出久がなんか魔法少女になる話 作:匿名希望
戦闘シーン、難しすぎる……。
体力テストの翌日、出久たちは雄英での初の授業に挑んでいた。ヒーローたちはどんな授業にするだろうか? と、A組の面々は楽しみにしていたが、午前中の通常授業は驚くほどに普通で、なんの面白みも無かった。強いて特殊な点を挙げて言うなら、内容が難しいことだけだ。
そして、ついに、午後のヒーロー基礎学の授業となった。
ヒーロー科でもっとも楽しみにされてる授業だ。
「わーたーしーがー! 普通にドアから来た!」
始業のベルとともにヒーローコスチュームを着たオールマイトが言葉通り普通にドアから来た。No. 1ヒーローの登場だ。ヒーローを目指すA組にとって憧れの存在。雲の上の人、と、表現してもいい。その人が知っていたとはいえ、自分たちの授業に来てくれたのだ。クラスの全員は当然、喜びのあまり、ざわついた。
「————ほ、本物のオールマイトだ!」
出久も例外ではない。いや、それどころかクラスでもトップクラスでテンションが上がっていた。全身は興奮のあまり真っ赤に染まり、呼吸は浅くなる。そして、今彼が着ているコスチュームについてなどどうでもいい情報をブツブツと垂れ流しはじめる。幸いなことに、勝己も含めた周りの生徒達も出久と同じようにテンションが上がりきっているため異様に思う人は居なかった。
「それでは早速、今回は戦闘訓練だ!」
オールマイトは教室に入って早々にそう言い放つと、リモコンで何かを操作した。すると、教室の壁が動き、中からクラスメイトが学校側に申請を出して作って貰ったヒーローコスチュームが保管された箱が出てきた。
「それを着て、グラウンドβに集合だ!」
ヒーローコスチュームは嬉しい、しかし、更衣室で着替えないといけない。それに、"彼女"のコスチュームは戦闘中は見た目の変化はあまり無いものだ。確かに機能的にかなり強いものだが、それでもクラスメイトと比べれば着れる喜びは低い。
「デクちゃん行こう!」
「うん」
そうして、無心で更衣室で着替え、グランドβに向かった。
「えへへ、要望書、ちゃんと書けばよかった。」
その道中、宇宙飛行士のようなデザインのぱっつんスーツを着たお茶子が照れ臭そうに笑った。出久は目のやり場に困ったが、男性の時に比べれば女性の身体に慣れているので普通に対応が出来た。
「宇宙飛行士? みたいだね。なんか、13号みたいだ。」
宇宙飛行士のようなコスチュームといえばと、出久はすぐに13号が思い浮かんだ。もっと他の話題があっただろうが、ヒーローオタクである出久では仕方がないことだ。
「うん、私、13号みたいに災害救助で活躍するヒーローになりたいんだ! その、デクちゃんのコスチューム……?も良いね、 可愛いよ」
「か、可愛い……?!」
お茶子の言葉に出久の顔は赤くなった。"彼女"のコスチュームは一見するとごく普通の制服だ。チェックのスカートに、青いワイシャツ、その上から紺のブレザーを羽織り青に白い模様の入ったリボンを襟につけている。足には茶色いローファーに、黒いハイソックスを履いている。また、首には大きな黒いネックウォーマーが巻かれており、普通につけているだけで出久の鼻あたりまで隠してしまっている。左手首には銀色のブレスレットをつけている。スカートの下にはスパッツを履いている。
また、出久が着ている服の全てが防刃、防弾仕様で炎にも強く、水に濡れてもすぐに乾き、水中でもあまり行動を阻害しないようになっている。
「ケロ、その制服、可愛いけどコスチュームっぽくないわね。」
ふと、出久に緑色のコスチュームに身を包んだ少女、蛙吹梅雨が話しかけた。その口調と表情から文句とかではなく、純粋な疑問から来たものだと分かる。
「えっと、蛙吹さん? 」
「梅雨ちゃんと呼んで。私、思ったことはなんでも言っちゃうの。今着てるコスチュームもヒーローっぽくないのと、"個性"把握テストの時も変身してたから、どんな"個性"か気になったの」
その梅雨の言葉にお茶子も興味を示したのか頷いている。しかも、周りで談笑しながら歩いていた他の女子達も「私も聞きたーい!」「あ、私も気になる」と、声をあがている。
その様子に、出久は少し圧倒されたが話す内容を頭で軽く整理してから口を開いた。
(……私)
「……私の"個性"は魔法少女、えっと、魔法少女っぽいことができる"個性"なんだ。……出来ることは衣服を魔法少女のコスチュームに変えること、魔力……紫色のエネルギー体を操ること、そして、えっと、自我を持っている使い魔……ユイ君がいることなんだ。
魔法少女のコスチュームを着てたほうが魔力を上手く扱えるから、ヒーローコスチュームは正直、重要じゃないんだ。だから、その、本当なら最低限のサポートアイテムだけで良かったんだけど……。サポート会社がせっかくだからって
出久がその説明を終えると、他の女子生徒もヒーローコスチュームや"個性"について話し始めた。そしたら、出久はいつのまにかグランドβに辿り着いていた。
グラウンドβも入学試験と同じくらい広い、というか街だった。入試を経験している出久達はそこまで驚かなかったが、この規模の施設がいくつもある雄英高校がどれくらい広いのかと、疑問が頭をよぎった。
そんな疑問をよそに天哉に促される形でオールマイトは授業の概要を説明した。
本日は基礎を知るための応用、ということで屋内戦闘訓練を行うという。ルールはくじ引きでヒーローチームと
くじで決まったチームは
Aチーム 緑谷出久 麗日 お茶子
Bチーム 轟焦凍 障子目蔵
Cチーム 八百万百 峰田実
Dチーム 爆豪勝己 飯田天哉
Eチーム 芦戸三奈 青山優雅
Fチーム 口田甲司 砂糖力道
Gチーム 耳郎響香 上鳴電気
Hチーム 常闇踏陰 蛙吹梅雨
Iチーム 葉隠透 尾白猿男
Jチーム 切島鋭児郎 瀬呂範太
である。
お茶子は親しい出久とチームとなってホッとした様子でいた。出久も真面目なだけだと分かってはいるが(あまり話せてないため)入試の時のイメージを引っ張っている天哉や、長い付き合いではあるが仲が悪い勝己などと同じチームでなくて良かったと安心した。
「それじゃあ、続いて対戦相手は……」
オールマイトは続いて更にくじを引き、対戦相手を決める。
「ヒーローはAチーム、
こうして、出久と勝己の因縁の対決が決まった。
◆
「訓練とはいえ、
そう呟きながら天哉はハリボテの核爆を見上げた。ここは、屋内訓練を行うビルの最上階の一室だ。すでに核爆はセッティングされており、準備時間は五分であまり時間はない。そのため、天哉も勝己も核爆弾は動かさずに、この部屋を死守しようと考えていた。
(クソ、ここじゃ一階と変わらねぇ。デクのことだ、“飛びながら攻撃できない"デメリットはサポートアイテムで解消してるはずだ……。)
勝己は窓から外を見ながら口を開いた。
「おい、 クソメガネ、デクは俺がやる。お前は丸顔と、コイツを死守しろ」
「なっ、それは良いが、君はやけに彼女につっかかるな……」
「うっせぇ! あいつは飛べる、遠距離攻撃も持ってる。お前じゃ上から狙い撃ちされるだけだ。」
正史と比べて出久に対してそこまでの『怒り』を感じているわけではないため最低限のコミニュケーションは取れ、チームプレイは可能としていた。しかし、それでも、デクに負けたくない。という思いから"彼女"と戦いたいと考えていた。
「た、確かに……。昨日の"個性"把握テストでも幅跳びは規格外……。屋内とはいえ、このビルは天井が高い。けど、それは君も同じでは?」
「あ"ぁ、俺は! アイツより! 上だ!」
一方その頃、出久とお茶子も作戦会議を開いていた。お互いの"個性"を説明し合うのは勿論のことだが、見取り図の把握やどう行動するか話し合っていた。
「相澤先生と違って罰とか無いから安心だ。」
そう笑顔で言うお茶子に対して出久は重い表情で少し震えていた。その様子は怯えた小動物のようで、お茶子もなんだか心配になって少し大きな声を出してしまった。
「だ、大丈夫?! デクちゃん!」
「う、うん。だ、大丈夫……。かっちゃんが相手だからなんだか身構えちゃって……。」
そういわれるとお茶子はなんだか複雑そうな顔になった。"彼女"から勝己がバカにしてくることは知っていたし、幼馴染だとも聞いていた。そこから、2人の微妙な関係を察していたためかける言葉があまり思い浮かばなかった。
「そっか、バカにしてくるんだっけ……。」
そう言うお茶子に対して出久は軽く頷いた。そして、身体は震えているけど、なんとか表情を引き締め、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「かっちゃんは凄く嫌なやつだよ……。……けど、すごいんだ。目標も……。体力も、"個性"も、自信も……。
そう言うと、出久は魔法少女のコスチュームとなった。サポートアイテムであるネックウォーマーや、腕輪、スパッツは身につけたままだ。この変身はどこか決意表明のようで、出久の強い意志が込められていた。
その様子にユイは、少しずつではあるが、いじめっ子といじめられっ子という関係が改善されてきていると感じ、少し笑みを浮かべていた。
「うん、因縁の対決なんだね!」
「ご、ごめん。お茶子ちゃん関係ないのに……。」
「あるよ!! 友達じゃん! 頑張ろう!」
「——————!」
お茶子の何気ない言葉に出久は赤面してしまった。"彼女"は女性から友達だと呼ばれるのは慣れない。それどころか、悲しいことに性別のせいで微妙な立ち位置にいたため(勝己を除き)友達という存在自体が数年ぶりだ。
「そういえば、デクちゃんって、実は僕っ子?」
ふと、彼女の本当に何気ない一言で出久の顔はさらに赤くなった。そして、腕をあわあわと動かしたあと顔を隠すようにした。
「いや、その、うん。僕っ子というか、なんというか、昔はそうだったってだけで…。」
「でも、私は良いと思うな、"僕"って」
そう笑顔で言うお茶子に、出久はつい固まった。女子生徒として生きようと区切りのつもりで一人称を変えていた。ある意味それは、男自体との決別とも言える。しかし、お茶子のその言葉は残るものもある。変えなくて良いところもあると言ってくれたような気がした。
「………ありがとう。」
出久はそう言うしか無かった。
ただ、5分なんて時間はあっという間に過ぎてしまうもので、屋内戦闘訓練は始まってしまった。
(————考えるのは後だ。)
出久は左腕のブレスレットを触ると、ネックウォーマーは形を変えて黒いマントになった。
「行こう、お茶子ちゃん」
「うん!」
◆
まず、出久が行ったのはビルの内部を外から観察することだった。ビルから数メートル離れた場所を飛行して、窓の中を見て回る。すでに、別行動を取っているお茶子は一階から潜入しており、上と下、両方から攻める作戦だ。
「アレは!」
最上階の一室に核爆弾を発見した。すでに見取り図が頭に入っている出久はすぐさまどの部屋か把握する。しかし、その部屋の中には勝己と天哉が揃っており、2人ともこちらを見ていた。
「死なねぇ程度に殺してやるよ! クソナード!」
勝己は本物の
「お茶子ちゃん、核爆弾は最上階の階段の隣の部屋! かっちゃんは
「了解」
無線でお茶子と会話しながら出久は左手のブレスレットを右手で触れスイッチを押した。すると、ネックウォーマーだったマントは、更に形を変えてコウモリのような形のグライダーとなった。それにより出久は杖を飛行では無く、攻撃に回すことが可能となった。
「シュート!」
旋回しながら無数の
「はっ!」
だが、勝己は爆破の"個性"で縦横無尽に動き、全ての魔力弾をかわし出久に迫る。だが、出久は杖を振り下ろした。すると、勝己の横を通り過ぎていた魔力弾、4個が急に方向を変えて勝己に迫る。
「———―っ」
だが、ギリギリの所で勝己は爆破で空中を器用に移動し、さらに体を捻り全てかわす。その動きは最早神がかっておりモニタールームでも驚きの声が上がった。
「くたばれぇ!」
勝己はその持ち前のセンスで全ての攻撃をかわし、すぐに出久に追いついた。そして、右手を振り上げた。
(————右手の大振り!)
出久はブレスレットに触れてグライダーをマントに変える。当然出久は飛行能力を失い急激に落下し、勝己の攻撃は外れる。
「避けんな!クソカス!」
((避けるなって言われても……))
ユイと出久は静かに心の中でそう思ったが、口には出さない。いや、出す余裕はない。勝己は爆破を空に向かって放ち、落下速度を上げて出久に迫りつつかかと落としを放つ。"彼女"はそれを杖で受け止めそらして、そのまま杖を勝己に向ける。
「ファイア!」
杖から衝撃波を放つが、勝己は爆破の"個性"の反動で一気に出久に
出久の"個性"の起点は杖だ。それより内側に入られてしまっては何もできない。かろうじて操作性を付与できる『シュート』で攻撃は出来るがそれでも限度がある。つまり、接近戦が出久の弱点だ。
『出久、早く離れて!』
ユイがそう叫ぶがもう遅い。
勝己は出久の胸ぐらを左腕で掴み右腕を振り上げた。
地面はもう近い。爆破と落下の勢いで地面に打ち付けられてリタイヤだ。
「落ちろ!」
その叫びとほぼ同時に、出久の持つ杖の頭が紫色の球体に包まれた。それは圧縮された
それに気がついたユイは"彼女"のマントにくるまるように掴まり、目を閉じた。
(—————全力の)
「ファイア!」
その叫びとともに、杖の頭から最大威力の衝撃波が放たれた。それにより、間近に迫っていた道路のアスファルトは吹き飛び、その下の大地が顔を出す。放った出久は反動により打ち上げられるようにビルから数十メートル離れた上空へ吹き飛ばされる。その反動で勝己は掴んでいた胸ぐらから手を離してしまい振り落とされた。
勝己は地面スレスレで体勢を整え、"個性"で落下速度を殺して着地する。空中にいる出久はそのまま核爆弾のある部屋目指して飛行している。勝己はその光景に激しい苛立ちを覚えた。
———デクは1番すごくないヤツだ。
———俺が1番すごい筈だ。
———デクより俺の方が上だ。
(ああ、もう、分かってんだよ。)
「クソデクがぁぁああ!」
勝己は左の拳を握り地面の方に向けた。そして、サポートアイテムである手榴弾型の籠手のピンを抜いた。これは彼の"個性"の要でもある汗を溜め、ノーリスクで最大威力の爆破を放つ事が出来るようにしたものだ。それを使い地面に向けて放たれた大爆破は勝己を一気にビルの上まで飛び上がらせた。
「行かせるかぁ!」
核爆弾の部屋に迫る出久に向けて勝己は空中を移動する。しかし、彼の"個性"はそもそも空を飛ぶものではない。確かに爆破の威力は強力で連続使用で飛行も可能だ。だが、人間を浮かせるのにはそれなりの威力が必要で"個性"を使う手のひらだけでなく腕、肩への負担も大きい。
(クソ、肩が外れそうに痛てぇ、両手もそろそろ限界だ。なら!これで決める!)
だが、それでも、勝己は出久にだけは負けたくなかった。
核爆弾の部屋に入ろうとする出久に向けて勝己は右手の籠手を出久に向ける。超近距離の大爆破だ。先ほどのジャンプに使った威力を知るモニタールームの生徒やオールマイトは「やばい」と判断した。
『爆豪少年!ストップだ! 殺す気か!』
「思いっきりやって良いんだろ? オールマイト!」
無線越しにオールマイトの声が勝己に届く、だが、それでも彼は止まらない。
無論、殺す気なんてさらさら無い。ただ勝ちたいだけなのだ。デクにだけは負けたく無い。負けられない。そんな思いからの暴走とも言える。いや、どちらかといえばこれぐらいなら防ぐだろうという信頼だ。
「デク!」
「——————っ! かっちゃん! 」
勝己の表情で不思議と出久の中でバリアで防ぐという選択肢が自然に排除された。飛行を辞めて空中で体を捻り勝己の方に向きなおり杖を後方に向ける。
すると、勝己と出久の間に紫色のエネルギーの球体が現れ、みるみるうちに巨大化し、バスケットボールより一回り大きいくらいとなる。
『出久、待って! それはマズイよ! 』
ユイの悲鳴にも似た声が"彼女"の頭に響く。
それもそのはずだ。今、放とうとしている技は、圧縮した
『—————shit』
無線越しにオールマイトの小さな声が響いた。
勝己は狙いを定め、ピンを抜く。それと同時に出久も杖を前に突き出す。
「バスタァァアア!」
その瞬間、2人の視界は爆炎と閃光のみとなった。共に放たれた轟音はまるで音が消えたかのように2人に錯覚さた。そして、各々自身の攻撃の反動で後ろに吹き飛ばされた。
だが、それでも2人の攻撃は問題なく機能しお互いの攻撃がぶつかり合った。それにより何が起きるかは明白だ。どちらも攻撃力だけならプロヒーローと並べてもおかしくないほどの破壊力だ。それらがぶつかり、逃げ場を失ったエネルギーはおそらく爆発することになるだろう。
「SMASH!」
しかし、その声と共に暴風が吹き2人の放った攻撃を消しとばした。
「私がモニタールームから来た。」
その優しさを纏った決め台詞を言いながら、オールマイトは2人がさっきまで戦っていた場所の真下に、勝己と出久を抱えて立っていた。彼は一瞬のうちにモニタールームから移動し、攻撃を吹き飛ばし2人を回収したのだ。
「2人ともやりすぎだ。」
そう言うオールマイトだが、出久も勝己も気絶してしまっており聴いていなかった。
あれ? お茶子と天哉は? 話書くの難しすぎる。
簡単な技の説明
・ファイア
中、近距離攻撃。
衝撃波に変えたエネルギーを杖の先から放つ技。なかなかに破壊力が高い。これを利用して飛行中に速度を上げたりしてる。
・シュート
中、遠距離攻撃
球体状の魔力弾を飛ばす。操作性を捨てればかなりの連続射撃が可能。個別に操作できるのは調子が良くても5個が限界である。だいたい同じ動き(全部右に動かすとか)なら10個程度なら可能。
・シールド
花形のバリアを張る。かなりの防御力があるが、一方向からの攻撃しか防げない。バリアが無いところからは普通に攻撃が通る。
・バスター
出久の持つ最大クラスの攻撃。圧縮した魔力を放つビーム砲。