瞬間、車が振動して誰かが乗り込んできた。問題はその人物だ。
「な、な!ドリーマー!?なんでこんなところに?」
「動かないで。運転手。いい設備じゃない、ねえ?」
沈黙と緊張が走る。緊張を破ったのは謎のドリーマーの方だった。
「あの子を助ける気はない?もちろん助け出すすべも教えてあげるわ。」
「何のために。」
こいつが情報を聞き出す気かもしれない。そして彼女が何をするかもわかったもんじゃない。
「うーん、エマエメリッヒ、もといユートピアを助けるんでしょう?もうその作戦会議はバレてる。そしてあたしはその作戦の総合監督者だから。どう?簡単なことでしょ?どちらにしろあたしをここまで近づけるおバカさんたちはもう、とっくに手のひらで踊らされているのにも等しい。これは脅しでもあり誘いでもあるから、ね?」
「つまり乗ってくれないと困るってわけだ。」
「そういうことよ。あたしはドリーマー。だから夢見る。貴方は何を夢見るのかしら?」
グリフィンの二人は顔で会話する。
指揮官、、どうするの?
どうもこうもないだろう!?
機会を伺うんだ!
「それで?」
明日はすきを窺い脱出・もしくは救援を呼ぼうとした。しかしいつの間にか周りには今の鉄血が使うよりもっと前の旧世代の人形たちが百はくだらない数集まってきていた。おそらく鉄血のコントロール下にあるのだろう。
「話が早いじゃない。あなたにサイボーグになってもらうのよ。」
「いま、なんて?」
「だからサイボーグ。彼女のために計画したの。................まあ信じてもらえないだろうと思って今日はおいていくだけにするわ。」
明日が思わずつぶやく。それはそうだ。そんな技術聞いたこともない。
「くだらない。お前ら鉄血の好きになるくらいなら自分で死ぬさ。」
「ええ、わたしも準備はできています。」
「.....................話が分からないのかしら?おいていくだけって言ったのに何でわざわざ死ぬような真似をするのか理由を伺いたいわ?仮に本当じゃなかったとしてなぜ今ここで死ぬような真似をするのかしら?もっと理性的に話していただけないとあたくし困りますのよ?」
ドリーマーは続ける。
「彼女のための計画なんだから。ここであなたたちが死んだらあたしだけじゃなく彼女も困るのよ?本気でやってるの?
こっそりと明日は隠し持っていたグレネードを引き抜く準備をした。
しかしドリーマーは素早く取り押さえた。
「あら、自爆のつもり?あたしはダミーもあるし意味ないんじゃない?そんなことをするより命が大事だと思ってたんだけど想像以上におバカさんなのかしら?」
俺は素早くシンク下に取り付けられた銃を取り出し構える。こいつに致命傷を与えるには、死ぬ覚悟でないと意味がない。グレネードランチャーから擲弾を発射する。
彼女はグレネードを下にたたきつけた。瞬間。車が吹っ飛ぶ。
土煙とともに車内の俺たちは起き上がった、なぜ生きているのか?
「あのグレネードは車体を貫通させてこの自動車の底の部分を盾の代わりにしたのよ。お馬鹿ども。」
首をつかんでぐっとドリーマーは自分に近づける。
ドリーマーが急に真面目な顔つきになった。
「何、バカなことやってんのよ。このバカ。馬鹿がいっぺん回って地球を一周しても足りないくらい馬鹿ね。とっとと脅されてんだからあたしの計画に乗りなさいよ。これじゃ彼女が報われないじゃない!」
あまりの彼女の表情とテンポのいい言葉一言一言に驚いた。
一旦俯いた彼女はまた顔を上げる。その前に異常な音に気が付いた。
歯がきしむ音だ。
ゆっくりと、ぎりぎりと歯が壊れるくらい噛みしめるようだった
そして上がった顔を見て俺はひるんだ。
俺はこの顔を知っている。憤怒の戦士だ。皆が絶望に沈む前の表情だ。
それがわかって。彼女の顔が今にも沈むような気がしてならなくて。
俺は顔をそむける。
「とにかく信じなさい。信じなさい、そしてとにかく信じなさい。ええ、もう、どうでもいい。信じてくれるまであたしは待っているわ。いつでも。クロノスオブザーバー旧本社前よ。昼でも夜でも、晴れでも、雨でも、雪でも、たとえ待ってる。多分」
一旦言葉を切る。
「あたしが死ぬことになる日も。」
その声色にハッとして顔を見る。彼女は泣いていた。
「待つしかないのよ。わかる?わかるなら信じなさいよ。このバカが、バカが、バカのバカのバカ!アンタの理屈なんてどうでもいい!あたしは絶対に復讐しなきゃいけない相手がいるの!アンタたちのお遊びに付き合ってる暇なんてないの!」
「これ以上あたしが信じてもらえる要素なんて差し出せるわけないじゃない................」
こんな顔をした戦士たちを俺は知っている。明日架橋たち。
あいつらは中国の革命派だった。
本土がすべて無と消えた数日後にとられた写真の中。
あいつらはこんな表情をしていた。
その時は複雑で奇々怪々な表情だと思っていた。
今ならこの表情がなんであるかわかる気がする。
悔しいのだ。ただ単純に悔しいのだ。人は何かを果たそうとしてそれが手のひらの中で砕けた時
その背負った何かが難題であるほどこんな表情になる。
彼女を見捨てることはできない。
もしもう彼女の精神が打ち砕かれていたのならこんなもの、見捨てただろう。
だが、彼女を見捨てることはできなかった。
......こんな時代に女の子一人見捨てられないなんて。おそらくじきにこれが猿芝居だとわかるだろう。
そして後悔するのだろう、感情の奴隷になるなんて指揮官失格だ。
ソラリドは自分がとんだ災難に自ら首を突っ込むことになるのだと知って彼女の計画に乗る道を歩み始めたのだった。
翌日、放棄された町の一角にあるクロノスオブザーバー旧本社前。
彼女は何もなかったかのようにいつものよくドリーマーが浮かべるようなにやついた顔で俺たちを迎える。
「あら、お二人できたの?のんきなことねえ!アハハ!」
「御託は良い。その不器用な作り笑いもやめろ。はぐれ物。」
笑ってはいるが露骨に不機嫌が見え隠れする。そうだろうな。本来ドリーマーがこんな性格をしているわけがないし。大方はぐれ者だろうとは思ったが。
どうすr―――――んぅ?
あれ?いきなりろれるがまわならいくなってきああ?
いきなりそこできおくがれた。
誰かがすないぱーといぅてうのがみおえる
あれ。これおれはしぬんあないか?
あれれれれ。
数時間後クロノスオブザーバー社内。
「ふう、危うく計画がすべてお流れになるところだったわね?まあ、あたしの技術力にかかれば猿人類クラスの脳のデータの吸い取りなんてやるまでもないわ。」
「あなたは心配してるんですか?それとも殺したいんですか?」
「安心しなさい。あたしはこいつは生かそうと思ってるの。問題ないわ。」
彼女たちの声が聞こえる。
「起きなさい。馬鹿。もうサイボーグどころじゃなかったわよ?あんた、脳があちこちに飛び散って人形にデータ吸い寄せるしかなかったんだから。その分働いてもらうわ。あたしの計画どうりにね?」
彼女の目はとても嗜虐者とでもいうようならんらんとした猛獣の目だった。
やっぱりあそこで思いとどまるべきだったのかもしれない。