いつか黄金の世界で   作:Schweitzer

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第13話

 久しぶりに会った少女は変わらない笑顔で出迎えてくれた。

 

「あぁ、リッド!久しぶりだね!会いたかったわ!」

 

「ふぁ。」

 

 友人の姿を見つけた瞬間、ベッドから飛び降り少女に抱き着くアミエリタ。急に抱き着かれ驚いたのか少し間抜けな声が出た。

 

「あのね、聞いて頂戴。リッドのためにセイラから貰った玩具を全部出してみたの!」

 

 一通り友人の体温を感じ取り満足したのかゆっくりと離れるとアストリッドをベッドに連れて行く。ベッドの上には大量のぬいぐるみや玩具が置いてあった

 

「ねぇ遊びましょう!」

 

 アストリッドをベッドに座らせその横に座る。これはどう?こっちはどう?と次から次へと玩具をアストリッドの前に並べていく。それがとても楽しいのか困惑する友人をよそに次から次へとまた並べていく。

 

「リッドはどれが好きかしら?」

 

「―――怒って、ないの?」

 

「なにが?」

 

「だから、私が多分二週間以上もここに来られなかった事。」

 

「あら、そんな事を気にしていたの?ありがとうリッド。でも私はまたリッドに会えるのなら何年でも待てるもの。知ってた?私ね、待つのは得意なのよ。」

 

 本当に気にしていないのか優しく笑い、それでも申し訳なさそうな顔をするアストリッドをそっと抱きしめる。

 

「ごめんアミタ。アミタには寂しい思いはあんまりさせたくなかったのに。」

 

「いいのよ。リッドはリッドでしないといけない事、あるのでしょう?私はここからは出られないからリッドがいつ来ても心地よい場所にして待っているわ。」

 

「うん―――ありがとう、アミタ。」

 

 ようやく笑顔になった友人に安心したのかそっと離れた。

 

「ねぇアミタ、揚げパンって知っている?」

 

「揚げ、パン?」

 

「これよ。甘くってすごくおいしいのよ」

 

 ローブの内ポケットから揚げパンが入った袋を二つ取り出す。袋からは甘い香りが漂ってくる。

 

「変なの。リッドはユーグスタクトなのに食事をするの?」

 

「食事はしないよ。私は栄養摂取をしないから食べ物は必要ないけど、これはとってもお気に入りなんだ。ある人間に教えてもらったの。こっちがアミタの分よ。」

 

「ありがとうリッド。」

 

 初めて見る食べ物に恐る恐るそっと袋を開け形の良い鼻を動かし匂いを嗅ぐアミエリタ。

 

「わぁ、すごくいい匂いね。食べるのがもったいないわ。あ、リッドまだ食べないでね、こんなにいい匂いがするんだもの。せっかくだから味覚を作らないと。ちょっと待ってて、一緒に食べたいの。」

 

 虚空から取り出したお皿の上に揚げパンを乗せ体内に魔法を展開していく。その作業をしている最中、アストリッドが驚いたように目を見開いた

 

「アミタ・・・それ・・・その魔法・・・ユーグスタクトの・・・」

 

「ん?あぁこれね。私も味覚が必要ないから今食べても味が分からないの。この魔法はセイラに教わったのよ」

 

「―――アミタ、よく視たら貴女、人間じゃないわね。」

 

「あれ?気づかなかったの?リッドは私のこと嫌い?」

 

「いいえ。アミタがどんな存在でも私は気にしないもん。それよりまだ?冷めちゃうよ?」

 

「そうだね、もう完成したわ、食べましょう!」

 

 小動物のように小さく齧り頬を緩ませる

 

「温かくて、甘くておいしいわ・・・リッド、私も揚げパンが好きよ!」

 

「気に入ってくれてよかった。他にも色んな味があるからまた持ってくるね」

 

 アミエリタがおいしそうにほお張るのを嬉しそうに眺め、自分もかぶりつく。魔法で揚げたての状態を保っていたため外はサクッと、中はふんわりとしている。中にぎっしりと詰められた果肉入りのイチゴジャムの程よい酸味が心地よい。

 

「リッド、ついているわよ」

 

「ん・・・」

 

 アミエリタより後から食べ始めたのにあっと言う間に食べ終えたアストリッドの頬についたパンのくずをそっと落とす。

 

「ねぇリッド、今日はなにをして遊ぶ?」

 

「んー、じゃあ石取りしよう。私、ママとやって負けたこと一度もないよ」

 

「石取り―――あぁ、あの白と黒い石を交互に置いていくもののね?いいわよ、やりましょう。セイラったら石取りゲームすごくよわかったのよ。苦手だったのかしら?」

 

「多分ね。いつもママが負けるからつまんなかったもん」

 

「じゃあ今度は私と勝負をしましょう。私、こう見えても強いのよ、負けないわ」

 

「私だって負けないもん!」

 

 ベッドにボードと石を並べる。少女たちの賑やかな午後は始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 さて、こちらもある意味では賑やかな午後を過ごしていた。

 

「おい、相変わらずの食事をしているな、お前。」

 

 部屋の中でも三角帽子を被り、片手にペンを握る食事中の少女の前に完全武装をした体格の良い男が入ってきた。男の姿を見て食事を中断する。

 

「んー、あ、グイードのおっさん、おかえりー。今帰りぃー?」

 

「あぁ、大将はどこだ?」

 

「ん?あぁ、るるっちなら今二階にいるよぉー。」

 

「サンキュ、ちょっくら報告に行ってくるが・・・お前、そんなもん食って旨いのか?」

 

 顔を顰めながらグイードはナーシャが食べているものを見た。

 

「えぇ?魔女に味覚を聞いちゃうのぉ?ま、味覚あってもなくてもかんけーない。うん。重要なのは味じゃなくて閃きだよ、閃き!」

 

「相変わらず答えになってねぇし意味がわかんねぇな。」

 

 呆れたようにため息をつきテーブルの上にある料理を視界に入れないようにする。彼女が食事をしている姿を何度か見たことはあるがやはり見ても慣れないしか関わりたくない。

 

「どちらにせよあんたは我々にとっても重要だ、頼りにしてんぞ・・・じゃあ俺は大将のところ行ってくる。」

 

「あはっ、人間に頼りにされちゃったぁ。イグノランスの魔女もがんばらなくちゃぁ」

 

 グイードが出て行き昼食を再開するナーシャ。取れたての新鮮な肉や臓器を解体しては口に運び紙にペンを走らせる。

 

「んーやっぱ若いっていいよねぇー。閃きには大切だもん。あ、脳はどーやって食べよっかなぁ。すんごいの来ちゃいそう♪早くユーグスタクトの魔女っ子さん食べたいなぁ」

 

 捕れたばかりの若い少女の肉をほお張りながらうっとりと目を細める

 

「んー良い魔法が書けそう♪」

 

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