今回もなんとか『最新話』を無事に更新することが
できました‼︎
それと『誤字』などや投稿した『最新話』があまり
気に入らない部分があったのですぐに『書き直し』
をさせてもらいました。
何度も書き直しをして本当にすみません。
【お気に入り】や【しおり】、【投票】そして
【感想】などいただければ豆腐メンタルで脆い
自分も更に『創作意欲』が増していきます‼︎
面白く出来ているかどうか心配でいっぱいですが
一生懸命にたくさん書きました。
最後まで読んでいただければありがたいです‼︎
「おーい、
と扉をノックした。
しかし……反応はない。
「十香……頼むよ、話を聞いてくれ……」
もう一度、そう言いながら扉を叩く。
すると──ドンっ!と凄まじい音がして、
家全体がビリビリと震えた。
「……っ!」
突然のことに、思わず肩をビクッと揺らして
しまう。
と、士道が今までノックを続いていた扉の向こう
から、くぐもった声が響いてきた。
『……ふん、構うな。……とっととあっちへ行って
しまえばーかばーか』
そしてそれきり、また何も反応がなくなる。
完全に、拗ねてしまった。
「はぁ……どうしろってんだよもう……」
士道は途方に暮れ、額に手をあてながら
ため息を吐き出した。
士道がいるのは、
字で『十香』と書かれたが貼ってある扉の前だった。
『よしのん』が
〈フラクシナス〉に回収してもらい、家に帰って
こられたのはいいのだが……家に入るなり、十香が
自分の部屋に籠って出てこなくてなってしまった
のである。
『──士道。ちょっといい? 確認しておきたい
ことがあるのだけれど』
と、右耳につけっぱなしにしていたインカムから、
琴里の声が聞こえてくる。
「あ……? 何だよ、こっちは今それどころ
なんかじゃ──」
『士道、あなた、ちゃんとよしのんとキスを
したのよね?』
「……っ、はぁっ? いきなり何を……」
突然の質問に、士道は上擦った声を発した。
『いいから、答えてちょうだい。士道はあのとき、
あの子、よしのんと唇を合わせた。それに間違い
はないわね?』
「……あ、ああ……」
『ふむ……』
「そ、それがどうしたってんだよ。言っとくけど、
あれは完全に事故で──」
『わかっているわよ。むしろ狙ってやったことなら
褒めてあげたいくらい』
「……じゃあ何だってんだ?」
士道が問うと、琴里は『うーむ』とうなってから
返してきた。
『──どうやら、キスをしたのに精霊の力が
まったく封印されてないみたいなのよ』
言われて。士道は目を見開いた。
そうだ。確かに『よしのん』はキスのあとも、
精霊の力を振るっていた。
『まあ、十香のときほど好感度が上がっていたわけ
でもなし、全ての力を封印することはできない当然
だとしても──少しも封印できていないっていう
のはちょっと引っかかるわね。数値的に、あの段階
でも二、三割くらいいけると思ったのだけれど』
言って、またもむむうとうなる。
『……何かよしのん特有の能力があるのかしら。
それとも──』
「な、なあ、琴里。よしのん方も大変だと
思うんだが……その」
言いながら、士道は十香の部屋の扉に目を向けた。
琴里も士道の思考を察したのだろう、さほど間を
空けずに言葉を返してくる。
『──ああ、十香のことね。どうなの、様子は』
「どうもこうも……さっきから呼びかけては
いるんだが、全然駄目だ」
『なるほど。数値を見るに、一時的に
力は経路を通して再封印されたみたいだけど──
早めに機嫌を直しておいた方がよさそうね』
「機嫌をって……どうやって」
『……シン。もしよければなんだが、その件は
私に任せてくれないか?』
士道が問うと、インカムから
聞こえてきた。──
「え……?」
『……さすがに今は気が立っているだろう。
確か明日は土曜日だったね。日中、私に十香を
預けてはくれないか? そうだな……名目は
生活用品の買い出しとでもしておいてくれ』
「それは構いませんけど、なんでまた」
士道が言うと、令音は数瞬の間黙ってからため息を
こぼした。
『……こういうのは、
女心は機微だ。覚えておきたまえ』
「は、はあ……」
士道は、困惑気味には頬をかいた。
「……と、いうわけで、十香。買い物に行こうと
思うのだが、ご同行願えるかな?」
翌日、五月一三日(土)。午前一〇時。
昨日言っていたとおり、令音が五河家を訪れ、
十香の部屋の扉の前でそう言った。
その装いは、平時のような白衣や軍服ではない。
胸元に傷だらけのクマのぬいぐるみが覗いた
カットソーに、暗色のボトムス。そして鞄を肩がけ
にしたお買い物スタイルである。
しかし十香は昨日と同じように、扉の奥から
苛立たしげな声を響かせてきた。
『うるさいっ、私のことは放っておけ……!』
ため息を吐いた。
「昨日からずっとこの調子です」
「……ふむ」
令音は、思案するようにあごに手を当てた。
そして鞄から、小さなパソコンのような端末を
取り出すと、片手でそれをいじり始める。
令音は画面を眺めてから端末をしまい込み、
扉に向かって一歩足を踏み出した。
「……十香」
『構うなと言っているだろう……! 私は──』
「……買い物のついでに外で食事でもと思っている
のだが、どうかな?」
令音が言うと、不意に十香が黙り込んだ。
そして、数十秒後。
ギィ、と部屋の扉が開かれ、中から不機嫌そうな
十香が顔を出した。
昨日から
の制服は、まだしっとりと
あまり
令音と並んで歩いていたら、姉妹と言われるかも
しれない。
「な……っ」
士道は驚愕に目を見開いた。
「れ、令音さん……?
一体何したんですか……?」
「……何も。十香の空腹値が
そろそろ限界とは思っていたんだ」
「なるほど……って、昨日の夜、夕飯に呼んだときは
出てこなかったのに……」
「……それはまあ、君と顔を合わせたくなかった
んだろう」
「…………」
さらっと酷いことを言ってくれる。
だが、事実なのだろう。ようやく外に出てきた
十香は、士道の姿見るなりぷいと顔を背け、
のしのしと歩いていってしまった。
「早く行くぞっ!」
「……ん、そうしよう。今日も朝から雨が
降っている。傘を忘れないようにしてくれ」
言いながら、令音は士道に目配せをしてきた。
「任せてくれ」とでも言うように。
「……お、お願いしまーす」
士道は二人を見送ることしかできなかった。
そのまま数分の間、呆然とそこに立ち尽くす。
「ええと……」
しかし、すぐに時間の無駄ということに気づいた。
軽く頬を張って気を取り直し、階段を降りていく。
「学校も休みだし……俺も午前中に買い物
行ってくるか」
昨日下校時に商店街に寄ってくるつもりだったの
だが、いろいろとあったせいで買い物ができない
でいたのである。
士道は手早く着替えを済ませると、傘を手にとって
家を出た。
「鍵は──まあ、一応かけておくか。琴里寝てるし」
言って鍵をかけてから、士道は雨の道に足音を
響かせていった。
──そして、どれくらい歩いた頃だろうか。
「………ッ⁉︎」
商店街に向かう道の途中。見覚えがある後ろ姿を
認めて、士道は足を止めた。
その、ウサギのような耳がついた緑色のフードを
見つけて。
「よ……よしのん……ッ?」
士道は、眉をひそめてその名を口にした。
そう、昨日の
になっていたエリアの向こうに、精霊・『よしのん』
の姿があった。
士道は塀に身を隠すと、『よしのん』様子を
じっと見つめた。
「警報は……鳴ってねえよな。……っ、
十香のときと同じパターンか」
そういえば、初めて『よしのん』に遭遇したときも、
警報は鳴っていなかった。
もしかしたら、頻繁にこちらの世界と
行き来している精霊なのかもしれない。
「……しかし、どうすりゃいいんだ……?」
見つけてしまった以上放っておくことはできないが、
どうすればいいのかわからない。
士道はしばしの間思考を巡らせてから──
のボタンをプッシュした。
しばらく呼び出し音が続いた後、眠たげ声が
電話口から聞こえてくる。
『……ふぁ〜ぃ……もしもぉし……?
おにぃちゃん……?』
明らかに今起きたような感の声音。無論、士道の妹
・琴里だった。
「おう。おはよう琴里」
『んー……おぁよ。どぉしたの……?』
「……
『…………』
士道がそう言った瞬間、電話口の向こうから、
パチン! パチン! と、頬を思っ切りひっぱったく
かのような音が聞こえてきた。
そしてすぐに、今までとは似ても似付かぬ、
凛とした声が響いてくる。
『──詳しく
「お、おう」
そんな様子に少し気圧されながらも、士道は
今の状況を簡単に説明した。
『……なるほど。また
──それで、まだ士道の存在は精霊に気付かれて
いないのね?』
「ああ……たぶんな。どうすればいい?」
『インカムは持ってる?』
「え? ああ──一応」
士道は、ポケットを軽く叩いて中にある小型機械の
感触確かめた。
十香と〈アテナ〉の一件があってから、万が一に
備えて携帯しているように言われていたのだ。
『よろしい。それを着けて、精霊を見失わないように
待機してなさい』
「え? ちょ──」
──ぶつっ。つー、つー、つー。切られた。
「た、待機って……」
あまりぞんざいな指示に、眉をひそめる。
だが、他にできることもなかった。大人しく
インカムを耳に装着し、『よしのん』の様子を窺う。
と、それから五分と経たず、インカムから妹様の
声が響いてきた。
どうやらこの短時間の間に支度を済ませ、
〈フラクシナス〉へと移動したらしい。
『──聞こえる? 士道』
「……おう、聞こえるよ」
『このまま彼女を放っておくこともできないわ。
とりあえずコントタクトを取ってみましょ』
「……了解」
士道は深呼吸をしてから、そろそろと『よしのん』
の方に歩いていった。
『よしのん』は未だ士道に気づく様子もなく、
必死に地面に視線を放っている。
「……じゃあ、声をかけるぞ」
『ええ。──っと、ちょっと待ちなさい』
士道が精霊に接触しようとしたところで、
艦橋の大モニタにウィンドウが表示される。
①声をかけると同時に
②すぐさまギュッとハグをして、こちらの愛を伝える。
③こちらが
精霊を刺激しないための方法が、三パターン
示された。
「ち、令音がいないのは痛いけれど、仕方ないわね」
琴里艦橋の下段の空席一瞥してから、小さく舌打ち
した。
確か令音は、十香を連れて買い物に行っている
はずである。十香を一人放り出して不機嫌にして
しまうこともできなかった。
「──総員、
号令と同時に琴里の手元にあるデスディスプレイに、
クルーたちの選択が表示される。
───①、②、③。すべてに、ほぼ同じぐらいの
票が集まっていた。
「ち、結構割れたわね」
琴里が難しげに呟くと、艦橋下段から声が
響いてきた。
「①ですよ! 腹を晒すのは動物にとって
降伏ポーズ! 相手も安心するはずです!」
「笑止! ②に決まっています! ウサギは寂しい
と死んじゃうんですよ!」
「あれウサギのフードかぶっているだけでウサギ
じゃないし! それより司令、絶対③ですって!
こちらが獲物を帯びていないことを示すには全裸!
全裸しかしかありません!」
「うっさいオールドミス! あんた高校男子の裸
見たいだけだろうがっ!」
「な……ッ! 何を失礼なことを! 知らないの⁉︎
現代に
なるのが有効だったのよ!」
「何の話だそれっ! とにかく②だよ②!」
「いや、①ですよ!
「全裸! 全裸!」
「……黙りなさいッ!」
バン、とコンソールを叩き、ヒートアップする
クルーたちを
そして一斉に静まりかえった艦橋の中、ゆっくりと
マイクを取り、
「──士道、声をかける前に服を脱ぎなさい」
静かに、言った。
艦橋下段で、数名の女性クルーと、なぜか
男性クルーが一人、ガッツポーズをとる。
だが、
『ごめんだよ!』
スピーカー越しに士道の悲鳴じみた叫びが
響くと同時、
『……っ⁉︎』
画面の中の『よしのん』が、ビクッと肩を揺らした。
「……! やべっ」
士道が叫びを発した瞬間、『よしのん』がハッと
した様子で振り向いてきた。
顔を
小刻みに震わせ始める。
「……ひっ、ぃ……っ」
そして、もう今にも泣き出しそうな顔を作り、
右手をバッと高く掲げる。
士道は心臓が掴まれるかのような錯覚に襲われた。
あの動作には覚えがある。昨日『よしのん』が、
「ちょ……っ、待て! 落ち着け!」
だが、そんなことを言っても通じるはずがない。
琴里も『よしのん』の動きに気づいたのだろう。
叫びを上げてくる。
『士道! 今から間に合うとしたら──①よ!
腹を見せて転がりなさい!』
「は──はぁ……っ⁉︎」
『早く!』
もう他にどうしようもない。
士道は傘をその場に投げ捨てると、雨に濡れた
道の上に、ごろーん、と
「参った! 降参!」
「……っ⁉︎」
瞬間、手を振り下ろしかけていた『よしのん』が、
呆気にとられたような顔を作る。
そして、恐る恐るといった調子で右手を元の位置に
戻し、士道の様子を窺い始めた。
「……せ、成功……したのか?」
『──多分ね。刺激しないよう話しかけて
みなさい』
言われて、士道は寝転がったまま、首だけを
ゆっくりと起こした。
「よ、よう……」
「………」
声をかけるも、『よしのん』は警戒するように
睨んでくるだけだった。
「き、今日はどうしたんだ……?」
「………」
「す、すごい雨だよな……」
「………」
何も、言葉を返してこようとはしない。
「……どうしたもんかね、これは」
と、そこで士道は首を傾げた。
見間違いかもしれないのだが──今、『よしのん』
の左手が見えた気がする。
つまり、パペットを着けていない。
士道が不審そうに眉をひそめると同時、琴里から
再度静止の声が響いた。
〈フラクシナス〉艦橋モニタに再び選択肢が、
表示される。
①ねばり強く話しげながら歩み寄り、
②一旦大勢を立て直すため、
③パペットを着けていないことを
「ふむ……」
手元の小型ディスプレイに表示されたクルーたち
の集計結果を眺め、琴里は小さくうなりを上げた。
もっとも多いのは、③。やはり皆、彼女がパペット
を着けていないのが気になるようだ。
確かに琴里としても確認しておきたい事項では
あった。
「士道、③よ。パペットをなくしてしまって、
探しているのかもしれないわ。とにかく何か反応
が欲しいところだし、パペットのことを訊いて
みなさい」
「……了解」
士道は小さく首肯すると、唇を開いた。
「なあ……おまえ、もしかして、パペットを探して
たりする……のか?」
「……!」
士道が言った瞬間、『よしのん』がカッと
目を見開いた。
そして士道の元にパタパタと走り寄ってきたかと
思うと、頭をガッと掴み、問い詰めるように
揺さぶってくる。
「……っ! ……っ⁉︎」
「あッ、あててててて……っ!
ちょっ、止めろって」
言うと、『よしのん』がハッとしたように士道の頭
から手を離した。
士道は彼女の様子を窺うようにしながら身を起こす
と、もう一度問いかけてみた。
「やっぱり……あれを探してるのか」
『よしのん』が、何度も力強くうなずく。
それから、不安そうな瞳を士道に向いてきた。
まるで、パペットの所在を問うように。
「……っ、す、すまん。俺もどこにあるかは
知らないんだ……」
士道が言うと、『よしのん』はこの世の終わりを
告げられたかのような顔をして、その場にヘナヘナ
とへたり込んだ。
そしてそのまま顔をうつむかせ、「ぅえ……っ、
ぇ……っ」と嗚咽を漏らし始める。
「え、ええと……」
暴れられるのも困るけど、こういうのも困る。
士道はあたふたと視線を泳がせた。
『──落ち着きなさい、士道』
と、またも琴里の声が鼓膜に届いてくる。
『よしのん』の反応を受けて、三度画面に
ウィンドウが展開される。
①「そんな
②「俺も
③「実は俺がパペットだったんだ!」ユーモアセンス
「総員、選択!」
琴里の号令とともに、小型ディスプレイに集計結果
が表示される。
「まあ、②が無難でしょうね。……ていうか③
なんて選んだの誰よ」
「……駄目でしょうか」
後方から、
「………」
琴里は無視してマイクをたぐり寄せた。
「士道、彼女と一緒にパペットを探して
あげなさい」
後方から「ああッ、放置プレイというのも
なかなか……っ!」なんて声が聞こえてきたが、
それも無視した。
「あ、あのだな、よしのん」
「……っ!」
士道が声を上げると、『よしのん』はまたも
ビクッと身体を震わせた。
そして彼女がバッと手を振りかぶると、辺りに
できた水たまりが隆起し、弾丸のようになって
士道の座っている場所のすぐ近くに炸裂した。
「の……のわッ⁉︎」
思わず、身をすくませる。
こちらの様子を窺うように、油断なく視線を送って
くる(……わりには、目が合うと視線を逸らそうと
する)『よしのん』に、姿勢を直して小さく頭を
下げる。
そして無抵抗を示すように両手を上げながら、
言葉を続けた。
「その……も、もしよかったら……お、俺も、
パペットを探すの手伝おうか?」
「……!」
士道が言うと、『よしのん』が驚いたように
目を見開いた。
そして数秒のあと、初めて顔を明るくし、うんうん
と力強く首を縦に振ってくる。
士道は「よし」と息を吐くと、ようやく濡れた地面
から腰を上げた。
随分と濡れてしまったが、まあ、今は気に
するまい。
「ええと……それで、なんだけど。パペットは、
いつどこでなくしちまったんだ?」
問うと、『よしのん』は逡巡するように視線を
泳がせてから、その桜色の唇を開いた。
「……き、のぅ……」
そして、ウサギの耳付きフードをきゅっと握って
顔をうつむけ、目元を隠すようにしながらたどたど
しく言ってくる。
「こわい……人たち、攻撃……され……気づいたら
……、ぃなく、なっ……」
「ええと……? 昨日、ASTに襲われたのか」
士道が言うと、『よしのん』はこくんと首を縦に
倒した。
「なるほど、あのあと……」
士道は言いながら首を左右に回して辺りの様子を
見取った。
崩落した建物や、ヒビの入った道路が、視界
いっぱいに広がっている。これは骨が折れそう
だった。
と、それに合わせるようにして、右耳に
〈フラクシナス〉からの音声が届く。
『──こっちからもカメラをあるだけ送るわ。
できるだけ彼女とコミュニケーションを取りながら
捜索をしてちょうだい』
士道は了解を示すようにインカムを小突くと、
再び『よしのん』に目をやった。
「よし……じゃあ、よしのん」
「……!」
『よしのん』が首肯し──しばし口をモゴモゴ
させてから、声を発してくる。
「わ、たし……は、」
「え?」
「私……は、よしのん、じゃなくて……
よしのんは……私の、友だち……」
「四糸乃……?」
士道が問い返すように名を呼ぶと、少女──
四糸乃が走っていこうとする。
「あ……ちょっと!」
と、その声に驚いたのだろうか、またも四糸乃が
肩を震わせる。
瞬間、四糸乃の周囲の雨が突然、針のようになって
士道の方に飛んできた。
「うわぁぁぁッ⁉︎」
慌ててその場にうつぶせになり、どうにかそれを
避ける。
数が少なかったからいいようなものの、これが
広域に放たれていたなら、今頃士道の身体は
サボテンのようになっていただろう。
「お、落ち着いて! 俺だ、俺!」
四糸乃はビクビクしながら振り向くと、士道の顔
を見て小さく息を吐いた。
士道は恐ると言った調子で立ち上がると、
「よ、よかったらこれ。……もう濡れてっかも
しれねえけど、ないよりはマシだろ?」
先ほど道端に放った傘を拾い、四糸乃に
差し出した。
「? ? ?」
「ああ、これはこうするんだ」
不思議そうに首を傾げる四糸乃の手に傘を握らせ、
差してやる。
すると、雨粒が自分の身体に触れなくなったことに
驚いたのか、四糸乃が目を丸くして頭上を見やった。
透明なビニール傘に当たって雨粒が弾け、きらきら
と光りながら落ちていく。
「……! ……!」
四糸乃が興奮気味に、傘を持っていない方の手を
パタパタと動かした。
「お、おう、気に入ったか。使え使え!」
と、士道が言うと、四糸乃が士道に問いかける
ように目を向けてきた。
「あ……? 俺?」
四糸乃が、こくこくとうなずく。
「ああ、俺は大丈夫だよ。いいから使えって」
四糸乃はしばしの間逡巡するように傘と士道を
交互に見たのち。
「ぁ……り、が……ぅ……」
ぺこりとお辞儀をしてから、パペットの捜索に
戻っていった。
『格好いいことしちゃって』
右耳に、からかうような琴里の声が聞こえてくる。
「う、うるせ」
『───まあ、精霊がその気になったら、濡れた
服なんてすぐ乾かせるでしょうけどね。というか
それ以前に、不可視のの皮膜を張って雨を弾く
なんて造作もないことだし』
「そ、そうなのか?」
……まあ、そこは別問題である。小さな女の子が
雨に濡れているのを見るのは、どうにも忍びない。
士道は朝に濡れた顔を軽く拭うと、捜索開始した。
「──どう? パペットは見つかった?」
「いえ、まだですね。見当たりません」
琴里が問いかけると、艦橋下段からクルーの返答が
聞こえてきた。
時刻は一二時三〇分。士道が四糸乃とともに捜索
を開始してから、およそ二時間が経過している。
この雨の中の作業となれば、身体も冷えてしまって
いるだろうし、疲労を溜まっているだろう。
〈ラタトスク〉の機関員を捜索に回してもよいの
だが──急に大人数を投入して四糸乃を怖がらせて
しまっては元も子もないし、仮に怖がらなかったと
しても、士道に向けられるべき感謝や好印象が、
多方向に分散してしまう可能性がある。
「映像の方は?」
琴里が右手側に目を向けると、コンソールを
いじっていたクルーが、視線は寄越さぬまま、
声だけを投げてきた。
「解像度が粗いですが……なんとか」
「モニタに出してちょうだい」
琴里が言うと、〈フラクシナス〉艦橋のモニタの
一部に、四糸乃、〈アテナ〉とASTの交戦したとき
の映像が映し出される。
攻撃の余波に巻き込まれてしまわぬよう、カメラも
距離を取って撮影していたため、平時に比べて多少
画質が悪かった。
「〈ハーミット〉が
もう既にパペットをもっていません」
一時停止ののち、画面が拡大されてASTから
逃亡している四糸乃の姿がアップになる。
「──反して、ASTの攻撃が着弾する前の映像
では、天使の口元にパペットを確認することが
できます。恐らくですが〈アテナ〉とASTとの
戦闘中によって紛失したと考えるのが妥当
でしょう」
「で、肝心のパペットは?」
「非常に煙が濃いのと激しい戦闘のため、確実では
ありませんが……逃走している影が確認できます
ので、戦闘中の際に燃えてしまっているという
最悪のパターンになっている可能性がかなり高い
と思われます」
「……ふむ。だとしたら、最悪な状態ね……」
琴里はあごに手を当てながら深刻そうな表示を
していた。
「四糸乃が
いないの?」
「さ、探してみます!」
と、スピーカーからきゅるるるる、と間の抜けた音
が聞こえてきた。
「四糸乃?」
「……!」
パペット捜索を始めてから、およそ二時間。
士道は雨に濡れた髪をかき上げながら、隣で
パペットを探す四糸乃の方を向いた。
何やら、やたらと可愛い音が響いてきたする。
四糸乃はまたも怯えるように肩を震わせたが──
少しは士道の声に慣れたのか、水の弾丸や針を
放ってはこなかった。
「……腹減ったのか?」
士道が問うと、四糸乃は顔を真っ赤にしてブンブン
と首を横に振った。
しかし、そのタイミングで、まだもお腹の音が鳴る。
「……っ!」
四糸乃はその場にうずくまると、フードを
引っ張って顔を完全に隠してしまった。
精霊も、お腹は空くようである。
精霊は、そういった生命維持に必要な事柄を全て
霊力でまかなうことが可能と聞いていたが……
そういえば十香も、封印前からかなりの健啖家
だった。
「……どうしたもんかね」
四糸乃がどれくらい前からパペットを探している
かはわからないが、もう昼を過ぎているし、空腹に
なってもおかしくない。士道も、少し小腹が空いて
きたところだった。
士道が指示を仰ぐようにコンコンとインカムを
小突くと、既に大方内容を察しているらしい琴里
から、声が届いてきた。
『──そうね。一度休憩も兼ねて食事をして
きたらどう?』
「ん……そうだな」
士道は前屈みになっていた姿勢を伸ばすと、
軽く伸びをしてから四糸乃に話しかけた。
「四糸乃、少し休憩しよう」
士道が言うと、四糸乃は首を横に振った。
だが、そこでまたもお腹が鳴る。
「……!」
「ほら。無理すんなって。おまえが倒れたら
よしのんが探せなくなっちまうぞ」
四糸乃は少し間考えを巡らせるようにうなってから、
躊躇いがちに首肯した。
「よし。じゃあ……」
言ってから、士道は「あ」と思い直した。
一応財布は持っているが、こんなにびしょ濡れでは、
店に入るのも困難だろう。
士道はしばらくあごに手を当ててから、インカム
を小突いた。
「……なあ、琴里。休憩する場所なんだが、
うちでも大丈夫か?」
言うと、琴里が大仰に驚いたような声を
発してきた。
『わお。少し見ない間に随分大胆になったわね。
押し倒す気なら気を付けなさいよ』
「……おい」
『わかってるわよ。……ま、他に場所もない
でしょうし、特別に許可するわ』
「おう」
士道は短く返事すると、四糸乃に声をかけた。
「じゃあ……行くか」
四糸乃は、無言のまま、小さくうなずいた。
最後まで読んでいただきありがとうございます‼︎
これからも皆さんが『応援』をしていただければ、
『投稿の頻度』が更に上がる可能性があるかも
しれません‼︎
『他の投稿作品』もあるので、是非ともそちらも
楽しんで見ていただければ、ありがたいです‼︎
【報告】
『転生したらスライムだった件 ■■の魔王』の
『最新話』も更新させてもらいましたので、是非とも
よろしくお願いします‼︎
十香と士道が出会う前の四月九日の話を書いた方がいいか
-
書くべき
-
書かなくていい
-
どっちでもいい