どうも皆さん‼︎ 灰ノ愚者です‼︎
『最新話』である『救われた少女と新たな
全部書き直しました。
ちなみにタイトルは『溶ける心と世界』に変更を
させていただきました。
何度も書き直してしまい本当にすみません……(汗)
それと今回の『最新話』で『四糸乃パペット編』は
これにて完結となります。
今回は『22700文字』までの膨大な量を頑張って
書いて投稿ましたが豆腐のようなメンタルの自分は
きちんと書けているのかとても心配になります……(汗)
【お気に入り】や【しおり】、【投票】そして
【感想】などいただければ豆腐のようなメンタルで
脆い自分も更に『創作意欲』が増していきます‼︎
面白く出来ているかどうか心配でいっぱいですが、
一生懸命にたくさん書きました。
最後まで読んでいただければ、ありがたいです‼︎
『──B部隊、先行しなさい』
『了解!』
通信機から、遼子と、それに応ずるAST隊員たちの
声が響いてくる。
折紙は、AST隊員二名とともに、微妙に進行方向を
変えて、〈ハーミット〉を追う本隊から離出した。
目的地点は、およそ一キロメートル先の交差点。
通常であれば目を開けてすらいられないような風圧
や、意識が朦朧としてしまうほどのGを
中和しながら、目的地点にに到達する。
「……っ」
そして空を蹴るような感覚でブレーキをかけ、
方向を転換。
すでに視界には、こちらに進んでくる〈ハーミット〉
と人形の姿が見て取れた。
B部隊三名はそれを確認すると同時に左右に展開、
脳内に命令を出し、スラスターの脇に装備された
二本のアンカーユニットを、地面に向かって射出
した。
合計六本のアンカーユニットから光の糸が伸び、
互いに絡み合って広大な網を形作る。
「──レイザーウェブ展開完了、
を確認」
『よし、追い込むわよ!』
折紙が言うと、〈ハーミット〉を追っていた遼子の
叫び声通信越しに響いた。
「……っ⁉︎」
そこにきてようやく〈ハーミット〉が待ち伏せに
気づいたらしい。
だが──もう遅い。
前方、そして左右には網の目状にに編まれた魔力
の光が。
後方には遼子たちA部隊の追撃が。
そして上方には、レイザーウェブを張り終えた折紙
たちB部隊が浮遊している。
「ぁ──あ、あ、ぁぁ……ッ──」
人形の背に張り付いた〈ハーミット〉が、目を見開き
絶望に染まった声を出す。
『総員──攻撃!』
しかし、ASTに精霊に対する同情や慈悲などは
なかった。
号令とともに、AST隊員全員が、標準装備である
近接戦用高出力レイザーブレイド〈ノーペイン〉
を抜き、〈ハーミット〉に襲いかかる。
──だが。
「ぅ……ぁ、ぁ、ぁぁぁぁぁぁあああああぁぁあ
ぁぁぁぁぁぁ──ッ!」
〈ハーミット〉が叫ぶと同時、その周囲に凄まじい
風が巻き起こった。
あたりに降り注いで雨粒が
〈ハーミット〉を覆うように渦巻いて、吹雪の
ドームを形作ったのである。
「──っ」
折紙は構わず、〈ハーミット〉を守る
〈ノーペイン〉を振り下ろした。
が、すぐに異変に気づく。
結界に触れた位置から、〈ノーペイン〉が、そして
折紙の周囲に
付き始めたのである。
折紙は咄嗟に〈ノーペイン〉の刃を消すと、
一瞬
「……く──」
身体と、着けていた装備が急激に重さを取り戻し、
今まで鮮明に見えていた遠くの景色がぼやけて
見えなくなる。
加えて、街中に充満していた刺すような寒気と、
上空から降り注ぐ冷たい雨粒が、初めて折紙の身体
を襲った。
瞬き程度の間に、温室から極寒の真冬の雪山に移動
させられたようなものである。心臓が驚愕したように
大きく跳ね、折紙の呼吸を苦しくさせた。
「
気絶しそうな脱力感の中、どうにかその文言を
口に出す。
すると、再び折紙の周囲に不可侵の結界が顕現され、
その身体をふわりと浮かせた。スラスターを駆動、
なんとか〈ハーミット〉の結界から逃れる。
『く……ッ、みんな、無事⁉︎』
遼子の声が響いてくる。折紙と同じ方法で
〈ハーミット〉の結界から逃れたのだろう。
しかしそれに応じた声は──折紙を含めて五つ。
またも二人、
ようだった。
「…………」
折紙は、凍りついた道路の上に生まれた吹雪のドーム
に目をやった。
ゴォォォォォォ──と低いうなりを上げながら
渦を巻く、半径一〇メートルほどの半球。
精霊の霊力を帯びた氷弾が荒れ狂う、寒気の砦。
そもそも物質ですらない
の刃を凍り付かせる時点で、ただの吹雪ないことは
明白である。
『ち……厄介ね。どうしたもんかしら』
「──方法がないわけではない」
短く言って、折紙は先ほどからスキャンしていた
結界のデータを、隊員たちに送信した。
『これは……』
「そう。結界が帯びている霊力値は、実は大した
ことはない。こちらが
対して、局所的、一時的に防性を高めている」
『つまり……
凍らされないってこと?』
「恐らく」
折紙が言うと、遼子が難しげにうなってきた。
『あんまり現実的じゃないわね。いくらあの凍結を
逃れられるっていったって、氷の塊が銃弾みたいに
渦巻いてる結界よ。ワイヤリングスーツにも一応は
申し訳程度の防弾処理はされてはいるけど……
中にたどり着くまで身体が保つとは思えないわ』
遼子が言うと、別の隊員が声を上げた。
『では──魔力を帯びていない銃による砲撃は
どうでしょう』
「……それも難しいわね。仮にあの結界を抜けたと
しても、精霊には霊装があるのよ。魔力を纏わせて
いない物理攻撃じゃ、結局精霊に傷を負わすことは
できないわ」
確かに、遼子の言うとおりではあった。
砕くことはできない。
しかし、周囲に纏った吹雪の結界は、その魔力に
反応してくるのだ。
属性の異なる二層なる壁。なかなかに厄介な代物
である。
だか、折紙はスラスターを駆動させると、上空に
飛び上がった
『折紙?』
「こうすればいい」
折紙はそう呟くと、目を伏せて呼吸を整え、集中力を
高めた。
そして自分の周囲、半径三メートルほどに展開されて
いた
広げる。
引くなり、能力値が落ちていく。
半径一〇メートルクラスまで拡大した今の
では、恐らく精霊の攻撃を止めることはできない
だろう。
だが──今はそれでいい。折紙はそのまま近くに
聳えていた雑居ビルに近づくと、
「────!」
──ゴゴゴゴゴゴッ……と。
拡大された
をねじり取り、空中に浮遊させた。
外壁のコンクリートが剥がれ、断熱材が千切れ、
耳障りな音を立てていき鉄筋の基礎を無理矢理に
ねじ切られる。ビルの中に入っていた事務所の備品
だろうか、
バラバラと落ちていった。
相当の重量だ。脳に強烈な負荷がかかり、激しい頭痛
が折紙を襲う。
『お──折紙……⁉︎ 何してんのよあんた』
折紙は構わず、ビルの先端部を浮遊させ、
〈ハーミット〉の結界上空まで飛んだ。
そして、小さく息を吐いてから言葉を発する。
「物量で、押し潰す。これで一瞬結界は解除される
はず。そこを狙って」
『……ったく、相変わらず無茶苦茶を……!』
遼子はため息交じりにそう言ってから、指示を
出した。
『みんな、聞こえた⁉︎ かなり強引だけど他に方法が
なさそうよ。総員、最大出力を維持をしたままの状態
で結界範囲外ギリギリで待機! 結界が消えると同時
に総攻撃よ!』
『了解!』
残ったASTの
折紙は呼吸を整えると、ビルを持ち上げるように
掲げていた手を一気に振り下ろした。
凄まじい重量を誇る鉄とコンクリートの塊が、
吹雪のドーム目がけて落下していく。
──が。
折紙は微かに眉を歪ませた。
今し方投げ落としたビルの先端部に、一本線が
引かれたかと思うと、それに沿って、あの巨大な
コンクリートの塊が、真っ二つに断ち分かれたのだ。
「…………っ」
否──それだけではない。
分割されたされた瓦礫が、一瞬のうちに砕けて跡形も
なく塵となる。
地面に触れる頃には、それらはただの空中に
舞い落ちていき大量の砂埃となって散っていた。
〈ハーミット〉の結界は──未だ、健在。
「これは──」
と、声を発した瞬間、耳にビィー、ビィー、という
耳障りなブザーが届いた。
『折紙! せ、精霊反応が増えたわ!
この反応は──』
遼子の話していた声を聞き終わるよりも早く、折紙は
一〇メートルクラスにまで拡大していた
普段より狭い二メートル凝縮させた。
従って地面に落ちて行く。
瞬間──折紙の目の前に
「……っ!」
範囲を狭め防性を高めた
かかる。
理由は考えるまでもない。目の前に剣を持った少女
が現れたからだ。
「な……っ⁉︎ き、貴様は
「……っ、
折紙はうめくように少女の名前を呼ぶと、腰から
レイザーブレイド〈ノーペイン〉を抜き、身体の
所々にまばらな
「っと──」
十香はその一閃をかわすと、近くのビルの屋上の
フェンスの上に足を落ち着けた。
「なぜ、あなたがここに」
十香は雨に濡れた前髪をかき上げるようにしながらも
驚いた表情を浮かべ
「それはこちらの台詞だ‼︎
なぜ貴様が……‼︎」
折紙にそう聞くと
「自分を相手にしているのに随分と余裕みたい
じゃないか」
「っ‼︎ この声は……まさか……」
折紙は聞いた事がある声に視線を向けて呟くと
幻想的な槍を握っている『白銀の精霊』である
〈アテナ〉はそう言いながら浮遊した状態で十香
と折紙の目の前に現れる。
「十香ちゃんには悪いけど一刻も早く四糸乃ちゃん
の元へ向かわなきゃいけないから急がせてさせて
もらうよ」
「そんなことはさせん‼︎ それに言ったはずだぞ‼︎
シドーの邪魔はさせんと‼︎」
「…………」
十香の口からなぜ士道の名が出たことに疑問を覚え
つつも、折紙は十香と〈アテナ〉のそんな姿を見て
〈ノーペイン〉を握り直した。
『く──なんでここで〈プリンセス〉が。
それに、この状況で〈アテナ〉ですって……?
まさか〈ハーミット〉を助けに来たっていうの?』
忌々しげに、遼子は言う。
そう。AAAランク精霊──識別名・〈プリンセス〉。
だが、問題は〈プリンセス〉ではない。
〈プリンセス〉と話しているそんな『白銀の精霊』
を見て遼子はかつてないほどの恐怖を抱きながらも
ASTの隊長としてのそのプライドが心を奮い立たせて
〈アテナ〉を見据えて警戒を強める。
なぜなら、
白銀の精霊──識別名・〈アテナ〉。
彼女の【
しかも〈アテナ〉だけでも厄介な状態だというのに
〈プリンセス〉からは観測できない精霊の反応が、
微弱ながらではあるが発せられていた。
『──く、〈ハーミット〉はあとよ。総員、目標を
〈プリンセス〉と〈アテナ〉に変更!』
遼子は叫ぶ。──妥当な判断だろう。
確かに〈ハーミット〉を討つチャンスではあるが、
もしもそちらにかまけている間に〈プリンセス〉と
〈アテナ〉に攻撃などされてはひとたまりもない。
結界は確かに厄介だが、距離さえ取れば積極的な攻撃
を仕掛けてこない〈ハーミット〉を後回しにするのは
当然といえた。
それに今一番警戒すべきは〈アテナ〉である。
遼子はそう理解した瞬間、遼子たちは地上から浮遊
して十香と〈アテナ〉の方向へと向かってくる。
そんな遼子たちの姿を見て十香が小さくうなずいた
気がしたのである。まるで──自分の思惑通りにこと
が運んでいるとでもいうように。
しかし、熟考している時間はなかった。
なぜなら、
「今君たちに構っている暇はないんだよね」
〈アテナ〉は折紙や遼子たちASTや十香にそう言う。
そう。四糸乃をあの子を助けるためにこんなところで
ASTや十香に足止めされている場合じゃない。
だから
「強行突破させてもらうね」
〈アテナ〉はそう言って右手に握っていた幻想的な
白銀の槍を上に掲げて
「──〈
自分の最強の武器である“天使”の名前を呟くと
白銀の槍は光輝き始める。
そして
「【■■】」
と、言った瞬間、上空から無数の白銀の槍が現れて
「安心していいよ。手加減はしてあげるから」
〈アテナ〉がそう言った瞬間、上空に浮かんでいる
無数白銀の槍の鋭い刃はまるでそれが合図だったかの
ようにその無数白銀の刃は雨のように遼子や折紙たち
ASTや十香に目掛けて容赦なく一斉に降り注いだ。
「く──」
折紙は上空から降り注いでくる無慈悲なる無数の
白銀の槍を見た瞬間、苦しそうな声を出しながらも
手に持っていた光の刃を強く握り直し、無数の鋭い
白銀の刃に応戦するために空を蹴る。
「ぐ──ぬ……」
十香も上空から降り注ぐ無数の白銀の刃を見た瞬間、
難しそうな表情をしながらも折紙と同じように応戦
するためにビルのフェンスを蹴って、再び剣を振り
上げて、白銀の精霊、〈アテナ〉に目掛けて容赦なく
大きく振りかざす。
「……な……!」
何とも奇妙な光景だった。
地面に吹雪が渦巻き、綺麗な半球形を作っており──
その周囲に、ASTの
武器を構えている。
「なんだ──ありゃあ……っ!」
『……四糸乃が構築した結界だね。
ふむ、よくできている』
士道が言った瞬間、令音が冷気のドームの解析結果を
簡潔に説明してきた。
魔力──つまりは、ASTがCR-ユニットで出力した
攻撃に対応して
だという。
今度は、琴里の声が右耳の鼓膜を震わせた。
『困ったことになったわね。あれじゃあ、誰も四糸乃
に近づけないわね』
普通に考えれば、そうだ。
だが──士道はごくりと唾液を飲み下すと、
「いや」と唇を動かした。
一つ。まだ、気になることがあったのである。
「試してみないとわからないけど……そうと限らない
かもしれない」
『なんですって?』
と、そこで前方の光景に変化が現れた。
折紙が空に浮遊したと思うと、なんと近くのビルの
先端部をむしり取り、四糸乃の結界の上空にそれを
運んでいったのである。
「な……」
『──ち、あれで結界を四散させようって腹?
随分と思い切った真似をしてくれたわね』
琴里は、忌々しげに言う。
「ど、どうすれば──」
と、士道が言った瞬間。
『……シン。どうやら最悪の状態になったみたいだ』
「それは、どういうことですか? 令音さん?」
令音が士道にそう伝えるとそれは一体、どういう意味
なのかまったくわからず令音に質問をすると
「……どうやらASTは討伐対象を四糸乃から十香と
〈アテナ〉へと変更したようだ」
「そ、そんな──」
令音の言葉を聞いて士道は驚いていた。
『なるほどね……となると、ASTが全滅するのが
遅いか早いかの違いになるわね』
「そ、そんなになのか……?」
『ええ。だから前にもちゃんと言ったでしょ?
〈アテナ〉は世界各国の
と呼ばれていた討伐隊をたった一人で軽々と倒して
しまうほどの最凶最悪の精霊だって、そんな彼女を
ASTなんかが太刀打ちなんかできるはずがないのは
士道だって十香の時に見ていたから分かっている
はずでしょ?』
士道は琴里の説明で今どれだけ危険な状態なのかを
知った。
精霊・十香。ようやく戦いの輪の中から抜けだす
ことができた少女。
そんな少女が、四糸乃助けるために──そして
きっと士道の決意を支えるために、再び折紙たち
ASTや〈アテナ〉がいるそんな危険な戦場へと
自ら飛び込み戦っているのだ。
その覚悟に報いる以外に、今の士道に行動は存在
しない──!
士道は身を低くすると、〈
まま、四糸乃の結界へと猛進した。
そしてその途中、士道は最後の確認のため、琴里に
問いを発した。
「──琴里。確かめたいことがある」
『なに?』
「あまりにも気になることが多すぎたもんだから、
一つ……訊き忘れたんだ。俺、十香の力を封印を
した日──
そう。士道の記憶が確かなら。あの日、士道は
折紙に誤って狙撃をされていた。
そして、常人であれば助からないであろう傷を、
負った。
一拍の沈黙のあと、琴里が答えてくる。
『ええ。──事実よ』
「あれは……一体何なんだ? あれも、原因不明で
備わってる俺の能力ってやつなのか?」
『……半分正解、半分ハズレ、かしら』
「っていうと?」
問うと、琴里が少し悩むようにうなってから言葉
を続けてきた。
『士道に備わっている能力っていうのはその通りよ。
身体の致命的なダメージを受けた際に、焔が身体を
焼き、再生させる。アンデットモンスター顔負けの
チート能力よ。──ただ、こっちは、原因不明って
わけじゃないわ』
士道は目を丸くした。
だが──今は時間がない。
「──今は、その原因ってのは訊かないでおく。
ただ一つ改めて答えてくれ。俺は、致命的な怪我を
負っても、回復することができる。それに間違いは
ないか?」
『──ええ。肯定するわ』
琴里が答えてくる。士道はふうと息を吐いた。
「……よかった。あれが俺の幻覚なら、今から死にに
いかなきゃならないところだった」
『……っ、士道あなたまさか』
と──琴里が言いかけたところで、上空に浮かんだ
ビルが十香によって切り刻まれ、コンクリートの欠片
がさらに砕けて跡形もなく塵となってあたりに散って
降り注いだ。
すぐに、周囲にいたAST隊員たちが、目標を十香と
〈アテナ〉に変更し、空中に浮遊していく。
それと入れ替わるような格好で、士道の乗っている
〈
というか──勢い余って、結界の先端から
突っ込んでいった。
「いぃ……ッ⁉︎」
がっくん、と強烈な揺れが士道を襲う。
だが、いつまでも驚いてはいられなかった。
〈
悲鳴のように甲高い音を立てながら凍りついていった
のだった。
きっと、〈
「やべ……っ」
士道は慌てて〈
渦巻いた吹雪の塊の前に立った。
荒れ狂う氷嵐の結界。目の前で見ると、迫力が段違い
である。
「この中に──四糸乃が」
呟いてから、パペットをポケットから、服の中に
移動させる。
それを身体で覆うように前屈みになり──士道は
足を一歩前に踏み出した。
『士道、待ちなさい。何をするつもり?』
右耳に、抑止の言葉が入る。だが、士道は足を
止めなかった。
『──っ、生身で結界に入るつもり? 回復頼りで?
無謀すぎるわ、やめなさい』
司令官モードとは思えない殊勝な言葉に、士道は
苦笑した。
「おいおい……俺が撃たれたときはおまえ全然動揺
しなかったって聞いたぞ?」
『あのときとは状況とは違うわ。吹雪が荒れている
領域は、結界内の外周およそ五メートル地点まで。
五メートルよ? その距離を、散弾銃撃たれながら
進むようなものよ? しかも、その範囲内霊力を感知
なんかされたら、十香の〈
して凍りつかされるわ』
まくしたてるように、琴里が続けてくる。
『言ってる意味がわかる? 結界外縁にいる間は、
傷が治らないって言っているのよ。一発きりの銃弾
とは違うわ。途中で力つきたら、間違いなく
死ぬわよ⁉︎』
「……霊力──か。俺の回復能力ってのは、精霊の力
なのか」
『……ッ』
琴里が、息を詰まらせるのが聞こえてくる。
しかし、士道は足を止めなかった。
確かに馬鹿な行動かも知れない。
だが、止められなかった。
だが、士道は約束したのだ。
四糸乃を救うと。自分が──四糸乃のヒーローに
なると。
士道は深呼吸をしてから、結界内部に足を
踏み入れる。
『士道──! 士道! 止まりなさい!』
琴里が、いつになく必死な様子で叫んでくる。
『──止まって……ッ、おにーちゃ──』
しかしそんな声を最後に、士道の耳には、凄まじい
吹雪の音しか聞こえなくなった。
「ぅ、ぇ……っ、ぇ……っ」
結界の中心部で、四糸乃は〈
うずくまり、一人泣いていた。
吹き荒れる氷弾の中とは思えないほどに、静かな空間
である。ただただ、四糸乃の嗚咽と洟をすする音だけ
が、いやに大きく反響した。
とても怖くて外に出られない。でも、ここは──
とても、寂しかった。
「よ、し、のん……っ……」
涙で濡れた声で、友だちの名前を呼ぶ。
答えてくれるはずかないのは、四糸乃もわかって
いた。だが、呼ばずには──
『は・あ・い』
「…………ッ⁉︎」
四糸乃はビクッと肩を振るわせると、バッと顔を
上げてあたりを見回した。
「──!」
そして、四糸乃は涙を拭って目を見開いた。
なぜなら結界中心部からと外縁部の境目あたりに、
見慣れたパペットが確認できたからだ。
「! よしのん……⁉︎」
四糸乃は叫ぶと、〈
そちらにパタパタと走っていった。
四糸乃が見間違えるはずがない。
それは紛れもなく、数日前にいなくなってしまった
四糸乃の友だち『よしのん』だった。
だが──
「……ひぃ……!」
バタン! と。
『よしのん』の後ろから、誰かが倒れ込んできて、
四糸乃は思わず足を止めてしまった。
否──正確には、今倒れてきた人が、『よしのん』
を手に着けているようだった。
容貌は、よくわからない。
それというのも、その人が全身血塗れ傷だらけで
倒れ伏していたからだ。
「っ……」
きっと、四糸乃の結界を無理矢理通ってきたの
だろう。その男の人が倒れ込んだ場所から夥しい
量の血が流れている。
四糸乃の目にも明らかだった。これはもう、
死体に近い。
しかしすぐに、四糸乃はその認識を改めばならなく
なった。
なぜなら──突然、その半死人の身体が淡く輝いた
かと思うと、身体にできた幾つもの傷口を舐め取る
ように、体表を焔が這ってきたからだ。
四糸乃が呆気に取られていると、その人物の身体から
傷が消え去った。
そして──ようやくその容貌が見てとれるように
なる。
「……⁉︎ 士道さ……っ」
四糸乃は、驚愕に染まった声を発した。
そう、そのボロボロだった人間は、あの
だったのである。
士道はごろん、とその場に仰向けになると、
ふぅぅぅぅ……と深ぁく息を吐き出した。
「し……死ぬかと思った……」
ギリギリのところで結界内部に到達できた士道は、
大きく胸を上下させて深呼吸をし、止まりかけた
心臓の鼓動を落ち着けてから、むくりと身体を
起こした。
外部は機銃掃射のような猛吹雪だというのに、
中心部は実に静かだった。なんとも奇妙な空間
である。士道はなんとなく、かまくら内側を
思い出した。
そしてその中には、巨大な人形と、目をウサギみたい
に真っ赤に染めた女の子がいる。
「──四糸乃!」
士道は名前を呼ぶと、ウサギのパペットを掲げる
ようにしながら立ち上がった。
「約束通り、おまえを──助けに来た……ッ!」
すると四糸乃は目を丸くしたのち、
「う、ぇ、ぇぇぇぇ……」
目に涙を溜め、泣き出してしまった。
「うわっ……っ、ちょ──な、泣くなって。
な、なんか俺いけないとこあったか……?」
士道があたふたと手を動かすと、四糸乃がふるふる
と首を振った。
「違……ます、来て、くれ……嬉し……て……っ」
そう言って、再び「うぇぇぇぇ……」と泣き出して
しまう。
士道はそんな様子に苦笑しながら、右手で四糸乃の
頭を優しく撫でた。
そして、左手に装着していたパペットを、ぴこぴこと
動かしてみる。
『やっほー、お久しぶりだね。元気だったかい?』
なんて、口をもごもご言わせながら、見よう見まね
で腹話術をする。
拙さ極まる芸だったけれど、四糸乃は嬉しそうに
首を何度も前に倒した。
普通に考えれば、おかしな光景なのかもしれない。
だってあくまで『よしのん』は、四糸乃の腹話術で
動く人形のはずだ。
だか──
士道は、先刻の令音の言葉を思い返した。
『……調査の結果、こちらがモニタリングしていた
精神グラフの後ろに、もう一つ非常に小さな反応が
隠れていることがわかった』
「ええと……つまりそれって──」
『……要するに、パペットを着けてるときにだけ、
四糸乃の中に
ということさ』
「! そ、それって……四糸乃自身は知っている
んですか?」
『……どうだろうね。ただ一つ確かなのは、デパート
で君が会話したのは、四糸乃ではなくパペットを
介して発現していた
四糸乃自身はそのとき、全ての対応をよしのんに
任せ、意図的に心を閉じていた状態に近い。道理で
キスをしても力が封印できないわけだ』
「……っ」
『……それともう一つ。よしのんの発生原因に
ついて、興味深いことがある』
「興味深いこと?」
『……ああ。己以外の人格を自分の中に生み出して
しまう理由はいくつかあるが──ポピュラーなのは、
といったところだろう。要は、辛い思いをしている
のは自分ではなく別の誰か、と思いこむために、
もう一つの
「それって……やっぱり、ASTに命を狙われるのが
辛くて──」
『……いいや。──なんとも信じがたいことに、
この少女は、自分ではなく、
ために、
「────っ」
『……シン。きっと、
こんなにも優しい少女が救われないのは……
嘘だろう』
───そんな、やり取りを。
「…………」
「ありが、とう……ござ、ます」
と、不意に、四糸乃が頭を下げてきた。
「え?」
「……よしのんを、助けて、くれて」
士道は一瞬頬をかいてから、「ああ」とうなずいた。
「次は──四糸乃。おまえを、助けてやる」
「え……?」
四糸乃が不思議そうに返してくる。士道は四糸乃と
目線を合わせるように、その場に膝突いた。
インカムからは、何も聞こえてこない。きっと結界
を通る際に壊れてしまったのだろう。
四糸乃の精神状態が知れないのは痛かったが、
仕方がない。
どちらにしろ、やるしかないのだ。
パペットを失った四糸乃との触れ合いと、
今このときの会話と。
それだけの時間で、士道が四糸乃に最低限の信頼を
得ていると信じて。
「──ええと、だな、四糸乃。おまえを助けるため
には──そう、一つ、やらなきゃいけないことが
あるんだ」
「なん……ですか?」
士道は緊張に渇くのどに唾液を流し込んでから、
言葉を続けた。
「……その、変な奴だと思わないでくれ。
……キスって、覚えてるか?」
四糸乃が一瞬キョトンとした顔を作り、すぐに首を
縦に振ってきた。
「……っ、そ、そうか。ええと──その……おまえを
助けるためには、それをしなきゃならないんだ。
……いや、ホントに変な意味じゃないんだぞ!
これは──」
と。
「─────え?」
そこで士道は言葉を止めた。
理由は単純、四糸乃はふっと目を伏せ──
士道の唇にちゅっ、と口づけてきたからだ。
瞬間、身体の中に何やら温かいものが流れ込んでくる
感覚が、士道を襲った。
「…………っ⁉︎ よ、四糸乃……?」
「……?」
四糸乃が、小さく首を傾げた。
「違い……ました、か……?」
「っ、い、いや……違わない……けど」
士道が言うと、四糸乃はこくりと首肯した。
「士道、さんの……言うことなら、信じます」
と、その瞬間──四糸乃の後方に佇んでいた
〈
光の粒となって空気に溶け消えていく。
そして……士道と四糸乃を囲っていた吹雪の結界
もまた、急激に勢いをなくして掻き消えていった。
四糸乃の肩が、驚いたようにビクッと震える。
「………っ、し、士道さ……、これ──」
四糸乃は何か何だかわからないといった様子で、
目をぐるぐると回した。そして半裸状態の身体を
隠すように、身を屈める。
なんだかそんな反応されると、士道も改めて
恥ずかしくなってきてしまった。
「あ……ああ、うん、ええと……いろいろと言いたい
ことはあると思う! で、でもとりあえず今はだな──」
と──そこで。
「ん……」
四糸乃が、眩しそうに目を細めた。雲の切れ間から
──太陽の光が、注いできている。
「暖か──い……」
まるで初めて太陽を目にしたかのように、四糸乃が
小さな驚嘆を発する。
いや、本当に初めてかもしれない。
士道は思い起こした。水と冷気を操る四糸乃の性質
なのかわからないが、彼女がこちらの世界に現れた
ときはいつも、雨が降っていた気がするのである。
「き、れい……」
ぼうっと、呟くように。
四糸乃が、天を見上げて言う。
士道も、それにつられて顔を上にやった。
そして、すぐに四糸乃が見つめていたものを
見つける。
灰色の雨雲が掻き消えた空には──見事な虹が、
かかっていたのである。
──だが、その余韻は長く続かなかった。
「無事か、シドー!」
上空から自分の名前を呼ぶ独特のイントネーション
の声が聞こえてきた。声の主は考えるまでもない。
「十香!」
そう。十香である。十香が
ながら士道たちのいる場所へと降りてきたのだ。
「士道。その姿はどうしたのだ。酷い有様では
ないか」
「あ……」
十香に指摘されて、士道は後頭部かいた。
士道の服は今、自らの血で真っ赤に染まり、
ついでに穴だらけになっていたのだ。
「そういう十香だってボロボロじゃないか⁉︎」
「む? これのことか?」
十香はそう言って自分自身の服を見ながらそう言う。
士道ほどではないが十香の姿は服は破れて全身は
ボロボロになっていた。
「ひ……っ」
四糸乃は十香の姿を見た瞬間、怯えたような声を
上げて士道の陰に隠れる。
この様子からしてどうやら四糸乃はまだ十香ことが
苦手らしい。
「大丈夫だ四糸乃。こいつは十香。俺と一緒に──
おまえを助けてくれたんだ」
士道が言うと、四糸乃は恐る恐るといった調子で
十香の顔に目をやった。
「十、香……さん」
「……ぬ」
十香はなぜか少し複雑そうな表情で四糸乃を
見たあと、「うむ」と小さくうなずいた。
「それよりも、士道。今すぐ四糸乃を連れて
この場から逃げろ……」
「ど、どういう意味だよ? 十香……?」
「早く行け‼︎ でないと──」
十香はかつてないほどの真剣な表情で士道にそう言う
が士道はなぜ十香そう言うのかわからないのか戸惑い
ながらも十香に聞くが十香は余裕がないのか必死に
なって士道にとにかく四糸乃を連れて逃げるように
言っていると
「やっと、見つけた。こんな所にいたんだね」
上方からそんな声が士道の耳に聞こえてきたので
士道は声がする方へと顔を上げて視線向けると
「あ、〈アテナ〉……」
白銀の精霊、〈アテナ〉が士道たちの前にいた
のである。
「その様子だと封印したんだね」
〈アテナ〉はそう言ってゆっくりと地面に着地する。
「自分があれほど言ったのに封印するなんてね。
まったく……」
本当に余計なことをしてくれたね。
と、〈アテナ〉が冷たい声で士道にそう言った瞬間、
右手に握っていた〈
「シドー‼︎」
「士道、さん……‼︎」
そんな状況を見て十香と四糸乃は驚いて大きな声で
士道の名前を叫び呼んでいた。
「そもそも精霊の力を封印なんかして一体、
何を企んでいるの? そして何が目的なの?」
〈アテナ〉は士道にそう言って質問をする。
「企んでなんかいない‼︎ 俺はただ十香や四糸乃たち
のような精霊がこの世界で当たり前のように幸福に
生きていけるようにしてやりたいただだけだ‼︎」
「どんな精霊でも?」
「ああ。何があっても絶対に救う‼︎」
士道は〈アテナ〉にそうはっきりと言うが
「ふーん。じゃあ、もしも
を
「……っ! そ、それは……」
〈アテナ〉は士道にそんな質問をする。そんな質問
に士道は言葉を詰まらせすぐには継げなかった。
なぜなら士道にとって
なく
いるのが許せないと思ったから妹の琴里がいる組織。
〈ラタトスク〉に協力したのだ。だが、士道にとって
そんな
考えてもいなかったのだ。
「ほらね。そういう
それどころか答えることもできないそんな薄っぺらな
『
〈アテナ〉はそう言って
「〈
自分の天使の名前を呼ぶ。
すると幻想的とも思える白銀の槍、〈
掲げると白銀の槍から白銀の光が放たれる。
そして
「そんな君の偽善に他人を巻き込むな」
「………ッ‼︎」
〈アテナ〉が冷たい声でそう言うと〈アテナ〉の
背後の上空から大量の白銀の槍が現れてその鋭い
白銀の刃は全部、士道に向けられていた。
「シドー‼︎」
そんな光景に十香は士道の名前を叫び士道の前
に立つ。
「十香……⁉︎」
「安心しろ。何があってもシドーと四糸乃は必ず
私が守ってみせる‼︎」
十香はそう言ってはくれるが今の十香の状態では
とてもじゃないがあれだけの量の槍を凌ぎきれる
とは思えない。
士道がそう考えていると
「こ、これ以上……士道、さんと十、香さん……
を傷つけなでください……ッ‼︎」
四糸乃が両手を広げて士道と十香を庇うように
前に立っていた。
「四糸乃‼︎」
士道は自分と十香を守ろうとしているそんな四糸乃
に声を出さずにはいられなかった。
しかも四糸乃は霊力をさっき封印したばかりなので
今の四糸乃はただの女の子と同じ状態なのだ。
四糸乃にとってとても怖いはずなのに勇気を出して
〈アテナ〉の前に立って自分と十香を守ろうとして
くれているそんな今の状況を見て本当に無力な自分
に嫌になってしまう。
「…………」
士道がそう考えているとなぜだか〈アテナ〉が動き
を止めて、そして右手に持って掲げていた〈
をゆっくりと下ろすと上空に浮かんでいた大量の
白銀の槍は一瞬にして消えた。
「それが、四糸乃ちゃんが自分で選んだ道
なんだね……」
〈アテナ〉は四糸乃を見てそう呟くと士道たちに
背を向ける。
「四糸乃ちゃんのその勇気に免じて今回は引いて
あげる。そして……」
もしも自分を攻略して霊力を封印をしようと考えているのならば、それは諦めて……君のそんな『
〈アテナ〉は士道に警告するように言葉を言って
伝え終わったのか「じゃあね」とそう一言だけを
言って浮遊して士道たちがいるその場を後にした。
「お、俺は……」
「シドー……」
「士道、さん……」
士道は先ほどの〈アテナ〉のその時の言葉に反論が
できなかったのがとても悔しかったのか顔を俯かせて
いるとそんな士道を心配したのか十香と四糸乃が士道
に声を掛けると
「のわ……⁉︎」
「……⁉︎」
「シドー……‼︎」
この感覚には覚えがある。〈フラクシナス〉の
転送装置である。
きっと琴里が、封印完了したのを確認して回収
してくれたのだろう。
「……っと」
一瞬あとには、士道の視界は、氷に包まれた街では
なく、見慣れた〈フラクシナス〉の艦内になって
いた。
「……⁉︎ ……⁉︎」
四糸乃は、さすがに目を白黒させている。
士道はそんな四糸乃を見ていると
「シドー……無事か?」
声がする方へ振り返るとそこには十香がいたがよく姿
を見るところどころ切り傷や焼けこげた来禅高校の
制服を着ていた十香が心配そうに士道の名前を
呼んだ。
「十香こそ大丈夫かなのか? かなりボロボロに
なっているみたいだけど?」
「うむ。この程度、大したことはない」
士道と十香そんな話のやり取りをしていると
「ん……?」
士道は眉をぴくりと動かした。
何やら廊下の向こう側から、バタバタともの凄く
けたたましい足音が響いてきたのである。
そしてすぐに転送スペースの扉が開き、息を荒々しく
した琴里が入ってきた。
「こ、琴里……?」
急な闖入に士道が驚いていると、琴里が士道の全身を
睨めるように見つめてきた。
そして、
「この──、
「ひぐ……ッ⁉︎」
琴里は思い切り振りかぶると、士道の鳩尾に、
強烈なパンチを放ってきた。
しかも絶妙にひねりが入っていた。見事なまでの
コークスクリューだ。
「ぐは……っ、な……何しやがる!」
「馬鹿な真似をして……っ! あなたは私の言うこと
だけ聞いてればいいのよ!」
「っ、何を──」
士道は避難の声を上げようとしたが──途中で止め
られてしまう。
理由は単純。今し方パンチを放ってきた妹様が、
士道の胸元に顔を押し付け、そのまま身体に手を
回して、ぎうー、と力を込めてきたからだ。
「……ちゃんと、回復限界も計算してるから……!
私の言うとおりに動いてれば、絶対に安全だから
……っ」
「琴、里……」
士道は息を吐くと、琴里の頭を撫でてやった。
「すまん、無茶した」
「……本当に考え無しよ。アメーバだってもう少し
思慮深いわ。この半細胞生物」
琴里は、顔を押し付けたまま、ちーん! と
かむと、ようやく身体を離す。
シャツの胸元に鼻水を塗りつけられた士道は、
頬をかきながら苦笑いした。
しかし琴里は気にする素振りも見せない。というか
──士道の胸元から顔を離した瞬間、いつもの冷徹な
司令官殿に戻っていた。
「──まったく、勝手に動いて。……全員頭から爪先
まで検診よ。こっちに来なさい」
言ってぷいと顔を背け、廊下に出ていってしまう。
「はは……」
士道は力は無く笑ってから、十香と四糸乃に顔を
向けた。
「よし……じゃあ、行くか。……って、ん……?」
なぜだろうか、十香が、どこか浮かない顔で、
士道のことを見てきていた。
「十香……? どうかしたか?」
「! な、なんでもない! 早く行くぞ!」
言うと、十香はのしのしと歩いていてしまった。
「なんだ……あいつ」
士道は、そう言ってから、四糸乃とともに十香の背を
追って足を動かした。
「な……なんじゃこりゃぁぁぁぁッ!」
四糸乃の力を封印した日から、二日。
検査を終えた士道と十香は、ようやく家に帰ってくる
ことができたのだが……その日、朝起きてみると、
五河家の隣に、マンションのような建物が聳えていた
のである。
二日前まで空き地だったスペースに、突如として、
ドン、と。
まるでキツネかタヌキにでも化かされているかの
ようだった。
「何って……言ってなかったけ?
を造るって」
と、後方から琴里が、眠たげに目を擦りながら
言ってきた。
「……! 琴里、まさかこれがそうだって
いうのか……?」
「ええ。見た目は普通のマンションだけれど、
物理的強度は通常の数百倍、
から、霊力の耐性もバッチリよ。多少暴れても、
外には異常は漏れないわ」
「いや、そういうを聞いてるんじゃなくてだな……!
一体いつの間に造ったんだよこれ……! 一日二日
じゃできねえだろこんなの」
「やあねえ。陸自の
ビルを一晩で直しちゃうじゃない」
「な……っ」
言われてみればそうである。きっとこれも、
とやらを使った結果なのだろう。
「……ってことは、住居できるまで、ってのは結構な
詭弁だったわけだ」
「人聞きの悪い。十香が外部で暮らすための試用期間
でもあるって言ったでしょ」
「……ぬ」
いろいろと腑に落ちなかったが、きっと言い返しても
無駄だろう。
琴里は身を翻すと、家の方に足を向けた。
「──というわけで。明日から十香は隣の家で
暮らしてもらうことになるわね。もう十香には
言ってあるわ。今頃荷造りをしてるんじゃない
かしら?」
「あ、ああ……そう、か。そうだよな……」
士道は頬をかいた。
まあ、最初から住居できるまでの間の話だったし、
士道の精神衛生もようやく安定しそうであったが……
いざこの日がくると、少し寂しい気がしないでも
なかった。
「あら何士道。もっと十香と暮らしたかったの
かしら?」
「! や、べ、別にそういうわけじゃ……」
士道は慌てて否定したが、琴里は小さく肩をすくめる
のみだった。
「ま、何か間違いを起こしたいのであれば、今日明日
あたりが最後のチャンスよ」
「な……何言ってやがる……!」
「まー怖い。退散退散」
士道が顔を赤くして怒鳴ると、琴里がぴょんと跳ねて
家の中に入っていった。
「……ったく、琴里のやつ」
士道はやれやれと頭をかくと、ため息を吐いてから
家に足を向けた。
と──
「ん……?」
士道は不意に眉を上げた。
可愛らしいワンピースを纏い、頭に顔を覆い隠す
ようなキャスケットを被った少女が、飛び跳ねる
ように走ってきたからだ。
「! 四糸乃⁉︎」
士道は少女の名前を呼んだ。身に纏っていたのは
何しろ、少女は左手に、ウサギのパペットを着けて
いたのだから。
『やっはー、士道くん』
パペットがパクパクと口を動かしながら、甲高い声
を響かせてくる。
『やー、やっと会えたねえ。助けてもらったのに
お礼言えなくてごめんねー』
「あ、いや……それはいいんだが。なんでこんな
ところに? もう検査は終わったのか?」
『んー、第一検査だけはね。まだあるらしいけど、
士道くんにお礼が言いたくてさ。特別に少しだけ
外に出してもらったんだー』
言って、〈フラクシナス〉を見るように、パペット
が空を仰ぐ。
『ま、そういうわけで、検査終わったらまたデート
しよーねー』
「あ、ああ……そうだな」
『ふふ、うんじゃ、まーたね』
パペットが小さな手を振る。
と、四糸乃がぴくりと肩を揺らすと、躊躇いがちに
顔を士道の方に向けてきた。
「ん……? どうした?」
「──あ、の……」
と、士道はその声を聞いて眉を跳ね上げた。
それは『よしのん』ではなく、紛れもない四糸乃
の地声だった。
「また……おうちに、遊びに、行っても……いい、
ですか……?」
言って、恐る恐るといった様子で士道の方に視線を
追ってくる。
「お……おう、いつでも来い!」
士道が答えると、四糸乃は顔を明るくしてから
頭を下げ、パタパタと走っていった。
『ふふっ、偉い偉い。頑張ったねー』
「……うんっ」
なんて会話を、パペットと交わしながら。
「……はは」
士道は小さく息を吐くと、唇の端に笑みを浮かべた。
そういえば、パペットがある状態で『四糸乃』が
喋ったのは、初めてかもしれない。
なぜかわからないけど……少し、嬉しかった。
「さて……と」
軽く伸びをしてから、家の中に入っていく。
と、階段を上がり、部屋に入ろうとしたところで、
士道は小さな声を上げた。
廊下の奥に位置する客間の扉がゆっくりと微妙に
開き、そこから、十香の顔が半分ほど覗かせて士道
の方を見ていたのである。
「……な、なんだ」
「………」
士道が眉根を寄せながら言うと、十香は無言のまま、
扉の隙間から手を出し、ちょいちょい、と手招きを
してきた。
「こ、こっちにこいって?」
「………」
十香が、こくりとうなずく。そしてそのまま、
部屋の中に引っ込んでいってしまった。
「ええと……」
士道はしばしの間困惑した表情を浮かべながら、
ゆっくりとそちらに歩いていった。
そして、一応、コンコン、とノックしてから
扉を開ける。
十香は、部屋の左手側──壁際に置かれた棚の前
あたりに立っていた。それと向き合う形になる
ように、部屋の中程にまで歩みを進める。
「何か用か? 十香」
士道が問うと、十香は小さく唇を噛むようにしてから
顔を上げてきた。
「……ん。琴里から聞いているかもしれないが、
明日から、隣の家に住むことになった」
「あ、ああ……そうらしいな」
「それで……ん、今のうちに、シドーと話して
おきたいことがあるのだ」
「話?」
「……うむ?」
十香が、何か言いだしづらそうに、目線を微妙に
逸らす。
「昨日、検査のとき、琴里や令音にいろいろと、
聞いた」
「──! え、ええと……いろいろっていうと……」
「ん……琴里たちは、私たち精霊を助けようとして
くれていて……シドーもそれに協力しているのだと」
十香は心拍を落ち着けるように深呼吸してから、
士道に向き直ってきた。
「話というのは、関連してだ。──シドー。
お願いだ。もし今後、私や四糸乃のような精霊が
現れたなら、きっと救ってやってくれ」
「え……」
士道は、目を見開いた。
「琴里が言うには、まだ精霊は〈アテナ〉を含めて
数体も確認されているらしい。きっとその中には、
私たちのように、望まぬままに戦いに巻き込まれて
いる者もいるはずなのだ。──そんなのは、可哀想
ではないか」
十香が、どことなく寂しいそうな笑顔を作りながら、
言う。
「だから頼む。シドーの力で、そういう精霊たちを
救ってくれ。……あのとき、私を、助けてくれた
ように」
「………っ」
士道は、唾液を飲み下すと、改めて十香の顔を
見やった。
「……その、なんていうか。ん……」
士道は額をコンと小突いた。
十香と四糸乃の件で、腹は決まっているはずなのに、
〈アテナ〉の『あの時の言葉』を思い出してしまう。
『もしも
しても少年、君はその
できるの?』
そんな〈アテナ〉の言葉を思い出して士道の頭の中に
浮かび一瞬だけ止まって躊躇ってしまう。だが、士道
はそんな不安をまるで振り払うかのように小さく首を
振ってから口を開いた。
「──ああ。そのつもりだ」
「…………」
十香は、望み通りの答えが得られたはずなのに、
なぜか、複雑そうな顔をして笑った。
「ん……恩に着る。あと……もう一つ、
いいだろうか?」
「おう、なんだ。言ってみてくれ」
「ん……」
と、十香が、何かモゴモゴ口を動かしながら、
ふっと顔をうつむけてしまった。
「え? 何だって?」
何かを言っているようなのだが──聞き取れない。
士道は耳を澄ますようにしながら十香の方に
足を踏み出し──
「……⁉︎」
急に顔を上げた十香に身体を寄せられ、
息を詰まらせた。
十香は士道の首に腕を回すと、そのまま士道を近くに
あったベッドに押し倒した。
そして──
「んぐ……っ⁉︎」
一瞬、逡巡のようなものを見せてから、十香は、
おもむろに自分の唇を士道の唇に合わせてきた。
突然のことに、脳が混乱して悲鳴を上げる。
もしかしてまだ夢の中にいるのではないかとか、
もしそうだとしたならこの夢は何のメタファー
なのでしょうフロイト先生とか、詮ない思考が
一瞬のうちに駆け巡る。
だが、頬をつねって痛覚を確認するまでもなく、
士道の全身に配備された感覚器が、それは現実だ!
とひっきりなしに主張を続けていた。
鼻腔をくすぐる女の子特有の甘い香り。目前に迫った
十香の貌。身体全体にのしかかった心地良い負荷。
思わず抱きしめたくなってしまうような、柔らかい
肢体。
そして──唇に伝わるえも言われぬ感触と、自分の
ものではない唾液の味。
それらがない交ぜになって、これ士道の
していった。
抵抗も順応もできぬまま、数十秒のときが過ぎる。
そこでようやく──十香が唇を離して顔を上げた。
「ぷは……っ」
どうやらキスの間中、息を止めていたらしい。
息継ぎでもするように、十香が息を吐く。
そしてマウントポジションを取ったまま、士道の目を
ジッと見てくる。
「と、十香……何を……」
士道が声を発すると、十香は視線の位置を変えぬまま
続けてきた。
「……今回は、これで手打ちにしてやる」
「え……?」
士道が間の抜けた声を返すと、十香は恥ずかしそうに
目を逸らした。
「……なぜだろうな。ただ唇を触れさせるだけの行為
なのに……悪くない感じがする。不思議と──シドー
以外の人間とは、したいとは思わんのだ。……それと
同じ……なのかどうかどうかはわからないが、シドー
が……その、ビルとやらの中で四糸乃とキスをして
いたときは、なんというか……いやな感じがした」
士道が反応できずにいると、十香は恥ずかしそうに
続けた。
「……だから。その、なんだ。……もう、私以外
とは、するな」
「…………っ、え、ええと──」
どうやら、十香は精霊の力を封印するための方法
を聞かされていないらしい。なんという
無知な要求をしてくれる。
「返事っ!」
「お……おうっ」
しかし十香に気圧され、士道はそう言ってしまった。
陸上自衛隊・
ルームには今、非戦闘員をも含めたASTメンバーが
居並んでいた。
先日の作戦の報告会、及び近隣地域で観測された
新たな精霊の反応についての作戦会議のため、遼子に
よって集められていたのである。
「…………」
そんな中で、自衛隊常装姿の折紙は無言まま、
不機嫌な心地を抑え込むように、机の上に置いて
いた手を眺めた。
──二日前。
〈アテナ〉と〈プリンセス〉の妨害によって結局
〈ハーミット〉を取り逃してしまった。
しかも〈アテナ〉は〈プリンセス〉を含めた大勢の
AST隊員たちを相手にたった一人で空中から大量の
白銀の槍を出現させて〈プリンセス〉やASTの隊員
たちなど関係なくまるで閃光のようなもの凄い速さ
で白銀の槍を降り注がせてきたのだ。
遼子や折紙たちAST隊員たちは急いで
その白銀の槍の攻撃を防ぐためにすぐさま展開を
させるがそれはまるで意味を為さなさず軽々と見事
に貫通して多くAST隊員たちを戦闘不能へとしたの
だった。
そんな激しい戦闘の中、その場にいたはずであろう
〈プリンセス〉は知らないうちに忽然と姿を消して
いたのである。
しかも──平時の
そして〈アテナ〉もその場にいたASTの隊員たちを
全員を戦闘不能にさせた後、まるで折紙たちASTには
興味などないかそれとも脅威とすら思っていないのか
目もくれずにどこかへと飛び去ってしまった。
つまり、折紙はまた〈アテナ〉に情けをかけられて
しまったのである。
しかも今回で二度目なので折紙にとってはこれほど
の屈辱はないだろう。
〈ハーミット〉に
は全員無事だったが……結局ASTは精霊を撃ち倒す
でも、何か大きな成果をあげるでもなく、帰投する
しかなかったのである。そんなことが続いて不機嫌
になってるのも当然だった。
しかも、なぜ折紙の家にいたはずの士道が、警報の
鳴った街に出ていたのかもわからずじまいだったし
──ついでに、先日拾ったウサギのパペットが、
なぜか家から無くなっっていたのである。
……少し、気に入っていたのにだ。
もちろん士道を疑うわけではない。
というかもし士道が折紙の私物を盗んでいったのだと
したら、まあそれはそれでありなので、問題にする
つもりはなかったのだが。
と──そこで、部屋の扉が開き、ASTの隊長である
遼子が顔を出した。
ブリーフィングルームにいた隊員たちは遼子の姿を
見て一斉に立ち上がり、敬礼をする。
「あー、いいわ。座って座って」
遼子は煩わしそうにそう言うと、みんなの前に
立った。
「さて、皆集まっているわね。──じゃ、早速始め
ようと思うのだけど……その前に。皆に愉快で最低
なお知らせがあるわ」
『……?』
メンバーたちが不思議そうな顔を作ると、遼子ははあ
とため息を吐いた。
「……天宮は精霊現界が多いわりに、今一つ成果が
あがってないってんでね。補充要員が充てられること
になったの」
「補充要員……ですか」
「ええ。バリバリのトップエースよ。
にかけちゃ、世界でも五指に入るんじゃないかしら。
──実際、単独で精霊を
『……⁉︎』
遼子の言葉に、メンバーたちはざわめいた。
それはそうだ。ASTの精鋭一〇人がかりでも手に余る
精霊を、たった一人で倒してしまったというので
ある。
遼子は予想通りの反応、というように肩をすくめて
から、今し方入ってきた扉の方をちらと見やった。
「──入ってきて」
「はっ」
遼子の声に応えるように、随分と可愛らしい声音が
響いてくる。
そして再度扉が開き──一人の少女が部屋に足を踏み
入れてきた。
『……⁉︎』
瞬間、ブリーフィングルームに並んでAST隊員たち
が、一斉に眉をひそめた。
しかし、それも当然だ。何しろ入ってきたのが、
どう見ても中学生程度の女の子だったのだから。
後頭部で一つに括った髪に、利発そうな顔。それと
左目の下にある泣き黒子が特徴的な少女だった。
「…………」
折紙は、ピクリと眉を動かした。──彼女の顔に、
見覚えがある気がする。
「──
コスプレにしか見えない自衛隊衣装を翻し、真実が
敬礼をしてみせる。
「日下部一尉……彼女は?」
隊員の一人が、遼子に質問を投げる。
遼子は「予想通りの質問が来た……」みたいな顔を
作って口を開いた。
「さっき言ったでしょ。件のトップエース様よ」
『はぁ……⁉︎』
メンバーたちが一斉に眉根を寄せる。
真那は、そんな皆の反応を不思議がるように
首を傾げた。
「どうしやがりましたか」
なんとも奇妙な敬語に、真那が言ってくる。
「ど、どうかって……き、君まだ子供じゃ──」
隊員の一人が言うと、真那はふうと息を吐いた。
「何か問題がありやがりでしょうか。年齢は個人の
資質に関係ねーです。──それとも、この中に一人
でも、私に勝てる方がいやがるのでしょうか?」
別に嫌味とかではなく、ただ事実を述べるように、
真那が言う。
「……なっ」
そんな返しをされるとは思っていなかったのか、
隊員が目を丸くする。
「そうですね。この中だと──」
と、真那が折紙の方に視線を向けてきた。
「──あなたくらいでしょうか。ほんの数パーセント
でも見込みがあるのは」
「………」
折紙は、答えるでもなく、無言でその視線に対した。
すると遼子が、ポカンっ、と真那の頭を小突いた。
「無駄口叩くんじゃないの。一昨日の映像流すから、
空いてくるから、空いてるところにでも座りなさい」
「はっ」
真那は短く言うと、綺麗な足取りで、折紙の隣に
座ってきた。
「さて……と」
と、遼子が壁際のボタンを操作すると、天井から
スクリーンが下がり、部屋が照明が落ちた。そして
手元の端末を操作すると、すぐに、二日前の戦闘の
様子が映し出される。
〈ハーミット〉が結界を構築し、それを折紙が
打ち破ろうとしたところで──
「──ここで、邪魔が入ったのよね」
遼子は忌々しげに言うと同時、画面に〈プリンセス〉
と〈アテナ〉の姿が映し出された。
遼子が、画面をスムーズさせる。と──結界の前に、
一人の少年の姿が確認できた。
折紙は小さく息を詰まらせた。間違いない。
あれは───士道だ。
と。
「…………っ」
隣に座った真那が不意に頭を押さえ、小さな
うめきを発した。
真那は少しの間頭痛を抑えるように側頭部に手を
当てていたが──すぐに顔を上げると、ガタッ、
と音を立ててその場に立ち上がった。
「ん……? 何、どうしたのよ」
遼子が訝しげに声を発する。
しかし真那は答えず、画面に映った士道を見つめて、
小さく口を開いた。
「──
「……っ?」
折紙は眉をひそめ、真那の横顔を見やった。
そして──先ほどの違和感の正体に気づく。
この少女は、あの
のである。
最後まで読んでいただきありがとうございます‼︎
これにて『四糸乃パペット編』は完結しました。
本当にありがとうございます‼︎
これからも皆さんが『応援』をしていただければ
『投稿の頻度』が更に上がる頑張れる可能性がある
かもしれません‼︎
『他の投稿作品』もあるので、是非ともそちらも
楽しんで見ていただければ、ありがたいです‼︎
【報告】
『転生したらスライムだった件 ■■の魔王』と
『デート・ア・ライブ ■■■の精霊』の『最新話』
を近いうちに更新する予定なので、是非とも楽しみに
してもらえたらありがたいです‼︎
十香と士道が出会う前の四月九日の話を書いた方がいいか
-
書くべき
-
書かなくていい
-
どっちでもいい