ワーク田村   作:Monster ohige

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第4話

田村は3台所有している内1台の街乗り仕様の方のAE86スプリンタートレノで川沿いの土手を駆ける。

10月も半ば、窓から入ってくる風が気持ちいい。

川に架かる橋のアンダーパスをくぐり抜け、合流部へ。

5速から2速まで丁寧にヒール&トゥを駆使し、シフトダウンし速度を一度落とす。

一時停止看板を無視し前方と後方を確認2000rpm、スピードは25km/hから一気にアクセルペダルを踏み込む。

ライトチューン仕様の為、強烈ではないが気持ち良くレヴリミットの8200rpmまで回る。

米国製の最新式ECUで完璧に制御されていてどこから踏んでもボコついたりせずに加速できる。

レヴリミットがノーマルより引き上げられているのでノーマルのタコメーターではスケールが少し足りなくなっているので、ステアリングコラムの上にはステッピングモーター駆動の11000スケールの後付けのタコメーターが追加されている。

大径のレヴ・インジゲータ付きだ。

そのインジゲータが赤く光り、8000rpmを超えた事を田村に知らせる。

クラッチペダルを一気に底まで踏み込み、3速へシフトアップ。間髪入れずにクラッチペダルを離し、アクセルペダルを再び踏み込む。

年々クルマ高性能化が進む中、決して速くは無い加速だが、田村はこの瞬間が好きであった。

サーキットでは最速を目指しているが、アジのあるクルマも愛している。

しばらく走り、土手沿いにある1件のクルマ屋に入る。

浅田自動車、田村が通うチューニング・ショップだ。

親子2代でやってる古くから有るショップだ。

特に親父の方はAE86が得意で田村は世話になっている。

息子は最新の制御システムやそれらのセッティングを得意としている。

今乗ってきたAE86もこの親子に仕上げてもらったクルマだ。

工場入り口のシャッターは開いており、中には田村のサーキット走行、レース用のAE86が2柱リフトに載せられている。

その下では浅田のオヤジがエンジンオイルを抜いている。

「よう、コレいいオイルだなもう一回交換しないで練習行けたな」

最近浅田自動車はメインに使うオイルメーカーを変えたところだ。

「お疲れ、そりゃ良いや、ところで親父っさん来週の定休日に練習行こうと思ってるんやけど付き合ってくれるかい?」

来月の最初の日曜にレースを控えているのだ。

「もちろんだ、行くよ」

田村は岡山の美作国際サーキットや三重の無限国際サーキットで行われるバトルレヴォリューションというレースシリーズのAE86ワンメイクに参加している。

その中にもクラス分けがあり一番改造範囲の広いアンリミテッドクラスにエントリーしている。

車両の大まかなレギュレーションは

・4点式以上のハーネスが装着されていること

・6点式以上のロールケージが装着されていること

・消火器の搭載

と安全面にはある程度の縛りがあるが、

・エアロパーツ含め車両の全幅は2100mm以下とする

・駆動方式はFRとする

・エンジンは自然吸気であること。スワップはOKだが排気量は3800cc以下、シリンダー数は6以下

・変速機の段数、方式は自由だが後退ギアを備えていること

・A~Bピラー、フロアはオリジナルのモノコック使用すること

・最低車両重量は700kg

・タイヤは指定する3メーカーのセミスリックタイヤ、雨天時はレインタイヤ、サイズについては幅は300mm以下、外径640mm以下なら自由とする

というかなり改造範囲が広い。

そのレギュレーションに対し田村のマシンは。

 

フロントバルクヘッドから前は完全パイプフレーム。

フロントサスペンションはマクファーソン・ストラット方式からダヴル・ウィッシュボーン方式に。

高剛性化、サスペンションの高性能化がされている。

ブレーキ・システムはフロントが対向6ポッドキャリパー、リアで対向4ポッドキャリパーが装備され、フロント、リア共に2ピースフローティングディスクが組み合わされる。

キャビン内はフル溶接留めの21点式のロールケージが張り巡らされ、ドライバーを強固に保護し、剛性も大幅に向上させている。

勿論フロントと後述のリアのパイプフレームとも繋がっている。

リアもフロントと同様、レギュレーションで決まっている所までオリジナルのモノコックを残し、パイプフレーム化、サスペンションも車軸式からダヴル・ウィッシュボーン方式に。

外から見えるピラー以外の外装は全てドライ・カーボン製だ。

幅広のタイヤをカヴァーする為、レーシング・ワイドボデーカウルを装着している。

フロントはレギューレーション一杯一杯の幅2100mmのアンダーパネルから始まり、フルフラットボトム、リアディフューザと空力も抜かり無い。

リアウイングも幅2000mmの大型ダブルフラップタイプだ。

2段目のフラップはサーボモーターにより可変し、ステアリングに付いているスウィッチで操作し、コーナリングやブレーキングでダウンフォースが欲しい時は立て、ロングストレートでドラッグ(空気抵抗)を少なくしたい時には寝かせる事ができる。

強大なダウンフォースを発生する為、パイプフレームにリジットマウントされる。

エンジンは3800cc、6気筒まで許されているが、田村はパワーは欲しいがフロントヘヴィーになるのを嫌いオリジナルと同じく直列4気筒を選んだ。

基礎体力のあるホンダのK24Aをベースにチューニングした。

高回転化の為ヘッド動弁系は同型スペックRの物を流用。

米国製ボア&ストロークアップキットを使用し、標準のボア×ストローク 87×99mmから90×106mmにアップされ、排気量は2400ccから2700ccまで引き上げられている。

クロスレシオなミッションによりパワーバンドをほとんど外さない為、元々付いているワイドなトルク、パワーバンドが売りの可変バルブリフト&タイミング機構はキャンセルされている。

動弁系のフリクション低減にもつながっている。

バルブとコンロッドは超軽量チタン製で高回転に対応させている。

圧縮比は15に迫り、レース用超ハイオクタンガソリン仕様になっている。

このハードチューンドエンジンは街乗り仕様に付けてるのと同じメーカーのECU、フルマネジメントシステムで制御され実馬力で410馬力を9100rpmで発生し、レヴリミットは1万rpmに設定されている。

スロットルは4連独立電子スロットル。

排気はフルチタン。

4-1集合のエキゾースト・マニホールドから出口までフルストレートパイプ。

出口にはエンジン破損時の破片飛散防止の厚さ10mmの触媒が付けられている。

出口はリアディフューザーの上のセンターだ。

ドライサンプ化され、エンジンはギリギリまで低く、そして後ろにマウントされている。

組み合わされるトランス・ミッションは7速シーケンシャルギアボックス。

ギアレシオは

1速3,1

2速2,47

3速2,0

4速1,7

5速1,44

6速1,22

7速1,08

と多段を生かしたワイドレンジかつクロスレシオだ。

全開アタック時に7500rpmを割る事は無い。

ギアチェンジはステアリングに付いているパドルで行う。

高出力サーボモーターがIパターンのレヴァーを前後させる。

Iパターン・レヴァーでもシフト操作は可能だ。

ECUと連動しておりアクセル全開のままクラッチ操作も無しにシフトアップが出来る。

シフトダウンもまたクラッチ操作、ヒール&トゥの必要はない。

ECUが電子スロットルをコントロール、ブリッピングをオートマティックに行うのでかなり少ないショックでシフトダウンができる。

超ハイレスポンスな電子スロットルと高い能力を持つECUによる死角の無いエンジンコントロールとシフトコントロールだ。

実質クラッチペダルを操作するのは発進、停止時のみだ。

その為、ブレーキペダルはやや横長のペダルになっており、このマシンでは田村は左足でブレーキを踏む。

街乗り仕様とは打って変わり、アナログ式の追加ゲージが並ぶのでは無く、液晶ディジタルマルチディスプレイに情報は集約されている。

エンジン回転数、ギアポジション、水温、油温、油圧は勿論、排気温度と空燃比、負荷の大きいミッションオイル油温、デフオイル油温も表示できる様にしている。

ECUは主に空燃比と排気温度の情報から燃調マップの変更を行い目標空燃比になるように制御している。

タイヤはこのレースでは圧倒的なシェアのメーカーの物を使う。

最大幅300mmまで許されているので前後共300サイズを選ぶ者も多いが田村は最小限の太さのタイヤで性能を引き出して走る事に美学を感じている。

その為の直列4気筒でもある。

リアこそ上限近い290/620R17だがフロントは250/610R16だ。

それぞれ17インチ、16インチサイズの最大である。

田村のライヴァルとなるトップ勢の6気筒のマシン達は前後共300/640R18を履く。

田村のサイズは4本合計になるとそれよりかなり軽く、500馬力オーバーを誇る6気筒勢に対抗するべく、少しでもドラッグを減らそうという意図がある。

それでも6気筒勢にはストレートで劣るがコーナーワークで詰め寄る田村は観客からの注目も高くファンも多い。

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