終わらない喜劇   作:SINSOU

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4章

「ヒーローってなんだろうね?」

 

部屋の中心で、少女は椅子に腰を掛ける。その出で立ちはいつもの白いワンピースではなく、黒の軍服だ。しかも右目には黒い眼帯をしている。少女の金色の髪が黒服と相まってより輝いているように見える。そしてその手にはステッキが握られており、くるくると回しながら弄ぶ。

しかし、いつもとは違う少女の出で立ち。そしてその出で立ちはまるで……。

 

「HERO:英雄、崇拝される人、勇士、(劇・詩・小説の)主人公、主要人物。意味を調べるとこんな感じかな?概ね、皆が思い浮かぶような意味と同じね。まあ『英雄』って意味が強いのかもしれないけど。でもさ、そうなると今度は英雄ってなんだろうね?って話になるんだよね」

 

グイッと前かがみになり、少女は上目づかいに尋ねる。

 

「君らが思い描くヒーローって、英雄ってなにかな?出来たら具体例を挙げられたら嬉しいかもかも。では、レッツスィンキングタ~イム!」

 

ばっと少女の後ろがスポットライトに照らされた。そこには巨大な時計が掲げられ、チクタクチクタクと針を刻む。そして針が上を刻み、ボーンボーンと時間を知らせた。

 

「はい、ストーップ!みんな色々と考えてくれたかな?もちろん、人によって色々と意見があるから出さなくて結構よ。そこに貴賎はないんだから」

 

にこりと笑う少女。くるくると回すステッキを右手に持ち、先端を前に突き付ける。ちょっとぉ、危ないから止めなさいよぉ。刺さったら大変なことになるんだから。

 

「はいはい分かりました。お説教は結構です。みんなごめんね?怪我しなかった?」

 

ぺこりと頭を下げ、咳払いをする。

 

「ところで、今みんなが考えるヒーローを思い浮かべてみたけど、ヒーローに必要なものってなんだと思う?悪に立ち向かう勇気?正義を、平和を愛する心?メチャクソに重い過去?改造されたって経緯?誰からも愛される、尊敬されるカリスマ?これもきりがないから良いわね」

 

両手で指を折りながら考えるが、飽きてしまったのか、そのままお手上げの万歳をする。

 

「でもね、みんな大事なことを忘れてないかしら?」

 

少女の口元が歪む。まるで、三日月のように口が裂ける。

 

「ヒーローって()()()()()()()()()()?」

 

少女が立ちあがると、一斉にスポットライトを独り占めにする。

 

「必ずしもって訳じゃないけどさ。みんな何かと戦っている。病気、犯罪、事件、火事、色々と多くの問題に対して、苦しんでいる人たちを助ける為にね。それを使命とし、時に命を懸ける。別に必ずしも悪を倒すのがヒーローって訳じゃないと思うのよ。言ったでしょ、()()()()()()()()()()んだから。その姿は本当に凄いと思うわ。でも、誰だって何かに立ち向かう心はある。“誰もが皆ヒーローになれるよ”って歌もあるようにね。ところで!」

 

カッと、ステッキの先を床に叩き付け、硬い音が部屋に響いた。

 

「じゃあそれを淘汰したらヒーローってどうなるのかな?話は変わるけどさ。ほら、特撮や戦隊、少女たちのヒーローでも、必ず終わりはあるわけでしょ?悪の組織を倒し、世界は、地球は、果ては宇宙も救われたって訳で。じゃあそうなるとその力ってどうなる?そうだね、消えちゃうね」

 

その言葉と共に、少女はいつものワンピース姿に戻る。

 

「悪を倒したならば、彼らはその力を失ったり、自らの意志で放棄して普通に戻る。でも培ってきた経験を、その繋がりを糧に彼らは未来へと歩いていく。うんうん実に素晴らしいわ!大きすぎる力なんて大抵ロクなことにならないからね。それこそヒーローが番組でも同じね」

 

パチパチと拍手をする少女だが、ピタリと手を止めた。

 

「じゃあさ、仮に、もしも、()()()()()()()()()()()()()()()()?もしもヒーローが力に虜になって、その力を捨てることをしなかったらさ。でも問題ないかもね、だってヒーローなんだから。

でもさ、大抵みんなが憧れる、だぁ~い好きな仮面の戦士の力って()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、あと少しだ!」

 

長い廊下を駆けながら、先頭の少年が声を上げる。彼の後ろに続くのは、様々な出で立ちの機械を纏った少女たち。彼女たちは全員、擦り傷や切り傷、火傷などを負い、纏う機械も所々が損傷し、火花が散っている。ここに来るまでに、彼らは全員が戦ってきたのだ。そしてこの世界を護るために、最後の戦いを挑もうとしているのである。

ことの始まりは、突如空間に穴が開き、一匹の怪物が現れたのだ。怪物は自らをロンクイサと名乗り、親玉であるダークドマイラス様の先兵としてこの世界に侵略してきたことだ。その際、ロンクイサの恐ろしい風の力により、多くの人が犠牲者になった。その世界にはISと呼ばれる機械があったものの、ロンクイサに敵わず誰もが心を挫かれそうになった。だが、そこにヒーローが現れたのだ。彼の名前は天成正義(テンセイ・マサヨシ)。女性しか乗れないはずのISに乗れた二人目の男性操縦士だ。彼のもっている不思議な力と彼の活躍により、ロンクイサを撤退させたのである。その後、ダークドマイラスという存在が現れ、世界に宣戦布告。これが『はじまりの日』と呼ばれる事件である。

その後、正義は襲い掛かってくる怪物を倒していくが、時には苦戦を強いられることになった。犠牲者を出してしまうことさえあった。あまりにも戦力差が大きかったのだ。だが、その世界の住人だって無力ではない。天才博士の篠ノ之束が怪物たちを解剖・分析し、ダークドマイラスを裏切った幹部、ビットラの情報をもとに、彼らの力をISに組み込むことで対等に戦えるようになったのだ。ISを越えたIS、『インフィニット・ストラトス・オーバー(ISO)』の誕生である。その性能は従来のISを遥かに超え、怪物たちのデータをとりこんだ結果、単一仕様能力だけではなく、第二仕様能力として()()()()()使()()()()()()()()()のである。こうして人類は希望を見出していく。時に、敵の力に魅了された身内の裏切りもあった。だが、彼らはそれを乗り越え、より固くなった絆を武器に、ダークドマイラスの下へとたどり着いたのである。

 

 

『よく来たな』

 

部屋の再奥の玉座に座っている()()が言った。黒と金色の装飾を施された鎧を纏うが、その顔は素顔のままだった。

 

「やはりお前がダークドマイラスだったのか!力に溺れてそこまで堕ちたのか!」

 

『…』

 

「答えろ一夏ぁぁ!」

 

ダークドマイラス、否、織斑一夏に正義は叫んだ。そう、裏切り者とは、力に魅了された身内とは、彼のことである。

織斑一夏という存在は、一言でいうならば『正義感に酔った屑』だった。自分の正義感に酔いしれ、自分が正しいと勝手に動く子供だった。そのせいで正義たちがピンチになることも多かったが、彼は反省することは無かった。そのあまりの我が儘な姿に、彼から人が離れていく。彼の幼馴染や家族である姉ですら匙を投げるほどに。だがその事実を認めず、彼は全てを正義のせいと責任転嫁し、ただ力に溺れたのだ。そこをダークドマイラスに見透かされ、そして多大な被害を出して裏切ったのである。

正義曰く、そもそも織斑一夏の本性はどうしようもない悪だったのだろう。その生まれながらにして悪である織斑一夏の存在がダークドマイラス達を呼び寄せたのだ、と。そして彼の言う通り、一夏はダークドマイラスの力を受け継いだ。まさに織斑一夏が、彼の存在が世界を滅茶苦茶にした全ての元凶なのだろう。

 

「あんたのせいで!」

 

ツインテールの少女が叫ぶ。彼女はかつての幼馴染だったが、その目には怒りと憎しみに染まっている。

 

「あんたのせいでこうなったのよ!みんなみんな死んじゃった!全部全部!あんたがいたから!あんたを好きだと思っていたあたしは馬鹿だった!あんたの存在を記憶ごと消してやる!今すぐ殺してやるわ!」

 

『そうか。で、言いたいことはそれだけか?みんな俺に責任転嫁して、自分はわぁわぁ喚けば許されると思ってるのか酢豚ちゃんよ。ま、お前らしいよな』

 

 

「もう何も言うことはない。お前という存在が世界をこうしたのだ。あの時お前を連れ出さなければこうはならなかった。そのケジメとして、かつて姉だった者としてお前を殺す」

 

『今更姉貴面するなよ、()最強。伸ばした俺の手を払って見捨てた癖にこんな時は姉宣言か。笑っちゃうよ。結局アンタも、自分の見たい俺しか見ていなかっただけなんだよ。まあ、俺は最初からこの道しかなかったみたいだけどな』

 

 

「やはり、やはり最初から貴様を殺すべきだったのだ!貴様のような汚物が、教官の弟であってはならなかったんだ!殺す、今すぐ殺してやるぞ織斑一夏!」

 

『キャンキャン吼えるなよ、狗かお前は?黒兎なら何て泣くんだっけ?ピョンか?ウサか?なぁ不良品。依存先を変えるだけで、自分を放棄して楽だよなぁ。今度は誰に縋るんだ?その肢体を利用すれば上手く行くかもな?()()()()()()()()()()()()()()()()?良いよな、始めから何もない、縋ることすら許されなかった俺と違ってな』

 

 

「一夏!お前だけは許さない!絶対に許さない!」

 

『喧しいぞ清掃道具。結局お前もそうだ。ただ強い奴に媚びて、そのおこぼれをもらってイキってるだけなんだよ。姉とは関係ない?なのに姉から力を貰って調子に乗ってたよな?結局お前は、意志もなく流されたままなんだよ。でもいいよな。お前はヒロインだから助かったみたいだけどさ」

 

そんな中、ビットラはダークドマイラスを見つめ、彼は頷いた。

 

「もう終わりにしよっか」

 

かつての仲間たちの言葉も、彼を支えていた幹部の言葉さえも、もうダークドマイラスには聞こえない。そこには倒すべき悪が立っているだけだ。

 

「終わりにしよう一夏。それが俺が、友達として悪に堕ちたお前に出来る唯一の方法だ!」

 

『やってみろよ、正義として約束された役者(ヒーロー)!!』

 

こうして最終決戦の火ぶたが切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで…終わりだ!」

 

正義の拳が、ダークドマイラスを貫いた。二人はもはやボロボロで、互いが血で赤く染まっていた。

 

「なぜだ…俺は力を手にしたのに…」

 

「お前は強くなってない。お前はただ、偽物の力に酔っていたんだ!その傲慢な心のせいで、世界を危機に追い込んだんだ!」

 

紅く濡れた拳を引き抜き、正義は倒れた織斑一夏を見下す。

 

「お前は最初から間違っていたんだ。いや、お前は始めから生まれてはいけなかったんだ」

 

「そうか」

 

そして静寂がその場を支配する。

 

「終わったの?」

 

「ああ、終わったよ」

 

身体を引き摺るようにして近づいてきた金髪の少女の問いに正義は答える。そう、終わったのだ。ダークドマイラスという巨悪を倒し、世界は救われたのだ。

 

倒れている織斑一夏に近づくのは、彼の幹部だったビットラだ。兎が人になった姿で、開発を主に担っていたという。しかし、壊れていく世界に耐えきれなくなり裏切ったのだ。そしてダークドマイラスを止める為に、世界を救うために協力し、ISOを生み出すことに繋がった。その彼女が織斑一夏の傍で屈み、彼の手を取った。

 

「お疲れ様」

 

呟きが漏れるが、誰一人気付かなかった。

 

『もうその力は必要ないよね』

 

屈みこんだまま発したビットラの言葉に、正義たちは戸惑った。その内容もそうだが、彼女の声が、今までのような媚びた印象とは違い、氷のような冷徹さを纏わせていたのだ。

 

「どういう…意味ですか」

 

『言った通りだよ。この世界は救われた。ならもうISOは必要ないはずだよ。私たちのような力を取り込んだISなんて、この世界ではあまりに過剰な力だからね。だから生み出されたISO全てのデータを消去して、私はこの世界から出ていくよ。そうしないと恐ろしいことが起るからね』

 

そういって立ち上がり、彼らに振り向いたビットラ。その顔には一切の冗談を匂わせない真剣さが見て取れた。だがその問いの答えは、彼女に向けられたISOの武器だった。

 

「悪いがそれは出来ない。今回の件で世界は大きな被害を受けた。その復旧のためにもISOは必要なんだ。異世界の侵略ということを踏まえて、それに対抗するためにも、私たちは更なる力を持たなければならない」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()。だから安心してよ。それにIS自体が凄い兵器でしょ。この世界なら十分すぎるんだから、起きない未来の為に過剰な力を持つ必要はないでしょ』

 

「残念だけど、君の言葉を信用する根拠がない。それに君は協力してくれたとは言え、元はダークドマイラスの部下だ。だから君を拘束して色々と情報を聞き出さなければならない。異世界についても、ISOの生産のためにもね。貴女に手荒なことはしたくないんだ。解ってくれ」

 

『あのさぁ。そのISOと私がこの世界からなくなれば問題は無くなるんだよ。だからいい加減にしてくれない?ちょっと融通が利かなくて苛々してるんだけど』

 

「ごめん。でも力を捨てることは出来ない。だって俺は皆を守るって決めたんだ。だから俺は誰よりも強くなくちゃいけないんだ。でも安心してくれ、ビットラさんを悪いようにはしないから」

 

ビットラを説得するために、正義らは言葉を投げかける。彼の言葉を受け、ビットラは顔を俯かせ、フルフルと震えだした。その様子に、彼らは泣いているんだと思い、彼女に近づこうとして

 

 

『うざいんだよ、大根役者どもが』

 

 

彼女はパチンと指を鳴らした。その瞬間、ISOが黒く輝き、コアからおびただしい黒い泥が溢れだす。そしてその泥は意志があるかのように、装着者である彼女たちを覆いながらも呑みこんでいく。各々が叫び声をあげて飲まれていく中、正義は変貌したビットラに驚愕の顔を向ける。

 

「何をした?」

 

『うん?』

 

「彼女たちに何をしたんだ!」

 

多少なりと回復したことで、再び力を纏った正義。彼のビットラの力を考えると、今すぐに叩き伏せるほどの強さはあった。

 

「答えろ!一体何をしたんだ!お前は一体何を!」

 

()()()()()()()。急遽、終わるはずだった作品の続編を作ることになったから、そのための編集だよ』

 

「な、何を言っているんだ!?」

 

『ドンキホーテが夢見たヒーローの物語。巨大な悪を倒して大団円。力を棄て、ヒーローたちは新たな未来へと歩きはじめました。これでお終いの筈だったのに、誰かさんが力を捨てなかったせいでぜぇーんぶ無駄になっちゃった。いい加減にしてほしいんだよねェ。折角ヒーロー気取りの道化で終わらせてあげようと思ったのに』

 

ビットラから言葉に正義は戸惑いを隠せない。しかし彼の後ろでは、グチョグチャブチュ…という粘着音と、彼女たちのくぐもった悲鳴が聞こえる。

 

「止めろぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

『改編』という恐ろしい力を止める為に、正義はビットラに強烈な拳を叩き付けようとして……動きが止まった。彼の拳からもおびただしい泥が溢れだしたのだ。彼女たちと同じように。

 

『ねえ知ってる?正義のヒーローの力って、時に自然や星、超能力や科学といった力を武器にするけどさ。()()使()()()()()()()()()()()()って、元はなんだと思う?』

 

「な、なんでこの力を知って…!」

 

ビットラの顔が笑顔に歪む。

 

『君は理解してないみたいだけど、答えは()()()()()だよ。初代のヒーローたちは改造人間という怪物にされても人の心を失わなかった。他にも魔法だの、宇宙だの、色々な力が出てくるけど、実質彼らの敵と同じ力なのは変わらない。でも彼らは心で自分たちを律していた。その恐ろしい力に悩み、時に力に呑まれそうになっても仲間や絆で克服し、最後には自らの意志でその力を放棄する。そうすることで戦いが終わることを知っているから』

 

ちらりと彼女は、もはや泥の塊と化した少女たちを見渡す。

 

『つまり、私たちの力を取り込んだISOを纏う君たちは、()()()()()()()()()()()()。そして私はISOの開発者であり調整役。だから()()()()こんなことは出来たんだよ。本当なら、ISOを解体して終わりだったのに。でももう遅い。君たちは力を捨てなかった』

 

泥に蝕まれ地面に沈んでいく正義に、ビットラは溜息を吐く。

 

『さて、君たちが力を保持しちゃったからこの話を終えることが出来なくなっちゃった。そうなると新しい敵を作らなきゃいけないんだよねぇ』

 

「な、何を言ってるんだ!」

 

『ヒーローにはそれに対する悪役が必要。ならどうすればいいか?簡単だよね、悪役をつくればいい。本当ならこの世界に見合った悪役がいるはずだった。でも本来ならいるはずのなかった君が正義を謳ったせいで、そのために悪役が必要になった。しかも君はあまりにも強力な力をもっている。だから彼らはやってきた、()()()()()()()()

 

ビットラは沈んでいく正義を見下す。

 

『君は言ったね、織斑一夏が世界の元凶だって。それは全く持って見当違いさ。彼らはいっくんに引き寄せられたんじゃない。()()()()()()()()()()()()()。お前のヒーロー劇のためにね。そのため世界が巻き込まれ、多くの犠牲者を出す羽目になったのさ。そして帳尻合わせのために、いっくんは世界から悪役を押し付けられた。本来のヒーロー役を君が奪ったせいで、そしてお前を輝かせるためにね。酷いことに、一度決まった役割は自力では覆せない。私なら簡単に書き換えられたけど、いっくんが止めたんだよ。最後まで役割を全うするってね。世界が救われるのならってね』

 

『そしてその思いを、お前等は踏みにじった。』

 

彼女の顔が、兎から少女の顔へと変わっていく。

 

『だから、()()()()()()()()()()()()()()。よくあることだよ?続編の為に前作が滅茶苦茶になるなんてさ。続編のために前作の大団円がバッドエンドへと書き換えられ、前作の主役たちが悲惨な目に合ったり、屑や無能に書き換えられるなんてさ。それこそ新たな主役たちを輝かせるためによくあることさ。この世界で君がやったようにね。だから次の転生者(ヒーロー)のために力に呑まれて悪になり果てたきみたち(前作主人公)なんて、まさにお似合いだよ』

 

「ふざけるな!ふざけるな!俺は、俺は正義だ!俺は正義なんだ!神様がこの世界を救えって言われたのに!だから俺はこの力で世界を救ったのに!こんなことがあってたまるか!俺は、俺は!」

 

『さようなら勘違いクソ野郎(ドンキホーテ)。今度はお前がヒーローの踏み台(悪役)だよ』

 

ドプンと泥に呑まれた正義を見下した後、ビットラは織斑一夏に寄り添う。

 

『これでやっと、肩の荷が下りたなぁ』

 

ゴゴゴと崩れていく浮遊城を見ながら彼女は静かに目を閉じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「可哀想に~。こうして彼は悪役に転身してしまったんですね~。まあでも、ヒーロー番組は意外性もウリですからね。これはこれで面白いかもしれませんね~」

 

白い部屋の中で、今までの映像を見ながら拍手をする女神様。実を言うとこの神様、特典について理解する為に色々と元ネタを見ているのである。

 

「でも正義のヒーローって大変ですね~。今度からは特典の注意事項として書いておきましょう。説明責任は大事ですからね~」

 

そうして注意事項を特典説明書に羽ペンで記入する。

 

※ヒーローの力を特典に望む場合、最後は力を放棄することをお勧めします。過度の力の乱用は世界と貴方に多大な影響を及ぼします。使用上の注意を守って正しく使ってください。


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