416は嫉妬深い 作:まっUk
あれから何時間後か…
少なくとも尿意が我慢できず服の上から漏らしてしまうという屈辱的な行為を一度経験した後、416は帰ってきた。
「ただいま、貴方…あら?大変」
宣言通り、もう、指揮官とは呼んでくれないらしい。
不快感にただただ顔を歪めていると、416は戻ってくるなりそれに気がついた様で、持っていた袋の中からタオルを取り出し、その処理をしてくれた。
「ごめんなさい、貴方、そこまでよく考えてなかったは」
椅子に縛られたまま、手際よくズボンを脱がされタオルで不快な体液を拭き取ってもらう。
とてつもなく恥ずかしい。
人形とはいえ、外見年齢的に10以上離れている女の子。
そんな人形に下の世話をしてもらっているのは、絵面的にアウトだ。
416は下半身を拭き終わると、床に垂れてしまった尿を、壁から伸びていたシャワーヘッドで洗い流す。
床はタイル張りになっており、汚水は部屋の奥にある排水溝へと流れていった。
「仕事で鉄血製の人形を壊した後、掃除がしやすいように水で流せる様になってるの、水をためてあるから無駄遣いしなければシャワーも浴びれるはよ、冷水だけど」
部屋の機能を解説する。
この部屋で一体何体分の鉄血人形の血が流されたのだろう?
想像したくのないので、考えるのをやめた。
ただ、どんな仕事を404がしていたのかは検討がつく。
おそらく分解してのリバースエンジニアリングとか尋問の類いであろう。
俺自身、404部隊の面々を信頼してはいるが、彼女達の全てを知っている訳ではない。
確かに殆んどの場合は俺が彼女達を担当しているが、裏の部隊である性質上、度々、俺よりも上位の権限を持つ指揮官の指揮下に移っていく事があった。
当然、彼女達がそこで何をやっていたかは機密であり知る余地も無い。
もしかしたら、知っているのかもしれないが記憶処理が施されている可能性もある。
まるで半世紀前の映画に出てきた秘密結社みたいだな
「着替えを持ってきていて良かった」
そんな事を考えながら416を見ていると、着替えを取り出し、新しいパンツとズボンを用意し始めた。
どれも俺のタンスから持ってきた物らしく、セキュリティが不安になる。
「履かせてあげるわね」
416は下半身を露出した俺に臆する事なく、清潔な衣服に着せ替え始める。
それが、やっぱりとてつもなく恥ずかしかった。
「貴方、お腹減った?」
服を取り替えたら今度は食べ物。
その手にはチョコレートバーが握られている。
食べ馴れたチョコレートバーの包装を破って、俺の眼前に持ってくる。
「ほらこれどうぞ、はい、あーん」
突きだされたチョコレートバーを言われるがまま食す。
サクサクとした食感と代わり映えの無いチョコの味が俺の味蕾を刺激した。
「ふふっ、まるで貴方を餌付けしているみたい…あっそうだ」
半分程食べ終わった所で何を思ったか、416は残りのチョコレートバーを自分の口に放り込んだ。
彼女も食べたくなったのだろうか?
416は可愛く顎を動かしていたが、10秒程時間がたつと口を見せつける様にパカッと開けた。
彼女の口腔内では唾液と舌の熱でグチョグチョになったチョコレートバーがその存在感を主張している。
口の中で糸を引いており、正直見ていて気持ちの良い物ではない。
「ふぁい、は~ん」
しかし、416はそれを呑み込まずより一層、口の中を誇示し、そんな事を言ってきた。
まさか、これを口移しで?
「冗談だろ?」
この段になって俺は今回、初めて口を開いた。
「は~ん」
どうやら本気らしい。
「はたしのごふぁんはべられはいの?」
途端に顔を曇らせる416。
ここで、彼女の機嫌を損ねてはいけない…。
本能がそう警告を発し、俺も渋々口を開いた。
瞬間、416に両頬をガッチリ掴まれ彼女の小さい口で俺の口は塞がれた。
お互いの歯がカチカチとぶつかる。
二人の口が連結されると同時に、416の舌が軟体動物の様に躍動し、口から口へ唾液とチョコの入り交じったペーストを送り込む。
侵入してくる柔らかな舌とネチョリとした感触。
俺はそれをできるだけ考えないようにして飲み込んだ。
「ぷはっ、良くできました」
内容物の交換が終わると、彼女は満足気に口を離す。
「親鳥の気分が味わえたは」
そう言って、服の裾で口を拭う416。
それは、良かったな
「なぁ、教えてくれ、あれから何時間たったんだ?」
やっと落ち着いて話ができそうな雰囲気になったので疑問をぶつけてみた。
長く感じたが、この部屋には時計もないので実際、どの程度時間が経過したかを確認する術は俺にはない。
「えーっと、そうねぇ、調度、二時間ってとこかしら?」
「なっ!」
416の発言に俺は衝撃を受ける。
たった二時間?
嘘だろう?
まるで、半日にも感じられた。
この、拘束された薄暗い部屋では異様なほどに時間の流れを遅く感じる。
416が俺の精神を壊死させる為、嘘を言っている可能性はあるにしろ、それを否定できる根拠も持ち合わせてははい。
「ねぇ、貴方?」
こちらを覗き込む様に目を合わせる416。
彼女の緑色の二つの目はそんな事はどうでもいいと訴えている。
「何だ?」
「もう、解ってると思うけど、私は貴方の事が好きなの。貴方はずっと気が付かなかったと思うけど…私が何でもしてあげるわ、貴方は何もしなくていいのよ、だから…ここに住んで?」
416の告白。
それだけでなく、行動で…下の世話をして、口移しで食事を与えて、本当に何でもやるという事を示した。
だが、それに特段驚きを感じなかった。
俺も彼女からの好意に気が付かなかった訳ではない。
だが、それを気付いていながら、重いと感じて気づかないフリをし続けた。
416の好意を拒絶する事も、受け入れる事もしなかった。
それが、今になってツケとして、帰ってきている。
それをひしひしと実感した。
俺がHK416という人形を歪ませてしまったのだ。
「選択肢なんてないんだろ?」
「まぁ、そうね」
「解ったって言ったらどうなる?」
「私、うれしい、たとえ本心じゃなくてもそう言ってくれれば…」
「じゃあ、解った」
「本当!?」
「ただしお願いがある、この縄を解いてくれないか?」
「…それはダメよ」
「どうして?絶対に逃げないから」
「信じたい、信じたいわ、でもそれはダメよ、45達がくるまでは絶対」
416はこの拘束を外す事を頑なに拒んでいる。
理由はないんだろう。
只、俺が逃げてしまわないか不安なのだ。
折角、獲物を檻にいれたのだから。
会話が途切れてしまい、しばし、そのまま無言で見つめ合う。
「そんなにじっと見つめないで…」
すると照れたのか、416は赤面し視線を逸らした。
…もしかしたら、これはいけるか?
少なくもこいつは俺の事が好きなのだろう?
ならそれを逆手に取る!
「逸らさないでくれ、416の綺麗な眼を見ていたいんだ」
「綺麗なって…えっ?貴方、何を言ってるの?」
「何って、416、キミの目が綺麗っていう事だ。自分に自信を持って見せてくれよ、縄を解いてくれないならそれ位いいだろ?」
我ながらとてつもなく、気持ちの悪い事を言っているのを自覚しながら、こっちのペースに持っていく。
416はみるみる内にカァッと赤面していった。
よし、いいぞ…。
彼女は昔からとりあえず肯定的な態度をとってあげれば結構、素直になってくれるのだ。
悪く言えば扱いやすい。
皆がM4を中心としたAR小隊ばかりに目をかけるから褒められる…つまりは認められる事に執着している。
だから、偶々、ピックアップしたそのまんまるな二つの瞳を誉めちぎる事にした。
実際、緑色で綺麗だしね。
「や、やめて頂戴、そんなに綺麗だなんて…」
よし、もう一押し
「そんなに照れるなよ、416…キミの目は本当に綺麗だ。」
「本当に?」
「あぁ本当だ」
「羨ましい?」
「羨ましいぞ」
「私も貴方のその眼、好きよ初めて見た時から…」
「光栄だ、416がそんな風に思ってくれてるなんて」
「じゃあ、貴方、これからずっと、ずーっと私の事を見てくれる?」
「あぁ、勿論だ」
「私も貴方をずっと見てる、だから今だけ、目を瞑ってくれる?そしたらその縄、解いてあげるは」
「あぁ!」
俺は強く瞼を閉じた。
連載にした方がいいかな?
亀だけど