「ここか」
夜、士郎は霊体化したランサーを連れてルーマニアの伝統的な住居の立ち並ぶ通りへ来ていた。ここでは昨夜、連続殺人事件が起きたのだ。
「ランサー、なんか分かるか?」
「いいや。だが、魂喰いって予想は外れてないと思うぜ」
「そうか」
すでに現場は封鎖されいるため、士郎たちは近くに行って痕跡を探すことしかできない。
「でも、放ってはおけない」
人が聖杯戦争に巻き込まれて殺されているのには違いがなく、士郎がそれを許せるはずもなかった。
「とりあえず、もう一度痕跡を探してーー」
「サーヴァントだ!」
周囲に痕跡がないかもう一度探そうとする士郎にランサーが告げる。
そして、上から矢の雨が降り注いだ。ランサーは槍で矢を弾く。そして、士郎を掴んで建物の影へと跳んだ。
「ごほっ」
士郎は引っ張られた衝撃でむせる。
「どうする、マスター」
ランサーは士郎の事を気にも止めずに矢の飛んできた方を睨んでいた。
「ランサー、あれに接近できるか」
「まあ、なんとかはなるだろうさ。だが、もしもの時はーー」
そこでランサーは士郎の方に振り向いた。
「ああ、宝具を使おう。使うタイミングは任せる」
「了解した。マスター」
マスターの指示を受けてランサーは獰猛な笑みを浮かべた。
フィオレは敵が潜む物陰を建物の上から見下ろす。隣のアーチャーが矢を放ったがそれは敵サーヴァントに防がれてしまった。
「敵も手強いようですね」
「ええ」
アーチャーの言にフィオレも同意する。
「ですが、あの反応速度は異常です。恐らく、何らかの飛び道具に対する耐性があると考えるべきでしょう」
「それではーー」
フィオレの不安そうな声にアーチャーは微笑んだ。
「心配ありません。絶対的な防御でないからこそ槍で防いだのでしょうから、なんとでもやりようはあります。それよりフィオレ、貴女は大丈夫ですか?」
「ええ、こちらも心配ありません。アーチャーが敵サーヴァントを抑えている間に敵マスターを倒して援護に行きます」
フィオレの力強い言葉にアーチャーは頷いた。
「それでは御武運を」
「ええ、御武運を」
そして、フィオレとアーチャーは別れた。
アーチャーは前方を見据える。赤い槍を持った俊足の英霊、クラスはまず間違いなくランサーだろう。アーチャーは矢をつがえ、待ち構えた。ちょうど敵サーヴァント、ランサーが物陰から出てくる。アーチャーは矢を放つ。それをランサーはぎりぎりで避け、獣のように駆けた。その速度は最速のサーヴァントに相応しく、神速である。ランサーはそのまま駆けると勢いをそのままに建物を駆け上がった。そして、ランサーが屋上に降りた瞬間、待ち構えたアーチャーが矢を十数本同時に射出した。