出久がなんか魔法少女になる話   作:匿名希望

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出久女体化というものに、今更ながらハマりました。


良いよ、契約をして

 "個性"、誰もが持つ異能である。

 しかし、それを持たない少年、緑谷出久、彼がこの物語の主人公である。彼は無個性、異能を持たないがために誰もから馬鹿にされ下に見られてきた。中でも幼馴染である爆豪勝己からは酷いいじめを受けている。

 

 

(………アレは?)

 

 

 入りたてで慣れない中学校に疲れを感じながら歩いていると、出久は家がある団地の植え込みに1匹の小動物が倒れていることを見つけた。狐のような犬のような見た目をしているが大きさはフェレット程度の大きさしかない奇妙な動物だ。見たところ外傷は無いが痩せ細り、骨と皮しかないようである。

 無視するか、埋めるか、管理人に連絡するかで揺れていた出久だがよくよくみてみるとかすかに小動物の胸に上下に動いているところが目に入った。入ってしまった。

 

 

「————-生きてる! 」

 

 

 咄嗟に出久はその小動物に触れた。すると、小動物と指との接触部分から弱いが、白い光が発せられた。

 

(なに、これ?)

 

『よかった、ようやく、会えた。 同じ位相に入れる人………。』

 

 そして、出久の脳内に少年のような少女のような声が響いた。その声に驚き、出久は辺りを見渡すが、その声の主は見当たらない。そして、ようやく、「まさか」と、小動物に目を向けた。

 

『そう、僕が喋ってる…………んだ。今話せているのは、"個性"の副産物。そんなことより、お……お願いだ。僕はこのままだともうすぐ死ぬ。だから、君に助けて欲しいんだ。』

 

 そんなことは目に見えて出久にもわかっていた。

 この小動物はグッタリと地面に横たわり呼吸のリズムで胸をかすかに上下させるだけだ。動物が話しているなんて、体験しても信じられる事ではないが、助けたい。出久は素直にそう思い、ゆっくりと手を伸ばし抱きかかえた。

 

「う、うん、とりあえず動物病院に………。」

 

『無………。むだ、だよ。僕は"個性"のかん……けい上、誰かと契約、してないと生き——ないんだ。おね……がい。ハァ、助けて、僕と契約………して欲しい。死にたくないんだ。 死ぬ訳にはいかな。』

 

 そういう小動物の目から涙が流れた。量は多くない。しかし、それでも悲しみと深い絶望に襲われていることは出久にも分かった。そして、出久はそんな彼(彼女かもしれないが)を助けたいと思った。

 

「わかった、助けるよ。どうすれば良いの?契約?。」

 

『うん、あり-—-とう。でも、契約の前に話さちゃ……ないこと……ある。』

 

 小動物の声はだんだんとノイズが走り小さくなっていく。それはつまり、終わりが近いことを示している。このままではまずい、と、出久は直感した。まだ、契約内容なんて聴いてないし、どうなるかは分からない。

 だが、そんな悠長なことを言っていたら目の前でこの小動物が死んでしまうのだ。

 

——-オールマイト、こんな時、あなたならどうしますか?

 

 憧れのヒーローの顔が浮かんだ。しかし、なんの解決策も浮かばないが、ただ一つ分かることは、ナンバーワンヒーローなら、直ぐに助けてしまうだろうということだけだ。

 

「いいよ、早く。契約の方法を教えて! このままだと死んじゃうよ!」

 

 出久は叫んだ。

 その言葉に小動物は少し目を見開いた。

 

『———-ぼく———魔—-う——じょ——の契約——。君はこ—-になって—-まう………。』

 

 小動物は必死に何かを伝えようとしているが、出久には聞き取ることはできない。それは、死が近いということ、もう時間がないということだ。

 

「そんなのは後でいい。早く、早く契約して………。僕はどうなってもいいから。」

 

——-こんな僕でも、誰かを助けられるヒーローに………。

 

『—————-?』

 

 くぐもって聞こえない声。

 だが、本当に良いのかと、問いかけているように出久には感じた。だから出久はオールマイトのように笑顔を作った。

 

「良いよ、契約をして———!」

 

 そういうと、小動物はもぞもぞと動き、出久の指を噛んだ。すると、指先から少量の血が流れた。出久は少し顔をしかめたが、これがおそらく契約に必要なことなのだろうと察した。

 

『——みの—-まえ。名前は?』

 

 小動物は最後の力を振り絞り、出久に名前を聞いた。もう目には光がなく呼吸も浅くなっている。

 それに対して出久ははっきりと答えた。

 

「緑谷出久、です。」

 

 名前を言った瞬間、彼の身体は光に包まれた。

 視界は真っ白になり、身体の感覚が無くなる。しかし、熱だけは確かに感じていた。

 

 わけがわからない。

 

 出久は身体を動かすが、当然何も触れることはなく。だんだんと感じていた熱は身体の形となり、静まった。

 そして、ゆっくりと光は収まり、視界も晴れた。

 

「え………?」

 

 はじめに感じたのは、暖かいアスファルトの感触と、頭部の異様な重みだった。先程までズボンを履いていたはずなのに、黒いミニスカートを履いており、地面に直接太ももに触れていた。

 おそるおそる、まるで女の子のような太ももに触ると柔らかな感触が伝わってくる。

 

——-いったいなにが?

 

 わけがわからない。

 そんな恐怖が出久を襲った。

 頭を触ると三角形の帽子をいつのまにか被っている。さらに前まで無かった長い髪の毛が肩に触れ、視界で揺れた。

 さらにいつのまにか学ランではなく女物のブラウスをみにつけていて、どういうわけか胸の部分が膨らんでいる。触ってみると柔らかく今までにない感触が伝わってくる。

 何が起きているのか全くわからない。思考が追いつかない。そんな、半ばパニック状態の出久の頭に小動物の声が響いた。

 

『——出久、ありがとう。そして、ごめん………。』

 

 小動物は先ほどとは打って変わって、肉がつき健康的な体型となっている。しかし、申し訳なさそうに頭を下げた。事実、自らが助かるためだけに、出久を()()してしまい、今後の人生をぶち壊してしまったのだ。その事にたいして深い罪悪感を覚え、それに押しつぶされそうになっていた。

 対して、出久が彼をみて一番はじめに感じたのは安堵だった。そして、元気になったという安心感からパニックになり掛けていた思考少しだけ気が落ち着きを取り戻していた。

 

『…………出久、まず、君に起きたことを説明するね。率直に言うと、君の"個性"は魔法少女になったんだ。そして、その副作用で女の子になってしまった。』

 

「え、—————えぇぇ! って声も——-!」

 

 女の子なってしまった。その発言に驚きの声を上げたがその声は、可愛らしいソプラノボイスだったそのあまりの変わりように、出久は驚きを隠しきれなかった。

 

『……本当にごめん………。本来ならきちんと説明して、納得して貰ってからにすべきだったのだけど、君の言葉に甘えてしまった………。謝って済む問題じゃないけど………。』

 

 そう言った後、彼はもう一度深く頭を下げ、言葉を続けた。

 自身が死ぬのが怖い。目的を果たせないのが嫌だ。という自分のわがままだけで1人の少年の人生を滅茶苦茶にしてしまった。その事実、その罪悪感に今にも押しつぶされそうだった。しかし、それでも説明しなければならない。自分がやってしまったこと、出久の身に何をしてしまったのかを話さなくてはならない。

 

『僕の"個性"は、契約獣、平たく言えば人間と契約して魔法少女にするというものだ。そして、僕の契約した人は″魔法少女"という特殊な"個性"に変わり、性別、年齢、容姿などが少女のものになってしまうんだ。出久、君は僕と契約してしまったから、性別が変わってしまった。本当に申し訳ない。僕は誰かと契約していないと生きていけない。契約者からエネルギーを得ているから()()()()()()()()()()んだ。だから……、君には、これから一生、迷惑をかけてしまう。

————-。死にたくない、自分の命可愛さで、ただそれだけのために僕は、君の残りの人生を変えてしまった。』

 

 そう、うつむきながら語る彼を出久は不思議と責める気にはなれなかった。いや、そもそも彼を責めること自体がお門違いなのだ。これは自分が選んだことだ。契約して、助ける。それを選んで実践したのだ。だから、出久には後悔はなかった。

 

「ううん、僕が君を助けたかったんだ。だから後悔なんてないよ。そ、それに、その………。あそこで見捨てたら、僕は悔やんでも悔やみきれなかったと思う。」

 

 出久のその言葉は本音だった。

 もし、あそこで見捨てたら、そっちの方が罪悪感から苦しみ後悔していただろう。

 

『ありがとう………。出久』

 

「…………とりあえず、家に戻ろう。そこで、ゆっくりと話を聞くよ。」

 

 出久は小動物を抱きかかえて立ち上がった。そして、親や学校になんて説明しようかと頭をよぎったがそんな事はすぐに頭から消え去った。

 団地の敷地内に誰も居ないのだ。いや、いる事はいる。誰かがそこにいることは分かるが、きちんと認識出来ないのだ。そして、そこにいるはずの人もこちら側を認識していない。

 近くにいるのに、遠くにいるかのようだ。

 

『……ここ、僕の"個性"で作った別位相の世界。この世界は普段いる世界から少しズレた世界なんだ。この世界に入るためには色々条件があるけど、一度入れば魔法少女として適正のある人しか認識も干渉も出来ない。』

 

 その説明では出久はほとんど理解出来なかったが、つまるところ、自分と他の人がお互いに見えないし何も出来ない、と言うことは理解できた。

 そして、あれだけ騒いで誰も何もして来なかった理由が分かった。

 

「………なるほど。つまり、ここにいる分には不審がられない——。(ブツブツブツ)この世界で移動して、もとの世界に出れば奇襲とかも出来て………(ブツブツ)でも、この世界にいると相手の位置も正確には分からない。いや、センサーとかは使えるのか?ケータイもそうだ。(ブツブツブツ)いや、相手の攻撃をかわすタイミングで使えばそれだけでも効果がある。」

 

 ぶつぶつと出久はなにかを呟き始めた。小動物には半分以上聞き取れなかったが、この別位相に移動する力についてということはなんとなくわかった。

 

『うん、けど、この世界を展開出来るのは大きくて2メートル四方が限界で、そこから出ると元の世界に戻ってしまうんだ。それに、人でもカメラでも何かに認識されている時は移動できないんだ。』

 

「密談とかにしか使えない"個性"?」

 

『そうなるね。戦闘ではまず使えない。———-それと、出久の家に行く前にお願いがあるんだ。』

 

「お願い?」

 

『—————僕の存在、そして、魔法少女という"個性"は、あくまで君が発現した"個性"ということにして欲しいんだ。ここまで迷惑かけておいて言える立場でないことは分かってる。でも、僕の存在、そして、契約獣という"個性"を隠していてほしい。僕はA F O(オールフォーワン)という裏社会のボスみたいな人に追われてるんだ。見つかればどうなるか分からない。そして、僕はいつかそいつを倒さなくちゃいけない。詳しい話は落ち着いたらちゃんと話す。だから、頼めるかな?』

 

 その言葉には先ほどまでと同様に申し訳ないという思いも確かに籠ってはいるが、それとは別に力強い信念も籠っていた。

 どんな事をしても目的を果たす、泥水をすすっても、みっともなくとも思いを果たす。そう言った意思だ。

 無論、そんな細かな想いなど出久には伝わらない。だが、強い思いがある事だけは確かに出久にも伝わった。そして、そんな思いを無下になど出久には出来なかった。それどころか力になりたいとすら思った。

 

「分かった。君のことは黙っているよ。なんだか、騙すみたいで罪悪感あるけど…………。」

 

『ありがとう…………。』

 

 そう言うと、出久は歩こうとしたが辞めて、今着ている服を見た。

 ヒールの高いロングブーツ、ミニスカート、白いブラウスに黒いマント、そして、三角形の帽子だ。ヒール込みで目線の高さは変わらないため明らかに身長は下がっており、さらに服越しでも明らかに体型が変わっている。

それらをはっきりと確認すると、唐突に恥ずかしくなってきた。

 

「ねぇ、元々着てた制服ってどうなったのかな?」

 

『…………。ごめん、元の服を着ているイメージをしてみて、そうすれば元着ていた服に戻るはず…………。』

 

 身体が変わってしまったのはともかくとして、服装だけでもどうにかしたいと、言われた通りに出久はイメージした。

 すると、一瞬だけ服が輝くと元着ていた制服に変わっていた。しかし、もともと大きめのものだったが、さらにダボダボとなり着ているのか着られているのか分から無くなってしまった。靴は脱げそうでは無いが明らかに大きく、ズボンもベルトが尻まで下がり学ランもワンピースのようである。しかし、そのおかげか体型の変化は見た目では分かりづらくなり、少し気持ちは楽になった。

 長い髪の毛は邪魔ではあるが…………。

「戻った………。」

 

『今のとは逆に、魔法少女の服をイメージすれば、さっきの服になれるよ。これがコスチュームチェンジだよ。魔法少女の服を着ていれば“魔法少女の能力"が強化されるんだ。』

 

「魔法少女の能力? 」

 

『うん、僕と契約した事により生まれた固有の能力のことだよ。魔法少女という"個性"の能力は大きく分けて2つ、コスチュームチェンジと、固有能力。けれど、固有能力がどんな能力かは僕にも分からない、変身かもしれないし、炎を操るものかもしれない、人によって本当にバラバラなんだ。』

 

 その言葉に、出久は固まった。

 胸の奥から、希望がふつふつと浮かび上がってくる。

 

「………それって、僕にも何か能力があるってこと?」

 

『そのはずだよ。』

 

「その力で、ヒーローを目指しても良い?」

 

『君が目指したいなら、僕は全力で応援するよ。君ならきっと、立派なヒーローになれる。僕はそう信じてる。』

 

 それは本心からの言葉だった。

 死にそうな、見ず知らずの動物を助けるために、なんの躊躇いもなくその身を差し出したのだ。そんな人がヒーローになるんだろうな、と、何となく思っていた。

 

「——————ありがとう。」

 

 気がつくと出久は涙を流していた。

 ヒーローになれる、その言葉は出久にとって、とてつもなく嬉しいものだった。




次回! 契約獣がメッチャ喋るよ!
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