出久がなんか魔法少女になる話 作:匿名希望
すいません。理由はとある箱を開けてました。分かる人にはこれだけで遅れた理由は伝わるかな?
雄英高校の入学式の日、出久は新品の女子制服に身を包んでいた。使い慣れたリュックを背負い、ユイを肩に乗せる。スカートの下にはスパッツを履いていていつでも"変身"して激しく動いてもパンツが見えないようになっている。
「よし!」
いつもの赤いハイカットのスニーカーを履き、靴ひもを結び気合を入れて立ち上がる。これより新たな人生が始まる。ヒーローを目指すだけではない、出久にとって今までとは全く違う人生が始まるのだ。
「出久! 超カッコいいよ!」
「うん! 行ってきます!」
そんな母の激励の下、出久は家を出た。
地下鉄を乗り継いで40分、出久は再び雄英高校に来た。
その独特な形の校舎は当然だが入試の時と全く変わらず、違いといえば校舎までの道の桜の木が綺麗な花を咲かしている事くらいだ。
桜並木を通り過ぎ、校舎に入ると中はバリアフリー設計となっていた。スロープなどは当然として、さまざまな"個性"の人に対応できるようになっている。この中なら人型からかけ離れた異形型の人でも不自由なく過ごせるだろう。そんな校舎を歩き配属された1ーAの教室の前に辿り着いた。大きな扉は閉められており中の様子は窺えない。
「いよいよだ」
出久は小声で呟いた。その声は緊張からか少し震えている。ヒーローを志し、この学校に来たのだからこれからが楽しみで仕方がない。だが、それと同じくらいの不安で仕方がないのだ。
勝己を除いて生徒達は出久の"個性"も性別も知らない。つまり、出久はここから本当の意味で女性としての暮らしが始まるということだ。
不安でないはずがない。
そんな"彼女"にユイは何か言って元気づけたいと思い、家からずっと色々考えたがいい言葉は思い浮かばなかった。だから、せめて、と、精一杯の力を込めて言葉を紡いだ。
『頑張って!』
「うん」
身もふたもない短い言葉だが、確かに"彼女"には心強かった。一度だけ深呼吸した後、ドアに手をかけた。
(出来れば、"怖い人"はいなければ良いけど……。)
思い浮かべるのは幼馴染と入試の時のメガネの人だ。出来ればああいった人たちとは違うクラスになりたいと、願いながら扉を開ける。
「足を机に乗せるな! 雄英の先輩方に申し訳ないと思わないのか?!」
「思わねーな! 」
(
そこには、なにやら言い争いをしている出来れば別のクラスが良かった2人が居た。勝己は出久が来たことに気がつくと舌打ちをし、メガネの生徒は話を切り上げて出久の方へと来た。
「俺は、私立聡明中学の飯田天哉だ。君は入試の構造に気がついていたのか?」
天哉はロボットのように動きで自己紹介をした。出久は入試の時のことを思い出してしまい、萎縮してしまった。そんな"彼女"にユイは心配そうにしている。
「……ぼ…
その、報告自体はスムーズに行われたが、それは帰り道で起きた。
2人はその日、家が近所のため帰りのタイミングが同じだと必然的に揃って帰ることとなった。いつもなら勝己は取り巻き達とともに寄り道をしているためこんな事にならないが、彼らは今日はいない。仕方なく出久と帰っている。とは言っても、勝己は出久から数メートル前を先行して歩いているため、一緒に帰っているとは言えないかもしれないが。
「あの、かっちゃん! お願いがあるんだ!」
普段、2人はあまり会話はない。というよりも、幼馴染と言っても2人はそこまで仲がいいとは言えない。そのため、出久の方から勝己へ話しかけることは滅多にないため、勝己はよっぽどの話なのだろうと思い足を止めた。だが、すぐに、出久のためにわざわざ足を止めるのも癪に触るため歩きはじめた。
そして、
「断る!」
と、内容を聞かずに断った。
しかし、その返しに出久は驚くがすぐに話を続けはじめた。そんな"彼女"に勝己は小さく舌打ちをした。
「雄英では、ちゃんと、女子生徒として通うことになる。だから、かっちゃんには、僕の、性別を……」
そこまで聞いて、勝己は出久が何を言おうとしているのかなんとなくわかった。ヒーローになろうとしているのだから、イジメなんて起きないと思うが、やはり、元男というのは隠しておきたい事なのだろう。
出久の願いを聞くのは勝己は癪に感じたが、元々"彼女"の性別について言いふらすつもりなんて無かったし、問題が大きくなるのは彼とて本意ではない、仕方がないので了承することにした。
そのやり取りがあったため、出久が完全に女子生徒として振舞うと知っていた勝己だが、まさか一人称まで変えてくるとは思っても見なかった。不思議なもので、一人称が変わっただけで幼馴染でなんやかんやでずっと一緒に居た"彼女"のイメージや距離感、雰囲気といった言葉に言い表せない
その事にまた舌打ちをするとまた1人の少女が入ってきた。
「あ、魔法少女!」
その少女は天哉と話している出久を見つけると嬉しそうな声を上げた。彼女は入試の時に出久が0点
名前は麗日お茶子といい、彼女ももしかしたら出久と同じクラスかもしれないと期待しており、本当にそうなったため嬉しく思っていた。
「に、入試の時の! 受かったんだ、よかった」
出久も彼女が受かっていた事と、同じクラスになれた事をとても嬉しく感じた。そして、それ以上に、
(制服姿やばい!)
彼女の制服姿に強いインパクトを受けていた。
自分も着ている筈の制服だが、やはり人が着ているのを見ると大きく印象が変わる。制服効果と言えばいいのか、かなり可愛く見えた。
「うん! しかも同じクラスだ。 みんな知らない人だから心細かったんだ。少しでも知ってる人がいて良かったよ!」
そう楽しげに言う彼女を見て、出久も返事をしようと思ったが、自己紹介をしていない事を思い出した。と、その時、お茶子の背後から1人の男が現れた。
その男は無精髭を生やし、寝袋に包まっている。そして、ゼリー飲料を飲みながら言った。
「友達ごっこしたいなら、他所にいけ、ここはヒーロー科だぞ」
その時、出会って間もないクラスの心は1つになった。
((なんかいる!!))
しかし、その男は生徒の反応を意に返さずに起き上がった。
「担任の相澤消太だ。よろしくね。」
相澤はそう軽く挨拶すると、寝袋から1着の服を取り出した。それは雄英高校で使われている体操服であり、入学式やガイダンスで使うとは到底思えないものである。
「早速だが、これを着てグラウンドに出ろ」
それだけいうと、相澤はクラス全員に体操服を配り教室から出て行ってしまった。出て行くときに出久に何か言おうとしていたが、「本人が決めたことだ」と、思い相澤は留まった。
そんな事に出久は気づかず、女子と共に更衣室を使うか、中学時代のようにトイレで着替えるべきか悩んでいた。
(どうしよう、そろそろ本当に慣れないといけないけど、罪悪感が………)
意見を求めてユイの方を見る。
しかし、出久もユイから良いアドバイスを貰えるとは思っていない。彼は致命的な部分で人では無い。動物だ。そのため、性的な感覚などは人と大きくかけ離れていることに、"彼女"も気がついている。
『………更衣室で着替えるべき、というか更衣室を使わざるを得ないと思うよ』
と、彼はそう語るが、出久はすぐにその意味を理解した。体操着を受け取ったお茶子が楽しげに話しかけてきたのだ。その表情はこれから何が起こるのか、という好奇心から来るものだと"彼女"も直ぐに理解できた。が——。
「早く、更衣室に行こう」
そう、無邪気にいう彼女にとてつもなく申し訳なく思った。もはや犯罪をしているような気分だ。しかし、これは自分が選んだ道だ。進むしか無い。
「…………。うん」
小さく頷いてクラスの女子達とともに更衣室に移動しはじめた。
更衣室は広く、様々な"個性"の人に対応できる作りだが、出久はそんな事を気にしている余裕はない。
(見るな!見ちゃダメだ!)
正直なところ、不思議と『見たい』という欲求はなかった。しかし、罪悪感と背徳感が出久を支配しはじめる。
すでに、周りを気にする余裕などなく、頭は真っ白だ。目線をロッカーに固定して体操服に着替える。少しでもズラせば女体が視界に入ってしまう。
「……顔色悪いけど、大丈夫?」
そんな出久を気にしてお茶子は着替える手を止めて話しかけた。けれど、その行動も出久にとって、ありがたいが今はやめてほしいものだ。
「大丈夫……。人前で着替えるのに慣れてないだけだから……。そ、外で待ってる」
猛スピードで着替え終え、更衣室から飛び出した。部屋の外の空気は不思議と冷たく感じ、深く深呼吸をして息を整える。
この着替えにも慣れないといけない。幸いにも(ある意味悲しいことでもあるが)見たいとは思えない。おそらく、身体が女性になったという影響で価値観も女性のものとなってきているのだろう。しかし、それでも罪悪感を覚えてしまう。
(早く、慣れないと……)
外に出て1分もしないうちにお茶子と合流し、グラウンドへと向かった。
◆
「「「"個性"把握テストぉおお!」」」
グラウンドに集められた生徒たちは相澤の言葉をおうむ返しのように繰り返した。それもそのはずだ、入学式もガイダンスも行わずに"個性"ありとはいえ体力テストを行おうというのだ。驚くのは当然のことだ。しかし、彼からすればヒーローを目指す上で時間はいくらあっても足りないのだから、悠長な行事に参加する余裕はない。と、考えている。
「爆豪、"個性"を使ってハンドボール投げやってみろ。円から出なきゃ何やっても良い」
相澤はそう言うと、勝己にセンサーのついたハンドボールを渡した。すると、勝己は楽しげにニヤリと笑うと軽くストレッチをし、ボールを握り思いっきり振りかぶった。
「んじゃあ」
(球威に爆風を乗せる)
「死ねぇぇええええええええええ!!」
その叫び声と共に爆発が起き、勝己の投げたボールは遥か遠くに吹き飛ばされた。どれくらいボールが飛んだか分からないが、"個性"無しでは考えられないほど飛んだだろう。しかし、そんな事よりもクラスの全員は勝己の叫び声の方に驚いていた。
(—————-死ね?)
出久のその心の声はおそらくクラス全員に共通していただろう。そんな彼らのことなど御構い無しに相澤は話を進める。
「まずは自分の
そう言いながら、相澤がクラスに見せた機械には808.6mという勝己の投げた距離が映し出されていた。その記録を見て皆は「面白そう」「やってみたい」と、ざわめいた。普段、"個性"を全力で使える機会なんて滅多に無いのだから、クラスの全員がどこか楽しげだ。
しかし、そんな空気は相澤の一言で一気に沈んでしまうこととなる。
「トータル成績最下位は見込み無しとして除籍処分とする。
こうして、"個性"把握テストが始まった。
第1種目、50m走
走順の関係で出久と勝己は一緒に走ることとなった。しかし、特に会話などあるわけがなく、2人はスタートラインに立った。
(ありがたいことに、僕の"個性"は汎用性が高い。それに、スパッツ脱がなくて良かった……)
出久は魔法少女のコスチュームに変身し、スターティングブロックは使わずに杖にまたがりいつでも飛べるようにする。
対して勝己はキチンとクラウチングスタートのポーズをとる。
「魔法少女だ、マジか! 絶対ェ、残ってやる!」
そんな叫びが、聞こえたが出久たちには関係ない。
「デク! お前は俺より下だ!」
そう叫ぶように勝己が言うと同時に、測定用の機械が「イチニツイテ」と、合図をしはじめた。その声で出久も勝己も思考を切り替え、少しでも早くゴールにたどり着く事だけを考える。
「ドン!」
それと同時に、2人は飛び出した。
「爆速!」
「ファイア!」
出久は杖から放ったエネルギーの反動で加速し、地面スレスレを飛行する。勝己は両手から放った"爆破"の反動でまるで飛ぶように走りぬけた。
その結果、勝己は3秒56、出久は4秒05という結果となった。
第2種目 握力測定
出久の身体能力は高くない、それなりに鍛えているため何もしていない人よりかは高いが、伸び代がないのかあまり筋肉がついていない。
とは言っても、"個性"の関係上、杖をいつも握っているため握力だけは思いのほかいい結果が出た。
結果、右42キロ、左35キロ
第3種目 立ち幅跳び
「……緑谷! 戻って来い!」
杖にまたがり、校庭の端までついた出久に拡声器を使った相澤の声が響いた。
結果、測定不能
第4種目 反復横跳び
結果、56回
第5種目 ハンドボール投げ
『僕がボールを運ぼうか?』
ボールを手に取り円の中に入ると、ユイはそう言った。しかし、ユイは出久の個性ではない。この"個性"自体、貰ったものだが、それでもユイを使うのは狡いように出久は思った。
「ううん、自分の力でやるよ」
そう言って"彼女"はボールを上に軽く放ると、杖をバットのように構えてボールを打った。
「ファイア!」
そして、球威を衝撃波に乗せて吹き飛ばした。
結果 765m
第6種目 長座体前屈
身体が硬いわけじゃない。身長が低いと結果も悪くなる。これぞ文科省の怠慢である。
結果、57cm
第7種目 上体起こし
結果、28回
第8種目 持久走
杖にまたがり空を飛び、素直に走るよりもいい結果が出すことができた。
結果、2分01秒
テストが一通り終わり、皆は相澤の周りに集まった。
全員がどこか緊張した面持ちだ。
「んじゃ、結果発表」
トータル最下位は除籍、つまり、この中で一番下の人は居なくなる。その事実が全員に恐怖を与えた。
しかし、そんな彼らを見て相澤は投影機をポケットから出しながら笑ってみせた。
「除籍は嘘な、君らの力を引き出す合理的虚偽!」
「「「はーーー!??」」」
思いがけないその言葉にクラスほとんどは叫んだ。一部、「そんな事だろうと思ってた」という趣旨の言葉を漏らしているが、それでもホッとした表情を浮かべている。
しかし、相澤自身が除籍をするつもりが無かった訳ではない。例え最下位ではなくとも彼がヒーローとしての素質がないと判断すれば、例え一位でも、クラス全員でも除籍するつもりで居た。
「これで終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから確実目を通しておけ」
そう言うと相澤は立ち去った。
体力テストの順位は出久は4位であった。
ともあれ、無事に"個性"把握テストを乗り越えた出久は無心で着替え、教室でプリントを受け取り帰路についた。
「待って! 一緒に帰ろ! デクちゃん」
出久は振り返ると、そこにはお茶子が居た。勝己以外にデク、と呼ばれることに慣れていない出久だが、それ以上にどうしてそのあだ名を知っているか気になった。
「え? ほら、テストの時に爆豪って人が……」
―――デク! お前は俺より下だ!
勝己がそう叫んでいたことを思い出し、出久は少し苦笑いした。出久自身、このあだ名を気に入っているわけではないし、そもそもただの悪口だ。
しかし、お茶子はそんな出久の気持ちを察したのか察してないのか笑って続けた。
「でも、デクって頑張れって感じで、なんか好きだ!」
そう言ってもらい出久はどうしてか嬉しくてデクってあだ名も悪くはないなと思ってしまった。
「うん、デクって呼んで良いよ。 えっと……麗日さん」
「はは、そういえば私たち自己紹介もしてなかったね。私は 麗日お茶子、お茶子でいいよ」
彼女からすれば当たり前の返しなのだろう。しかし、女子を名前で呼ぶ経験なんてない、出久は少したじろいでしまった。
『頑張れ、出久! 友達を作るチャンスだ!』
「う、うん。よろしく、お、お茶子………ちゃん?」
「うん!」
こうして、出久のヒーローアカデミアは始まった。
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なんか、勝手に強くなった勝己。魔改造ではない、なんで強くなるんだろう?
長座体前屈って、腹と足がベタってついて柔らかさがカンストしても得点が6点とかザラ、低身長舐めんな。「身体が硬いですストレッチをしましょう」って、どうしろってんだ!