発売開始から約40年経つAE86、日本国内での台数は年々減り、貴重なクルマとなってきた。
走行距離関係無く相場は発売していた頃の新車価格の6倍を超える様になってきた。
そのAE86をベースに大改造を施した田村のマシンは余裕で伊国製スーパーカーが買えてしまう程の金額が掛かっている。
バトルレヴォリューションAE86アンリミテッドクラスは資金力、マシンスペック、そしてハイスペックなマシンを操るテクニックが問われるクラスだ。
田村はそのやった者勝ち、持った者勝ちのこのレースに惹かれている。
参戦しだして約1年、年間5戦あり田村の優勝はまだ無い。
やはりパワーのある排気量上限一杯の6気筒エンジンのマシンが有利であり田村の最高順位は2位だ。
それでもインフィールド・セクションでのセクション・タイムでは田村の4気筒マシンが上回る事が多々あり、上手く立ち回れば勝てると田村は思っている。
やはり田村にとって肝なのは、なんと言ってもコーナーワークと劣るパワーで如何にストレートスピードを稼ぐかだ。
理想のコーナリングのイメージをしながら田村は自宅のベッドの上で起き上がった。
キングサイズのそれには田村以外にまだ眠りから覚めていない寝息を発てている女がいた。
田村の自宅は市街地からは北の位置する山岳地の始まりにある。
緩い斜面に建てられている田村の家は玄関が2階にある。
洋風モダンスタイルのその家は2階が丸々リビング・ルームとなっている。
日本風に云うと広さ約100畳のそのリビングは半面ガラス張りで徳島を北から南まで貫通しているバイパスが一望できる。
ガラスは電動ブラインド・カーテンで完全遮光もできる様になっている。
玄関から入って手前側がリビングスペースになっており、詰めれば20人は座れるソファーとそれにコの字に囲まれたテーブルがある。
そのコの字が口の字になるような位置に壁があり、その壁には110インチの大画面LEDハイヴィジョンテレビが掛けられている。
ちょうど部屋の真ん中辺りには1階に降りる階段があり、その奥は主に食事に使うスペースだ。
食卓とは別にこちらにも90インチ大画面テレビやテーブル、チェア等が並ぶ。
巨大なアイランド・キッチンには一通りに調理器具が備えられている。
一番奥には1000Lクラスの大型冷蔵庫、収納庫が備えられている。
一階に降り外に繋がるドアを開けると直径7メートルに及ぶ円形のジャグジーが埋め込まれている。
ジャグジー浴槽内には数種類のバブルやジェットが備えられていたり、場所によって深さが違っている。
浴槽横にはシャワースペースもある。
周りはマジック・ミラーで目隠しされている。
電動格納式の屋根も有り、少々の雨天にも対応可だ。
1階は2階程の面積は無く、殆どがベッドルームとなっている。
ベッドルームにも40インチのテレビ、100Lクラスの冷蔵庫が有る。
またシャワールームも有る。
ベッドルームの横はドレッサールームが有り、衣類が収められている。
そしてドレッサールームの照明スイッチを、あるパターンで押すとドレッサールームの床が電動で開き、地下の隠し部屋へと繋がる階段が現れる。
ここまでの豪邸、田村の金で建てられた物では無い。
田村の負傷後すぐ後、国連軍の一斉武力介入により、強制的に武力による極東アジアの治安維持は進んだ。
それにより、民間軍事企業の出る幕は無くなり、仕事は激減した。
田村はそれを受け、「そろそろ普通に働くか」と思い今勤めているアイランド工機(株)に就職した。
しかし政府は田村に自衛軍時代から目を付けていた。
身体能力、戦闘能力が非常に高く、口が堅い。
先の大戦後、日本は色々な機関を民営化した。
警察も漏れなくである。
公営時代より形骸化、汚職がかなり問題となっており様々な犯罪や問題が手付かずになってきていた。
それを良しとしなかった政府は国連軍による極東アジアへの武力での治安維持に習い、その筋に優秀な人間を直接雇い、問題解決に当たらせた。
全国にまだ50人そこそこだが、その内1人が田村だ。
勿論世間的には極秘だ。
警察的な役割以外にも政治的に不都合な不具合が発生した場合にも声がかかる。
近頃では警察にすら手を出す事も増えてきた。
非公式で汚く、危険な仕事の見返りとしてこの豪邸と多額の報酬を田村は受け取っている。
ドレッサールームから繋がる地下の隠し部屋はその仕事道具となる銃器、弾薬や装備品の収納庫となっている。
武器庫の横は100メートルのシューティング・レンジになっており銃の試射、照準器の規正が出来る。
地下にある為、グレネード等の榴弾等を使わない限り外に音が漏れる事は無い。
この様な事情で建った家だ、セキュリティーは完備でセキュリティーAIが侵入者を危険と判断したり襲撃者が訪れた場合はアクティブ・ディフェンスシステムを起動、家の周りに設置されている8つの7,62mm口径の自動機銃で障害の排除を始める。
全ての窓は防弾シャッターが装備され、起動すれば1秒以内に閉じることができるのだ。
田村は上体を起こし明日の行く美作国際サーキットのコースでの走行をイメージトレーニングしていた。
凶器が突然、水気を帯びた暖かみに襲われる。
目覚めた女が田村の凶器を含んだのだ。
女の名は大蔵春子、政府から派遣されている田村の世話役、補佐役だ。
もっともこの名が本名なのかどうかも分からんが、この家での家事や食事、そして「仕事」の準備や作戦行動中の無線等による支援、クルマの手配、運転等が役割でこの家に住み込んでいて田村と共同生活している。
田村と同じく防衛校卒業、自衛軍従軍の経歴を持ち、実戦経験も有るそうだ。
平均的な自衛軍の兵士以上の能力は有るはずだと説明を受けている。
確かに有能だ、つい先程までソのつもりが無かった田村だが、巧みな蛇使いにより凶器は瞬く間に臨戦態勢になった。
春子は無口だとまではいかないが口数は多くない。
特に田村との戦闘時は。
何も言わず上体を起こしていた田村を再び押して寝かし、跨がる。
気は短い様でもう田村の凶器は彼女の密壺に収まった。
田村とは同年代だが、どうやら田村より欲は強いみたく、時間に余裕がある時は強襲されるのが常だ。
田村からは殆どアクションする事なく春子が一方的に攻めまくり、この朝の戦闘は終わった。
「何か軽く作るわ」
部屋着を着けた春子はキッチンに向かった。