二月革命を起こし帝国政府打倒を目指すも、同盟国との講和が難航、協商国も東部戦線の存続の為、アメリカとイギリス(植民地軍)が中心となって派兵。結果的に西にドイツ、北に米英、各地に帝国政府軍と戦線が複雑になる。
結果としてはケレンスキーが同盟国とブレストリトフスク条約を結び大戦から離脱。協商国にも当時の国家予算の2倍に当たる大量の資金援助を行うことで撤兵させ、帝国政府を打倒する。
生活は戦時とあまり大差ないが平和を手にしたことで不満は溜まるも特に成果を挙げれてないソヴィエトよりは人気が集まる。
しかし同年10月、ソヴィエト派閥の軍が臨時政府寄りの軍事基地を襲撃したことで十月革命が始まる。
赤軍VS白軍の戦いは互角だったものの、労働者の大半に支持された赤軍は物資が潤沢()だったが、白軍は枯渇気味だった為、最終的に赤軍が勝利する。
しかし、死者が大戦におけるロシア軍の死者とそう大差なく、モスクワなどの大都市での戦闘で民間人が多数死に、野砲による砲撃が降り注いだ結果住宅街や工業団地が吹き飛んだ為、ソヴィエト連邦は成立したものの支持者は少なかった。
1942年、前年に発足したNKVDとスターリンの大粛清に対し各地で暴動が発生。翌年、暴動勢力が団結しロシア連邦が発足。『ロシアにおける唯一無二の正当な政府』としてソ連に対し宣戦布告(ソ連内戦)。米英仏伊独がヒトラーの進言の元、ロシア連邦に武器をレンドリース(イギリスに至っては植民地軍を派兵するかが議題に挙がる)。
1944年にモスクワ・クレムリン宮殿が陥落し、書記長が自殺したことで内戦が終了、翌年3月にロシア連邦は首都をモスクワからサンクトペテルブルグに移す(モスクワの復興が完了した3年後にモスクワに遷都)。
ソ連は各国に支部を結成させ革命を扇動していた。中華民国や東欧では革命による内戦が勃発するもソ連内戦によってソ連が消滅したことで援助が無くなり革命は失敗、成功しても短期政権として終わる。
世界的に見れば共産主義はここで途絶えたように見えるが、革命発生国家は共産主義者が暗躍し年に数回、それ絡みの事件が発生する。
今回の第二次深海戦争(RAT・深海事件)で政府が弱ったことで活動が活発化しており該当する全ての国家は頭を抱えている模様。
「さー、早いとこ済ませたいんだ、正直に言えよ」
「分かってるってば」
横七本島の一室では朝早いにも関わらず業務が始まっていた。
――
RAT事件と第二次深海戦争の影響で横七の活動と横女教員としての活動が大変で、やりたかったがやれていなかった加古への審問をやっている。
できることなら横須賀の駐屯地でやりたかったが外で活動家が騒いだり、何処の者とは言わないが諜報員が侵入を狙っている為、万が一を考えて本島でやっていた。
簡単に終わるならもかに謝らずに済むのだが、もしも長引いたらワームホールの時間を考えて少し遅れるのかもしれない。
「横須賀…いや、あの空で出会うまで、一体どこにいた?」
実の所一番疑問に思っていたことだ。授業中にも考えてしまい誰かから「成績を付けられてる」と言われ、頭を振って離そうとするも数秒後にはまた考え始めてしまう程に。
横七が再結成してから活動の主軸となっていたのは二つだ。
『深海戦争を有利に進める為、技術開発及び軍の増強』と『加古の捜索』だ。
自慢ではないのだが横七の偵察機及び衛星は世界中どこでもリアルタイムで見れる。アベルらを発見できなかったので信頼性は低下しているが、それでも水上や空中、地上の人間を見つけるのは容易い。艦娘=深海棲艦なので常に海中にいる可能性もあるが、加古の性格上それは考えられない。
「えーっと、実は伝えにくいんだけどずっと一緒にいたよ?」
「は?」
「実は…」
一つの肉体に二つの魂があって、それが俺と加古…。ある種、二重人格とも考えれるか。
しかし、こちらとしては頓智をやられた気分だ。同じ肉体にあるから離れてないよねと言いたいのか?陛下やその御友人方は一休さんとも仲がよろしいようで。
「待てよ、じゃあ如何してあのタイミングで来たんだ、自爆して死んだ後だぞ?」
「だからそれが伝えにくいんだって!!」
睡眠、そう、睡眠ね。
人の体の中で18年間も眠り続けていたと、そういうこととおっしゃりたいんですか、奥さん…。加古らしいと言えば加古らしいが生命の危機を感じて目覚めるとか下手をすれば一生…なんでもない。
「…以前に続き本島で事務をせよ。但しジョニーは別の仕事を行う為手伝いはなしだ」
「え、ちょっと待っ」
「それでは、物の準備をしなければいけないんだ」
「事務仕事はしたくないよー」
――
横須賀 図書館
本を読む姿が似合う人と似合わない人がこの世には存在する。例を挙げれば眼鏡を掛けた少女と筋肉の強化外骨格を付けている大男が本を持っているとしよう。どちらも存在するだろうが、絵になるのは前者だ。
そして私は兄のことを後者だと思い込んでいたのだが、驚く程に前者だった。華奢で顔もいい。ミケちゃんから横須賀に数日滞在している間に何度も告白されたらしいが、玉の輿狙いではないのも幾つかはあったのだろう。どちらにせよ実らなかったらしいが。
「ねえもかちゃん、これどうする?」
ミケちゃんのいう『これ』とは、本を読みながら寝ている兄の事である。
寝ているのにも関わらず、開かれぬ瞳はしっかりと本を捉えていたし、ページを捲っていた。起きているのかと疑うも寝息から本当に眠っているのだと分かる。
「起こす?」
「うーん、ちょっよ待ってみようよ、起きるかもしれないし」
テストの勉強を行う。分からない問題があればお互い聞き、それでも分からなければ本を探す。数十分はこれで大丈夫だったのだが、とうとう分からない問題がきてしまった。仕方がないので揺すって起こす。瞳が一瞬で開いてこちらを見つめられたのでとても怖かったが、直ぐに優しく声を掛けてくれた。
「如何した?上院議員のスキャンダルでも掴んだのか?」
少し寝ぼけているようだが、問題ないだろう。
それからは、分からなかった問題を聞いて、答えてもらっての繰り返しになっていた。だが、ふと疑問に思ってしまったので聞いてみた。
「そういえば…教えちゃって良かったの?不正とか言われない?」
隣でミケちゃんが目を丸くしていたが、兄は微笑んでいた。
「俺は他の先生の作った試験の内容を知らないからな。仮に知っていても答えてないんだ。例えるなら、試験に水の元素記号を書く問題があったとしよう。ある生徒はそれを覚えてなくて先生に聞くんだ、『水の元素記号を教えてください』って。これを答えたとしても、試験中じゃなきゃ何も問題ない。まぁうちらは血縁関係やらなんやらでも少し複雑だがな」
納得できるような納得できないような話をしてくれる。なのでここに呼んだ一番に聞きたかった質問をぶつける。
「再来週に模擬戦をやるみたいですけど、私達武蔵乗員は全てに参加しますか?それと晴風はどうなるんですか?」
やや引き攣った笑みを浮かべた後、答えてくれる。
「前者だが、参加したら点数をあげたいが、時間の都合上同時進行になる。勿論もか達もやるが、一回だけだ。他の艦の相手は横七で用意する」
何となくは分かっていた。今回の一件で授業回数が不足している。実際に兄の担当する科目のテストは消えた。その為無駄に延ばすことはできないので、同時進行という方法は一番適していた。方法は分からないが。
「ミサ達晴風だが、まだ分からん。参加できるよう準備は進めているが校長や理事会とかから許可を貰わんとな。だが必ず参加できることは確かだ、安心しろ」
安心しろと言われても、出来ないのが実情だろう。
晴風は横須賀決戦で沈んでしまった。その為、晴風組は直教艦なしで、座学中心の特別カリキュラムが作成されている。サルベージや代替艦の話はあるのだが、搭載してある横七関連の技術を欲する存在が妨害したり、横七との細かい話し合いが済んでいないなどで、現実的だが難航しているとミケちゃんが零していた。
その為当初は代替艦案で決まりだったのだが、ロイに教えを乞おうと世界中の学校から留学を希望する旨の連絡が相次ぎ、横須賀にそれだけの数の艦艇を収容できるドックが無いため、代替する予定の陽炎型航洋艦は留学生用になってしまったと晴風の副長さんから聞いた。
「もうそろそろ夕方だ、何処かにご飯食べに行くか?」
「うーん、寮で食べたいかな」
「如何して?」
「今日は兄さんが作るんだよ」
「ああ…そういうこと」
余談なんだけど、この後ハヤシライスを作ってくれた。久しぶりに食べた兄のハヤシライスは、量や具材の切り方などは変わっていたが、味の方は昔と同じ優しくて甘くて美味しかった。
それと片付けをしている時に、横七の加古を名乗る女の人(ミケちゃんに聞いたら、兄さんのお嫁さん。つまり私の義姉さん!?)が泣きながらやってきて、カレーを強請っていた。