終わらない喜劇   作:SINSOU

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※大変不快なシーンがあります故、読む際は本当にご注意ください。



序章

CASE1

 

『やめろ!止めてくれ!』

 

私は必死に叫ぶ。でもその光景が止まることはない。映ったのは、自分に向けて必死に叫ぶ子供。何もかもが壊れてしまったような、光が映らない目か涙を零してる。

 

『違う!違うんだ!お願いだ!そんな顔で・・・!』

 

私はその子供に向けて叫ぶ。しかし、私の声はその子に聞こえない、聞こえるはずが無かった。

 

子供はおぼつかない身体を必死に動かしながら、その光景を見ている私から離れようとする。しかし、ぎこちない身体で後ろに移動するよりも、私の方が断然速いのは明白だった。

 

『逃げろ!逃げてくれ!お願いだから!』

 

だが無情なことに、その子供は捕まった。子供の首元に手がかかり、そのままゆっくりと上へと上げていく。宙ぶらりとなった子供は、締まっていく恐怖に襲われ、その両手で首にかかっている手を剥がそうと暴れる。だがその手は万力のような力で、少ずつしまっていく。

 

『嫌だ!止めろ!お願いだから止めてくれ!』

 

私は必死に叫ぶ。()()()()()()()()()()()()()()()()。だが私の言葉を無視して、『私』はその子供の首を締めていく。っと、『私』の手が離れ、子供は地面に落ちる。ゲホゲホと咳き込みながら、子供は私の目の前でくるむ。

 

だが私はこの先を知ってる。故に『止めてくれ』としか叫べない。

 

目の前で震えながら苦しむその子に、『私』は手にした刀を振り挙げそして

 

『止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』

 

振り下ろした。

 

真っ赤に裂けたそれを見下し、『私』は口元が歪んでいく/私は声を荒げて泣き喚く

 

ああ、これでようやくあの人に愛して貰える/『どうしてお前は捨てたのだ!』

あの人の為に、『私』は邪魔な存在を捨てたのだ/『大切な存在だと、守ると誓ったはずだ!』

あの人に愛して貰えるならば、全てがゴミ同然と思えてしまう/『あいつ以上に大切な存在なんていなかった!』

早くは早く、私を愛して欲しい/『死ね!死んでしまえ!お前のような奴は、お前みたいな奴なんて!』

愛して愛して愛して愛してください/『許さない!絶対に許さない!絶対に殺してやる!』

 

『私』/私はあらん限りの愛の言葉/呪詛を恋人/怨敵に向けて空に叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CASE2

 

ぎしぎしとベッドの軋む音が、ハァハァと断続的な息遣いが、粘着音と共に何かが堪えずぶつかる音が、その部屋には響いていた。ベッドに寝ている青年が私に笑いかけてる。私を嘗め回すような視線を送り、野卑な笑みを浮かべている。

 

好き/『許さない』

 

私はその男を睨みつけていた。もっともそれは私であって『私』ではない。『私』は絶えず刻まれる衝動という波に揺さぶられながら、只々絶え間なく声をあげていたのだから。青年に蕩けたような笑みを向けながら。実際に私と言えば、吐き気を催すほどの悍ましさに身体を苛まれている。頻りに大切な人に声を上げて謝るしかなかった。

 

青年が何かを喋る。だが、その言葉は雑音がひどく、『私』には聞こえない。たが、私ははっきりと覚えている。その言葉を、一字一句、間違えなく。そしてそれに応える『私』の言葉も。

 

もっと私を愛してください/『絶対に殺してやる』

 

思い出すだけで私は激情に駆られる。仮に身体が動かせるのであれば、今過ぎにでも目の前の存在を八つ裂きにし、自分の身体を棄ててしまいたいほどに、私自身に吐き気を催している。だが『私』にはその声は聞こえない。その思いは知られない。だから目の前の存在は、自身の優秀さを誇らしげに、醜悪なにやけ顔で語りだす。出来る事ならば、その顔を原形がなくなるまで殴り潰したい。だというのに、『私』はそいつに甘えた声で枝垂れかかる。

 

『気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気も気も気も気も気もきもきもききききききき・・・・・・』

 

発狂してしまえば楽になれるかもしれない。でも、私は心を砕かれながらも耐えるしかない。これは罰だ。大切な人を裏切ってしまった罰なのだ。

 

藍も変わらずぶつぶつとそれが話す。その言葉は私たちが一緒にいられる為の、素晴らしい/悍ましい話。その話に、私はにっこりと笑り、寧ろ自分から青年/怨敵の手助けを願い出た/『止めろ』

愛しき彼/悍ましい下種と一緒になる為には、もはやあの邪魔者/大切な人は必要ない/『止めろ!』

だから、他の彼女たち/染まり尽くした成れの果てと結託して、彼奴/大切な人を亡き者にすることを嗤いながら語る/『止めろ!!』

 

そして『私』、いや『私たち』は心から愛している人/憎んでいる怨敵の為に、とある事件で、邪魔者だったゴミ/大好きな人を……殺した/『絶対に許さない!』

 

 

 

 

 

 

 

 

CASE3

 

「消え失せろ、この偽善者野郎が!」

 

頬に感じる鋭い痛み。俺は訳が分からずに殴られて吹っ飛び、地面に転がった。凸凹の石や地面に当たった背中から音が軋み、殴られた頬がじんじんと熱い。

殴られたことに理解が及ばず、俺はただ茫然としていた。だが目の前の少年、いや二人目のIS男性操縦者が服の襟をつかみ、無理やり立たせる。

 

「てめぇのような雑魚は、口だけの薄っぺらい偽善者野郎なんだよ!口では何とでもいっているが、結局は誰一人として守れない嘘吐きだ。なにが俺が皆を守るだと?てめぇは神様にでもなったつもりか?ああ!?」

 

「ち、ちがう。俺はそんなつもりで・・・」

 

「言い訳してんじゃねえぞ嘘吐き野郎が!」

 

今度は逆の頬を殴られ、俺は地面に叩き付けられた。肺の空気が口から飛び出し、ゲホゲホと咽る。

 

「今までお前は何をしていた?ああ!?代表戦の時も!組同士での試合も!ラウラも!銀の福音の時も!お前は何をしていたんだよ!言ってみろよ!」

 

何とか身体を起こそうとする俺の腹を、彼は何度も何度も蹴った。

 

「俺に負けて!鈴がピンチの時には、逃げ遅れたモブを助けようとしてやられて!ラウラの時はひたすら逃げ回って!銀の福音の時は、ただ白夜を振っただけだろうが!」

 

サッカーボールのように転がる俺は、その時のことを思い出す。

 

セシリアの時は、彼女を一歩まで追い詰めたが結局は負けてしまった。目の前の二人目には一方的にやられた。彼のISは、羽根のような飛翔端末を操り、俺の攻撃は空気を斬るかのようにすり抜けて、全身が朱く光ったと思ったらいつの間にかやられていた。ベッドで目を覚ました時、俺は自分の未熟さを実感した。セシリアに、喧嘩腰になって言い過ぎたをことを謝ろうに行った。その時、セシリアからはビンタされて罵倒された。

 

鈴の時は、突然襲ってきた謎のISと戦っていた際、逃げ遅れた生徒たちを護ろうと、敵の攻撃をまともに受けてしまった。そのまま壁に叩き付けられたことで、ISのエネルギーが零となってしまう。結局は二人目の男が鈴と協力してやっつけていた。

その後、鈴からは罵倒され、二人目からいきなり殴られた。その後、俺だけが謹慎処分を受けた。

 

ラウラの時にしても、他の先生が来るまでの時間稼ぎをしようと、俺はラウラに呼びかけながら逃げ回った。動きが鈍くなったところで掴みかかかったが、急に振り払われて地面に激突。そのまま意識を失った。

気が付けばベッドだった。その後、ラウラが気になって話し掛ければ、一方的な拒絶。シャルロットからもなぜか侮蔑の顔を向けられた。

 

そして銀の福音の時は、二人目の提案により、俺が白夜を使って止めることになった。皆の協力でなんとか白夜を当てることに成功し、搭乗者を助けることが出来た。だが、帰ってくれば俺に向けられたのは蔑みだった。

 

「一体全体なんなんだよ」

 

俺は呻きながら呟いた。

 

「ああ!?何言ってんだよこの屑が!」

 

俺は力が入らない身体を必死に立たせ、俺を見ている二人目と、取り囲んでいる彼女たちに叫んだ。

 

「一体何なんだよこれは!俺は必死にやった!やったんだ!なのに何でこうなるんだよ!どうして誰も認めてくれないんだよ!」

 

目から涙が溢れてくる。

 

「お前だって、始めから俺に対して何かと否定してきた。お前の言葉は薄っぺらい、傲慢だと、何度も何度も!教えてくれよ!どうしてお前は俺を目の仇にするんだ?俺がお前に何かしたのか!?なぁ!答えてくれよ!」

 

「自分で考えろよこのクソ野郎が!」

 

俺の叫びへの返答は拳だった。

 

「俺が一々てめぇに応えてやる義理はねぇんだよ!お前はただ、俺のために無様を晒せばいいんだよ!それがお前の存在理由だ!糞糞糞糞がぁ!」

 

今度は何度も何度も踏みつけてくる二人目の操縦者。俺は両腕で頭や顔を必死に守る。

その光景を見ながら、俺の幼馴染『だった』女の子や、クラスメイトは溜息を吐く。

 

「これがアイツの本性か。ただ考えもしないで、人に頼る口先だけの奴に惚れていたなど。私の目は汚れ・・・いや腐っていたんだな」

『違う、違うんだ!これは口が勝手に!どうして身体が動かないんだ!嫌だ!誰か止めてくれぇ!』

 

 

「ほんと、昔の私はどうかしてたわ。あんな奴を好きになっていただなんてね」

『動いて!動きなさいよ!どうして!?どうして!?嫌!止めて!死んじゃう!それ以上は死んじゃう!』

 

「これだから男は……。いえ、〇〇様は別ですわ。〇〇様は私にとって王子様ですし」

『誰か、誰か助けてください!だったら私を殺してくださいまし!お願いですから!誰かぁ!』

 

 

「あんな奴に助けを求めていただなんて、本当に僕はおかしかったよ。あんなどうしようもない屑なんかに・・・」

『止めて!もうこれ以上彼を傷つけないで!お願いだから!もう逆らわないから!お願い!もう止めてぇ!』

 

「教官に泥を塗る出来損ないめ。やはり教官のためにもここで殺しておくべきだな」

『くそ!なぜだ、なぜ動かないんだ!今すぐにでも貴様の腕と足をへし折ってやるのに!動いてくれ!』

 

 

聞こえてくる声と痛みで、俺はもう考えることを諦めた。二人目の男が、俺の耳元に囁いた。

 

 

「もうお前はいなくてもいいか。いい加減、鬱陶しく思ってきたし。それにさ、変にボコリすぎて、覚醒されても困るからなぁ。だったら、キリが良いここらで始末するのも手だと思うんだよ。お前のヒロインたちはきっちりと俺が可愛がってやるから安心しなよ。あいつら、良い声で啼くんだぜ?ま、もう死ぬお前には関係ないか。じゃあな、元主人公ちゃん」

 

そして感じる浮遊感とどこまでも堕ちていく落下を感じながら、俺は目を閉じようとして……。

 

「一夏ァァァァァぁぁァァァァァァァァ!!」

 

俺を呼ぶ声と、抱きしめられたのを感じながら、俺は意識を手放した。

 

 

 

 

 

CASE4

 

「な、なんで白夜が効かないんだ!?」

 

少年は自身が持っている必殺の一撃をそれに与えた。だがしかし、その光の刃は()()()()()に弾かれた。それどころか、彼自身の唯一の武器ではある刃がパキリ音をたてて……砕けた。

 

「そ、そんな!」

 

驚愕する少年に対して、怪物が溜息を吐いた。

 

「小僧、貴様の勇気は褒めてやろう。だが、力なき勇気はただの蛮勇!その脆弱な刃のように貴様はあまりにも弱すぎる!」

 

その言葉と共に振るわれた剛腕が少年を襲う。もちろん、呆然だった少年はその拳をまともに受け、そのまま海に叩き付けられた。

 

幾人かの仲間が、海に沈んだ少年を助けようと動こうとするが、別の少年が叫ぶ。

 

「あいつのことは後で良い!それよりも今は、こいつを倒す方が先決だ!」

 

その叱咤を受け、彼女たちは突然現れた化け物に相対する。

それは赤銅色の鱗を纏い、龍の顔をした怪物だった。その大きさは人間と同じであり、違うとすればその見た目と、その背中に生えている巨大な翼だろうか。それは突然現れた。空に巨大な黒い渦が発生すると同時にそれが飛び出したのだ。

 

「ふむ、我らに似た力を辿ってみれば、なるほど!ここが新たな我らの大地ということか!」

 

と言い出したんだからさあ大変。そして先ほどの少年が、制止を聞かずに斬りかかって撃沈されたのだ。

 

「ほう?我を倒すだと?カハハハハ!面白い!ならば小手調べと行こうか!」

 

怪物が右手を振るった瞬間。彼の周りには巨大な竜巻がいくつも発生する。

 

「きゃぁあっぁぁぁ!」「た、たすけてぇ!」

 

その竜巻に呑みこまれた人たちは、憐れミキサーに掛けられた牛肉の末路を辿った。

 

「ひ、酷い!酷過ぎる」

 

誰が発した言葉だろうか。そのあまりにも悍ましい惨状に誰もが口を閉じた。

 

「我は風に愛されし者、ロンクイサ!我の主、ダークドマイラス様の命により、この世界を貰い受けに来た!」

 

ロンクイサと名乗る怪物の言葉に、その場にいた人たちは混乱していた。ただ一人を除いて。

 

 

「先ほどの愚か者や、今しがたの弱者のようになりたくなければ、直ちに降伏することを願う」

 

その圧倒的な威圧に呑まれる中、一人の少年が声を上げた。

 

「ふざけるな!貴様らの好きにさせるものかよ!」

 

その言葉を発したのは、二番目に見つかったISの男性操縦者だった。

 

「ほう。小僧、勇ましい言葉を吐いておるが、力が無ければ戯言だぞ!」

 

ロンクイサはその重量級な見た目とは真逆の疾風のような速さで彼に迫り、その剛腕を叩き・・・付けられなかった。

 

「ほう?」

 

彼の剛腕は、少年の金色に輝く両手に止められていたのだ。

 

「〇〇くん?」

 

「皆すまない。いままで黙っていたけれど、俺は普通の人間じゃないんだ」

 

『!?』

 

あまりに唐突な爆弾発言に混乱する周囲。

 

「俺には普通とは違う力があったんだ。でもみんなが怖がるかと思って黙っていた。でも、こんな奴訳の分からない奴が現れて分かったんだ。俺の力は皆を護るためにあったんだって!」

 

取りあえず、その語り口調は止めようか。めっちゃ寒いぞ。というか、これIS世界だよね?

 

「貴様、この力はまさか・・・!」

 

「これが俺の……変身!」

 

そして新たに始まる。ヒーローの物語である!

 

 

 

ところでこの世界ってISだよね?なんで謎の力なんぞ持ってるの?というか、敵の言動からして、明らかに君が彼らを呼び寄せたって思わない?そしてISはどうなるのかって?敵が別世界の存在なんだから戦える訳ないじゃん?出たとしてもかませだよ?

まあでも、途中から敵のデータを採取して強化されるだろうし、まあ問題はないと思うよ。なんかよく解らない進化して。

ところで、海に叩き落された少年はどうなったかって?

そうだね、俺だってみんなを守りたい!って言う度に、お前じゃ無理だよって否定されまくって拗らせてしまうんじゃないかな。そして闇堕ちだの悪堕ちだのしてフルボッコされてSEKKYOUからの改心じゃないかなぁ…?お前の力は間違っているって感じで。

まあ、少年が常にフルボッコされるのは変わらないだろうね。

 

 

 

 

 

「さて、これ以上見せちゃうと不快になる方もいるから、取りあえずはここまでにしときましょうか」

 

椅子に腰掛けた少女は、ばたばたと足を動かす。

 

「解っていると思うけど、これらはあくまで別々のお話に過ぎないわよ?上から下まで、ピンからキリまである物語だもの。優しい世界もあるでしょうし、もっと酷い世界なんてあるんだから」

 

ふぁぁ~と、欠伸をする。

 

「時には彼らと親友の絆を結んだ学園生活もあるでしょうし、もしかしたら結婚する未来もあるかもしれないかもかも?まあでも、残念なことにそう言った世界って結構希少っぽいらしいわよ?私は知らないけどねぇ?」

 

うーんと背伸びをすると、ぴこーん!ぴこーん!と部屋に音が響き渡る。見ると、机の上に急に現れたランプが、紅く光っている。

 

「さてさてさてさて?どうやら開幕するみたいよ?ポップコーンと飲み物の準備は出来たかしら?残念だけど、私は見ることが出来ないから、あとは皆で愉しんでちょうだいね!」

 

少女は背中の翼を広げ、空へと飛んでいった。

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