出久がなんか魔法少女になる話   作:匿名希望

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お盆が予想以上に忙しくて、筆が進みませんでした。
そのため、予想以上に遅く、かつ、短いです。
出来れば、勝己との再会あたりまでやりたかった。

誤字報告でAFOとOFAがごっちゃになっていることが判明しました。修正しましたが、治っていないところがあるかもしれません。すいません。
そして、報告してくれた方、ありがとうございます。


これが、僕の目的と、隠してほしいと言った理由だよ。

 出久が魔法少女になって数日が経過した。

 "個性"が発現したから性別が変わった。そう語った出久の言葉は意外とすんなりと信じてもらえた。元々、世の中には『"個性"が発現したら見た目が変わった』という人も多くおり、生まれた頃は人型でも成長とともに異形型になった人もいるのだ。

 また、"個性"の発現も《発育》の一種だ。

 (あまり良い例えではないかもしれないが)成人しても身長が伸びる人もいれば、18歳になって初めて初潮が来る人もいる。逆に小学生で親知らずが生える人もいる。"個性"の発現が遅れる人も少数ながらいるのだ。さらに、突然変異、親の"個性"とは全く違う"個性"を持つ人も珍しいが存在する。既に前例が少ないながら存在する。 さらに、母親の「子どもを間違える訳がない」という、シンプルかつ最大の発言もあいまり、出久はすんなりと社会的に受け入れられた。

 

 学校側は性別が変わったことに関しては「問題ない」と受け入れてもらえた。しかし、他生徒への配慮としてトイレ等は教員トイレを使い、体育の着替えも別室を使うこととなった。幸いな事にこの学校にはプールはない。

けれども、心の整理に時間がかかるだろうということで、しばらくの間、休学という形を取らせてもらっている。

 

「何かあったら言ってね。出久のためならお母さん、なんでもやるわ!」

 

 昼ごはんに鮭を食べながら出久の母、インコは言った。力強い言葉だが、空元気とも違うが、やはり出久のことが心配な様子が伝わってくる。彼女も出久が女の子になって家に帰ってきた時は本当に驚いていた。半ばパニックになり、涙で脱水症状になり、倒れそうになってしまったほどだ。

 しかし、それでも受け入れてくれた。

 性別が変わろうとも、何も変わるところは無かった。そばかすや癖っ毛などの面影もそうだが、やはり行動や癖、誰よりも優しいところなどは当然だが何も変わらない。出久は出久のままだ。インコはそのことに出久本人よりも早く気が付いたのだ。

 辛いのは"彼女"の方で自分ではない。そう思い、我が子の支えになれるようにと精一杯のことをしようとしていた。

 

「大丈夫だよ。今のところは……。 」

 

 そう言いながら出久は自分の身体を見下ろした。

 そこには着慣れた"ブレザー"と書かれたTシャツと、見慣れない女性の身体があった。あまり"女性らしさを主張しない"体型ではあるが、やはり全体的に丸みを帯び確かに"少女"の身体であることがわかる。"彼女"はその身体を見て、入浴や着替えの時のことを思い浮かべて顔を赤らめた。

 

「本当? でも、お母さん心配なのよ。いきなり性別が変わっちゃうなんて……。」

 

 そう心配そうに言う母に、出久は素直に心配をかけたくないと思った。戸籍や"個性"関連の申請もそうだが、下着や服を買い揃え更に出久が知る必要のなかった性知識まで全て母から教わり多大な迷惑をかけてしまったのだ。これ以上、迷惑をかけたくないと思った。

 

「うん、本当に大丈夫だよ。 下着だってもう1人でつけられるし、この身体にも慣れてきたから」

 

 半分は本当だった。

 現に出久は女性下着を、今日も自分で身につけた。しかし、慣れたというのは嘘だ。数日経っても裸を見るのは恥ずかしいし、鏡で自分の顔を見るのは心臓に悪い(痩せていた時の母に似ているからという理由もあるが)。それだけでなく、動くたびに女性の身体と意識してしまい、なんだか恥ずかしい。さらに、仕方がないとはいえ漠然とした不安も常につきまとっている。そんな思いを全て押し殺す。

 

「………それなら良いんだけど……。あ、そういえばユイ君は?」

 

 ユイとは出久と契約した小動物の名前である。

 元々彼は契約者からエネルギーを得て生きているため、良くも悪くも"モノを食べる"機能が身体に備わっていない。そのため、この場にいなくても違和感はないのだが、普段、出久のそばにいるため、不思議に思ったのだ。

 

「ユイ君なら、散歩だよ。多分、そろそろ戻ってくると思うけど……。」

 

 ユイは契約者から離れすぎると出久からエネルギーが供給されなくなってしまうため、長時間離れ過ぎると下手すれば命に関わる。どれくらい離れると命に関わるかは分からないが、半日くらいならピンピンしているため出久も特には心配していない。

 

「散歩する"個性"、お医者さんにも言われたけど変わってるわね。」

 

「そ……そうだね。」

 

 ユイは出久の"個性"ではないため、1人で散歩に行っても別段おかしくはない。しかし、ユイの"個性"のことは秘密であるため、"彼女"は"魔法少女"という自身の"個性"の一部だということにしている。

 

(でも、なんで秘密なんだろう?)

 

 性別が変わり、自身の周りのことがようやく落ち着いてきた。 しかし、未だに秘密の理由は話されていない。ユイも「追っ手が居ないことが分かってから話す」と、別位相での密談もあるのにかなり警戒している。それだけ、彼にとってかなり重大な事であることは"彼女"も分かっている。

 そんなことを考え、話しながらの昼食は食べ終わり自室に戻るとユイとの距離がどんどん近づいてきていることを感じた。出久は彼がどの辺りにいるかはなんとなく感じる事ができる。離れれば離れるほど精度は落ちるが、それでも漠然とした方向と距離くらいは分かるのだ。

 

『———-ただいま、出久。』

 

 ユイのテレパシーが出久に届く。彼は基本的に人の言葉を話すことが出来ない。そのため、彼の言葉は専ら出久の頭に直接響くテレパシーである。また、このテレパシーは出久相手にしか使えないため、ユイと会話できるのは出久だけである、

 

『出久、君に僕の目的………。君さえよければ僕の存在を隠してほしいってお願いした理由を話そうと思う。』

 

 そう言われて出久は「ついに、来たか」と思った。怖いという思いもあるが、"この話"はおそらく2人の関係にとって大切な事である。だから、出久は静かに頷いた。

 すると、ユイは"個性"を発動させて2人を世界から切り離し、別位相へと移動した。それは、他に聞かせたくないという思いの現れだ。そのことを感じた出久はさらに気を引き締めた。

 

『超常黎明期、"個性"が世の中に広まった時代、世界が大混乱に陥ったことは知ってるよね?』

 

 ユイのその言葉に出久は「知っている」と答えた。教科書にもそのことは書いてあるし、どこかの学者が「この混乱がなければ人類は恒星間旅行を楽しんでいた」と発言していた事を"彼女"は思い出した。

 

『その時代、AFO(オールフォーワン)、という存在が居たんだ。他人の"個性"を奪い、そして与えるという"個性"で彼は悪の支配者として裏社会を牛耳った。出久も聞いたことくらいあるんじゃないかな?』

 

「……ネットの噂でよく見るけど、それってただの(デマ)じゃ?」

 

 似たような話はよくネットに転がっているし、テレビの都市伝説バラエティでも、フリーなんとか、なんとかゼイアンと並んで取り上げられている。しかし、あくまでも都市伝説であり、真実ではない。そのため、出久も全く信じていなかった。

 

『事実だよ。教科書に書かない理由は僕も詳しくは分からないけど、都合が悪かったんじゃないのかな?』

 

「でも、それが、本当だとして、なんで、そんな昔のこと……。」

 

『僕もAFOと同じ時代から生きているのさ。僕は契約者さえいれば寿命は無いし、AFOも不老、もしくはそれに似た"個性"を持っている。

———僕はね、もともと、とある少女のペットだったんだ。知能もそんなに高く無くてね、僕自身元々犬なのかなんだったのかは覚えてない……。けど、毎日が楽しかったのは覚えている。

 ある日、少女と僕はAFOに捕まり実験台となったんだ。毎日のように、複数の"個性"を与えられ()()()。異形型、発動型問わずね。僕たちは毎日のように姿が変わった。僕はその過程で人並みの知能を手に入れ、契約獣という"個性"も手に入れた。その一方で、少女はもはや()()()()()()()()()()()()()()()のに()()()()()()()()()()存在になった。』

 

「ーーーー!」

 

出久は言葉を失った。話の内容もそうだが、それを話すユイはとても、すごく冷たい顔を一瞬だけ覗かせたからだ。その表情はこの世の全てに絶望しているような、夢も希望もない、そう物語っているような顔だった。

 

『そして、しばらくして隙を見て僕は少女と契約して2人で逃げ出そうとした。途中までは上手くいった。彼女は僕と契約したことによって人型に戻れたし、()()()()は強力だった。けれど、AFO はそれ以上だった。2人で逃げることは無理だと悟った彼女は自分を囮にして僕だけを逃したんだ。"生きて、平和な世界を見て"って一言だけ残してね。……だから、僕は生きてAFO を倒すと誓ったんだ。 けれど、AFOはなぜか僕のことを何年も追ってきた。迎え撃っても殺されるか捕まるかが落ちだ。だから、()()()()()()()()()()隠れて、機を窺うことにしたんだ。』

 

そう言ってユイは自嘲気味に笑った。

倒すと言っているが、現在、相手の居場所すら分かっていない。

 

『これが、僕の目的と、隠してほしいと言った理由だよ。正直に言うと、危険だ。一度結んだ契約は死ぬまで解くことが出来ないし……。出久には本当に迷惑をかけることになる。………けと、幸いにもここ数年、追手の気配はないし、AFO(オールフォーワン)の手がかり一つないのだけど……」

 

 ユイは謝るしか出来なかった。

 自分のわがままで、碌な説明もしないで契約をしてしまった。その罪悪感に押しつぶされそうで、そのせいか普段は話さないところまで詳しく話してしまっていた。

 だが、それでも後悔は全くしていない。するわけにはいかない。

 ユイが今まで契約してきた人達は"悪"を憎み、AFO そのものを恨み、平和な世界を目指しているような人たちだった。だから、ユイと契約したし、共に悪と戦った。その関係は協力と言えば聞こえはいいが、復讐のためにユイは正義感や復讐心を利用していたのだ。少なくともユイはそう思っていた。

 ユイと出会わなければ平穏に暮らせていたかもしれない。なのに、追っ手により殺された人や人生がめちゃくちゃになってしまった人も大勢いた。

 そんな人たちのためにも、ユイは生き残ったこと、戦い続けることを一度でも後悔をしてはいけないし、する資格はないと、そう考えている。

 

———全ては生き残るため、AFO をいつか倒すために

 

「——————その、何て言えばいいか分からないけど……。その、僕もAFO を倒すのに協力したい。ぼ、 僕なんかじゃ力になるか分からないけど、友達として一緒に戦いたい……。ユイ君は謝ってくるけど、僕は感謝してるんだ。もし……。もし君が居なかったら、僕はきっとヒーローになる夢を諦めてた。と、思うから……。」

 

 それは、出久の本心だった。

 今まで、ヒーローになりたいなんて言うと、止められるか、馬鹿にされるか、それとも憐れみの目で見られるか、のどれかだった。

 母親にすら謝られ、『ヒーローになりたい』という憧れと、『なれるわけがない』という諦めに板挟みにあい生きてきた。

 しかし、ユイは出久を応援してくれるどころか、「立派なヒーローになれる。」と、言ってくれたのだ。それが出久にとって嬉しく、感謝していた。

 

『……うん、僕こそありがとう。』

 

———僕はなんて卑怯なんだろう?

 

ユイは出久にバレないように奥歯を噛み締めていた。

 

 




次回! かっちゃんが雄叫びをあげるよ
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