「だ、大丈夫?シロちゃん」
「ゴホッゴホッ…かすり傷程度です」
森林に墜落したヘリの中で、無事を確認する。
「本島なのは間違いないです。ですが当初予定していた降下地点とはかなり離れています」
「ヘリももう動きそうにないしね」
「近くに本部への入り口があります。他の部隊も到着している筈です、行きましょう」
シエラさんを先頭に森を歩く。なぜこうなったのかは、数日も前のことだった。
――
「連合艦隊が横七本島を発見!?」
「はい。遣欧艦隊、その中の巡洋艦を中心とした連合艦隊がハワイへ航行中に発見。潜水艦数隻が接近したところ海中から噴進砲の攻撃を受け、大破、死者はいなかったものの接近が困難になったそうです」
直通のケーブル線を敷設しながら進んでいた為届いた情報。それはとても大きな意味があった。
「飛行船がミサイル発射台と思われる物を確認。本体はまだ発見されていません」
「残された時間はもう長くないのね」
「国土保全委員会はこの報告を受け、遣欧艦隊の帰還を待たずして出撃せよとのことです」
遣欧艦隊の帰還を待たない、即ち本土に残されている艦隊で出撃し本島を攻略せよ。学生艦を徴発したため艦艇はまだ豊富だが、それらは殆どが約一世紀も前の物。相手は1000年先を行くと噂される横七。防衛システムの突破を考えれば松型巡洋艦や主力戦艦が欲しい。尤も、松型一隻しかいないが。
「横七本島を攻略する為、一度でも訪れた者が必須とのことです」
「スパルタンと元晴風組」
「その内、国内にいるのは桜艦長、副長の二名だけです。他の者は民間人や海外で活動しています」
「桜を動かす理由作りをしなくていいのね。それだけが救いだわ」
「もっといいニュースもある」
二日前の夜に聞いた、懐かしく頼もしい声。だが、今回ばかりは違う。
いつからいたのか分からないけど、少なくともさっきまではいなかった。
「ロイ!?貴様何故ここにいる!!」
「落ち着いて…何のためにここに来たの、ロイ…」
「だから、いいニュースを聞かせる為さ」
少し笑い、言う。
「無人ヘリを与える。乗れるのは3人。数は3機。有効に使え」
言い終わった瞬間、姿がぶれ、粒となって消える。ああやって現れたのか。
――
日米艦隊集結ポイント
「よぉダッチ、緊張しているとはお前らしくもない」
「ディロン!!お前も参加するのか」
「ああ。これでも横七に関する調査の第一人者だからな」
「CIAの仕事ってやつか。もう一人の方も知り合いか?」
「ああ。あいつを借りるために態々クレーターのメグに頭を下げたんだ」
二人の米兵が飛行船支援母艦の甲板で話し合う。白人の男はアメリカ史上屈指の精鋭部隊の隊長で、黒人の男は元部下で現在はCIAで働いている。
「聞いていると思うが、俺達の目的はミサイルの発射阻止だ。その為俺達は横七最下層の司令部に行き、発射プログラムを削除あるいは中止させる」
「先遣隊がいると聞いているが、なぜ俺達も行くんだ、ヨーロッパのこともある。最小限にするべきじゃないか?」
「ああ。俺としても別の仕事がまだ残っているから行きたくないが、命令だからな」
「それもそうだな。で、そのもう一人はまだなのか」
「そろそろ来るはず…あいつだ」
艦橋から悠々と降りてくる、タキシードを着た男。サングラスをかけており、正規の軍人とは思えなかった。
「ジェントルマン・ジョニー。特技は変装とハッキング。クレーターチームに所属している。それ以外は全て不明。名前も経歴も信じれるものがない」
「所謂お助けマンか」
「やあディロンの旦那、5年前の日本サーバーハッキング以来随分と久しいなぁ、元気だったか?」
「ああ。まともに軍服を着てくれればさらに元気になれる」
「あんたとは初めて組むな、改めまして、ジェントルマン・ジョニーだ、よろしく」
「よろしく」
握手をする。するとジョニーが急に顔色を変える。
「い、いたい…離してくれ」
「おっと…すまない」
「ダッチ、彼は経歴上大手のシステム開発エンジニアだ。力を入れ過ぎたな」
「そうかもな」
男3人で話していると、何かが回る音が聞こえる。見れば水平線の彼方から事前に連絡の入っていたヘリが三機近付いてくる。
「横七の兵器、それに乗る日が来るとはな」
「同感だ、安全とは聞いているが、罠の可能性もある」
「そんなに固くならずに、まだ横七本島じゃないんですから」
「はぁ…先遣隊によれば飛行艇による接近は迎撃が無かったらしい。つまりあれなら安全だ」
甲板に三機着陸する。一機からは大男とその護衛と思われる兵士二人、もう一機からは20代の女性二人と噂に聞くスパルタンが降りてくる。
「…後詰の部隊はいなんだよなぁ、ダッチ」
「ああ。俺達が後詰の部隊だからな」
――
「改めて確認するが、俺達米軍の目的はミサイルの発射を阻止することだ」
甲板上に建てられたテントが、風をうけてなびく。その下に椅子を出してそれぞれの目的を確認する。
「うちらの隊は今回のテロ…戦争の首謀者の殺害や」
「私達は彼を止めること、その為にミサイル発射を阻止する」
それぞれの隊長格が伝え、メモを取る。
「なるほど。計画を破綻させればロイも交渉に応じるかもな」
「そないならあんたらは一緒に動いたらどうや。目的も一緒やし」
「そうですね、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしく頼むよ、お嬢さんたち」
身を乗り出して握手をする。今度は力加減を間違えなかったようで、悲鳴は上がらない。
「横七本島地表の地図だ。先遣隊の報告を基に作られた。地下までは流石にのってない」
ジョニーが全員に地図を配る。見ればハッチやら扉やら書いてある。
「先遣隊が突入した扉はこことここ。鷹宮隊は兎も角うちらと岬隊はこの扉から侵入する。その後は先遣隊と合流して最下層を目指す」
「横七本島は現在メインジェネレーターが停止しています。私は復旧の為単独で動きますが、いいですか?」
「スパルタン…いいだろう、だが変なことをすれば…撃つ」
「了解だ」
話し合うことはなくなったのか、席を立ち、ヘリに乗り込む。
「幸運を祈る、発進」
艦長の号令を聞き、三機は空へ舞い上がった。
――
「横七本島、外見はやはり変わっていないな」
シエラが呟く。肉眼でも見える程、目的地に近付いていた。
「!?レーダーに捉えられました、手動による回避行動を行います」
「レーダー!?危険は無いんじゃなかったのか!?」
「はい。メインジェネレーター停止に伴い、本島の防衛システムは停止しています。海兵隊員やスパルタンも現在は駐在していませんので、第三者がいると見て大丈夫です」
「何が大丈夫だ!!」
三機がバラバラに動き始める。だが岬隊の機以外はレーダーに捉えられていない。
「狙われている…本機は最高速で危険空域を突破します。シートベルトを着けて下さい」
エンジンが唸り、速度が増す。ある程度近付くと、銃弾やロケット弾が出迎える。
荒い運転だが、それでも避けて飛行する。
「あれは…対物ライフル!?被弾します、伏せて!!」
光ったと思えばヘリに穴があき、不安定になる。
「墜落します、対ショック態勢!!」
精一杯操縦桿を握りしめたおかげか、ヘリは横七本島に墜落する。ここで初めの状況に戻る。