「おーい、ロイ。これってここでいいのか?」
「ああ。ここまでの曳航御苦労、ウォイルもいるのか?」
駐屯地の自室にやってきたのは、決戦以降各地の深海棲艦残党を狩るため世界を縦横無尽に駆け回ったレ級ことレイだ。普段は上司?のようなヲ級ことウォイルと一緒にいるが、この部屋にはレイしかいなかった。
「ウォイルなら本島で執務をしているぜ」
「あのバカ…あれだけ他人にやらせえるなと伝えたのに」
「まあ落ち着けよ、お前暫く会えてないんだろ?」
返しに困り俯いてしまう。最後に会えたのが観艦式の前。それからは対米戦や事後処理、アーノルド大統領と約束した赤色帯や海賊、テロリストなどの問題解決の為、作戦司令室に籠ったり時には艦隊を率いたりと忙しくて構ってられなかった。
最近は落ち着いてきたのでこうして横須賀に戻っているがそれも今日の事だ。
「ウォイルが執務を代行したんだ、ごゆっくり~」
「はっ?」
言ってることの意味が理解できず、レイの退室を見届けてボーッとしていたら、扉が叩かれる。
普段の様に入れと言って訪ねた主を見る。
「あの…夜分遅くだけど…迷惑じゃなかった?」
「」
久しぶりに会えたので頭が停まってしまう。以前は消息不明だったが、今は会おうと思えば会える。その分会えないのが辛い。
「如何した加古、一人で寝るのが怖いか?」
—―
「埠頭に来るのは久しぶりだねー」
「まぁ、私達には乗る船がないからな。実習はシュミレーターだから勘は鈍ってないと思うが」
実習だ、久しぶりに学校に顔を出した兄さんが開口一番に言った言葉はそれだった。皆またシュミレーターかー、って思ってたけど、集合場所が埠頭だった。
家のない私達は、海に出ることができない。
「よく来たな、皆。今日は久々の海での活動だ。授業としては初めてかな?」
夏なのにも関わらず黒のコートを着ている兄さんには驚きだが、それよりも驚くことがあった。
「晴風が…晴風が帰ってきた!!」
決戦の時に沈んだ晴風が、埠頭に横付けしている。まるで4月のときみたいに。
「本島でサルベージした晴風を直してきた。以前のような主砲も機関も射撃指揮所もないけど、やっぱ駆逐艦はいいよな…航洋艦ってお前らは呼んでたっけ?」
「ありがとうございます、兄さん!!」
「今は兄さんじゃなくて教官な、ミサ」
爽やかな笑顔で言ってくる兄さんを見ると、嫌なわけじゃなさそうだ。
「さ、速く上がっておいで。そんなところでボーッとしてると置いてくよ」
「お前は操艦できないだろ…」
タラップの先に女の人が現れて、こっちに呼びかけてくる。BMの制服も、スーツも着ていないから学校関係者じゃないのは誰が見ても分かる。そしてあの顔は私が見たものだった。その顔は、兄さんの記憶の中で、兄さんの瞳に反射して見た顔だった。
「あー、既に顔は知っていると思うが、未来の嫁さんだ。いや、入籍したからもう妻か。だが式はまだだな…、まぁ、今日から副教官として参加する」
「加古でーす、よっろしくー!!」
「ばかもん、そんな挨拶をする教官があるか」
目にも止まらぬ速さで拳骨を落とす兄さんを見て、自然と足元がふらつき、倒れてしまう。
「艦長が倒れた!?」
そんな皆の大声を聞きながら、私の視界は暗転した。
Q.夢が何故加古の視点だったのか?
A.色々なEDを考えた時に、ロイが岬明乃を加古と誤認したり、加古が岬明乃に憑依したりというのを思いついて、その名残。尚、書くのが面倒で諦めた模様。