ことができました‼︎
今回は『14253文字』までの膨大な量を頑張って
書きましたが、豆腐のようなクソナメクジメンタルの
自分はきちんと面白く書けているのかととても心配に
なります……(汗)
『デート・ア・ライブ0』『最終話』となります。
【お気に入り】や【しおり】、【投票】、【感想】を
いただければ、豆腐のようなこのメンタルで脆い自分
も更に『創作意欲』が増していきます‼︎
面白く出来ているかどうか心配でいっぱいですが
一生懸命にたくさん書きました。
最後まで読んでいただいてもらえたら嬉しいです‼︎
結局、買い物には折紙もついてくることになった。
目的地至るまでの道中、十香と折紙はそれはもう険悪
ではあったのだけど───まあよくよく考えてみれば
いつもの学校生活とそう変わらなかった。天宮駅前の
ツインビルB館に入ってエレベーター内に乗り込み、
目的の階のボタンをプッシュする。
平日の午前中だからなのかいつもより客は少なく、
このエレベーターに乗っているのも、士道たち一行
だけだった。
「そういえば、シドー」
と、エレベーターが低いうなりのような駆動音を
響かせ始めたところで、十香が不意に首を傾げて
きた。
「ん? なんだ?」
「水着とは、一体何なのだ?」
「え?」
士道は目を丸くして聞き返した。が、そういえば、
まだ学校の体育でもプールの授業は始まってない。
十香が水着の存在を知らないのも無理もないこと
なのかもしれなかった。
とはいえ、改めて女の子に水着のことを説明すると
なると少し照れる。士道は微妙に目線を十香から
逸らしながら唇を開いた。
「ん……そうだな、水着っていうのは──」
「──Mi ─Zu ─Gi 。対
発動と同時に搭載された
弾頭を分子レベルに分解、放出し、霊装をも容易く
通り抜け、対象の対組織を復元不可能なレベルまでに
ずたずたに破壊する。その際の苦しみは筆舌に尽くし
難く、あまりに非人道的であるというそんな理由で、
対人使用は国際法で禁じられている」
と、折紙がつらつらと平然と言葉を並べ立てる。
十香が「ひっ」と息を詰まらせた。
「な……ほ、本当かシドー……⁉︎」
「いや、そんなわけ」
士道が訂正しようとすると、再び折紙が言葉が
遮ってきた。
「本当。まさか彼が、──Mi ─Zu ─Gi の存在を
知っているとは思わなかった」
「な、なぜシドーはそんなものを……」
「それは至極明快かつ単純な理由。その対精霊殲滅
兵装は、精霊に向ける他ない。きっとあなたたち二人
が油断したところで、後ろから奇襲をかける算段」
『……っ』
十香が顔を青くして身を固くし、折紙からすぐ距離を
取って、隠れるように士道の陰に立っていた四糸乃が
小さく息を詰まらせる
「う、嘘を吐くな! シドーがそんなことをする
はずがない!」
「……っ、わ、たしも……そう、思い、ます……」
十香が叫び、滅多に声を上げないそんな四糸乃も
また、そう言ってきた。
「そ、そうだろう、シドー」
士道が首肯しようとしたところで、折紙が右手で鼻を
つまみ、唇を動かした。
『いや、折紙の言うとおりだ。いつおまえらを殺して
やろうかと思っていたのだー』
「ま、まさかシドー、本当に……⁉︎」
「いや全然似てねえだろ騙されんなよ!」
士道がそう叫ぶと、十香がハッとした様子で肩を
揺らしてた。どうやらようやく騙されていたことに
気付いたらしい。怒りにか恥入りにか頬を赤く染め、
歯をぎりと噛みしめる。
「おのれ、卑劣なり鳶一折紙!
私をたばかったな!」
「なんのことかわからない」
「……二人とも、店内では静かにな」
士道を挟んで言い合いを始めた二人を何とかなだめ、
はあと息を吐く。如何に慣れているとはいっても、
疲れるものは疲れるのだ。
「水着ってのはその名の通り、水に入るときに着る
服のことだよ」
士道が簡単に説明をすると、十香がとりあえずは
折紙への威勢を収め、首を傾げた。
「水に……? それだけのためにわざわざ着替えを
するのか」
「ああ。服が濡れたら服がびしょびしょになって
気持ち悪いだろ?」
「おお、なるほど! シドー、さてはおまえ
天才だな?」
「いや別に俺が考えたわけじゃねえけども」
頬をかきながら苦笑する。
エレベーターから降りるとすぐに、カラフルで複数の
水着が陳列されたスペースが視界に入り込んできた。
もう六月も半ばである。店側としてもちょうど今が
売り時なのだろう。
『……さ、前置きは長くなったが、スタートだ。
適当に試着してもらってみたまえ』
と、今まで沈黙を保っていた令音が、不意に声を
発してくる。
『……選択のセンスは君に任せるが、あまり彼女らの
艶姿に見とれすぎたり狼狽えたりしないように注意を
してくれ。大事なのは平常心だ』
「……了解」
士道はそう言って、十香たちとともに水着売り場に足
を踏み入れた。「いらっしゃいませー」という店員の
甲高い声が、どこからか響いてくる。
まず駆け出したのは十香だった。不思議そうに店内を
見回し、首を傾げる。
「それで、シドー。水着というのはどれのこと
なのだ?」
「ん、そこら中にかかってるの全部そうだよ」
「! な、なんだと……?」
士道がそう言うと、十香は目を剥いて両手を
わななかせた。
恐る恐るワンピースタイプの水着を手に取って矯めつ
眇めつ眺め回し、手触りを確かめるように水着の生地
を撫でてから、何かに気付いたようにハッとした表情
をして顔を上げてくる。
「なるほど、そうか。これの上に何か着るのだな?」
「いや……それだけだけど」
士道が後頭部をかきながら言うと、十香が戦慄に
染まった顔を向けてきた。
「こ、これでは身体が隠しきれないぞ! なぜこんな
にも面積が小さいのだ……⁉︎」
「や、まあ……動かしやすいから、じゃないか?」
「ぬ、ぬう……確かにそうかもしれんが、これでは
鳶一折紙のナントカスーツではないか……さすがに
少し恥ずかしいぞ」
「…………」
十香のそんな言葉に、折紙がじっとした視線を送る。
何を言っているわけでもないのだが、なぜだろうか、
どことなく憮然としている気がした。
『……まあ、とにかくどれか試しに着てみて
もらいたまえ』
令音はインカム越しにそう言ってくる。士道は了解を
示すようにインカムを軽く小突くと、三人を視界の中
に収めて口を開いた。
「ま、まあ……とりあえずどれか気に入ったのを試着
してみてくれ」
士道がそう言うと、折紙が即座にこくんとうなずき、
四糸乃も恥ずかしそうに首肯した。そんな二人の様子
を見てか、十香も頬を染めながら、「……特別だぞ」
と唇を動かす。
そしてぐっと拳を握り、四糸乃に向かって元気良く
ファイテングポーズを取って見せた。
「よし……では勝負だ、四糸乃!」
「え、えと……お手柔らかに、お願い……します」
そんな二人のやり取りを見て、士道は首を傾げた。
「勝負って……何かするのか?」
「うむ。今日私と四糸乃とで、よりシドーをドキドキ
させた方に、シドーとデェトをするその権利をくれる
らしいのだ」
「な……⁉︎」
士道は目を剥いてインカムを叩いた。すぐに、令音の
眠そうな声が聞こえてくる。
『……ん、どうせなら少し難易度を上げておこうと
思ってね』
「そ、そんな──」
「ところでシドー!」
と、途中で十香が声をあげてきて、士道は令音との
会話を中断させられた。
「な……なんだ、十香」
「シドーは一体どうやったらドキドキするのだ?
走るのか? いっぱい走るのか?」
「……それは、うん、ドキドキしそうだなあ」
士道は頬に汗を垂らしながら苦笑した。確かに、
とてもドキドキしそうだった。
だが、そこで四糸乃の左手の『よしのん』がカラカラ
と笑い声を上げる。
『あーはは、違うよー。男の子をドキドキさせるって
いったら、ひとつしかないじゃない』
「ぬ? ではどうするのだ?」
『んー、ま、四糸乃の敵に塩を送るってのは本当は
本意じゃないけどぉ? 何も知らないコにただ勝った
としてもつまんないしねー。ほいほい十香ちゃん。
ちょっとこっちに来たんさい』
言って、『よしのん』が手招きする。そして十香が顔
を寄せると、士道の聞こえないくらいの小さな声で、
何やらひそひそ話した。そして、
「な……ッ⁉︎」
話が終わるとそれと同時、十香の顔がボンッ!
と赤くなった。
『ま、どーせ四糸乃には勝てないとは思うけど、
せいぜいがーんばってねー』
『よしのん』が、四糸乃を引っ張って店の奥へと
歩いていく。十香は呆然とした様子でその背中を
見送っていた。
「お、おい、十香……? 一体何を──」
「はふん!」
士道が肩に手を触れると、十香がへんちくりんな叫び
を上げて身体を震わせた。
「と、十香?」
「ぬ……いや、すまん。なんでもないぞ。しかし……
そうか、困ったな。シドーはああしないとドキドキと
してくれないのか……」
「いや、だからだから一体何を聞いたんだよ!」
と、士道が叫んでいると、背後から音もなく折紙が
現れた。
「──ルールは把握した。士道とのデート権は
私がもらう」
「な……っ! き、貴様は関係ないだろう!」
十香は顔を険しくしてすぐに折紙を睨みつける。
しかし折紙は意にも介さず、水着を何種類か持って
試着室に入っていった。
「ぐ……あ、あの女だけにはデェト権を渡すわけには
いかん……ッ!」
十香は拳を握ると、手近にあった水着を手に取り、
折紙の隣の試着室に入っていく。
「……ええと」
なんだかんだ勝手に話が進んでいる気がする。
士道はぽりぽりと頬をかいた。
ふと四糸乃へ視線を見やると、まだ水着を選んでいる
らしいことがわかる。どうやら四糸乃はワンピース
タイプを希望しているのだが、『よしのん』が熱烈に
露出度の高いセクシーな水着を推してるようだった。
そんな様子を見ていると、十香が入った試着室の
カーテンが、バサッと開け放たれた。
「シドー!」
言って、ワンピースタイプの水着を着た十香が、
少し恥ずかしそうにその肢体を晒す。
「お、おお……」
士道は思わず目を丸くしていた。十香が掛け値無しに
美しい少女であることも、抜群なそのプロポーション
を誇ることも知ってはいた。だが、こうして頭頂から
爪先までちゃんと見る機会はあまりにもなかったかも
しれない。水着自体はシンプルなデザインである。
しかしだからこそ十香の無垢な美しさが強調されて、
士道の胸を刺激するのだった。
「ど、どうだ、シドー! ドキドキしたか⁉︎」
「え──あ、ええと……うん」
「そ、そうか! シドーがそう言ってくれるなら……
うん、頑張るぞ!」
言って、十香が嬉しそうに微笑む。すると、士道の
心拍などを読み取りでもしたかのように、右耳には
聞き覚えのあるブザーが聞こえてきた。
『……アウト。少しは落ち着きたまえ、シン』
「あ──」
令音に言われて初めて、自分で呆然と十香の肢体など
に見とれてしまってることに気付いた。呆れたような
令音の吐息が聞こえてくる。
『……ともあれ、失敗したからにはペナルティを
受けてもらおう』
ペナルティ。その不吉なフレーズに、士道は背筋に
冷たいものが走るのを感じた。
「そ、そこまであるんですか……⁉︎ い……一体
どんな……」
琴里がいるときなどは、それはもう身の毛のよだって
しまうような、イ、イヤ、ヤメテ! お婿に行けなく
ナッチャウ! ような様々な仕打ちを受け続けてきた
士道である。いや上にも警戒してしまう。
しかし令音はしばし無言になると、何やらインカムの
向こうで〈フラクシナス〉の大勢のクルーたちなどを
集めて話し始めた。そして、数秒後。
『……どんなものにしようか』
なんて言葉を発してきた。思わずその場でずっこけて
しまいそうになってしまう。
「か、考えてなかったんですか」
『……ん、我々は琴里ほど、君の弱みを握っている
わけでもないしね……』
当然である。もしそんな弱みを握られていたのならば
士道は涙が出ちゃう。男の子だもん。
令音はふうむとうなると、これまた数秒後、何かを
思いついたように声を発してきた。
『……よし、ではこうしよう。
「は──はぁッ⁉︎」
思わぬ罰ゲームに、士道は素っ頓狂な声を上げた。
『……これで今後琴里がいないときにこういう事態に
なったときは、その映像を公開するというペナルティ
も作成をすることができるね。……さ、では頑張って
くれたまえ。一度アウトになるたび、さらにシーンは増えていくよ』
しかし令音に士道の講義を受け付ける気などは一切
ないらしい。士道はそんな絶望的な心地の中で額に
手を当てた。
と、士道の思考の途中で、十香の隣のカーテンが
開け放たれた。
「……っ!」
その姿を見て、一瞬言葉を失う。
折紙の細くて華奢な肢体を、ホルターネックタイプの
ビキニが覆っていた。水着の色が暗色であるためか、
折紙の白い肌が一層際だち、いやが上にも普段は服に
隠れている太股や鎖骨、おへそなどにへと目にいって
しまう。しかも水着に合わせるためか髪もしっかりと
一つに括っており、そこからちらと覗くうなじなどが
また堪らない。自然と顔が熱くなってしまうのを自覚
できた。
「士道、どう思う」
「……! え、あ、ああ……凄く、似合っていると
……思う」
「そう」
折紙は無表情のまま、しかしどこか嬉しそうに首肯を
すると、裸足のまま試着室から出てきて、士道の前で
くるりと一回転した。
その様に、またもドキッとしてしまう。すると再び、
士道の耳にブザーが響いてきた。
『……おやすみのチュウは、
「──し、しまった!」
ハッと肩を揺らすが、もう遅い。さらなる絶望的な
罰ゲームがカウントされた。
「ぐッ、ぬぬぬ……」
そこで士道は、十香がうなり声を上げていることに
気付いた。士道と折紙の方に鋭いまでの眼光を送り、
ぎりぎりと悔しそうに歯を噛み合わせている。
「シドー! そこの水着を取ってくれ!」
「え……?」
十香が指したのは、士道の近くにかけられていた
ビキニだった。十香が今身に纏っている水着の、
四分の一程度しか布面積のないセクシーなデザイン
である。
「こ、これか? でも十香、恥ずかしいんじゃ──」
「いいから、それをよこすのだ!」
士道は十香に言われるままに、その水着を手渡した。
すると十香はその水着を引ったくるように奪い取り、
カーテンを閉めた。すぐに、カーテンの中がベコベコ
とうねり──
「こ、これでどうだ!」
再びカーテンが開くと同時、先ほどとは全く印象の
異なった十香が姿を現した。
士道が今し方渡した、大胆なデザインであるビキニを
見に纏い、頬を桜色に染めながら、おへそや大股など
を手で隠そうとし───しかしそれでは意味がないと
手を退かし、を落ち着かない様子で繰り返す。
「こ、これは……」
士道は思わずごくりと生唾を飲み込んでいた。
先ほどの折紙の水着姿も素晴らしいものだったが、
十香のその姿もこれにはまた違った魅力があった。
ダークカラーが印象的なビキニが、十香の健康的な
プロポーションを見事に映えさせてしまっている。
そして何よりも肌を晒すことに慣れていない微妙な
恥じらいがそれら全てをポイントを倍加させている。
正直、堪らない。
『……さて、ではおはようのチュウも追加かな』
「は──っ」
右耳に令音の声が響いて、士道はビクッとその身体を
震わせた。随分と十香の艶姿に陶酔してしまっていた
らしい。もう反論のしょうがないほどアウトだった。
「シドー、こ、これは似合うだろうか……?」
十香がもじもじと内股の辺りを摺り合わせながら
訊いてくる。士道を応と首縦に振った。
「そ、そうか!」
「…………」
しかし、そこで敵愾心を燃やしたのは折紙だった。
無言のまま、試着室に入っていく。
そしてほどなくしてカーテンが開くと、そこには
先ほどまで着ていた私服に着替え直した折紙の姿が
あった。てっきり十香に対抗して、もっと露出度の
高い水着を着てくるのでは……⁉︎ と身構えていた
士道に取っては、少々意外ではあった。
どうやらそれは十香も同じだったらしい。
一瞬怪訝そうに折紙の装いを見たあと、腕組みして
ふふんと鼻を鳴らす。
「うむ、潔く負けを認めたか。貴様にしては良い
心がけだな!」
しかし折紙はそんな十香の言葉を無視し、無言で
ちょいちょい、と士道を手招きした。
「え? な、なんだ?」
士道が首捻りながら折紙のもとへと歩み寄ると、
折紙がガッと士道の手を取り、自分のスカートの裾を
握らせてきた。
「うぇえ⁉︎」
「な、何しているのだ、貴様!」
士道の素っ頓狂な声を発し、十香がそんな様子を
見ながら声を荒げる。
だが折紙は至極冷静な調子で、静かに唇を開いた。
「──めくって」
『な……⁉︎』
士道と十香の声が、見事にハモる。右耳に何やら
ブザーが聞こえてきたが、なんだかもう気にしている
余裕すらなかった。折紙のそんな行動が理解できず、
目を泳がせまくる。
「な、何言ってんだ折紙。そんな──」
「そうだぞ貴様、ルール違反だぞ!」
「ルールにはきちんと則っている。士道、めくって」
「や、さ、さすがにそれは……」
士道が指先を震わせながら言葉などを濁していると、
そんな士道の手を掴んだ折紙のその手に、ぐっと力が
込められてた。段々と、スカートの裾が持ち上がって
いく。
「ちょ、ちょっと、折紙……⁉︎」
抗おうとするも、無駄だった。ゆっくりと、しかし
確実に、禁断のデルタゾーンがその姿を現していく。
悲しいかな。士道も男の子なのである。目を泳がせ
ながらも、その魅惑的なスカートの中をしっかりと
見てしまっていた。
なんと折紙は私服の下に、白い水着を着ていた
のである。
「な……ッ! なんだと⁉︎」
十香が、驚愕に満ちた声を響かせる。
「言ったはず。ルール違反は犯していないと」
どこか得意げに、折紙が十香に視線を送った。
なるほど発想の勝利である。露出度を上げる
のではなく、逆に、隠す。
そんな計算などにより水着の破壊力などを何倍にも
膨れ上がらせたのだ。チラリズムの勝利。さすがは
来禅高校が誇る天才の一人である。士道は沸騰など
しそうな脳で呆然と考えていた。
「ともあれ、彼を最もドキドキをさせたのは私。
──デート権をもらっていく」
「そ、そんなはずが……」
十香が慌てたそんな様子で士道のもとに走り寄り、
その胸元に耳を当てた。
そして数秒の間士道の鼓動を聞いたのち、愕然とした
顔を作る。
「ど、ドキドキしている……」
折紙が、悠然とスカートを翻した。
「潔く負けを認めるべき」
「ぐっ、ぐぐぐぐぐ……」
十香は悔しそうに歯をギリギリと噛み締めると、
折紙の手を払って士道の右手を取った。
「と、十香……?」
十香の意図がわからず、目を丸くする。
十香は顔を真っ赤に染めながら、士道の右手を両手
で握ると、意を決したように「よし!」と気合いを
入れた。
「よしのん……おまえを信じるぞ……ッ!」
言いながら、士道の手を、ぐいと自分の方へと
持っていく。
「な──!」
士道はすんでのところで力を入れ、その進行を中断
させた。
何しろその目的地は──水着一枚に包まれた、
十香の柔らかそうな胸だったのだから。
「ちょ、な、何してんだ十香! やめろって!」
「だ、駄目だ駄目だ駄目なのだ……! 私でドキドキ
してくれ、シドー!」
「してるしてる! 十分ドキドキしてるから!」
「ほ、本当か……?」
十香が不安そうに眉を八の字にしながら、再び士道の
胸元に耳を当てる。
そして、また数秒後。
「鳶一折紙のときの方がドキドキしている……っ!」
絶望的な叫びを上げて、十香がまたも士道の手を自分
の胸へと押し付けようとしてきた。それはもうかなり
恥ずかしそうに、顔を
「ま、待て! 落ち着け十香! おまえも恥ずかしい
んだろ⁉︎ 無理すんなって!」
「だ、大丈夫だ……! シドーなら、大丈夫だ!
前も触っただろう⁉︎」
「どういうこと? その話を詳しく聞かせてほしい」
「そこ食いついてねえでこいつ止めてくれ
ぇぇぇッ!」
と、士道が悲痛な叫び上げた、その瞬間。
「士道……さ──ん……!」
蚊の鳴くような声が、どこからか聞こえてきた。
「え……?」
十香と折紙もそれに気付いたらしい。ぴたりと動き
を止め、怪訝そうに眉をひそめる。
「む……今の声は」
「…………」
「四糸乃……だよな」
士道が耳を澄ますと、再び小さな声が聞こえてきた。
「士……道さん……た、たす……けて……ください
……っ」
どうやらそれは、三つ目の更衣室の中から聞こえて
きているもののようだった。
──たすけて。その言葉を認識した瞬間、士道は泡を
食ってそちらの方に駆け寄り、カーテンに手をかけて
いた。
「……っ! 四糸乃、開けるぞ⁉︎ 大丈夫か⁉︎」
勢いよくカーテンを開け放つ。と──そこには。
「し、士道さん……」
着ていた服がはだけ、半裸状態になった四糸乃が、
ビキニタイプの水着に腕を通した状態で、胸元を
押さえながら涙目になっていた。
なんというか、その様。四糸乃の小さな肢体などが
相まって、士道にアブノーマルかつ背徳的な禁断の
性癖を芽生えさせそうなくらい妖しいそんな魅力が
溢れていた。
「か、片手だと……上手く、着られません……」
四糸乃が、弱々しく言ってくる。
耳元で、今日一番のブザーが鳴る。
……士道のデート権の獲得者が決まった瞬間だった。
「はぁ……なんとか今日はどっと疲れたな……」
〈フラクシナス〉内にある休憩スペースで長椅子に
腰を掛けながら、士道は大きく息を吐いた。
紙コップを口へ持って持っていき、中に注がれていた
カフェオレをぐいと一気に飲み干す。
休憩スペースとは言っても、そこまで大層なものなど
ではない。廊下の壁が少し凹んだような場所に数種類
の自動販売機(無料)が並び、その前には綺麗な長椅子
が二つ、あとは背の高い観葉植物が二つばかり設置
されているだけの簡素な空間だ。
本当はもっとちゃんとしている飲食スペースなどは
別にあるのだが、士道はどちらかというと人通りの
少ないこちらの方が好きだった。……今日のように
疲れた日は特に。
「訓練もいいけど、本番までに体力使っちまうのも
上手くねえんじゃねえかなあ……」
結局あのあと士道は三人に一着ずつ水着をプレゼント
して、昼食を摂ってから帰宅した。
その後令音に呼び出されて再度プランの確認をして
いたのである。途中十香と四糸乃を呼んでの夕食を
挟んだとはいえ、結構な時間がかかっていたようだ。
本当はもう一度琴里と話しておきたかったのだが、
琴里のコンディションが安定しなくなってしまうとの
理由でそれも叶わなかった。果たして士道はもう明日
までやることなどがないまま放流され、こんなところ
でぼうっとしているのだった。
「…………」
ぼんやりと天井を眺めながら、細く息を吐く。
ついさっきまではよかったのだが……することなどが
なくなると途端に、本当はしたくもないそんな余計な
思案が、顔を覗かせてくるのであった。
(
「本当に……琴里、なのか……?」
琴里が。士道の妹が、折紙の両親を殺した。
折紙の話によれば、琴里以外にももう一人の精霊が
その場にいたのを見たらしく、琴里が折紙の両親を
殺した五年前の精霊たちの一人だと言っている。
そんなこと、にわかに信じられるはずもないし、
信じたくもない。
だが、折紙がそんなことを冗談で言うとも
思えないのもまた、事実だった。
「一体……何が本当なんだ?」
五年前の記憶を探ろうとすると、士道の頭の奥──
決して手では触れられない場所がむず痒く痛むのを
感じた。
「ぐ……」
そう。士道は未だその事件の全容を思い出せずに
いたのである。
──
──
何一つ思い出せなかったのである。まるで士道の記憶
に巧妙なフィルタリングでも仕掛けられているかの
ような気味の悪い感覚である。
「お隣、よろしいですか」
と、不意に頭上から響いた男のそんな声に、思わず
肩を揺らす。
目をやると、そこには手に紙コップを握った神無月が
立っていた。
「あ……どうぞ」
士道が言うと、神無月はにこりと笑ってから
腰掛けてきた。
「いかがですか、士道くん。明日への自信のほどは」
「や、はは……正直、不安でしょうがないです。
あの琴里をデレさせられる自分ってのが全く想像が
できません。五年前琴里の力を封印をしたってのが
信じられ──」
士道は言いかけて言葉を止めた。信じられる
信じられない以前に、記憶がないのだった。
「……? どうかされましたか?」
「ああ……ええと、実は」
士道は、神無月に未だに五年前の事件のことが
思い出しきれないことなどを掻い摘んで説明した。
「ふむ……記憶がない、ですか」
「……はい。その事件のことだけ、すっぽりと」
「まあ、そうでしょうね」
「え?」
士道が目を見開くと、神無月は手にしていた紙コップ
に口を付けてから返してきた。
「いえ、初めて司令が精霊のことを説明したとき、
さも意外そうにしていましたから。もし五年前の事件
を覚えていたのなら、また違った反応などをしていた
でしょうし」
神無月が椅子に紙コップを置き、何かを思い出した
ようにあごに手を当てる。
「ふぅむ。もしよければ、映像をご覧になって
みますか?」
「映像……?」
眉をひそめて問うと、神無月は大仰に首肯した。
「はい。五年前、天宮市天宮市南甲町の大火災を
捉えた映像です。数秒ですが、精霊化した司令と
士道くんらしき姿が映っています」
「……っ!」
士道は息を詰まらせ、目を丸くしていた。先ほどの
カフェオレを飲みきっていてよかった。今液体の
入った紙コップを手にしていたなら、きっと盛大に
床にこぼしていただろう。
「そんなものが残ってるんですか⁉︎」
「ええ。確かどこかのテレビ局のヘリが撮影をした
ものだったらしいですが、公開前に〈ラタトスク〉が
マスターテープを押さえたようです。──すぐにでも
用意しましょうか?」
「お、お願いします……!」
是非もない。士道は間髪入れずにうなずいた。
「折紙⁉︎ あんた、退院したなら早く連絡しなさいよ」
士道たちと別れてから、自宅へ戻る前に天宮駐屯地の
CR-ユニット格納庫に顔を出すと、ASTの隊長である
作業ズボンに黒色のタンクトップというその格好に、
何かの搬入チェック作業などをしていたのだろうか、
クリップボードを脇に挟み、もう片方の手にはペンを
握っている。CR-ユニットとはデリケートかつ極めて
秘匿性の高い装備であるため、触れることができる
人間の数が少ない。故に実戦要員であるASTの隊長が
こういった雑務をこなすことも少なくなかった。
折紙は、軽く目を伏せて首を振った。
「非常に重要な案件に巻き込まれていた」
「重要な案件? ていうか何よそれ」
遼子が眉根を上げ、折紙が右手に持っていた紙袋を
指してくる。折紙はそれを胸元まで持ち上げると、
静かに唇を開いた。
「これは、千金に値する贈り物であり──同時に、
敗北の苦渋を刻んだ忌まわしきもの」
「は……? な、何よそれ」
遼子は怪訝そうに顔を歪めて、折紙の持った紙袋を
凝視してくる。──まあ、その中身は士道に買って
もらった水着なのだが。
「私は〈ハーミット〉を許さない」
「いや、なんでそこに〈ハーミット〉の名前が
出てくるのよ」
と、遼子が頬に汗を垂らしながら言ったところで、
無骨なデザインの搬入車両が、巨大な装備を引いて
ゆっくりと近づいてきた。
「おっと。折紙、あんたもちょっと避けなさい」
言いながら、遼子が折紙に手招きする。
折紙はそちらの方向に歩いていった。
その際、ちらと後方を通る搬入装備に目をやる。
保護用のシートに被せられた、全長五メートル以上
あろうかという、巨大なユニットである。
「これは?」
折紙が問うと、遼子は脇に挟んでいたクリップボード
にペンを走らせながら答えてきた。
「んー、新しく配備された実験機よ。DW-029・
討滅兵装〈ホワイトリコリス〉。巨大なレイザー
ブレイド〈クリーヴリーフ〉二本に、五〇・五cm
魔力砲〈ブラスターク〉二門、それに換装可能の
大容量ウェポンコンテナ〈ルートボックス〉を八基。
AST一個中隊分の火力を一個人にぶっ込んだような
頭のおかしいユニットよ」
「…………」
折紙は無言で、その巨大に過ぎる兵装を見上げた。
「これを使えば、〈イフリート〉を倒すことが
可能?」
「は? 何言ってんの。あんたには扱えないわよ。
権利的にも、技術的にもね。DEM社から直接送られて
きた実験機だもの。ま、一応理論値では、精霊たちを
倒せるそんなレベルの装備らしいのだけど……DEMの
専属
話よ。悪いことは言わないからやめときなさい」
「……そんな装備が、なぜここに」
「ん、どうやらDEMのお偉いさんが、もしかして真那
だったら扱えるんじゃないかって寄越したらしいわ。
ま、肝心の真那がおねむじゃあ宝の持ち腐れよね」
「そう」
「ていうか……〈イフリート〉? 五年前に現れた
っていう炎の精霊? なんでそんなのの名前が出て
くるのよ。五年前に一度確認されたきりでそれ以降
現れてない──」
と、不意に遼子が言葉を止めた。
不思議に思い折紙が視線に送ると、何かを思い出した
ようにパチンと指を鳴らしてくる。
「ああ、そうか。──あれが〈イフリート〉か」
「……っ、どういうこと?」
折紙は微かに眉根を寄せ、すぐに身体ごと遼子へと
向き直った。そのまま一歩前に踏み出し、詰め寄る
ように続ける。遼子は折紙のただならぬそんな様子
に驚いたのか、折紙とは逆に足を一歩引いて軽く
身を反らした。
「な、何よ急に」
「いいから、教えて」
「教えてって言われても……一昨日、あんたと真那が
高校の屋上で〈ナイトメア〉と戦ってたときに現れた
のがその〈イフリート〉なんじゃないの? 炎の精霊
なんでしょ?」
「──っ!」
折紙は息を詰まらせると、さらに遼子にずいと
顔を寄せた。
「なぜ一昨日、炎の精霊が現れたことを知って
いるの」
「なぜって……そりゃあ、映像で見たから……」
「……!」
目を見開く。まさかこんなにも近くに、
〈イフリート〉の手がかりがあったとは。
「日下部一尉」
「な、何よ」
「お願い。その映像見せて。──今、すぐに」
「──ええと、確か……」
士道と神無月はあのあとすぐ、休憩スペースから、
昨日作戦会議を行なったブリーフィングルームに
やってきていた。そして神無月が昨日つ同じ席に
すぐ腰掛けたかと思うと、円卓に設えられていた
コンソールを操作し始めたのである。
「すいませんね、手間取って。副艦長室の端末なら
もう少しスムーズにいくのですが」
「や、それは構いませんけど……ここにその映像が
保管されてるんですか?」
「いえ。映像そのものは〈フラクシナス〉には保管
されていません。本部のデータベースにアクセスして
いることです」
本部という聞き慣れない言葉に士道は首を傾げかけた
──考えてみれば道理である。この〈フラクシナス〉
は空中艦。いくら
空に浮きっぱなしというわけにはいかないだろう。
「でも、要はネットワークなどの環境があれば
いいんですよね? それなら副艦長室でやっても
いいんじゃないですか?」
「まあ、そうなんですけれどね。なにぶんあそこの
端末は画面は大きくないので、細やかな映像を見るの
には適さないんです。──と、きましたよ。画面を」
神無月が言うと同時、円卓の中央に設えられていた
モニタに、映像が映し出された。
街の一区画を、空撮で捉えた映像である。しかし画面
一杯に広がった真っ赤な炎の絨毯は、ガス田か火山の
火口とでもいった方が適当と思えるほどまでのそんな
様相だった。つい数時間前まで何人もの人間が生活を
営んでいたとは思えない、炎熱の煉獄である。
スピーカーからは、ヘリの駆動音と、レポーターと
思しき男のそんな声がまばらに聞こえてきていた。
それに混じって時折凄まじい爆発音が響き、画面が
微かに揺れる。
「……く」
士道は思わず眉根を寄せていた。想像以上に凄まじい
光景である。昔に住んでいた場所で火事が起こった、
という事実だけは覚えていたが、これまでの惨状とは
思っていなかった。
「──さ、もうすぐです」
と、ともに画面を見ていた神無月が静かな声で
言ってくる。
ヘリが旋回し、徐々に高度を落としていく。
それと同時に画面がスムーズアップし、滲んだように
ぼやけていった。一泊置いてから、少しずつピントが
調節されていく。
「──、あれは」
そして次の瞬間、画面の端に映ったものを見て、
士道はのどを震わせた。
街の中心。他の場所とは異なり、そこにあったはずの
家々が完全に燃やし尽くされ、更地のようになって
しまった場所に、見覚えのあるシルエットを見つけた
のである。
もとより古い映像であるうえ、解像度が粗い望遠、
安定しない空撮と様々な悪条件が揃い、非常に荒れた
映像になっている。だが、士道が見間違えるはずなど
なかった。
「琴里……」
そう。それは、一昨日来禅高校の屋上で目の当たりに
した、霊装を纏った琴里だった。
その足元には、小さな影が倒れている。眉をひそめ、
揺れる画面をジッと注視する。
「あれは──俺……?」
そして。
「────え?」
士道は肺を絞り、短い息とともにそんな小さな声を
発した。
というかもしれない。
二人の前に、『何か』が存在していた。
恐らく普通の人間ならば、ただ画面に走ったノイズか
何かとしか思うまい。
だが、違う。あれは。あの影は──
「……ッ」
瞬間、士道は両手で頭を押さえ、その場に膝を
突いていた。
何倍にも膨れ上がり、かつてないほどの激痛となって
襲ってきたのである。
「士道くん? どうしました?」
神無月が問うてくる。しかし士道は答えず、画面を
凝視し──幼い琴里と士道の前に蟠ったノイズを
見て唇を開いた。
「
「誰って……どれのことですか?」
「これ──です。琴里と、俺の前にいる……」
神無月が首を傾げる。その姿を見て、士道は初めて
気付いた。
──なぜ、自分は、このノイズにしか見えないような
影を、人だと。
少なくとも、『誰』だなんて呼称を用いる存在だと、
認識できたのだろうか。
「ぁ──」
それを考えると、士道を襲う頭痛は激しさを増し──
士道は、気を失ってしまった。
「…………っ」
仕事中の遼子を無理矢理ブリーフィングルームにまで
引っ張ってきた折紙は、プロジェクターでスクリーン
に映し出された映像を見て、言葉を失った。
映像の質自体は、非常にお粗末なものだった。解像度
も粗ければ撮影位置も遠い。それ以前に、撮影が開始
されたのも随分と中途半端な時間からであったうえ、
途中で複数のカメラが破壊されてしまったのだろう、
数分程度の長さしかなかった。
だが、それでも折紙には十分に過ぎた。
五年前。霞む目で捉えたその姿。一昨日。揺らぐ意識
の中で捉えたその姿。
その憎き仇敵の一人の顔を、今初めてはっきりと
見取ることができたのだから。
スクリーンの映像を最初から再生し直し、一時停止。
〈イフリート〉の顔を拡大する。
そして──折紙の疑念は確信へと変わった。
五年間、ずっと追い続けてきた二人の精霊のうち、
その一人である炎の精霊を。──その、顔は。
「
五河士道の、妹のものだった。
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しれません‼︎
【報告】
今回は無事に『東方墨染ノ残花』の『
『とある暗躍の幻視者』を『更新』する予定なので、
楽しみにしてもらえたら本当にありがたいです‼︎
『他の投稿作品』もあるので是非ともそちらも
楽しんで見ていただければ本当にありがたいです‼︎