忙しすぎてウィークリーすらギリギリなのにイベントをやる余裕なんて無いYO
勝ち取った日常
「夜戦の際に気を付けることは目立たないこと、砲撃とかな」
晴風の教室で黒板に文字を書くのは、我らが教官ロイ兄さんであった。
――
横須賀決戦のあの日、かなり消耗したが我々は勝った。
まさか他の深海の死骸と一体化して津波のような化物になるとは思わなかったが…。
晴風に積んでた弾薬と分解システムが上手く噛み合って一撃で倒せたときは驚いた。
何せ津波擬きが見えた瞬間、インフィニティに砲撃を要請してたから、弾が無駄にならなかったのを喜ぶとしよう。
さて、問題はその後だ。
まず決戦中に起こっていた面倒事から。
これは二つ。
一つは日本の陸軍的存在―と言っても予算と人員の都合で要所だけの―国防隊が横須賀に多めに配属されていて結構な死者を出したとのこと。
これは流石に「可哀想に…」で済ませる訳にはいかないので小銭(40億相当)程度は資金と資源を提供した。
今まで気付かなかったが、如何やら凄い嫌われていたみたいで、輸送用のペリカンが対空射撃を受けるという事態に発展したが無意味だと分かったのかすぐ終わり、取り敢えず物資を投下して帰った。
後日、感謝の言葉と謝礼の日本刀が送られてきて実は結構嬉しかった。
癪だったのは二つ目だ。
横七の戦闘を録ろうとした民間人やマスコミが避難せず死亡。反撃に成功して埠頭まで進む部隊に取材しようとして砲撃に巻き込まれ死亡。帰ってきたばかりの晴風に乗ろうとしてセキュリティーに引っ掛かり灰になって死亡などだ。
はっきり言えばどいつもこいつも馬鹿げてる。頭が飾りみたいだ。ノックしても誰もいなさそう。
探求心や知識欲などには感服するが知性が劣り過ぎている。
火事現場の取材をKEEPOUTの外からするのは分かるが中に入ってはしないだろう?彼らはそれを戦場でやったのだ。
確かに、日露戦争以来の戦争、それも見れる所となれば行きたくなったのかもしれない。
しかしあまりにも考えが足らなさ過ぎた。
・・・本題に移ろう。
ここまでなら欲に負けた馬鹿共と内心毒づくだけだが、何故か裁判を起こそうとする輩がいる。法律には余り詳しくないが人を死地に誘ったからとの理由らしい。
学校宛で示談に関する電話やFAXが来ていたらしいが、再建で忙しくその場にいなかった。まぁ、仮に居ても直ぐに切るし火を点けてた。
学校が燃えたかもしれないと考えるとシュレッダーで済ませるよう努力しようと思う。
既に半月経っているので裁判が現在進行中、私は爆撃を計画中。
理由は、横七協力条約で責任の一切を負わないことを認めさせたからである。それに散々、戦闘現場に向かわないこと、避難すること、それで死んだら自己責任と伝えているのだ。
爆撃はやりすぎ?そう思っていた。もし次にクレームが来るのが10分後だったら容赦なくやるが。
では終わった後の話だ。
取り敢えずニイハウ島に生き残りが集結してBM本部が瓦礫の山になった。
と言っても決戦の時に遠くにいた補給艦などが中心の為、直ぐに討伐できたが、やはりクレームが飛んできており、アメリカの大西洋から避難してきた艦隊と引き籠っていた艦隊は全て潰されたため、職務怠慢との怒鳴り声が電話から響いている。
死者も沈んだ艦も沢山いるので援助しようかと思ったが、大統領と国防省長官の顔を見てやる気が失せた。
どうせあの国力なら何もしなくても大丈夫だろう。寧ろ維持費が減って大助かりかもしれない。仮想敵国(ロシア連邦)は国内のコミュニスト潰しで余裕がないから大丈夫だろう。
次に決戦前に戦力の集中を防ぐ目的があったとされる各支部同時攻撃で戦力がすっかり減ってしまった。
それによって世界各地に支部を展開することが不可能になってしまい撤収作業が始まったこと。
幸い深海棲艦を滅ぼし既に用は無いため躊躇いはなかった。
それに伴い日本でも撤収作業に入っているが、少し遅れている。理由は後で。
兎に角、撤収に伴い本島の拡張工事が急ピッチに進められている。だが海兵隊の死者数が多過ぎてそこまで必要ではなく部屋を少し付け足せば問題はなさそうだ。
一番問題になったのは今後の事だった。
既に当初の目的を果たした横七は特段存在理由がない。だが諜報部から我々を狙う集団もいるそうだから解体ができない。鉄砲玉を倒すのは楽だが永遠に来られては疲れる。組織の中枢を潰さねば。
そのおかげで横七は具体的な立場を示さねばならなくなった。
国家か、武装集団か。
結果としては国家であると宣言して新たに外務部が設立した。
だが仕事は少ないだろう。国交を樹立するのは日本と余裕があればドイツだけの予定だ。
横七が大きく関係している企業は五万とある。だがそれを公表すると面倒事にしかならないのでしない。
既に協力条約を締結していた日本とは戦後の事を考えて幾つか更新した。内容はあまり変わっていないが、『発効から10年間、日本国が攻撃され危機的状況に陥った場合全力で支援する』が大きなところだ。
各駐屯地は既に即応の航空隊を損失しており半ばこけ脅し状態だ。
だが完全撤収は更新してしまった手前、やれば大々的に非難される。
結局のところ、散らばっていた駐屯地を横須賀、呉、佐世保、舞鶴、名古屋などに集結させるしかなくなった。
必要な人員削減に効果はあったが兵器類の不足が深刻化し横八艦隊の解散すら議題に挙がる程だ。
しかしこれらのことは未来を思えば大した問題じゃない。
何せ今は加古がいるんだ。
希望があるだけでこんなにも世界が変わるのなんて信じられなかった。
まぁ、今は本島で書類仕事に頭を抱えているだろうが…。
「天津風艦長、この場合はどうするべきか、わかるか?」
「は、はい!!小型艦で大型艦相手の戦闘を行う際は日が沈むまで捕捉しつつ逃走、夜戦を行います!!」
「よろしい、では次の実習で武蔵を所属不明の大型武装艦と仮定して戦闘を行う。再来週までに戦闘計画を提出しろ。以上だ」
一部から悲鳴を含む叫び声を聞きつつ授業の終わりを宣言する。時間がちと余ったな、まぁ課題分のサービスということにしよう。
「教官、課題のことで幾つか質問が…」
武蔵艦長の我妹、知名もえかが扉に手を掛けた私を止める。
「すまないが、これから爆撃をするかの判断をしなきゃならんのだ、またな」
「ちょっと待ってください!!」
「明日は昼から図書室にいる。そのときに聞いてくれ」
廊下の窓から飛び降り、職員室の私の電話を取る。
電話を切って無線でジョニーに二言三言伝え横須賀の駐屯地に帰る。
明日から休みに入り、終われば期末試験だ。実習担当の私はアベルの所為で授業数が足りずおじゃんとなった。
本当は横須賀からも離れたかったが妹分達の事と真雪さんから既に給料を頂いていたので帰るわけにはいかなかった。何より妹達を可愛がる心が生まれたのだから更に離れれない。
「おっ、もうご飯できてるよ」
駐屯地の私室に行くと、ワームホールで先に来ていた加古が机にご飯を置いていた。
ブランクの所為か元の腕前が悪いのかは知らないが、あまり食欲を注られない。が、食べない訳にもいかないので料理に対する作り笑顔と日常に対する本物の笑顔で食べる。
翌日、アメリカの国防省と日本の横七を許さないの会の本部に尿意を意識させる効果のあるガス兵器を使用した報告を私は腹の痛みと戦いながら朝方のトイレの中で聞いた。