東方半妖録   作:名無しの天狗

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0話 晴れ時々礫

 

 

「暑い」

 

茹だる様な暑さだ。

 

そんな中、俺は歩いている。

 

頭上から降り注ぐ蝉時雨が本当の雨なら良かったのに、と下らない事を考えながらアスファルトを踏みしめる。

 

「ケロちゃん後生だ、雨降らしてくれー……あれ? 雨は神奈子の方だっけ?」

 

そういえばどこぞのダムの貯水率が一桁になっただとか、近くの町で最高気温を更新しただとか、そんなニュースがやっていた事を唐突に思い出す。

暑さのせいか思考があらぬ方向へ飛んでしまい考えが全くまとまらない。

 

「何でこんな暑い中、歩かにゃいかんのだ……」

 

原因ははっきりしている。

 

先日うちに入社した阿呆が営業や配達もないのに予約も無しに社用車で昼飯を食いに行きやがったせいだ。

そのせいで俺はこの炎天下に歩きで取引先に向かうことになっている。

 

この町はドが付くほどでは無いにせよ、山々に囲まれていて、町から少し外れれば田園風景が広がっている何処にでもある田舎町だ。一応市を名乗ってはいるが公共交通機関も一時間に一本の私鉄とバスくらいで観光地も存在しない寂れた町だ。

 

 

同じ市内とはいえ流石に歩きは厳しかったか? 

 

そう思い始めるも既に半分ほどの道程を消化しており、引き返す気にもなれなかった。

 

幸いな事に所々にある林や庭木が太陽を遮ってくれている。出来る限り日陰を選びながら歩みを進める。

 

そうこうしている内に町外れにたどり着いた。

 

 

 

視界が広がる。

 

 

 

風の形を映し揺れる新緑の稲葉、キラキラと輝く水面。昔から変わらない大好きな風景だ。

 

そして取引先はこの先、遠く田園風景の中にポツリと存在している。つまりこの先に日陰は無い。

 

なかなかこの木陰から稲の大海へと一歩を踏み出す勇気が湧かない。飲み物があれば少しは変わるかと思うも自販機やコンビニ等という便利な物は近くに存在しない。

 

「しょうがないか……余り立ち寄りたくないけどあそこに行こう」

 

多少回り道になってしまうが自販機があった筈だと町の外縁を歩き目当ての場所へと向かう。

 

 

 

 

 

しかしその期待は裏切られる事になった。

 

 

所々塗装の剥げたボロい洋風な城、つまりはラブホだ。バブル時代にでも建てられたのだろうが、今ではやっているかどうかもわからない有り様だった。しかしながら自販機だけは稼働していた記憶があったのだが、今は完全に撤去されている。敷地には工事の車両が幾つか停まっており、解体作業が始まっていた。

 

少子化の世の中でやっていけなくなったのだろうか。

 

俺は産まれも育ちもこの町だが同級生達の殆どは大学卒業してそのまま都市部で就職している者ばかりだ。地元に帰るのは祭があるときや大型連休くらいで基本的にこの町に若者はいない。大学卒業後に態々戻ってきて地元で就職したのは俺くらいなものだろう。

ちなみに彼女いない歴=年齢の残念若人だ。

 

「そりゃ潰れるわなぁ……」

 

時代の移り変わの虚しさや飲み物を確保出来なかったという残酷な現実を前に頭を垂らす。

 

 

 

呆然としつつ解体作業を眺めていると突然城が傾いた。

 

それも此方へ向かってゆっくりと倒壊している。

 

咄嗟に身構えてしまったがそこそこ距離はあるし押し潰される様な事は無いだろう。

 

そう思ったのもつかの間、倒壊した土煙の中に黒い点が無数に見える。

 

倒れる様に崩れたせいで城の天辺部分が横方向に加速され地面に打ち付けられた拍子に飛び散ったのだろう――自分の方へ。

 

 

「は?」

 

 

頬のすぐ横を高速で瓦礫が通過していった。レンガだろうか?

そう考えた時には大小様々な大きさの礫が目の前に迫ってきていた。

 

「いくらハードシューターの俺でもっ3D弾幕は無――」

 

全身を打ち据える衝撃を感じながら俺の意識は遠退いていく。

 

 

 

あぁ、神霊廟エクストラのノーミスクリアまだなのに……っ!

 

 

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