デート・ア・ライブ ■■■の精霊   作:灰ノ愚者

21 / 31

今回は七月に入ってからなんとかすぐに『最新話』
を無事に更新をすることができました‼︎


今回は『18547文字』までの膨大な量を頑張って
書きましたが豆腐のようなクソナメクジメンタルの
自分はきちんと面白く書けているのかとても心配に
なります……(汗)


【お気に入り】や【しおり】、【投票】そして
【感想】などいただければ豆腐のようなメンタルで
脆い自分も更に『創作意欲』が増していきます‼︎


面白く出来ているかどうか心配でいっぱいですが、
一生懸命にたくさん書きました。


最後まで読んでいただければありがたいです‼︎


時崎狂三

 

朝のホームルームが終わり、タマちゃん教諭が教室を

去って行くなり、士道はポケットに手に突っ込んで

携帯電話を取り出し、琴里に電話をかけた。

 

 

しばらく呼び出しの音が響いたあと、電話口から

少し間延びした琴里の声が聞こえてくる。

 

 

『もしもーし、おにーちゃん?』

 

 

先ほどの刺々しい口調とはまったく違う、どこか

呑気な口調。司令官モードではない、いつもの琴里

だった。

 

 

「おう、琴里か」

 

 

『もー、どーしたのこんな時間に。あと一〇秒早く

携帯が鳴ってたら、先生に没収ところだったぞー』

 

 

「学校に着いたらちゃんと携帯をマナーモードに

しとけって」

 

 

『ちょっと今日は忘れてただけだもんー』

 

 

ぷすー、琴里が不満そうに言う。

 

 

『それで、どーしたの?』

 

 

「っ、ああ、そうだった。実はだな……」

 

 

言いながら、ちらと狂三の方に目をやる。

 

 

挨拶のときから「私は精霊だ」なんて、一般人から

したらイタいことこの上ない不思議ちゃん発言をした

にも拘らず、狂三の席の周りにはたくさんの人だかり

ができており、ひっきりなしにいろんな質問が飛び

交っていた。四組の生徒だけではなく、噂の美少女

転校生を一目でも見ようと、他のクラスからも生徒が

集まっている。まるで十香の転校初日の様相だった。

 

 

と、不意に狂三と目が合う。その際ににこりと笑みを

向けられ、士道は頬を赤くして息を詰まらせた。

 

 

『おにーちゃん?』

 

 

「あ、ああ……今日うちのクラスに、転校生が

来たんだが……そいつがな、言ったんだ」

 

 

『なんて?』

 

 

「私は……精霊だって」

 

 

『…………』

 

 

士道がそう言った瞬間、琴里は無言になった。

 

 

その代わり、電話口の向こうから衣擦れのような

音が聞こえてきた。そう──まるで、髪を括っている

リボンを付け替えるような。

 

 

 

『──詳しく話してちょうだい』

 

 

 

先ほどまでとは明らかに印象が違う調子で、琴里が

続けてくる。

 

 

「詳しくって言われてもな……今言ったままだよ。

転校生が挨拶のときに『私は精霊だ』って目の前で

言ったんだ。……確証はないけど、俺の方を向いて

いた気もする」

 

 

『自意識過剰なんじゃない?』

 

 

「…………」

 

 

『まあいいわ。精霊の名を知っているのもおかしな

話だしね。一応調べてみましょ』

 

 

「おう……頼む」

 

 

そう言って士道が電話を切った瞬間、一限目の授業の

開始を示すチャイムが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天宮駐屯地敷地内(てんぐうちゅうとんしきち)の一角。南関東圏全域の霊波情報

を統括する観測室で。

 

 

 

「……っ、まさか」

 

 

AST隊長日下部遼子(くさかべりょうこ)は、眉根を寄せてうめくような

声を上げた。

 

 

「間違いないの? これは」

 

 

コンソールを操作している──蘆村二曹(あしむらにそう)に視線を

向けると、頬に大量の汗を滲ませながら首を縦に

振ってきた。

 

 

「残念ながら。ここの観測機の精度は、国内でも

最高クラスです」

 

 

「……そうよね」

 

 

画面上に表示された数値を改めて視線でなぞり、

自分の認識が間違っていないことを確認してから、

困惑をため息に変換して放逐するように肺を絞る。

 

 

画面上には、とある人物のスキャニングデータが

表示されている。

 

 

否──人物、というには少々語弊あるかもしれない。

 

 

 

何しろその数値は、対象が、世界を殺すその厄災(やくさい)であることを示していたのだから。

 

 

 

「……高校に、精霊が転入? 本当に笑えない

ジョークだわ」

 

 

そう。今日の朝九時頃、折紙から基地に通信が

入ったのである。

 

 

自分のクラスに精霊を名乗る少女転入してきたため、

確認を求む──と。

 

 

 

半信半疑ながらも急いで(くだん)の少女のスキャニングを

行ったのだが──

 

 

遼子は額を拭った。服の袖が濡れる。空調は完璧の

はずなのに、肌が妙に湿っていた。

 

 

だが無理もあるまい。高校に転入するということは、

戸籍や住民票はもちろん、他にも様々な書類が必要に

なるということである。

 

 

指先一つで街を壊す力を有するそんな危険生物が、

こちらの観測をすり抜けて現界したうえ、人間の社会

構造を理解・応用するまでの知識を持っているという

のである。戦慄するなという方が無理な話だった。

 

 

「隊長? どうしやがりましたか?」

 

 

と、そこで背後から、そんなあまりにも奇妙な敬語が

聞こえてくる。

 

 

そんな奇妙な言葉遣いをする隊員は一人しか心当たり

がない。ちらと後方に目をやると、そこには予想通り

真那が立っていた。

 

 

「……ん?」

 

 

真那は画面に目をやると、忌々しげに眉をひそめた。

 

 

「──これは……なるほど、やはり今回も出やがり

ましたか、〈ナイトメア〉

 

 

「〈ナイトメア〉……?」

 

 

怪訝そうに問う。すると真那が眉根を寄せ、忌々しげ

に息を吐いた。

 

 

「識別名〈ナイトメア〉。──私が追っている、

〈アテナ〉に次ぐ最悪の精霊です」

 

 

「最悪の……精霊」

 

 

遼子が物々しい言葉におののくように言うと、

真那は「ええ」と首肯した。

 

 

「現在までで一万人以上の死者を出しやがっている

精霊です。判明してねー被害者も含めれば、その数は

さらに膨れ上がるでしょう」

 

 

「い、一万人……⁉︎ あ、あり得ないわ。避難指示

が出ていなかったの? それとも、そこまで規模の

大きな空間震が──」

 

 

「ちげーます」

 

 

遼子の言葉を遮るように、真那が重苦しい声を

発した。

 

 

「〈ナイトメア〉の起こす空間震のその規模は

標準程度です。死者もいねーことはねーですが、

その数は一〇〇人にも満たねーです」

 

 

「じ、じゃあなんで……」

 

 

 

「単純な理由ですよ。──直接、この手で殺してやがるんです。一万人以上の人間を

 

 

「………っ」

 

 

息を詰まらせる。

 

 

以前この天宮市に出現していた〈プリンセス〉

〈アテナ〉そして〈ハーミット〉は、空間震被害こそ

深刻であったもの、自分から人間を襲うなんてことは

しなかった。

 

 

だが──もし容易く大地を割る怪物が、己の意思で

人を殺そうとしたのなら。

 

 

それがどんなに恐ろしいことかは、AST隊員ならば

容易に想像できることだった。

 

 

 

「──さ、じゃあ準備をしましょうか」

 

 

「え?」

 

 

真那が軽く伸びをしながら言ったのに、遼子は

素っ頓狂な声を上げた。

 

 

「精霊が現れやがったんです。ならぶっ殺す以外に

することはねーです」

 

 

「そりゃあ……だけど、市民はみんな避難もして

ないのよ? そんな中で一体──」

 

 

「心配ご無用。私に任せてやがってください。

──アレの処理は、私の専門ですから」

 

 

「あ、ちょ、ちょっと!」

 

 

すたすたと去っていこうとする真那の腕を、

がしっと掴む。

 

 

「? どうしやがりました。早いに起こしたことは

ねーでしょう」

 

 

「……ッ、まず説明しなさい。隊長は私よ。

勝手な行動は許さないわ」

 

 

「………」

 

 

真那はしばし思案を巡らせるように黙ったあと、

小さく手を上げた。

 

 

「了解、従います」

 

 

しかし、すぐに遼子を値踏みするようなそんな視線を

向けてくる。

 

 

「でも、くれぐれも忘れねーでください。

私は()()からの出向です。その気になれば陸幕長

の公認付きで私は行動を起こすこともできますので」

 

 

「……わかってるわよ」

 

 

遼子は面白くなさそうに顔を歪めると、真那の手を

離した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒板の上に設られた時計は、もう三時を回っている。

 

 

士道の視界の中では、見慣れた帰りのホームルームが

展開されていた。チャイムとともに教室に入ってきた

タマちゃん教諭が教卓に出席簿を開き、連絡事項を

伝えている。

 

 

何の変哲もない光景。だが士道は今、異様な緊張に

苛まれていた。

 

 

なぜなら……

 

 

 

 

「……!」

 

 

狂三が先生の隙をついて士道の方にちらと視線を

寄越し、小さく手を振ってくる。

 

 

「え、と……」

 

 

さすがに何も言い返さずにいるのも失礼かと思い、

苦笑しながら手をひらひらさせる。

 

 

『…………』

 

 

すると士道の両隣に座った十香と十香と折紙が、

何の冗談でもなく、長時間見つめられたら皮膚炎

か何かになってしまいそうなそんな視線を士道に

浴びせかけてきた。

 

 

「……ど、どうしろってんだよ」

 

 

士道が絶望的な心地で息を吐くのとほぼ同時に、

タマちゃんがパタンと出席簿を閉じた。

 

 

「連絡事項はとりあえずこんなところですかね。

──あ、それと、最近この付近で、失踪事件が頻発

しているそうです。皆さん、できるだけ複数人で、

暗くなる前におうちに帰るようにしてくださいね」

 

 

「……ん?」

 

 

小学生に話しかけるようなタマちゃん教諭の言葉に、

士道は小さく眉を上げた。

 

 

そういえば、朝のニュースでそんなことを言っていた

気がする。天宮市という名前が出たため、意識の端に

引っかかっていたのだ。

 

 

士道はまだしも、琴里には気をつけておかねば

ならないだろう。……まあ、あの妹様の場合、

杞憂となる可能性の方が高いだろうけど。

 

 

士道がそんな思案を巡らせていると、起立の号令

が響いた。それに従って椅子から立ち、礼をする。

タマちゃん教諭は「はい、ではさよなら」と言って

教室を出て行った。

 

 

周りから、席を立つガタガタという音と、生徒たち

の談笑が聞こえてくる。

 

 

下校時刻。だが──士道にはまだ仕事が残って

いるのだ。

 

 

士道はポケットから小さなインカムを取り出し、

右耳に装着した。

 

 

『──時間ね。用意はいい? 士道』

 

 

幼い、しかし高圧的な声音。士道の妹・五河琴里の

司令官モードである。

 

 

こちらからは見えないが、艦橋では〈ラタトスク〉

の精鋭たちが、精霊攻略の準備を万全に整えている

だろう。

 

 

『まさか、本当に精霊だなんてね。──正直、

士道の妄言かと思っていたわ』

 

 

「……おい」

 

 

鼻で笑うかのような琴里の言葉に、半眼を作る。

 

 

だがそれも無理のない話なのかもしれない。実際、

士道も半信半疑だったのだ。精霊が、転校生として

現れるだなんて。

 

 

琴里に依頼した狂三の観測の結果は、昼休みに

士道の携帯電話に届けられた。

 

 

 

 

結論から言うと──狂三は、本当に精霊だった

のである。

 

 

 

『──まあ、でも好都合よ。向こうからお誘いかけて

くれるなんてね。しかも警報が鳴ってない以上、AST

もちょっかい出せないでしょうし、願ったり叶ったり

じゃない。今のうちに好感度を上げて、さっさと

デレさせちゃいなさい』

 

 

「……ん、そう……だよな」

 

 

士道は歯切れ悪く言うと、頬をかいた。

 

 

確かに琴里の言う通りである。だが、あまりに

狂三の意図が掴めないためだろうか、士道の胸には、

何やらもやもやしたものがわだかまっていたので

ある。

 

 

『何よ、その腑抜けた返事は。まだ精霊とキスする

のは嫌だっていうの?』

 

 

「……っ、べ、別にそういう……って、や、まったく

抵抗がないわけでもないんだが……」

 

 

『なんでいいけど、あんまり雑談している暇も

なさそうよ』

 

 

「へ?」

 

 

士道が間の抜けた声を発すると同時に、その肩が

ちょんちょん、とつつかれた。

 

 

「士道さん、士道さん」

 

 

「うぉ……ッ⁉︎」

 

 

突然のことに驚き、思わず声を上げてしまう。

 

 

「ごめんなさい、驚かせてしまいました?」

 

 

そこに立っていた少女──狂三が、申し訳なさそうに

言ってくる。

 

 

「と、時崎……」

 

 

「うふふ、狂三で構いませんわ」

 

 

「あ、ああ……じゃあ、狂三」

 

 

士道が言うと、狂三は嬉しそうに微笑んでから言葉を

続けてきた。

 

 

「学校を案内してくださるのでしょう?

お願いしますわ」

 

 

「お、おう」

 

 

士道は、急に鼓動を速めた心臓を押さえるように、

胸に手を当てながら首肯した。

 

 

……作り物のように美しい貌。高貴さ漂う仕草。

優雅な所作。それら全てが士道の感覚器を通って、

彼女の存在を強烈に印象づけてくる。

 

 

眼球と脳が、狂三以外の物質を不純物と断じ、

認識の外に置くかのような感覚。良家のお嬢様を

通り越して、どこかの王族と言っても疑う者は

そういないのでは──

 

 

 

「うぉっほん!」

 

 

 

「……!」

 

 

わざとらしい咳払いで我に返る。見やると、十香が

腕組みしながら睨んでいた。

 

 

「あ、あのだな……」

 

 

よほど露骨に見とれてしまっていたのだろうか。

士道は弁明するように声を発した。

 

 

「さ! 早く参りましょう。ふふ、楽しみですわ」

 

 

だが、言葉を終えるより先に、狂三が足取りも

軽やかに廊下に歩いていってしまう。

 

 

『──士道、今は狂三よ。あとを追いなさい。

今の十香の精神状態は、まだ危険域に達するほど

じゃないわ。帰りがけにきなこパンでも買ってって

あげれば収まるレベルよ』

 

 

と、右耳に琴里の声が聞こえてくる。

 

 

右手を一瞥すると、未だ憮然とした様子の十香が

目に入ったが……仕方ない。士道は「すまん!」

と一言残し、狂三のあとを追って廊下に出て行った。

 

 

「それで、どこから案内してくださいますの?」

 

 

教室を出てすぐのところに待ち構えていた狂三が、

小さく首を傾げながら言ってくる。

 

 

「あ、ああ……そうだな」

 

 

士道が決めあぐねていると、右耳に琴里の声が

飛んできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天宮市上空一五〇〇〇メートル。

 

 

そこには秘匿(ひとく)組織〈ラタトスク〉の有する空中艦

〈フラクシナス〉が浮遊していた。

 

 

不定期に現界し、そのたびに世界を壊していく

危険生命体『精霊』。

 

 

それをデレさせて無力化するという、何とも滑稽な、

しかし困難な任務を帯びた機関員たちは、今まさに

作戦行動中であった。

 

 

〈フラクシナス〉中心部に位置する艦橋は、司令官

たる琴里を含め三〇名の機関員が揃っている。皆各々

の持ち場に就き、慣れた手つきでコンソールを操作

していた。

 

 

「好感度、四五・五。変化していません」

 

 

「精神状態、オールグリーン、安定しています」

 

 

「霊波一五〇・〇。前時間との誤差マイナス三・四。

許容範囲です」

 

 

「──ふむ、まあとりあえず良好か」

 

 

〈フラクシナス〉艦橋の中心に位置する艦長席に

ふんぞり返った琴里は、甘酸っぱいチェリー味の

するチュッパチャプスを口の中で転がしながら

そう言った。

 

 

髪を括ったリボンは黒。肩がけにした軍服は深紅。

どう見ても映画に影響された女の子がコスプレを

しているとしか思えない格好である。

 

 

しかし艦橋という場所にまるで似つかわしくない

容貌の少女は、艦橋下部に居並んだ部下たちを睥睨

するようにしてから、メインモニタに悠然と目を

やった。

 

 

巨大モニタには、(くだん)の精霊・時崎狂三の全身の姿が

バストアップで映し出されている。

 

 

そして画面端には各種パラメータが、下部にある

ウインドウには、〈フラクシナス〉のAIが会話を

ノーウェイトでテキストに起こしたものが、

リアルタイムで表示された。

 

 

そう、まるでギャルゲーの画面のようになっている

のである。

 

 

と、画面中の狂三が首を傾げると、その可愛らしい

唇を小さく動かした。

 

 

『それで、どこから案内してくださいますの?』

 

 

『あ、ああ……そうだな』

 

 

次いで、スピーカー越しに、士道の声が響いてきた。

 

 

問い質さなくてもわかる。いきなり行く先を

委ねられ、困惑している声だ。琴里はふうと息を

吐きながら通話ボタンを押し、マイクを口に

近づけた。

 

 

「士道、ちょっと待ちなさい。こちらでも検討して

みるわ」

 

 

琴里が言った瞬間、メインモニタに新たなウインドウ

が表示される。

 

 

それは、今士道たちがいる来禅高校の見取り図

だった。各教室や施設に名称が表示され、士道と狂三

のいる場所が赤い点示されている。ついでに、現在地

からの距離や動線などを考慮した校内散策コースが

数パターン表示された。

 

 

 

最初に向かう場所は──

 

 

 

 

①屋上。

 

 

②保健室。

 

 

③食堂・購買(こうばい)部。

 

 

 

のいずれかだろう。

 

 

 

「──チャンスですね」

 

 

その声は、琴里の座った艦長席の後方から

響いてきた。

 

 

ちらと目をやると、長身の青年があごに手を当て

ながら立っているのがわかる。この〈フラクシナス〉

の副司令、神無月恭平(かんなづききょうへい)である。

 

 

「行く先の順番をこちらの判断に委ねてくれたのは

ありがたいですね。組み合わせ次第では、とても良い

シチュエーションを作ることも可能でしょう」

 

 

「まあ、そうね。──各自、選択! 五秒以内!」

 

 

琴里が言うと、すぐさま手元の小型ディスプレイに

結果が表示された。

 

 

選択の内訳を見て、琴里は唇を舐めた。

 

 

「ふむ、屋上が一番人気か」

 

 

「そりゃあそうでござりますよ、屋上といったら

学校一番の青春スポット! 開放感溢れる空間に

最高の景色! ここ以外考えられませんぞ!」

 

 

琴里が呟くように言うと、艦橋下段から、

次元を越える者(ディメンジョン・ブレイカー)中津川(なかつがわ)が声を上げた。

 

 

「でも……普通、高校って屋上に上がれませんよね?

危険だからって」

 

 

しかし隣に座っていた保護観察処分(ディープラヴ)箕輪(みのわ)が、

あごに手を当てながら言う。

 

 

「え……ッ、そ、そうなのですか……?」

 

 

途端、中津川の声が小さくなる。だが琴里は小さく

咳払いをすると声を上げた。

 

 

「問題ないわ。既に学校には複数名のエージェントを

潜り込ませてあるから、士道と狂三が到達する前に鍵

を開けることは十分可能よ」

 

 

「そ、そうですよねえ! ならやっぱり屋上が──」

 

 

「ちょっとお待ちください」

 

 

今度は右方から、早過ぎた倦怠期(バッドマリッジ)川越(かわごえ)が目を

向けてきた。

 

 

「保健室を捨て置くというのは果たしていかがな

ものでしょう。合法的に置かれたベッド、視界を

遮断するカーテン、校内屈指の興奮スポットでは

ありませんか!」

 

 

「な、何を! 露骨すぎでござりますぞ!

屋上の素敵さの前にはそんなもの……!」

 

 

「ふ……文句はその鼻血を拭ってから言って

もらいましょうか中津川くん」

 

 

「は……っ!」

 

 

「……そうねえ」

 

 

そんな屋上派と保健室派の応酬を聞きながら、

琴里は再度手元の画面に目を向けた。

 

 

「そういえば、この③に入っている一票は

誰のものなの?」

 

 

琴里が問うと、すぐ近くの席から手が上がった。

 

 

「……私だ」

 

 

やたら眠たそうな女が、分厚い隈に彩られた

目を動かし、視線を一瞬向けてくる。村雨令音(むらさめれいね)

 

 

琴里が全幅の信頼を寄せる〈ラタトスク〉一の解析官

である。

 

 

「令音が? 意外ね。理由を訊いていいかしら」

 

 

「……ああ。といっても大層な理由はないよ。

単なる消去法だ」

 

 

「消去法? 屋上と保健室が駄目だっていうの?」

 

 

言うと、令音は首を横に振った。

 

 

「……そうではないんだ。ただ、保健室には擁護教諭

が常駐している。保健室の持つその破壊力を引く出す

には、あと三〇分ほど待った方がいい。……屋上の方

も似たような理由さ。どうせなら、夕日が差してから

の方が……素敵じゃあないか」

 

 

令音の言葉を聞き、琴里は唇の端を小さく上げた。

 

 

「──なるほど、なかなかロマンチストじゃない、

令音」

 

 

そして、マイクを口元に近づける。

 

 

「士道、聞こえる? まずは食堂と購買部を案内して

あげなさい」

 

 

 

 

 

 

 

「……そうだな、じゃあまずは食堂と購買部でも

見ておくか。何かと必要になるだろうし」

 

 

「ええ、構いませんわ」

 

 

士道が言うと、狂三は可愛らしい微笑を浮かべながら

小さく首肯した。

 

 

トン、トン、と上履きの底でステップを踏むかの

ようにしながら、士道の横に立つ。

 

 

「では、参りましょう」

 

 

「お、おう」

 

 

やたらと積極的な狂三に少々気圧されながらも、

どうにか足を動かした。

 

 

ここから一階の購買部に向かうとなると、西階段を

降りるのが一番だろう。ゆっくりとした歩調で廊下

を歩いていく。

 

 

と、道中、下校中の生徒たちから、何やら意味深な

視線が注がれた。

 

 

 

──わ、何あの子、かわいー。転校生? 隣にいるのって四組の五河君だよね、なんで? ああ、なんか直接案内役を指名されたんだってさ。え、五河って夜刀神(やとがみ)さんのダンナじゃなかったん? いや俺は鳶一(とびいち)に囲われてて、将来はヒモになる予定って聞いたぞ。おいおい二股(ふたまた)じゃ()きたらず転校生までもってか? うそー、五河君たらお(さる)さーん!

 

 

 

……勝手放題言ってくれる。

 

 

 

頬を痙攣させながら、無遠慮に鼓膜をノックする声を

どうにか無視し、先を急ぐ。

 

 

と、それらの音声とは別に、右耳に琴里のうなる

ような声が聞こえてきた。

 

 

『んん……?』

 

 

「? どうかしたか、琴里」

 

 

『いえ……あなたたち二人に引っ付くように移動

している反応があるのよ。……何者かにつけられてる

可能性があるわ』

 

 

「え、ええ……っ?」

 

 

突然不穏なことを言われ、声を発してしまう。

 

 

『静かに。……こっちで確認をしておくから、

今は狂三に集中なさい。──ていうか、女の子と

歩いてるっていうのに、なんで無言なのよ。まったく

気が利かないわね』

 

 

「え? あ……っ」

 

 

琴里に言われて、士道は小さくのどを鳴らした。

 

 

女の子と一緒に歩くという緊張と、周りから注がれる

好奇の視線に気を取られすぎて、狂三を放置していた

のである。

 

 

「……やべ」

 

 

口の中でそう呟き、ちらと狂三の方に視線をやる。

 

 

瞬間──士道は心臓がドクンと震えるのを感じた。

 

 

だがそれも無理からぬことだろう。だって狂三が、

髪に隠れていない右目で、士道の方にジッと見つめて

きたのだから。

 

 

自然、目が合ってしまう。その瞬間、狂三は心底嬉し

そうにニコッと微笑んだ。まるで士道が自分のことを

見てくれるのを待っていたとでも言わんばかりに。

 

 

「く、狂三。歩くときは前見てた方がいいぞ……⁉︎」

 

 

士道が上擦った声でそう言うと、狂三は「まあ!」

と目を見開いていた。

 

 

「気をつけますわ。わたくしを気遣ってくださる

なんて、士道さんは優しいですわね」

 

 

「い、いや……そんなこと!」

 

 

「ご謙遜なさらないでくださいまし。士道さんの

横顔に見とれてしまっていたそんなわたくしが

悪いのですわ」

 

 

「み、見と……ッ⁉︎」

 

 

士道は頬を真っ赤に染めて顔をペタペタと触った。

──こ、こここの少女は今なんと言ったのだ?

見とれて? いやいや、あり得ない。この平々凡々な

造作の顔面に注視すべき点などないことは、士道自身

が誰よりも一番よく知っている。

 

 

『あなた口説かれてどうするのよ、士道』

 

 

そこで琴里のため息混じりの声が聞こえてきて、

士道はハッと肩を震わせた。

 

 

「わ、悪い……」

 

 

『……しかしまあ、今までにないタイプの精霊である

ことは確かね。人間社会に溶け込んでるのはもちろん

──向こうからアプローチをかけてくるなんて』

 

 

琴里が「ふぅむ」と考え込むようにのどを鳴らす。

 

 

『興味深い存在だからいろいろと情報を探りたい

ところね。……まあ、好感度を上げつつ質問を織り

交ぜていこうかしら。──と、ちょうどいいところで

選択肢がきたわね。ちょっと待ちなさい』

 

 

 

 

 

 

 

〈フラクシナス〉艦橋のメインモニタに、再び選択肢

ウインドウが表示される。

 

 

 

①「朝言ってた精霊って、一体何なんだ?」

 

 

②「狂三は、前はどこの学校にいたんだ?」

 

 

③「狂三は今、どんなパンツを穿いているんだ?」

 

 

 

「総員、選択!」

 

 

琴里が叫ぶと、艦橋下段のクルーたちが一斉に手元の

キーを押した。

 

 

すぐに結果が、琴里の専用ディスプレイに

表示される。

 

 

 

「やっぱり、①かしらね」

 

 

集計結果と自分の選択を合わせ、琴里はあごを

手を当てた。

 

 

「妥当かと。狂三は、士道くんが精霊を知っている

ことは知らないはず。一度揺さぶりをかけてみるのも

よいでしょう」

 

 

後方から、神無月がそう言ってくる。

 

 

「そうね。──ちなみに神無月。あなたはどれに

入れたの」

 

 

「③ですが」

 

 

「一応理由を訊こうかしら」

 

 

身体を軽く後方に向け、問う。

 

 

「黒タイツ()しのパンツは人類(じんるい)至高(しこう)(いささ)かの疑問(ぎもん)(いだ)余地(よち)もありません」

 

 

琴里はパチンと指を鳴らした。瞬間、艦橋に筋骨隆々

の巨漢が二人入ってきて、神無月の両腕をがしっと

ホールドした。

 

 

「連れて行きなさい」

 

 

『はっ』

 

 

二人は同時に言うと、神無月をざりざりと容赦なく

引きずっていく。

 

 

「し、司令! お慈悲を! お慈悲をぉぉッ!」

 

 

ぷしゅー、という音をさせて、扉が閉まる。

 

 

静かになった艦橋で、琴里はため息混じりに

口を開いた。

 

 

「……『 狂三は今、どんなパンツを穿いている

んだ?』……ねえ。何なのこの選択肢」

 

 

「ま、まあ……下ネタで場が和むこともなくはない

ですから」

 

 

艦橋下段のクルーが、苦笑しながら言ってくる。

 

 

と、そこで琴里はぴくりと眉を揺らした。

 

 

「あ」

 

 

 

先ほどの視線を変えた際に、肘でマイクのスイッチを押してしまっていたのである。つまり、今の言葉は

士道の耳に入っていたわけで──

 

 

 

『な、なあ…… 狂三は今、どんなパンツを穿いている

んだ?』

 

 

画面の中で、それを指示と勘違いした士道が、

馬鹿正直にその言葉を復唱した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぱんつ……ですの?」

 

 

「……ッ‼︎」

 

 

狂三がキョトンと訊き返してくるのを見て、ようやく

士道は自分がとんでもない台詞を発してしまったこと

を自覚した。

 

 

「あ、いや、今のは──」

 

 

あたふたと手を動かしながら、抗議するように

インカムを小突く。

 

 

『馬鹿、今のは指示じゃないわ! 本当は①よ。

「朝言ってた精霊って、一体何なんだ?」』

 

 

「は……はあ……っ?」

 

 

『とにかく誤魔化しなさい! 今のは冗談ってことに

して、本当の質問に繋げるの!』

 

 

「お、おう……!」

 

 

士道は小さくうなずき、狂三に向き直った。

 

 

「あ、あのだな、狂三」

 

 

しかし狂三の表情と仕草を見て、言葉を止められる。

 

 

狂三は上目遣いで士道を見ながら、プリーツスカート

の裾をきゅっと摘んでいた。

 

 

「……気に、なりますの?」

 

 

「えッ⁉︎ あ、そ、そりゃあ……じゃなくて、

ええと──」

 

 

そりゃ気にならないわけはないのだが、そんなことを

口に出すわけにもいかない。

 

 

だが士道がしどろもどろにとなっていると、狂三は

キョロキョロと辺りを見回し、身体をさっと、近くに

あった掃除用具入れの陰に隠した。

 

 

「く、狂三……?」

 

 

狂三の行動の意味がわからず、眉をひそめる。

 

 

すると狂三は恥ずかしそうに頬を染めると、

小さく唇を開いた。

 

 

「いい……ですわよ、士道さんなら」

 

 

そう言ってスカートの裾を掴んだ手を、徐々に上に

上げていった。

 

 

「え……ええ……ッ⁉︎」

 

 

まったく予想していなかった展開に、目を見開く。

 

 

しかしそうこうしているうちにも、狂三はするすると

スカートを捲り上げていった。黒いタイツに覆われて

いた脚が段々と露わになり──禁断のデルタゾーンが

微かに顔を出す。左右に引っ張られて薄くなった黒い

生地越しに、一瞬白い下着が見えた。

 

 

「──ッ‼︎」

 

 

士道は咄嗟に目を瞑ると、狂三のスカートの裾を

掴んで下に引っ張った。

 

 

「あら、あら」

 

 

狂三は不思議そうに言ってくる。

 

 

「どうしましたの? 士道さんになら……

構いませんわよ?」

 

 

「や、いいから! な! 先進もう」

 

 

「うふふ、照れ屋さんですのね。──ああ、でも、

先に進むのなら、まずはスカートを放してください

ませんこと?」

 

 

「……っ!」

 

 

言われて、士道はハッと目を見開いた。……傍から

見たなら今の士道は、女の子を物陰に連れ込んでスカートを捲っている超絶変質者(ちょうぜつへんしつしゃ)にしか見えなかった。

 

 

「す、すすすすすまん……っ!」

 

 

慌てて手を離す。狂三はさして気するふうもなく

くすくすと笑った。

 

 

『士道、慌ててないで体勢を立て直しなさい』

 

 

と、琴里から指示が飛ぶ。士道はわざとらしく咳払い

すると、もとの道に戻りながら、今度こそはちゃんと

先ほど与えられた指示通りに質問をした。

 

 

「あ、あのさ、狂三」

 

 

「ええ、なんですの?」

 

 

「朝、『私は精霊だ』って言ってたじゃないか。

精霊って一体、何のことなんだ?」

 

 

士道が問うと、狂三は一瞬キョトンとし──すぐに、

ふふっ、と微笑んでみせた。

 

 

「──うふふ、とぼけなくてもいいんですのよ、

士道さん。あなたはちゃんと知っているのでしょう?

精霊の、ことを」

 

 

「………っ」

 

 

狂三の言葉に、士道は息を詰まらせた。

 

 

『……何なの、この女は』

 

 

琴里も同じように、訝しげな声を響かせてくる。

 

 

『士道が精霊の存在を知っていることを確信を

している……? 一体どういうことよ』

 

 

それが士道に対する問いかけでないことはすぐに

知れた。琴里の疑問を代弁するように口を動かす。

 

 

「な、なんで俺のこと、知ってるんだ……?」

 

 

「ふふっ、それは──秘密ですわ」

 

 

「え……?」

 

 

「でも、わたくしは士道さんに会うために、この学校

に来ましたの。士道さんのことを知ってから、ずっと

焦がれていましたわ。士道さんのことを考えない日は

ないくらいに。だから──今は、すごく幸せですわ」

 

 

なんて言って、狂三が頬を桜色に染める。

 

 

「…………ッ‼︎」

 

 

士道は、顔が熱くなるものを感じた。自分からは

見えないけれど、もしかしたら耳から煙くらい噴いて

いるかもしれない。

 

 

なんだ。なんだこれ。媚びるとか、愛されガール

とか、そういう次元じゃなく、なんかもう狂三という

存在が愛おしくてたまらなくなるような、そんな感覚

が士道を支配する。中学生のころ、ガラス戸に置いて

あった父のウィスキーを舐めたときのような、とろん

とした酩酊感。少し気を抜いたらその場にくずおれて

しまいそうですらあった。

 

 

『だから、それじゃあ立場が逆でしょうが!』

 

 

「は……っ」

 

 

琴里の声で我に返る。

 

 

「さ……っ、先急ごうか!」

 

 

士道は大きく深呼吸しながら、できるだけ狂三の目を

見ないように足を動かした。

 

 

なぜだろうか……あれ以上目を合わせていたら、

もうその場から動けない気がしたのだ。

 

 

『……ち、まあそう簡単には口を割らないか。

仕方ないわ、攻略を続けましょう。──にしても

情けないわね。完全に主導権握られちゃっている

じゃない』

 

 

「う、うるせ……」

 

 

『ま……やられっぱなしってのも癪ね。ちょっと

揺さぶりをかけてみましょうか』

 

 

 

 

 

 

 

琴里が言葉を発すると同時、艦橋メインモニタに

選択肢が表示される。

 

 

 

 

①「狂三って、綺麗な髪してるな」さりげなく頭を撫でる。

 

 

②「おっと、危ない」躓いた振りをしてもたれかかる。

 

 

③「ほら、こっちだよ」自然に手を握る。

 

 

ふむ、と琴里はくわえていたチュッパチャップスの

棒を立てた。

 

 

選択肢は全て、不意にスキンシップを図るもので

ある。少し冒険ではあるが……精神状態の安定ぶり

からも、AIが可能であるとの計算を出したのだろう。

確かに距離を縮めるのに有効な手段ではある。

 

 

「──総員、選択!」

 

 

言ってすぐに手元の画面に表示された集計結果を

見て、琴里はふむとうなった。

 

 

「③……か。まあ無難なところね」

 

 

「そうですね。①は少々慣れ馴れすぎますぎますし、

②は白々しい」

 

 

と、いつの間にか琴里の後方に戻ってきていた

神無月が言ってくる。

 

 

さらさらの金髪は乱れ、胸元ははだけていた。

ついでにズボンは穿いてはおらず、下半身は

キャラクターのプリントされたトランクス一枚に

なっている。

 

 

「あら、よく逃げ切れたわね神無月」

 

 

「危ないところでした。彼らは一体」

 

 

「いざというときのための備えよ」

 

 

「なぜか私のパンツを脱がそうとしてきたのですが」

 

 

「気のせいよ」

 

 

神無月は「ははは」と笑うと、キリッと真面目な

顔に戻った。

 

 

「しかし……スキンシップを図るのであれば、

もう一つ手段があるのでは」

 

 

「言ってみなさい」

 

 

「は。まず士道君はおもむろに廊下(ろうか)仰向(あおむ)けになるのです」

 

 

「それで?」

 

 

「するとアングル的に、精霊(せいれい)の黒タイツ()しパンツが(おが)めるのです」

 

 

「まだ言うか」

 

 

 

琴里が再び指を鳴らそうとすると、神無月が慌てて

静止する。

 

 

「ま、まだ続きがあるのです。精霊は下着を見られた

ことを恥ずかしがるでしょう」

 

 

「ふむ」

 

 

「となれば無論、廊下に転がった士道君を()みつけにかかるはずです! そうなれば主従(しゅじゅう)関係(かんけい)(ふか)まるのは明白の──」

 

 

琴里が指を鳴らすと、再び艦橋に巨漢二人が入って

きて、神無月を引きずっていた。

 

 

「な、なぜですか、司令ぇぇぇぇぇぇッ!」

 

 

 

神無月の叫びは無視して、マイクを引き寄せる。

 

 

「士道、③よ。手を握ってみなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……了解」

 

 

士道は琴里の指示に、小さくうなずいた。

……その指示が飛ぶ少し前に、断末魔のような叫び

が聞こえたが、なぜだろうか、気にしてはいけない

気がした。

 

 

「…………」

 

 

士道はごくりと唾液を飲み込むと、前方の道にへと

見やった。丁路地(ていろじ)。あそこを左に曲がればすぐ西階段

である。

 

 

なんとも本当におあえつらえ向きだった。あそこで、

まっすぐ進もうとしていたそんな狂三の手を取り、

「ああ、こっちこっち」と道を示す。そんな動作を

脳内で何度もシュミュレートする。

 

 

 

だが──

 

 

 

「ぃ……ッ⁉︎」

 

 

士道は驚愕したのか目を見開いた。いよいよ丁路地(ていろじ)

にさしかかろうとしたところで、不意に狂三が士道の

手を握ってきたのである。

 

 

『なんですって──?』

 

 

琴里も、予想外といった様子で声を上げる。

 

 

だが士道の狼狽は琴里の比ではなかった。右手の

平に、細くて柔らかくて少しひんやりとした指が

絡みつき、きゅっと力を込めてきている。儚げで

健気な圧力。もう油断をしたらその瞬間に鼻血

くらいは噴いてしまいそうだ。

 

 

「く、狂三……?」

 

 

CGがなかった頃の映画に出てくるロボットのような

挙動で首をガリガリと動かし、どうにかその言葉を

絞り出す。

 

 

「ど、どどどどどどどうかしたのか……?」

 

 

見やると、士道の手を握った狂三は、少し恥ずかし

そうに目を伏せ、顔を背けた。

 

 

「やっぱり……ご迷惑でして?」

 

 

「……ッ‼︎ そ、そんなことは……ない、けど……」

 

 

士道がそう言うと、狂三はホッと息を吐くように

肩を入っていた力を抜いた。

 

 

「やっぱり士道さんは、優しいお方」

 

 

言って、照れくさそうに微笑んでくる。

 

 

「っ、い、いや……」

 

 

──なんかもう、どこを見ればいいのかわからない。

目が泳ぐ。意識が混濁する。ヤバい。ヤバいよ狂三。ちょー可愛い。狂三可愛いよ狂三。狂三ちゃんマジで天使。そんな思考とも言えない思考が、士道の脳内を

蹂躙する。

 

 

「──ねぇ、士道さん」

 

 

狂三が、その小さな唇を蠢かせる。

 

 

「な……ん、だ?」

 

 

「わたくし、士道さんにお願いがありますの。

……聞いてくださいまして?」

 

 

不思議な感覚。狂三のお願いになら、無条件で首を

縦に振ってしまいそうだった。

 

 

「あ、あ──」

 

 

 

だが、その瞬間。

 

 

 

「ぬわ……っ!」

 

 

「……っ」

 

 

そんな叫び声とともに、後方からドンガラガッシャン

という音が響いてきて、士道はビクッと身体を反応

して揺らした。

 

 

どうやら廊下に設えられていた掃除用具入れが倒れて

しまったらしい。そこら中に箒やらちり取りやらが

散乱している。

 

 

そして──その中に、犯人と思しき生徒が二人、

重なり合うようにしてその場に倒れ込んでいた。

 

 

 

「と、十香……折紙⁉︎」

 

 

 

士道は声を上げた。そう、そこにいたのは紛れもなく

十香と折紙だったのである。

 

 

「あらあら? お二人して何をなさって

おられますの?」

 

 

狂三が、士道の手を掴んだまま不思議そうに

首を傾げる。

 

 

その様子を見てか、十香と折紙がバッとすぐさま

立ち上がった。

 

 

「そ、それはあれだ! シドーが狂三に学校案内

をするというから、その……あれしたのだが、

そのあれは聞いていないぞ!」

 

 

「──時崎狂三。学校内で手を握る必要はないはず。

今すぐ離れるべき」

 

 

「! そう、それだ!」

 

 

十香が、珍しく折紙の言うことに同意するように

大仰に首肯する。

 

 

「あ……」

 

 

言われて、士道はまだ手を繋いでいることに

気づいた。慌ててその手を放そうとする──が、

そのタイミングに合わせて狂三が指に力を入れて

きたため、手を解くことができなかった。

 

 

狂三は士道を一瞥してから二人に目を向けると、

芝居がかったしなを作る。

 

 

「実はわたくし、ひどい貧血持ちですの。そこで

優しい士道さんが、わたくしの手を取ってくださった

のですわ。ですので士道さんを責めないであげて

くださいまし」

 

 

十香と折紙は、言葉を一通り聞いてから士道に

目を向けてきた。「本当か?」と問うような

そんな視線で。

 

 

「え、ええと……その、まあ、うん……」

 

 

なぜだろうか、ここは誤魔化さねばならない

そんな気がして、士道は曖昧に返事した。

 

 

すると次の瞬間、不意に折紙がその場に膝を突いた。

 

 

「っ! 折紙⁉︎ どうしたんだ?」

 

 

突然のことに士道が驚くと、折紙はくっと顔を上げて

唇を開いた。

 

 

「貧血」

 

 

「………」

 

 

士道は、頬をぴくりと動かした。自然、額を汗を

伝う。

 

 

「一人では歩けない」

 

 

「………」

 

 

「優しい人」

 

 

「……お、おう」

 

 

士道は異様なプレッシャーに気圧されながらも、

空いている左手を差し出した。

 

 

すると、折紙が貧血らしからぬ速度でその手を取り、

士道の隣にぴったりと寄り添った。

 

 

「なんだ二人とも。情けないな!」

 

 

十香はそんな狂三と折紙を見てふふんと腕組みし──

 

 

「……はっ!」

 

 

士道の両手を見直してから、ハッとした顔を作った。

 

 

 

「し、シドー! 私もヒンケツなのだ!」

 

 

「そうなのか……?」

 

 

「う、うむ、実はあまりお尻の肉付きが

よくないのだ!」

 

 

「いや貧血ってそういう意味じゃ……」

 

 

士道が苦笑すると、十香は困ったようにあわあわと

両手を蠢かそろ蠢かせた。

 

 

「と、とにかく、私もなのだ!」

 

 

言って、手を取ろうとする。──が、そこには既に

狂三と折紙がいた。

 

 

「ぐぬぬ……」

 

 

十香は今にも泣いてしまいそうな顔を作ると、

士道の真ん前に立ち、まるで飛びかかってくる

かのように腰を低く落とした。

 

 

「お、おい、まさか──」

 

 

と、その瞬間、どこからともなく携帯電話のバイブ音

が鳴り響いた。

 

 

 

「──もしもし」

 

 

と、折紙がポケットから携帯電話を取り出し、

話し始める。

 

 

電話口に向かって淡々と相づちを打ったのち、

なぜか狂三に鋭い視線を送った。

 

 

「……了解」

 

 

そして、静かに電話を切る。

 

 

「急用ができた」

 

 

折紙はそう言うと、名残惜しそうに士道の手を

きゅっと強く握ったあと、手を離した。

 

 

その瞬間、十香が滑り込み、士道の手にしがみつく。

 

 

「………」

 

 

折紙はそんな十香を一瞥したあと、もう一度狂三に

刺すような眼光を向け、歩き去っていった。

 

 

 

去り際、士道の耳元に「時崎狂三に気をつけて」

という言葉を残して。

 

 

「な、なんだぁ……?」

 

 

 

「士道さん? 参りませんの?」

 

 

「え? あ、ああ……」

 

 

狂三に促されて、士道は両腕を拘束されたまま

歩いていった。

 

 

……周囲から注がれる視線が一層濃厚なものに

なったことは、言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後六時。

 

 

 

一通り学校内の施設の案内を終えた士道は、狂三、

そして半ば無理矢理くっついてきた十香とともに

校内をくぐり、夕日に照らされた道を歩いていた。

──もちろん、もう士道の両手は自由になっている。

 

 

 

「まあ、大体あんなところだ。わかったか?」

 

 

「ええ。感謝いたしますわ。……本当は、二人きりが

よかったのですけれど」

 

 

「は……はは」

 

 

冗談めかして言ってくる狂三に苦笑いで返す。

 

 

正直、士道は十香に感謝していた。

 

 

 

結局ゴブ付きということで、〈ラタトスク〉からの

指示も比較的ソフトなものになり、結果屋上や保健室

といったイベントスポットを訪れていても、そこまで

ロマンティックな空気にならずに済んだのだ。

 

 

いや、精霊の好感度を上げることを考えるのなら憂慮

すべきことなのだろうが……なんというのだろうか、

もしも狂三と二人きりでムード満点なそんな場所に

放り込まれたら、取って食われてしまいそうな感じが

したのである。

 

 

それくらいに妖しい魅力が、狂三にはあった。

 

 

 

まるで──そう、見る者を問答無用で虜にする、食虫植物のような。

 

 

 

「いやいや……」

 

 

士道は自分の思考に小さく首を振った。女の子に

向かって取って食われそうとか食虫植物とか、

いくら口に出していないとはいえ失礼である。

 

 

と──。

 

 

 

「それでは士道さん、十香さん、わたくしはここで

失礼いたしますわ」

 

 

十字路に差し掛かったあたりで、狂三はぺこりと

礼をして、そう言った。

 

 

「え? お、おう……」

 

 

「む、そうか。ではまた明日だ」

 

 

士道と十香が小さく手を振ると、狂三は夕日の中に

消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ああ、ああ」

 

 

士道と十香の二人と別れて、一人夕日の道を静かに

歩きながら、狂三はそんな声を発していた。

 

 

 

「いけませんわね──少し、我慢しないと。せっかく

ですもの。もし少し学校生活を楽しみたいですわ」

 

 

自分に言い聞かせるように呟き、ステップを踏むよう

にくるりと身体を回転させる。

 

 

「……うふふ、お楽しみは、最後に大事にとって

おきませんと」

 

 

と──踊るように道を歩いていた狂三は不意に、

ドン、と何かにぶつかってしまった。

 

 

「──とと」

 

 

倒れないようその場に踏み止まり、そちらを見やる。

 

 

 

どうやら狂三がぶつかったのは男の背中だった

らしい。ガラの悪い男たちが、道端にたむろって

いた。

 

 

「あらあら、申し訳ありませんわ」

 

 

狂三はぺこりと頭を下げてそう言うと、その場から

立ち去ろうと足を動かした。だが。

 

 

「おい、待てよお嬢ちゃん。そっちの不注意だって

のに、それで終わりなねえだろうよ」

 

 

狂三がぶつかった男がニタニタいやらしい笑みを

浮かべながら言ってくる。

 

 

と、それに応ずるように、男の仲間が、狂三を囲う

ように散らばった。

 

 

「あら、あら?」

 

 

狂三がキョトンと首を傾げると、男の一人が

ひゅうッ、と口笛を吹いた。

 

 

「おいおい、ちょっとマジで可愛いじゃん。

ちょー大当たり?」

 

 

「ねーねー君ぃ、お名前なんてーの?

ちょっと仲良くしようよー」

 

 

なんて、狂三の全身を睨め回しながら、口々に

言ってくる。

 

 

ああ──、と狂三は理解した。

 

 

 

「お兄さん方。──もしかして、わたくしと交わり

たいんですの?」

 

 

妖しい笑みを浮かべながら狂三が言うと、男たちは

一瞬ポカンとしたあと、額を手に当てて笑い始めた。

 

 

「おいおい、交わりたいってきゃー、()(こつ)!」

 

 

「いーじゃんいーじゃん話早くって。何、君も

そういうの好きなの?」

 

 

「ええ。人並み程度には。──それより、少し場所を

移しませんこと? ここでは人の目にしまいますわ」

 

 

狂三が言うと男たちは色めき立ち、狂三を囲むように

したまま、路地裏に入っていった。

 

 

そして袋小路に狂三を追いつめるような格好を

作ると、狂三とぶつかった男が好色な笑みを浮かべ

ながら手を伸ばしてきた。

 

 

「ま……じゃあ、遠慮なく」

 

 

 

が──その手は狂三に届かず、段々と下に下がって

いった。

 

 

「あ? 何してんのさ。やんねーんなら

俺が先に──」

 

 

男の仲間が、肩をすくめながら言う。しかし狂三に

手を伸ばした男は、必死な様子でその言葉を遮った。

 

 

 

「ち、違ぇ! 身体が……!」

 

 

「身体?」

 

 

そこで、仲間も気付いただろうか。

 

 

狂三の足元から影が広がり、そこから白い手が無数

に生え──その男の身体を影に引きずり込んでいる

のだと。

 

 

「……ッ⁉︎ な、なんだこりゃ……!」

 

 

「う、わわわわ……ッ⁉︎」

 

 

 

仲間たちは一斉に叫びを上げる。だが──遅い。

 

 

 

「うふふ、ふふ」

 

 

狂三が唇を笑みの形に歪めると、全員の足に白い手

が絡みつき、その身体を影の中へと引きずり込んで

いった。

 

 

「まあ、いつもならば()()()に値しない小物

ですけど……メインディッシュが控えていますし、

肩慣らしならぬ舌慣らし──としておきますわ」

 

 

狂三は、ぱん、と両手を合わせた。

 

 

「──いただきます」

 

 

瞬間、辺りに響いていた男たちの悲鳴が、完全に

消えてなくなった。

 

 

狂三は料理を味わうようにしばしの間目を伏せると、

息を吐いてお腹をさすった。

 

 

 

と──その瞬間。

 

 

 

「……あら?」

 

 

狂三は、不意に全身を襲った感覚に、眉をぴくりと

動かした。

 

 

全身を無遠慮に撫で回されるような感触。巨大な生物

に咀嚼もさせぬまま丸呑みされたら、こんな感じかも

しれない。

 

 

この感覚は初めてではなかった。

 

 

現代の魔術師(ウィザード)たちが顕現装置(リアライザ)とかいう機械を使って

作り出した結界・随意領域(テリトリー)

 

 

 

その中でも特別なもの。そう、間違いなく──

あの女。

 

 

「──ち、一足遅かったですか」

 

 

 

狂三の思考を裏付けるように、狂三の前に、

一人の少女が姿を現した。

 

 

髪を一つに括った、中学生くらいの女の子である。

 

 

装いはパステルカラーのパーカーにそしてキュロット

スカートというラフなものだったが、その身に纏う

空気は、獲物を見つけた猛禽さながら剣呑であった。

 

 

「また派手に食い散らかしてくれたようですね、

〈ナイトメア〉」

 

 

「あらあら、あなたは……崇宮真那さん、

でしたかしら?」

 

 

狂三が小さく首を傾げながら言うと、真那はフンと

不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

 

「私の名を覚えてやがったことは褒めてやりますが、

気安く呼ばれるのは反吐がでやがります」

 

 

「あら、これは失礼しましたわ」

 

 

狂三はぺこりと頭を下げ、素直に謝った。

 

 

 

「でもお名前はとても大事でしてよ。わたくしも

〈ナイトメア〉なんて呼ばれるのは悲しいですわ。

時崎狂三と呼んでくださいませんこと?」

 

 

狂三が言うと、真那は一層気分悪そうに眉を歪めた。

 

 

「大事だから、貴様には呼んで欲しくねーんです。

大事だから、貴様は呼んでやんねーんです」

 

 

「難しいお方」

 

 

「黙れよ、精霊」

 

 

 

真那が視線を鋭くする。

 

 

狂三は、肌の表面がちりつくのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アレの後処理などは皆さんにお願げーします」

 

 

 

「わかったわ。それにしても精霊を一瞬にして……

さすがは()()からの出向してきた期待の精鋭の

トップエース様ね……」

 

 

真那がそう言って〈ナイトメア〉──狂三の遺体に

視線を向けながらAST隊長である遼子にそう言うと

遼子も真那の言葉に納得したのか返事をすると同時に

近くに転がっている狂三の遺体に視線を向けながら

真那の手際の良さに驚きながらも感心した表情を

させていた。

 

 

「アレの処理は造作もねーですから」

 

 

真那は平然とそう言って一仕事終えたといった調子

で首を回す。

 

 

「それにしても……このスニーカーは履き心地が

いいのでかなり気に入っていやがったんですが……」

 

 

真那はそう言って白いスニーカー見ながらそう言う。

 

 

なぜなら真那が履いているスニーカーは狂三の血痕が

かなり付着してしまい目立ってしまっていたからだ。

 

 

「それにしてもあんたも〈ナイトメア〉に対して

異常なまでに固執するわね」

 

 

「この女は生きていてはいけねー存在ですから」

 

 

遼子が真那にそう言うと真那の表情はかつてない

ほどの真剣な表情でそうはっきりと言った。

 

 

「それもそうね……」

 

 

真那のそんな言葉を聞いて遼子は納得した表情を

しながら真那にそう返事をする。

 

 

確かに真那の言う通りだった。遼子としても悪意を

持って一万人以上の大量の死者を出して殺している

そんな精霊はこの世に生かしておいていいはずが

ないと理解はしている。

 

 

「さて、私のやるべきことはやりましたのであとは

お願げーします」

 

 

「わかったわ。総員、民間人に見つからないように

この場の後処理をするわよ」

 

 

『了解!』

 

 

折紙を含めたASTのメンバー全員が遼子の言葉に

返事して敬礼をしていた。

 

 

「それじゃあ、失礼させてますね」

 

 

真那は遼子や折紙を含めたASTのメンバーにその場

を任せる言葉を口にしてその場を後にした。

 

 

 

だがこの時、AST隊長の遼子や隊員の折紙、そして

トップエースと呼ばれて最悪の精霊〈ナイトメア〉

──時崎狂三を殺した真那でさえ気付く者は誰一人

いなかった。

 

 

 

「…………」

 

 

 

一人の少女が真那の後ろ姿を見て真那を睨みつけるようなそんな『敵意』と『殺意』の宿ったそんな視線を向けていることを……

 




最後まで読んでいただきありがとうございます‼︎


これからも皆さんが『応援』をしていただければ
『更新』の頻度が更に上がるそんな可能性がある
かもしれません‼︎


真那の口癖が難しかった件について……(汗)


『他の投稿作品』もあるので、是非ともそちらも
楽しんで見ていただければありがたいです‼︎

十香と士道が出会う前の四月九日の話を書いた方がいいか

  • 書くべき
  • 書かなくていい
  • どっちでもいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。