ハイスクール・フリート   若き人魚と転生者   作:ロイ1世

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コマンドーからベネットと元グリーンベレーのクック参戦。


舞台に集う彼らたち

「ふんっ!!」

 

 閉ざされた地下本部への扉を強引に開ける。中は暗いが、支給装備でヘッドライトを貰っている為苦にはならない。

 

「先行します、付いて来て」

――

「如何やら、岬隊は狙われているみたいだな、ダッチ」

「ああ。だが墜落の様子を見るにこの島には落ちれたみたいだ」

「あんさん方、そないな話しとる場合か?うちらの隊は旧本部から調査する、元気でな~」

「御武運を」

 

 問題なく降下できた6人はそれぞれの目的の為行動を開始する。ジョニーはサプレッサー付き9㎜拳銃を取り出し、いつでもいけると目で訴える。

 

 先遣隊が開けたと思われる扉から内部に侵入する。予想してはいたが、やはり誰もいない。メインジェネレーターが停止している関係で様々な防衛システムが切られているとはいえ、何とも言えない不気味さを感じる。

 

 広い部屋に出ると、誰かが倒れているのが分かる。

 

「おい!!どうしたしっかりしろ!!」

「あ…ああ…」

 

 見れば先遣隊の男で昔ロシア領内の反政府組織を潰す際FBIから派遣されて一緒に戦った男だった。喉に傷がある。破片で切ったのだろうか、辛うじて生きてはいるが喋れる状態ではなかった。男は手を挙げ、道を指す。見れば先遣隊の兵士が顔を潰されたり体に穴をあけられて死んでいる。

 

「フリーパスではないらしいな」

 

 ディロンが他では見ない小銃を構えて死体が転がる道を監視する。

 

「何もない。既に立ち去ったみたいだ」

 

 それを聞き、少し安心する。だが油断はしない。

 

「死体を見る限り馬鹿力の持ち主のようだ。それにこの空薬莢に先が潰れた弾丸、相手は先遣隊の武器ではかすり傷もつかなかった…文字通りにな」

 

 ジョニーは死体が持っていた銃を渡す。

 

 まだ少し暖かい。つい先程まで彼らは戦っていたのだ。

 

「ダッチ!!死体の数が先遣隊の人数に足りない、生存者はまだいる!!」

「先を急ぐぞ」

 

 危険ではあるが一つでも多くの命を救う為、死体が転がる道を進む。幾つもの扉を開けたところで撃たれる。

 

「待て、俺たちは敵じゃない!!」

「はぁ、はぁ…大佐?」

「お前は…ベネット!?」

 

 撃ったのは退役した元ダッチの部下であるベネットだった。ベネットは銃を下ろし、近付く。

 

「この島はガチでやばい、俺たちの隊の他に5つあったが、あいつにやられた」

「待てベネット、お前はなぜここにいる」

「お、俺は軍を抜けた後CIAにスカウトされた。麻薬組織やテロリストの基地を幾つも潰してきた。今の方が軍にいた頃よりも正義の為に働けているからな」

「俺が聞きたいのはそんな身の上話じゃない、なぜここにいる!!」

「CIAから横七本島の調査と可能な限り技術を持ち帰ることを命じられた。先遣隊なら日本やスパルタンに邪魔されない。俺以外もそうだ」

 

 呼吸を落ち着かせながら、続ける。

 

「分かっている生存者は俺とグリーンベレーのクックという男だけだ」

 

 そう言うと扉から大柄の黒人の男が出てくる。

 

「ダメだベネット、他の先遣隊の奴らが見当たらない…彼らが後詰の?」

「ああ」

 

 こちらをちらっと見る。3人で1人タキシードなのを見て溜息をつかれる。

 

「俺はクックだ」

 

 挨拶だけをして直ぐに周囲の警戒をする。昔の部下に似ていると思いっていると、エレベーターから音がする。

 

「ディロン、この島はメインジェネレーターが停まっていてもエレベーターは動くのか?」

「ああ。なんでもサブジェネレーターが最低限の機材やエレベーター、扉を動かしているらしい」

「ベネット、クック。下に進んだ隊はいるのか」

「分かりません。この階で襲撃を受けて後は散り散り、生き残るだけで精一杯で」

「全員、エレベーターから離れて銃を構えろ」

 

 エレベーター前の広場は観葉植物がアミューズメントパークの入口にある縁で座れるよう植えてある。それをカバーにして銃を構える。

 

 出てきたのは黒のトレンチコートを着て黒の帽子を被る顔が青白い大男だった。

 

「奴だ大佐!!」

「撃て!!」

 

 発砲炎で部屋が一気に明るくなる。連射銃なので銃声も途切れない。

 

「無駄だ、あのコートはランチャーを受けても効かなかった」

「なら顔を狙え。帽子はどうか分からないが顔は防弾仕様ではない筈だ!!」

 

 砲火が顔付近に集中する。あまり足は止まっていないがそれでも腕で顔を覆っていることから一定の効果はあるようだ。

 

「後退、後退!!」

 

 カバーから出て扉を目指すが、大男はそれを待っていたかのように、突進を始める。

 

「うおおぉぉぉ!!」

 

 片手でハンドガンを出し、撃つ。足を止めることが出来なければ死んでしまう。

 

「ダメだダッチ、避けろ!!」

「間に合わない!!」

 

 虹彩や肌の荒さが分かる程近付いた時、今までとは違う銃声が聞こえる。

 

「こっちだ化物!!」

 

 スパルタンが謎のエネルギ兵器をチャージして撃つと大男は動きを数秒止める。その間にスパルタンはゼロ距離でショットガンを撃った。

 

 大男は倒れた。全員銃に弾を込めながら辺りを警戒する。

 

「こいつは横七の生物兵器。外見こそ人だが細胞は完全な複合体」

 

 スパルタンは更に話を進める。

 

「生まれた生物に改造を施し身体能力や知能を大幅強化、更に強化外骨格手術や脊髄の機械化をしより完璧な生物兵器に仕立てた」

「ちょっと待って下さい、横七がなぜそんなことを。ロイさんからはそんなこと聞いたことがありません」

「それもそのはずです。なぜならこの生物兵器…タイラントは、決戦後に造られましたから」

 

 エレベーターに乗る。残念なことに27あるフロアの内一つしか降りれなかった。

 

「深海化の影響で体が崩壊する前に大佐の脳を移植して延命する計画が復興よりも優先されました。そこで出た案の内一つが生物兵器に脳移植をすることでした。尤も、この案は中止になりましたが」

「じゃぁ裕兄は死んでいなかった」

「…はい」

 

 チーンと到着したことを知らせてくれる。

 

「タイラントがなぜ動いたかは分かりませんが、他の敵は対空攻撃してきた連中を除けばいない筈です。その為私はメインジェネレーターを再起動させる為、別行動をします、それでは」

 

 話を聞く限りタイラントは一体だけなんだろう。だがこうして兵器の差を感じ、少し不安になってしまう。

 

「…ダッチさん、あなたにこれを貸します。無くさないでください」

 

 スパルタンから渡されたのはショットガンだった。それもタイラントを倒した。

 

「了解だ、また会おう」

—―

「大佐、どういうことです。計画とはズレが」

「あの男のことだ、おそらくこの島を発見した艦隊はあの男の支持を受けて発見したんだろう」

「では尚更です!!切り札はもうないんですよ!?」

「それがどうした。既に計画はもう止めれない段階に達した。あとは安全圏で新世界の創生を待つだけだ」

「…失礼します」

 

 高台からカメラの情報を見つつ考える。計画はもう止められない。だがあのスパルタン。姿を見せていないあの男が差し向けた刺客と考えればいいのか。あれが一番の不安要素である。

 

 それと同時に興奮していることを、客観的な自分が教えてくれる。興奮している理由は分かる、生存戦争。あいつがいる限り俺は行きれない。それは向こうも同じなのだろう。勝負は一度きり、復活もチートもない。

 

「私はここで待っている、だからはやく来るんだ、この決戦の地へ」

 

 

 椅子に座りまだ見ぬ奴へ言う。

 

 

 

 それが見られているなど、私は夢にも思っていなかった。


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