士郎はランサーが駆けて行くのを見守る。いざという時は令呪の使用も考えたが杞憂のようだ。ランサーは矢を物ともせずに突き進んでいく。アーチャーと思わしきサーヴァントの武装は弓であり槍を使うランサーと接近戦をすれば勝ち目はない。つまり、ランサーは近づけさえすれば勝ちなのだ。そしてランサーには矢避けの加護がある。士郎から見てもランサーの勝ちに思えた。
士郎が一人安心のため息をつく。その緊張の隙間を縫うように上から銃撃音が響いた。士郎は咄嗟に剣を数本、投影して盾にする。しかし、弾丸のいくつかは剣を貫いて士郎の体にめり込んだ。
「ぐっ……!」
士郎はすぐに干将・莫耶を投影する。急な宝具の投影で魔術回路に負荷が掛かるがそれは無視した。士郎は襲撃者の方を見る。そこには背中に機械を背負った一人の少女がいた。士郎は剣を三本射出、しかしそれはその機械から伸びるアームに振り払われた。士郎は解析を始める。敵マスターの武器は金属製の触手のようなものであり、武器はマシンガンのような重火器が搭載されている。士郎は読み取った構造を元に作戦を練る。出来れば離れて戦いたかった。弓による狙撃なら敵の有効射程に入る前に迎撃が可能だろう。しかし、この中距離においてあの威力と機動力は絶望的だ。接近戦に持ち込もうにもあの三次元的な動きには追いつけまい。士郎がそう考えていると再び銃撃が再開される。士郎はまたしても剣を投影、今度は背丈ほどの大剣を盾にした。そして大剣に強化を施す。少なくともこれでしばらくは持ちこたえる筈だ。ここで、士郎は敵マスターに勝利する事を諦める。ランサーが勝てば敵マスターも引かない訳にはいかない。故に士郎はこのマスター相手に持久戦をすることにする。ランサーが勝つまでの持久戦だ。士郎は牽制の意味も込めて剣を射出、それはまたしても簡単に弾かれた。そして始まる銃撃、敵マスターの礼装が火を吹いた。士郎は双剣を投擲する。双剣はやはり相手の礼装に阻まれた。しかし、それで双剣は止まらない。左右に弾かれた双剣は引き合うように再び敵マスターに襲い掛かる。敵マスターは虚を突かれ、双剣を防ぐも体勢が崩れた。士郎は脚に強化をかけて一気に詰め寄った。投影したのはあの時のアゾット剣だ。アゾット剣には魔力が満ち満ちている。敵マスターが礼装で士郎を殴りつける。士郎は殴られながらも礼装にアゾット剣を突き刺した。
「セットーー」
士郎は己が師から教わった呪文を唱える。魔力は破壊力に変換されて敵の礼装に罅を入れる。
「がっ……」
士郎は殴られてアスファルトに叩きつけられる。殴られた腹と叩きつけた背中からは血が滴っていた。しかし、敵マスターも己が手足である礼装に傷をつけられ、機動力は大きく低下した。敵マスターはここに来て士郎を難敵であると認識したのだろう。魔力が昂り士郎にプレッシャーをかける。
「ぐっ……」
士郎は魔術回路を無理やり動かして再び双剣を投影する。両者が構え、互いの隙を伺う。
しかし、いきなり敵マスターの戦意が薄れた。どうやら敵サーヴァントから念話が入ったようだ。敵は悔しそうな表情一瞬浮かべると、夜の街へ消えていった。