出久がなんか魔法少女になる話 作:匿名希望
リアルが忙しすぎて、fgoも出来なかった。
……ハロウィン復刻も、セイバーウォーズ2 も出来なかった。
勝己は眼が覚めると、知らない場所にいた。白いベッドに寝かされており、着ていたヒーローコスチュームはゴツい場所だけ外されている。周りはカーテンで囲まれておりどこだか分からない。
(デクと戦って、それから……)
はじめてのヒーロー基礎学の授業で屋内戦闘訓練を行い、出久と全力の攻撃を撃ち合った事を思い出した。その後はハッキリとした記憶はなく、全身に強い衝撃を受けたことは覚えている。おそらく気絶をしたんだろうと勝己は当たりをつけた。
辺りを見渡し、カーテンを開ける。辺りを見渡すと、かなり広い作りだが小・中学校のものと基本的なところは変わらない保健室であることが分かった。彼が寝ていたベッドの横にもカーテンで囲われた場所がある。何の気なしに覗いてみると出久が寝ていた。素人目だが大きな怪我は無さそうである。
「クソッ」
彼にとって引き分けは負けと変わらない。勝ち、それも一位以外には何の価値も無い。そう考えている彼にとって出久がどのタイミングで気絶したのかも、訓練の結果も関係ない。彼にとって今回の訓練は負けたのだ。
自然と拳に力が入る。
分かっていた。出久は強い。下手をすれば負けてしまう。
認めたくなかっただけだ。"彼女"が自分よりも下だって思いたかっただけ。
だけど、今回の訓練で認めざるを得なくなってしまった。"彼女"は既に彼に手が届くところにきており、下手したら己よりも優っている。
「もう、負けねぇ。俺はテメェより上だ。デク。」
だから、そう言った。
今までのような決めつけではない。
自分を追い込むための、あくまで自分自身への誓いだ。
そして、一度出久を睨み付け、勝己は出口へと足を伸ばした。それと同時に引き戸が開いた。
「起きたのかい? 」
そこには小柄な老婆が立っていた。勝己は一瞬、誰だか分からなかったが、入試の時に居た"リカバリーガール"、つまりは雄英高校の養護教諭だとすぐに気がついた。
「どこか違和感はあるかい? 見たところ大事は無さそうだったけど、もし問題があるなら病院に行かないといけないからね。」
「ああ、問題ねぇ。」
不思議と心の底から応えることが出来た。
◆
勝己が立ち去った数十分後、出久は目が覚めた。横を見るとお茶子が本を読んでいる。ブックカバーをしているため表紙は見れないがジャンプコミックと同じ大きさだろう。
膝にはユイが丸まっており、出久が起きたことに気がつくと"彼女"の方に飛び移った。
「あ、デクちゃん! 良かったぁ。」
お茶子はユイの動きがキッカケで出久が目を覚ました事に気がつくと(しおりを挟むことも忘れて)本を閉じ、胸を撫で下ろした。そんな様子をまだ頭がキチンと回っていない出久は何が起きたのか分からない。
「うらら……、お茶子ちゃん? 」
ゆっくりと状態を起こし、頭を押さえて直近の記憶を辿る。
(確か、ヒーロー基礎学で……)
『勝己と、授業で戦って気絶したんだ。……良かった。』
ユイは心の底からそう言うと、出久の肩によじ登り尻尾で頬を叩いた。
その行為にお茶子は目を見開き、"彼女"に声をかけようとしたのについやめてしまった。出久も一瞬、頬の痛みで頭が真っ白になったがすぐに彼が何を思っての行動なのかわかった。
『けど! あんな危ないことダメだよ! オールマイトは普通はいないんだ!! ヒーローにとって気絶は死なんだよ!! それに! 勝己だって危なかったんだ! もしかしたら2人揃って取り返しのつかない怪我をしてたかもしれないんだよ!! 大技はもっと練習してから……』
本当に心配しているからこそ、早口でユイはまくし立てた。ユイとて出久と勝己の間の微妙な関係を察している。だからこそ、今後が心配でたまらず、つい強い口調となってしまっていた。
"彼女"も心配してくれていることは分かっているため、彼の言葉をキチンと聴いていた。けれども、10秒ほど早口で言葉を並べたあと、お茶子の存在を思い出し『……本当に心配したんだから』と、言って口を噤んだ。
「ごめん、ユイ君……。」
出久もそう言うしか無く、そして、
(そっか、テレパシーでユイちゃんの声が聞こえるんだ。)
お茶子は2人の様子を見ながら、自分には無い"個性"の一面を見て心が温まるとも違うが、どこか暖かなものを感じた。
「——————―お茶子ちゃんも、ごめん。心配も、迷惑もかけた。」
出久は視線をユイからお茶子に向けてまずは謝った。心配をかけたこともそうだが、自分のわがままで迷惑をかけてしまったことなど含めた一言だった。
もし、あそこで勝己との撃ち合いではなく、チームとしての勝利を優先していれば勝てたかもしれない。心配もかけないで済んだ。
全て自分のわがままで多大な心配と迷惑をかけてしまった。その罪悪感と後悔が出久に重くのしかかった。
しかし、お茶子は全く気にした様子はなくかぶりを振った。
「ううん、無事で良かったよ。 それに、私こそごめん。飯田くんに勝てんかった。 今回、良いとこ無しは私だ。 」
お茶子もヒーローに憧れてこの学校に入ってきた。それなのに、何も出来なかった。頑張りも、努力も関係なく飯田相手に何にも出来ずに敗北してしまった。その虚無感にも似た敗北感は、彼女の心を深く抉った。そんな中、お茶子はたどたどしいながらも力強く語る。
「だから、だから次は勝とう! 私も強くなって、もう、デクちゃんに無理させんから!」
並んで戦うから、と、お茶子は心の中でつけたした。
対して出久は不思議と笑みを浮かべていた。今まで(勝己を除き)一緒に夢を追う存在はいなかった。だからなのか、お茶子と言う存在は力強く、とても嬉しかった。
「うん。 次は1人で突っ走ったりしない。だから、次は勝とう。」
その言葉とともに2人は自然と笑い合っていた。