「ねぇ...なんで私の事選んでくれたの?」
その暗黙の了解を打ち破ったのは彼女の方からだった。
◇◆◇
日差しの強い朝。まだ夏前だと言うのに朝から太陽は熱く顔を出していた。家の中に居ても朝勉に集中が出来ない。正直俺からしたら大問題な事。
のはずだった。
高校まではずっと朝はパンなどを一つ食べてあとは朝勉、という生活を送っていたが今は違う。朝食はしっかり取って学校に行っている。
と言うかそうさせられている。
「ねぇフー君、今日もあの場所ね」
「はいはい。わざわざ来なくていいんだが。家の方が楽だろ?」
「いつも言ってるけど一緒がいいの。一人で家に居るのも寂しいし」
俺は大学に行って実家を出てきた。お金なら引っ越して生活するくらいならあった。あのバイトでかなりの量を稼いでいたから。今になっては懐かしい。あの騒がしかった日々が。
「ちょっとフー君。ぼーっとしてると危ないわよ」
「あぁ...悪い。ありがとな」
「全く...怪我なんてしないでよね」
「分かってるよ。────二乃」
俺はあの時に二乃を選んだ。いや、選んだんじゃない。決めたんだ。俺はそれを間違いとは思っていない。ただ、心残りはあるのかもしれない。それでも俺は二乃自信に好意を持ち、彼女からの愛情表現を受け止めた。
「ほら、そろそろだ」
「はぁ~もうお別れかぁ」
「放課後にまた会えるだろ。そんな悲しそうな顔すんな」
「分かってるわよ。それじゃあまたね」
そうして俺とは別の道を歩って行く二乃を見る。
俺と二乃は大学は別の所になったが、途中までなら一緒に登校する事が出来るので、分かれ道まで毎日一緒に行っている。
二乃の言うあの場所とは俺の通う大学の近くにある店の事である。二乃の通う大学の方が終わりがこちらより少し早いからそこまで迎えに来てもらってる。態々と思う所が沢山あるのだが...
「正直それも嬉しいから、止めろとは言えないんだよなぁ」
なんだかんだで毎日来てもらってるためあそこはもう一番の常連客になった。あそこは店長店員皆優しい為、待ち合わせというだけで席に座らせてくれる。「愛にとやかく言わない」とか言って許して貰えたのはいい思い出だ。
「そろそろこっちも急がないと遅れる」
そうして俺は小走り気味に通う大学へ向かった。
◇◆◇
~放課後~
俺は講義を受け終えて、帰り支度をしていつものあの場所へ向かっていた。
「あ、フー君!」
「うわぁっ!」
その店に入って直ぐに二乃が抱きついてくる。
「おいっ、まだ店内だぞ。控えろっ」
「今は誰も居ないわよ」
「だとしても店内だ。迷惑になるだろっ」
と口では言いつつも俺は片手で抱きしめ、もう片方の手で頭を撫でている。なんという矛盾した行動。
「ははっ。全くお熱いお客さんだ」
「店長...」
「私達もこれを見てやる気を出していこうか」
「勝手に力の源にしてくな...」
ここの店長ともこんな会話も出来るくらいには仲良くなった。こんな事をしても注意なんてせずに笑って居てくれている。悪い気はしないが、少しは注意した方がいいのでは...
「ほら、帰るぞ」
「はーい」
そしてようやく抱きつきあった状態から普通になった。
「あ、あと店長これ二つ下さい」
「毎日ありがとねぇ。席の事なら別に気にしなくていいんだよ?」
「ははっ。それでも、と言うより普通に欲しいんですよ」
「そうか、ありがとな」
そうして買い物を済ませ2人で家に戻る。二人の家に。
そう。俺達は同居をしている。
◇◆◇
最初は、二人の生活は慣れない事ばかりだったけど、今は何とか分業をして、生活は出来るようになってきている。
とは言ってるが、料理などは全体的に二乃がやってくれているからあまり俺はやっていない。出来ない。前は自分で進んでやっていたが、手間やミスの多さから二乃の方が効率がいいという事でやってもらっている。本当に申し訳がない...
「どう?」
「あぁ、本当に美味い。いつも悪いな」
「謝罪より感謝の方がいいわ」
「...ありがとな」
「ふふっ、どういたしまして」
こんな風に気も使わせてしまっている。
「フー君はいつも私に感謝ばかりしてるけど、これは当たり前の事をしてるのよ」
「.....」
「元はフー君一人の家。住み込んでるのは私の方なんだから」
元々は別の家に住む予定だったが彼女の方から願いがあり、こうしている。否。言い方が悪かった。俺はその事を正直心のどこかで望んでいた。二人で住む事を。
「だから気にしなくていいの」
「そしたら俺の立場が無い」
「フー君は私の永久の家庭教師。そうなってくれるんでしょ?それで十分よ」
「.......」
確かになるとは言ったが仕事量の比率が明らかに俺の方が少いだろうな...。それでも二乃はいいと言っているしこれ以上何も言えないからいいか。
「じゃあ、こういう事でどう?」
「なんの事だ?」
そうして、俺の向かい側に座っていた二乃は俺のすぐ横に座り直してきた。何をするかと思えば腕を組んで肩を寄せてきた。
「毎日甘える」
「言う前から毎日やってたろ」
そんな様な日常を俺は、好きな人と暮らしている。
◇◆◇
「そんなにやってたら疲れちゃうわよ」
後ろから二乃の声が聞こえて来て俺は振り向いた。テストはあまり近くないとはいえ、講義で習ったことを毎日復習していないと忘れてしまうから毎日数時間は勉強している。これでも二乃に言われて、高校の時よりは自習の時間は少ない。
「そうは言ってもやって置かないと点数が落ちるんだよ」
「ほんと勉強好きよねぇ」
「何か教えて欲しい所とかあるのか?」
「いいえ、今は特に無いわ。また何かあったら聞くわ」
時計を見ると11時過ぎ、明日は大学も行かなくていい日だからもう少し遅くまでやっていても問題ない。そうしてまたペンを持とうとした時...
「ねぇフー君」
「うわっ!」
いきなり首元から手が回ってきて二乃の体が寄せられてくる。風呂上がりだったのか甘い香りが凄くしてくる。
「なんだ...」
「今日一緒に寝よ?」
「いや、お前何言ってん──」
「毎日甘える」
「......」
確かにそう言ったが話はまた変わってくる。俺の考えが間違ってなかったら多分それはひとつの布団の中に二人で寝ると言うことだろう。
「はい、これで私はフー君と寝られて、フー君は私と寝られる」
そう言うことだけ言って離れて言ってしまった。全く正気で居られるのか俺は...
そうは言っても時は来る。
俺は今二乃と二人で布団の中で眠っている。
「ほら、もっとこっち来て」
「.......」
「こっちの方がいいから」
俺の胸に顔を埋めている。夜だからまだ涼しいものの暑くないのか?
「それ、寝苦しくないのか?」
「問題ないわ。むしろこうしてた方が良く寝れそう」
「そうですか...」
二乃がいいならいいか。問題は俺の方、これ寝られるのか...
「フー君、大好き」
「......」
あぁ今夜はもう寝れないだろう。
こんな出来ですがちょいちょい投稿して行くので良ければよろしくお願いします。