隻現れた。

 

それはSoFよりも巨大だった。

まるで艦隊の旗艦のように堂々と居座っていた。

 

残党狩りが始まった。

私達、新深海棲艦という少数派を絶滅させる狩りが始まった。

既に退路は絶たれ、前進するしか道は無くなっていた。




Q.如何してアベルはロイを殺して慢心してたの?

A.アベルが恐れる程強いので知ってるのがロイとSoFのみ。
 SoFは横七の象徴的存在で一隻のみと思っていた。
 その為北極で沈め脅威はロイのみに。
 ロイも自爆してバラバラになって死んだと思っている。

尚、現実はSoFは数隻いてそれよりもでかいのはいた模様。
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