小説の林堂 二次創作 小説「キノの旅」   作:イバ・ヨシアキ

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 今回はシズ様と陸のみとなっています。
 ティーがまだ登場する前に書いた作品でしたが、うまくそこの部分を書こうかなと思いましたが、自然な感じで出す方がいいと思い、若干の手直しで出させていただきました。
 楽しんでいただけたら幸いです。
 では、最後までお付き合いお願いいたします。



 「小さな国」

 

 小さな国 

 

 ──A small country──

 

 私の名前は陸と言う。

 人間ではない。

 これでも私はれっきとした犬である。ふさふさの毛を生やした犬である。

 顔つきはいつも楽しそうに笑っていると思われがちだが、これは生まれつきであって、別に何かがおかしいわけでも、何かが楽しいわけでもない。

ごくごく普通の顔だ。

 それと、この世界には犬が喋ることがおかしいとありえないと言う者があまりにも多いが、私は別にそれをおかしいとは思っていない。

現に、だ。

 この広い世界には、小うるさいほどにお喋りで、いけすかないモトラド(注意・二輪車の事をさす言葉)だっているのだから、別に私が喋っても大しておかしい理由にはならないだろう。

 ……あのいけすかないモトラドの事をこれ以上思い出すのはいやなので、そろそろ本題に入りたいと思う。

 私は今、主人と旅をしている。

 私の主人の名前は、シズ様と言う。

 鍛え上げられた身体の下に、緑色の長袖セーターをいつも着ている。性格は穏やかで気の優しい青年だ。またシズ様は刀の使い手で、ハンド・パースエイダー(注意・拳銃の事をさす言葉)が、主な武器として扱われているこの世界において、刀で平然と渡ってきた、つわものでもある。

 私が知る限り、シズ様が負けたのは一回だけしか知らない。

 たいていの事では負けなどはしない、とても強い方だ。

 それでいて優しい方でもある。

 私はそんなシズ様を心から尊敬している。

 以前、シズ様には人生をかけて、どうしても果たさなければいけない目的があったが、とある理由でその目的と祖国を失ってしまう。

 だがすぐに新しい目的はできた。

 どこか移住の出来る国に行き、生きなおしてみようと、シズ様は提案を出された。

 無論、私はその提案に賛成し、シズ様と生きなおすことに決めた。

そしてシズ様と私は、どこかに安心して暮らせる移住できる国がないかと探し、この広い世界を巡って行った。

 道中、確かに移住できそうな国々はたくさんあったが、そうでない国の方が圧倒的に多かった。その国の抱える問題や権力者の気まぐれや法律や風習など、その他の移住の認められない理由は沢山あった。

 移住できそうな国は移住できても何らかの問題が発生し、またいられない危険な事情などが当たり前のように存在し、結果として離れることが多い。

 いまだにどこかで根を下ろすことはできてはいないが、別に私とシズ様は慌ててなどはいない。

 この広い世界だ。いずれ、どこかに落ち着ける国がある筈だ。別に慌てて移住する必要もない。本当の意味で落ち着ける国を見つけることが、私たちの今の目標なのだから。

 今日も、移住ができそうな国を目指して、シズ様と私は旅をしている。

 無論、私たちは徒歩で旅などはしてはいない。

 旅人の中には徒歩で旅をする者も少なからずいるが、大抵は乗り物に乗って旅をしている。

 乗り物も様々だが、私たちは古い軍用のバギーに乗って旅をしている。

 バギーはどんな悪路でも走り進むことができる乗り物で、当然だが私は犬のため運転することができないため、バギーの操縦はシズ様が行い、私は助手席に座り、世界を巡っていた。

 以前、移住を断られた国から、数日後のある日のことだ。

 西に移住者を募集している大きな国があるとの情報を聴き、私とシズ様は、その西にある国へと向かおうと平原を走っていた。

 何故、多くの移住者を受け入れてくれているのかはわからないが、もし、その国で移住の許可が下りたらならと、希望を持ってシズ様はバギーを走らせていた。

 野宿で数日過ごし、そろそろだろうかと何もない平原を走っていると、目当ての国ではなく、私たちは変な建物を見つけてしまった。

 薄いベニヤの木の板で四方を取り囲んだ変な建物が、広々とした平原の真ん中にぽつんと立っていたのだ。

 シズ様は、

「? あれは何だ?」

 シズ様の疑問を浮かべられるのも無理がない。

 私もあれが何かは解らないのだ。

 一見すれば何か砦のように見えるが、砦ならもっとしっかりした作りのはずだ。

 分厚く丸太で四方を囲む壁を作り壁の先端部分は鋭くとがらせる砦を、私たちは旅先でいくつか見たことがある。

 大抵は戦争中の簡易式の砦や、または盗賊のねぐらなどと、その用途は多い。

 だがあれは、そんな強固な造りとはとてもかけ離れており、まるで治安の良い国にある昔ながらの木造りの塀のような、そんな簡単なものだった。

 バギーの速度を緩め、傍に寄ってみる。

 見れば、牧場ほどの広さをもった塀がぐるっと四方を取り囲み、野犬や他の野生動物が容易に侵入できないようなしっかりとした造りではあるが、これがどこかの国の中にあれば、それはごく当たり前の建物だろう。

 でも、ここは法律の存在しない外だ。

 とてもじゃないが、これではあまりにも不用心としか思えない。

 私は、

「誰か住んでいるのでしょうか?」

 と、当然誰もが思うだろうと言葉でシズ様に訪ねてみた。

「とりあえず入口を探してみるか」

 シズ様はバギーをゆっくりと走らせながら塀ぞいに進み、ちょうど塀が切れた曲がりかどが見え、曲がってみるとそこに門らしき入口が見えた。

 それはあえて城門と言えばいいのだろうか、確かに大きな門ではあるが、国々にある城門とは違い塀と同じ薄い木で造られた、簡単な扉だった。

 やはり誰かが住んでいるのだろうか。

 でも、なんでこんなところに住んでいるのだろうか。

 私とシズ様がそんな疑問を沸かしている中で、

「とりあえず入ってみるか」

 シズ様はバギーを停め、扉へと歩んでいく。

 無論、刀を忘れずに腰に提げて入口へと向かって行った。

 私もその後に続き、入口の前へと立つ。

 その気になれば、シズ様の刀で切り裂くことの容易な扉。いや、バギーでぶつかるだけでも壊せそうなほどに、その扉はもろく見えた。

「どうすればいいかな、声でもかけてみるか」

 呼び鈴らしきものもなく、入国をする際にあるだろう詰所も見当たらない。

 私は、

「それしかありませんかね」

 と、言葉を返すしかなかった。

 シズ様は息を吸い、

「すいません! どなたかいらっしゃいますか?」

 と、声を上げ訪ねられた。

 シズ様の声が響き、しんっと場が静かになると、

「はぁーい」

 何とも間の抜けた声が響く。

 声から察するに若い青年のような声だ。

 その声の後に、城門らしきドアが音もなく開き、

「あ、いらっしゃい」

 私たちを見るなり、人あたりの良さそうな青年が話しかけてくる。

 労働で鍛え上げられただろう、たくましい身体に汚れて破けてもいいようなシャツにズボンに長靴を身につけ、首にはタオルを巻き、麦わら帽をかぶっていた。

今まで農作業をしていたような格好をしていた青年は、

「ようこそ我が国へ! 私が国王のロベーツです!」

 聴き間違えることのない、はっきりとした声で青年もといロベーツ国王は、そう私たちに名乗りを上げた。

 

 その後は、思いのほかすんなりと入国は許可された。

 いや、これをあえて入国と言ってよいものかどうかは良く解らないが、まあ、国王と名乗る人が入国を認めれば、それはそれで許可が下りたということなのだろう。

 私たちはそのまま入国しようかどうか一応に悩んだが、シズ様はせっかくの招待を断るのは無礼だと言い、ロベーツ国王が納める国へと入国した。

 バギーを国内に乗り入れ、国王の定めた指定のところに停め、その後は大した事もせずに入国は許可されてしまった。

 国は、どのような国と言えばいいのか。

 しいて言えば、その国は誰もいなかった。

 そう、国王以外の人がまるで見当たらなかった。

 国民の姿はなく、他の人が住んでいそうな建物も無く、ただ広い土地と幾つもの畑と雨水をためておくための巨大なタンクと、家畜が住まう納屋とキャンピング用の車が置いてあるだけで、その他の建物らしいものはまるでなく、他の人もまるで見えない、そんな国だった。

 あえて居るとするなら、放牧されている牛や馬、豚に羊などの家畜ぐらいだろうか。

 この国をより分かりやすく言えば、ただの牧場だった。

 では、国民がいなければ、この国の城壁でもある、この四方を囲う板は、すべてロベーツ国王が自ら建てたものなのだろうか。

 あの畑も国王が自ら、手を汚し、汗を流し、泥にまみれ、土を耕し、作ったものと言うことになる。

 ならば相当苦労して、この国を建国したということになる。

 いわばこの国は、この若き国王の手作りの国と言うことらしい。

 まさか西にある移住者を募集している国とは、このことだったのだろうか。

 正直、この国に移住を申請するかどうかは、シズ様の決断によるものだ。

 私の意思は関係ない。

 もしシズ様がこの国に移住をするという決断をされたのなら、私はそれに素直に従うが、シズ様もそのことを心配されているのか、どこか表情が暗い。

 そんな心配を胸に沸かしている私とシズ様を他所に、若き国王は、私たちが来たことを心から感激し、

「いやぁ、この国に旅人が来るなんて思いもしなかった。ようこそ我が国へ!」

 笑顔の青年の案内のまま、シズ様は国内もとい空き地を歩き、キャンピングカーへと向かって行く。

 私も、その後をついていく。

 道は一応に固められていたが、どこをどう歩いても迷いようがないこの小さな国で道は必要なのかとは思うが、一応青年の後に続く様に歩いているシズ様は、

「……この国は、あなたしかいないのですか?」

 先程からどうしても訪ねたかったことを訪ねてくれた。

 国王は、

「ええ、私が生まれた西にある国から出て、この国を建国してもう3年にはなりますが、訪ねて来てくれたのは、旅人さんが初めてですよ」

 機嫌良く、そう返答をしてくれた。

 どうやらこの国は、目当ての国ではないらしい。

 国王の説明から解釈すれば、また西には、ちゃんとした国があるみたいだ。

 少し安心されたのかシズ様はほっとした顔をし、私もどこか安心していた。

 もし目当ての国が、この国なら、正直困っていたところだ。

 そんな私たちの不安を他所に、いつの間にかキャンピングカーの前に到着した。

 キャンピングカーの前には、椅子が二つとテーブルが置かれ、日よけの大きな傘が地面に刺さっていた。

 国王は、

「ようこそ私の城に、そこに座っておいてください。飲み物でも持ってきましょう」

 と、キャンピングカーの中へと入って行く。

 シズ様は国王戻って来るまで立ってその場を過ごされた。

 私も、まての姿勢で国王の帰りを待っていた。

「いやぁ、おまたせしました」

 国王がコップ二つとお椀と何か飲み物が入っているだろうビンを持ち、テーブルへと戻ってくる。

「さあさあ、遠慮せずに座ってください」

 戻ってきた国王に勧められ、シズ様は腰を下ろされた。

 私もシズ様の足元に腰を下ろし、伏せの姿勢でくつろいだ。

 無論、いつでも動けるように警戒は解いてはいない。シズ様も同じように腰の刀を立て掛けはせず、いつでも抜刀できる状態にしていた。

 国王はそのことに気づいていないのか、自らの手でビンに入った飲み物をコップに注ぎ、シズ様に出し、私の分は、お椀に注いでくれた。

 鼻でにおいを嗅いだが、毒や何かが入っている様子は無い。何か甘い果実のにおいがするが、その果実のにおいが何であるのかが私には解らなかった。

「自家製の果実のジュースです。どうぞ遠慮なく」

 そう言いながら国王はごくごくと飲み、それを確認してからシズ様も口につけ、私も飲み始めた。

 味は正直複雑だが、飲めない味ではない。

「どうです? おいしいでしょう?」

 笑顔で尋ねてくる国王に、

「ええ、とても美味しいです」

 シズ様は当たり障りのない言葉で返事を返した。

 私は何も言わず、その後の様子を見守る。

「そうでしょう。そうでしょう。これは私の国の名物ですからね」

 自慢げに国王が言う。

 どうやら畑で栽培している果実で造ったらしいが、私が見たことのない果実だった。

 シズ様はこの果実の名前を聞く前に、

「で、旅人さん。どうでしょう、私の国に移住する気はありませんか?」

 国王は、いきなりそんな事を訪ねてきた。

 脈荒くもなく、あえて触れないでおいた話題だったため、シズ様は、

「……その前に国王陛下に是非お尋ねしたいことがいくつかあるのですが。ご質問をしてよろしいでしょうか?」

「ええ、どうぞどうぞ。私に答えることができることならなんなりと」

 シズ様は注がれたジュースをもう一口飲み、喉を潤してから、

「この国の建国の経緯をお教えくださいませんか」

 誰しも疑問に思うだろうことを尋ねられた。

 確かに、こんな平原の真ん中に国があるとは誰しもが思いもしないし、またこんな何もない、不便な平地の真ん中に建国しようとは思わないだろう。

 国王は、

「いいでしょう。私の国の歴史をぜひ聞いてください」

 と、どこか自慢げに国王は語りだした。

「まず、私が生まれ住んでいた国は、それはそれは平和な国でした」

 思い出すように呟き語る国王は、

「建国以来大きな戦争もなく、疫病も災害もなく、貧富の差や身分による差別もありませんでした。治安も良く、事件らしいことはめったに起きませんし、まだ他国との戦争もしたことがありません。まあこれと言って特徴のある国でもありませんね」 

 特徴が無いと言うが、私は、その平和こそが一番の特徴だと思う。それが特徴と思えないのは、その国で生まれ育ったからこそ、思えることではないだろうか。

 シズ様は、その話を聞いていったいどのように思われているのかは解らないが、何も言わずに話を聞かれていた。

「まあ、平凡な国で退屈な国でしたが、とりあえずは良い国でしたよ。私もこの国を、あんな国にしたいものです」

「……では、なぜ、そんな住みやすく良い国から出て行かれ、この何もない平地に国を建国されたのですか?」

 シズ様は意を決して、この国の核心に触れられた。

 もしこの国王がその国で何か居られなくなるようなことをしていたのなら、この国に立ち寄った経緯に気をつけなければいけない。

 無論、シズ様もそのことを見越しての質問なのだろう。

「それは簡単ですよ」

 国王は、

「私は王様になりたかったんです」

 笑顔でシズ様の質問に、あっさりと答えた。

 あっさりと、ごく自然に答えた。

 その答えが嘘ではないかと思うこともできない程に、当たり前のことのように国王は言ってのけた。

 シズ様が何も言わなかったので国王は後を続け、

「私のもといた国はしっかりとした民主主義で、国王による王制はではなく、大統領を決める選挙制で、私がどう頑張っても王様になることはできませんでした」

「その……では、大統領になろうとは思われなかったのですか?」

 シズ様は調子を戻すように訪ねなおすが、

「いえいえ。私は大統領ではなく、王様になりたかったんですよ」

 国王は凛とした声でそう言葉を返し、

「それに大統領は任期が決まっていて、たとえなれたにしても任期が終われば国を治めることができなくなってしまいます。それでは駄目なんです。私は王様になりたいんです。王様になって生涯を終えていのです」

「なぜ、そこまでして王様になりたかったのですか?」

 シズ様が訪ねると、

「それは私が子どものころから王様になって私が思う国を作りたかったんです。自分の思う国を作り、自分の思う法律を作り、自分の思う歴史を作る。そして王様のままで生涯を終える。男ならだれもが思う夢じゃないですか」

 果たしてそうだろうかと私は思うが、そんな事を思ったところでどうしようもないので、ただ国王の熱の入ったその話を聞くことにした。

「童話や歴史の本を見るたびに、私は王様になりたかったです。宝石をちりばめた金色の王冠をつけ、同じように金と宝石で刺繍された豪華な服を着て、大きなお城に住む王様にどうしてもなりたかった! でも私の国では絶対、王様になることはできない。確かに私も大統領になって王制の樹立を宣言すればいいと思いましたが、それではあまりにも長い時間がかかってしまう。私は早く王様になりたかったんです。だから生まれ故郷を捨て、命をかけて、この無法な平原に私は国を建国し、私は初代国王になったんです」

 満足したように国王は、演説で疲れた喉を潤す為にジュースを飲み、

「旅人さんも、そんな夢がありませんでしたか?」

 認められたくシズ様に訪ねてこられる。

 確かに、シズ様の人生にも確たる、それこそ命をかけた目標が確かにあったが、その目標はすでに失われてしまった。

 でも、新たな目標がシズ様にはある。

 どこかで移住のできる国を探し、新しい人生を得ること。

 それがシズ様の今の目標だ。

「……ええ、私にも夢がありました。あなたの気持ちは良く解ります」

 だからこそ、シズ様はそうしっかりと答えられた。

「じゃあ、この国の国民になってください」

 国王はすがるような声で、シズ様にそう言われた。国王自らの要望に、シズ様は困った顔をされたが、

「あなたが私の国に訪れた最初の一人なんです。やっと来てくれたのも何かの縁です。どうかぜひ、私の国の国民第一号になってください。いまならあなたを大臣にしてもいい。いや宰相でも構わないですよ。あなたの望む地位を王様以外なら全て与えましょう。国王である私の権限でね」

 そんな事もかまわずに国王が一心にすがりながら、シズ様に移民を進めてくる。正直、シズ様は困惑されていた。

 どう返事をすればいいのか迷っている表情をされていた。

 この国王は決して悪い人ではないかもしれないが、素直に「はい」と返事をするべきなのかどうかの判断はとても難しいと思う。

 まして、王様の次に偉い立場を、故郷で、あのいきさつがあったシズ様が望まれる筈もないが、でももし、シズ様がこの国に移住すると決めたのなら、私はその思いに従うまでだ。

「……残念ですが、私にもあなたと同じように目標があるので、その申し出を受けるわけにはいきません。謹んで辞退させていただきます」

 頭を下げ、丁寧に断れるシズ様を私は誇らしく思う。

「そうですか……それは残念です」

 国王はとても残念そうに、そう呟いた。

 その後はこれ以上の長いも無礼なので、早々に立ち去ることにした。

 再び城門へと歩いていき、私もその後に続いていく。シズ様がバギーに乗り、私は助手席に乗る。エンジンがかかり、出国しようとした時、

「あ、せめてこれを持っていってください」

 と、袋にたくさん入った保存のきく干し肉や鳥の燻製がたくさん入っていた。

 保存食としては申し分のない贈り物だった。

「私の国に来たせめてもの記念です。おみやげにどうぞ」

 国王はそう言い、笑顔で門を開けてくれた。

「立ち寄ってくださって本当にありがとうございます。また寄ってください」

「ええ、またこの近くを通ったのなら是非に」

「その時はもっとこの国を大きくして見せますよ」

 笑顔で見送ってくれる国王を後に、私たちは出国した。

 国王はいつまでも私たちを見送ってくれていた。

 平原を走り進み、しばらくしてから──

 

「もし、どこにも私を受け入れてくれる国が無ければ、ああやって自分で国を作るのもいいかもしれないな」

「まだ、その決断をされるのは少し早いと思われますが」

「はは、冗談さ……たぶん大丈夫だろう」

「シズ様……」

「とりあえず今の目的である西にある国に行ってみよう。そこで落ち着けるなら、それで越したことは無いからな」

「そうですね」

 私が返答を返した後、シズ様はバギーの速度を上げ、西へと向かわれた。

 

 

 ──はたしてそこがシズ様の安住の地となるかどうかは、犬である私には解らない。

 だが、もし、そこで落ちつくことができるのならと、私は切にそう願う。

 

 小さな国 end

 




 いかがでしたか?
 陸の語りで始まる表現に注意して書いてみました。
 陸の喋り方や、語り方や、想いの持ち方など注意すべき部分が多く、大変でしたが、うまく表現できたらなと思います。

 最後まで読んでくださった方々様。
 ありがとうございました。
 ご意見、ご感想随時募集中です。
 ありがとうございました。
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