いつか黄金の世界で   作:Schweitzer

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第3話

 

    夢

ひどく懐かしい夢を見た

 

まだ隣には大好きな母がいて

 

なんにも心配がいらなかった日々

 

暖かな記憶

 

だけど今は懐かしいだけのただの記憶

 

 

 

 重い鉛色の雲が空を覆い、絶え間なく吹雪が城の窓を叩きつけようとも変わらずいつもの時間となり目を覚ます少女。吹雪で覆われている薄暗い古城。唯一の明かりであり温もりでもある暖炉の火は変わらず燃え続けている。

 

「ぅん・・・」

 

 目が覚めゆっくりと起き上がると大きなあくびが出た。まだ眠たい目をこすりながら椅子のぬいぐるみをそっと手に取り抱きしめた。窓は寒さから部屋のぬくもりを守る為のカーテンは主の起床に合わせ開かれている。

 

「おはようママ・・・今日も外は吹雪よ・・・」

 誰もいない空間にそっと呟く城の主である少女。小さい頃は目が覚めたらいつも隣には大好きな母がいて、窓を激しく叩きつける吹雪が怖かった時も、いつもどんな時でも隣にいてくれた。

 しかし大好きな母はもういない。

エルトリアの御子に引き裂かれた魂の欠片を全て見つけ出すまでは暖かな手に触れることは出来ない。

 

「寒いよ、ママ―――冷え切ってしまった私の身体を温めて・・・大丈夫よ、すぐに見つけてあげるから。怖くないよ、だって私は強いんだもの。だから、待っててね。」

 

抱きしめたぬいぐるみに寂し気に微笑み寝台から降りると部屋に数人の赤いローブを羽織った人達入ってきた。フードを深く被っている彼らの顔は見えないが気にすることでもない。魔法で服を着替え身だしなみ整えると差し出された血のような真紅のローブに袖を通し開かれた扉から廊下へと出る。

等間隔に置かれた蝋燭が唯一の光源である薄暗い廊下は狂いそうな程の静寂の中でアストリッドの靴音だけが響く。この広い古城にはアストリッド以外誰もいない。メイドもいなければ従者もいない。いるのは自分の使い魔のように働く事しかできない赤いローブのフードを深く被る使者だけ。

 でもそれは彼女に話しかけることもなければ彼女の孤独を埋めてくれるわけでもない。ただ主である少女の命令のみを聞き行動をする人形。だからこの広い城ではアストリッドはいつも独りぼっち。

 

だが彼女は独りが嫌いだ。

 

あの日、あの夜突然母が消えてから独りが怖くてたまらない。

だから今日も出かける。この寂しく冷たい城に閉じこもるよりも少しでも暖かな場所を求めて。

 

「じゃあいってきます、ママ。」

 

フードを深く被り使者が開けた扉から外に出る。城の外に出た瞬間吹雪がアストリッドの小さな身体に叩きつけようとするが雪はアストリッドに触れた瞬間に消え、体内へと取り込まれた。吹雪が少女を傷つけることはない。降り積もった新雪を靴で踏み分け城の外れにあるガゼボに向かう。

「ふぅ…城の中に作ればいいのになんでこれは外にあるのよ」

ガゼボに着くなり出てくるのは文句の言葉。外は吹雪でもそれほど寒くないがガゼボに向かうためだけにわざわざこの悪天候の中を歩いくのは正直に言って面倒臭い。

 吹き抜けの作りであるガゼボには結界が張っているのか吹雪が入り込むことはない。床に描かれた複雑な魔法陣を一通り眺め異常がないことを確認すると陣の中心に立つ。左手を前に出し静かに目を閉じ、心を落ち着かせ魔力を循環させる。

 

「我が身を彼の地へ、開け。」

アストリッドが魔法陣に魔力を通すとそれは激しく光りだし、光が消える頃には赤いローブの少女の姿はなかった。

 

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