「無情さんの友達……無情さんの友達……」
あの無情さんの友達だから、常識人でかつ世渡りが上手いやつがいいよね。
知り合いにそんなやついたか……?
常識人なら
世渡り上手ってなら香。友達多いやつだ。けど常識をしらない。
……………。
考えていても仕方ない。
友人とは作るものではなく、なるものだと。誰かが言っていた。
『ムジョウサンマイフレンド!計画』は一旦取り置きにしといて……。
「はいはいみんなぁ!!授業───の前に!転校生を紹介しよう!!」
転校生……?
そういえば。
僕の隣に、席が一つ増えている。
カラカラと扉が開けられる。
……ん?なんか、変な匂いがする。
匂いというか、予感と言うか……。
「
……そうか。
この匂いは、無情さんと同じ匂いだ。
……手のかかる人の、匂いだ……。
「では明瑠さんは塔助さんの隣の席ですね」
「トウスケ……?」
「あ、はい、僕です」
「あっ!わかりました!!」
鳴海さんは僕の隣にてくてくと歩くと、小さなカバンを下ろした。
水神高校は海の方の高校だ。ボートレーサーや操船士を多く出している事で有名な港町の。
この学校のとはまた違う紺色のセーラー服が目を惹く。
真っ白な帽子も制服の一部なんだろうか。
「よろしくであります!塔助」
「うん、よろしくね」
「じゃあ塔助さんは放課後に明瑠さんに校内を案内したげてね!」
「よろしくであります!」
まぁ仕方がない。
湊町のこともききたいし……うん?
明瑠は遠いところから来たからこの学校のルールやら何やらにうとい。
と言うことは、誰かが教える必要があるということだよね。
とすれば……!
『いいか?ここはこうこうこうなんだぞ!』
『わっ!!無情さんは頼りになるであります!!ぜひお友達に!!』
『うむ!』
「これだ!!」
「えーと塔助さん……何が?」
「あ、すみません……」
しくじった。
「そう?ならいいけども。ん、じゃあホームルーム終わり!次の授業は国語だぞ!」
「……国語……。あの、塔助、教科書を出してもらっていいですか?」
「教科書?うん、これ」
国語の教科書を見せると、明瑠は「あっ……」と声を上げる。
手元を見ると、ウチの教科書とは違う本が握られていた。
……なるほど。
「良かったら見る?二人で使うことになっちゃうけど」
「良いのでありますか!?ありがたいであります!じゃあ机をくっつけて……」
「えっ」
「……?なにかおかしなことでも?」
「いや、別に?」
交互に使うって意味だったんだけど……いっか。
机をくっつけ終わると、それを見計らった様にクラスの皆の目が光る。
「明瑠ちゃんの住んでたとこってどんなとこー!?」
「イケメンいた!?明瑠ちゃんて彼氏いる!?」
「港町ってことは競りとかあるのか?一本釣りとかは!」
「わっわっ……一辺に聴かれても答えられないのでありますよう……!」
「だってよ田中」「田中やめなよ」「サイテー」
「おかしいだろ俺だけが言われるの!!」
田中どんまい───。
「えと……こほん。住んでいたのは海と学校の真ん中あたりの場所だったであります。学校帰りに家にカバンを置いて海に行くのが日課でありました!」
「海では何をするの?」
「灯台があるのであります!カモメを眺めたり、木の足場の上から釣り糸を垂らしたりしていました!……あ、港町だからといってお魚が盛んなわけではないのであります。海があるってだけなのでありますよー」
へぇ。港町っていったら漁船がたくさんあるイメージだけど。
明瑠がスマホを取り出して画像をみんなに見せる。
「お気に入りの一枚であります!」
多分、さっき言ってた灯台から撮ったのだろう。
海岸から延長されるように白い石で出来た道や広場が伸び、港町というよちかは海の上に作られた街のよう。
多分この角度だと……灯台は浜辺にあって、海側に街が伸びてるんだな。海の青と建造物の白がととても合っている。
さておき。
「それに基づき、競りは行われなません。一本釣りは近所のおじさんがよくボートの上でやっていたのでありますが」
「へぇ〜……」
「それと……イケメン、でありましたか……。むむむ……おぉ!たしか雑誌モデルにスカウトされたクラスメイトがいたのであります!」
「「「えぇ!?誰誰!?」」」
女子がカバンから雑誌を……持ち込んでいいのかなソレ。
明瑠は雑誌を受け取るとパラパラとめくり……一ページをこちらに見せた。
わぁ美少年。
「えっへぇ!?カナトくんがいるのぉ!?勿体無い!!」
「大してすごいことでもないと思うのであります」
「凄いやつだよ!?」
笑い声がこだました。
……クラスに馴染めたようでなにより、かな。
やっぱり転校生という存在は、好奇心あふれる僕らみたいな世代の子にはとても興味のある存在なんだろう。
現に、僕も気になる。
「……話は終わりましたか?もうすぐ授業ですから席についてください」
「先生いたんだ!」
「いましたよ。空気を詠んで潜伏してましたが」
「ウケる」
「ウケないでください」
チリンチリンとベルが鳴り、授業の時間に本格的に入る。
先生は名簿を見てから明瑠の方を見た。
「鳴海さんが噂の転校生ですね。国語はどこまで?」
「羅生門は終わりました!」
「教科書が違うようですね。この辺りでは羅生門の次は『二十円のありがたみ』になっています」
「塔助が見せてくれるそうなので多分大丈夫であります」
先生はそのようですね、と笑うと授業に突入した。
ちらりと横をみると、明瑠は授業には集中せずに、先に物語を読んでいる。
転校生ってのはそういうのが不便だよなぁ。途中まで頑張ったのに転校したらまた一からなんだから。
「ふむ……ふむん……む……zzz」
寝たッ!?
ちょちょちょ、速すぎない!?転校初日で!?
指先で頰を突くと、ぷにと柔らかな感触が返ってくる。起きる気配はない。
柔らけー……あいや、そうじゃない。起こさねば。
「明瑠、明瑠」
「ふにゃ?なんでありますか?」
「えっとね……あとで、紹介したい人がいるんだ」
「紹介したいひと……?」
そう、紹介したい人。
無関心、無頓着……無感情のね。