東方半妖録 作:名無しの天狗
あの時、爺さんの手をとった瞬間こそが新な俺の、妖怪としての生の始まりだったのかもしれない。
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爺さんに拾われた当初は、それはもう我が事ながら酷いものだった。
信用はできないが腹は減る。子供の自分では食事にありつく事すらままならず、結局爺さんから食料を貰っては少し離れた場所で腹に収める。
まるで野良猫の様だ……今思えば赤面もので穴掘って埋まりたい程だ。
まぁ多少はしょうがないかと思いもするけど……恥ずかしいものは恥ずかしい。
平和な現代日本で目標もなくふらふらと生きていた一般人が突然の死。
生まれ変わって小さく幸せな家族の中で生活していたら前触れもなく人に妖怪として排斥され、家族を殺されるわ自らも人間では無いということを解らされるわ……。
文章に起こすとなかなかに酷いものだ。
家族の死、そして自分も同じ様に命を狙われる。それに加えて自己のアイデンティティの崩壊。同時に襲ってきた衝撃を受け止めきれずに殻に閉じ籠ってしまうのも無理もないだろう。
だけどそんなガキを爺さんはよく育て上げてくれたと思う。
周りを信用しない無愛想極まりない俺を根気よく世話して、少しず俺の心を解きほぐしてくれた。
人と触れ合う温かさ、同じ時を過ごす喜び、そういった大切なことを思い出させてくれた。
感謝しかない。
そうして何年かの月日を費やし、俺は少しずつ自分を取り戻していったのだった。
こちらの世界に転生した当初、自分についてよく考えもしなかった。ただ小さな身体でも前世より力が強かったり怪我の治りが早かったりとその程度の認識しかしていなかった。
しかし、無理やり自分が人外である妖怪なのだと思い知らされたことで自分の身体から産み出される力、妖力を認識した。
初めはわけのわからない力を持て余していた。だが何とか立ち直った後、それが父から受け継がれた力なのだと気付いた事で自然と受け入れることができた。
それからの日々は世界が違って見えたし毎日が楽しかった。
妖力というのは便利なもので、身体能力を強化したり体を頑丈にしたり、はたまた弾として固めて撃ち出したり術によって火やら水やらに変換したりと色々な事に使える。
イメージはほぼほぼH×Hの念だ。
そんな力を手にいれた男子が自重するはずもなく、それはそれは妖力鍛える事に勤しんだ。
爺さんの真似をして修験道を始めたのが最初だっただろうか? それを皮切りに京の陰陽師を遠目に観察して見よう見まねで陰陽術を再現してみたり、爺さんに連れられた先で飯綱法を教わったりと……それはもう大いに楽しんだのだった。
話は変わるが、どっかの誰かが言っていた。人間は他人と関わる事によって自己を認識するとかなんとか。それと、妖怪は精神的な生き物だとも。
まぁ何が言いたいのかといいますと……俺の身体は爺さんの手をとったあの時から全く変わっていない。小学校高学年位のチンチクリンボディのままなのだ。
今世の家族と過ごしていた頃は半妖であるため人としての成長もしていたのだが、自己を妖怪と認識したことによって身体は妖怪の側へと傾いた。そこに自分の殻に閉じ籠り精神が停滞したことにより身体の成長も停止。
更には社交性を取り戻した後も爺さんは俺を幼子として扱っていたため自己の認識も子供のままに……。
そんなこんなで俺の見た目は完全に子供の姿で固定されてしまった。成長した自分の身体とか全く思い浮かばねぇ……。
妖怪って面白いね!…………はぁ。