ドラゴンクエストXI 勇者の名は   作:くしゃみ

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プロローグ

 どす黒い雲が空を覆い尽くし、降り頻る雷雨の中。ユグノア王国に聳え立つ巨大なシンボル、ユグノア城の円卓には燭台に小さな炎が灯され、五人の男が顔を突き合わせていた。皆相当な貴族、或いは王族なのだろう、その出で立ちは豪華絢爛に彩られており、豪奢な円卓に相応しい格好をしている。その誰もが歳を刻み込んだ髭や皺のある顔に険しい表情を浮かべ、外の煩い雨や雷の音とは真逆のように静まり返っていた。

 

 鋭い瞳と勇猛な鷹を象徴していると言わんばかりの髭を蓄えた男が、静寂を破るべく口を開いた。

 

「あの子が、そうなのか……?」

 

 円卓の静寂に垂らされた水滴のような言葉は小さな声ながらも部屋中に響き渡り、全員の視点が声を発した男に向けられる。静寂を破った男はゆっくりと右隣の男へ視点を向ける。まるで、たった今自分が放った問い掛けの答えを、彼に求めるかのように。

 目を向けられた男は、この円卓に着いた五人の中で最も歳をとっているように見えた。優しそうな瞳にハッキリとした力を持ち、問い掛けに答えるように頷く。

 

「あのアザがある。間違いあるまい……」

 

 稲光が窓から強く差し込み、一瞬遅れて凄まじい雷音が響く。けたたましいその音を聞きながら五人の男達はまた静寂の瞬間を迎え、各々が厳しい面持ちで思案を始めた。

 

 

 

 ユグノア城、円卓での静かなる会議が始まる少し前。ユグノア城の小さな一室にも小さな灯りが灯されていた。そこにいるのは落ち着いた色合いながらも気品溢れる服やアクセサリに身を包んだ美しい女性と、彼女の子と思われし産まれたばかりの赤ん坊。女性の腕の中にすっぽり収まっている赤ん坊の左手の甲には、何かの紋章のような「アザ」が見てとれた。

 

「雨、沢山降っているわね。雷、怖い?」

 

 女性は赤ん坊に優しい笑みを浮かべながら話し掛ける。赤ん坊は外の凄まじい雷音など知りもしないかのようにニコニコ笑っていた。それを見て女性もつられてくすくすと笑う。

 

「雷が怖くないなんて、とっても強いのね……お父さんにそっくりよ」

 

 ゆっくりと女性は椅子から立ち上がり、赤ん坊を抱えたまま窓際へ向かった。窓から見える外の景色は、真っ暗な闇と、降り頻る雨。そして恐怖すら覚える稲妻だけだ。

 

「早く、止めばいいわね」

 

 ユグノア城に悲劇が訪れるまで、あと僅か。

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

 空はどす黒い雲が覆い尽くしているというのに、煌々と輝く光。そしてその光を覆い隠すかのような、雲よりも更に黒い煙達。

 真夜中に雷雨の中現れた魔物の軍勢は、荘厳で美しいユグノア城を一瞬にして地獄へと変貌させていた。真っ暗な雲を下から照らさんと言わんばかりの凄まじい炎は城から噴き出しており、ガラガラという何かが崩れ落ちる音は城の石造りの壁が破壊される音だ。城の中では兵士が必死の形相で現れた魔物達と戦っているが、一人また一人と魔物の爪や牙、凶刃に斬り伏せられ倒れていく。

 

 そんな阿鼻叫喚の地獄絵図のユグノア城を背に、雨に隠れて必死に走る影があった。真っ黒なフードを被り、赤ん坊と小さな女の子の手を引いて走る女性。紛れもない、先程城の一室で赤ん坊を抱いていた女性だ。

 その高貴な靴に泥が付くのも気にせず、水溜まりを避けることもせずに一心不乱に走り続ける。その表情はフードでよくは見えないが、真剣そのものであることは間違いが無いだろう。手を引かれて共に逃げている小さな女の子の表情は恐怖にみちており、時たま女性は子どもを安心させようと女の子の方をちらりと覗いていた。

 

 女性の耳が、雷と雨以外の音を捉える。そう、それは例えば……軍馬の蹄が、地面を蹴る音。そしてその音は確かにこちらへ近付いてくる。

 巨大な魔物の馬に乗った首無しの騎士達が、凄まじい速度で女性と子ども達を追いかけて来たのだ。人間の足と、馬の足。このまま走って逃げても、追い付かれるのは火を見るより明らかである。

 女性は咄嗟に茂みの方へ駆け出し、草木に隠れて抱いている赤ん坊を女の子に預けた。何かを、決心したような顔で。

 

「マルティナ、よく聞いて。私は魔物達の囮になって走って逃げるわ。貴方はここに隠れて、魔物達がここを通り過ぎたら、その子を連れて逃げるのよ」

「えっ……!?でも、それじゃあエレノアさまが!」

「私は大丈夫。イレブンを宜しくね」

「…………わかった!」

 

 女性──エレノアはそう言うと、茂みから飛び出し、そのまま全速力で走り去って行った。赤ん坊──イレブンを任されたマルティナは恐怖に震えながらも、イレブンを強く、優しく抱き抱えたまま、姉のような表情で強さを保っている。

 ──そして、馬の嘶きと共に、すぐ側を凄まじい勢いで魔物達が走り去って行った。少しずつ遠くなっていく蹄の音。やがてそれが聞こえなくなったと同時にマルティナは茂みから顔を出し、必死の表情でイレブンを抱えたまま走り出した。心細い、怖い。けれど、この赤ん坊は私が守らなくてはいけない。その確固たる意志を持って、転びそうになりながらも、挫けそうになりながらも、必死に。ただひたすらに走り続けた──

 

 

 ──その時である。すぐ後ろで魔物の馬の、鋭い嘶きが聞こえたのは。

 

 

「──っ!?」

 

 マルティナが思わず後ろを振り返ると、すぐ後ろには赤い瞳をした獰猛な黒い馬と、その馬に跨った首の無い魔物の騎士が追ってきていた。そして魔物は自らの得物を振りかざし、それをマルティナに向かって振り下ろす────

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

 

 そして、夜が明けた。

 先刻までの大雨と雷はなんだったのかと言わんばかりの晴天。幸いにも川が増水して何処かの村が水害の危機に恐れる、といった事態は無かったらしく、デルカコスタ地方の小さな滝のほとりは清らかな水が満ち満ちていた。まるで、何処かの城が魔物の軍勢に襲われて落城してしまったなんて、ただの悪夢でしかなかったかのような清らかさである。

 

 そんな滝のほとりで、一人釣りを楽しむ一人の老人がいた。彼の名はテオ。デルカコスタ地方の辺境に存在する村、イシの村に住むしがない老人である。

 雨上がりで、草木に溜まった雫が落ちる小さな音を楽しみながら、うんともすんとも言わない釣竿を眺めるテオ。その姿はまるで釣りを楽しんでいるというよりは、この一瞬が、この小さな雫の音が、一秒後には過ぎ去りし時となっていることを楽しんでいるようにすら見える。

 

「オギャー」

 

 ふと、雫の音に紛れて声が聞こえた。静かな水辺からは予想もつかない、赤ん坊の泣き声。テオはどこからともなく聞こえてきたその声に驚き、釣竿を持って立ち上がる。そしてその泣き声の主をゆっくりと辺りを見回しながら探し始めた。

 その泣き声の主は、いとも簡単に見つかった。驚くことに泣き声をあげていた赤ん坊は、まるで何処か異国のおとぎ話のように、川上からゆっくりと流れてきたのだ。果実では無く、ゆりかごに揺られて。昨日のあの大雨の中、この川を下ってきたと考えると、今こうして元気に泣いていることがどれ程の奇跡だろうか。

 

「なんと……!赤ん坊がこんなところに……」

 

 テオは驚き、自分が濡れてしまうことも気にせず水の中へ足を踏み入れ、揺りかごの中で泣く赤ん坊を抱き上げた。まだ幼いどころか、この世に生を受けてからまだ数ヶ月も経っていないだろう。

 

「あの嵐の中、無事でおったとは……」

 

 或いは奇跡、或いは神の運命だろうか。何はともあれ赤ん坊は今、テオの腕の中で生きていた。そしてテオの顔を見てピタリと泣きやみ、ニコニコと笑い始めた。なんと強い赤ん坊なのだろうか。テオは思わずつられて笑ってしまい、一度赤ん坊を揺りかごに戻そうとした。そしてその時、揺りかごに小さな手紙のようなものが挟まっているのを見つけた──同時に、赤ん坊の左手の甲に、不思議なアザがあることも。

 テオはその二つを見つけたその瞬間、脳裏にある言い伝えと、それに関する言葉を思い出した。

 

「もしや、この子は……?」

 

 その言葉が、その言い伝えが真実であるとするならば。或いは、この赤ん坊があの嵐の中生きていたことも理解が出来るかもしれない。

 その言葉が、その言い伝えが真実であるとするならば。この赤ん坊は、今ここで命を落としてしまうわけにはいかない。

 

 テオは、この赤ん坊を育てることに決めた。いつか、この子が──彼が、世界を救うことを信じて。

 

「よしよし……一人で心細かったじゃろう?もう心配いらんぞ」

 

 

 

 テオが思い出した言葉、それは──勇者。

 

 

 この赤ん坊は──イレブンは、かつて世界を救い星になったと言われる、伝説の勇者の生まれ変わりである──。

 

 

 

 この広大なる大地、ロトゼタシアに再び勇者が現れるのは、世界に災厄が起きる前触れか、或いはロトゼタシアの全ての命の母である、命の大樹の気まぐれか──




どうでもいい話をさせてください。マジでどうでもいいしオチも無いのでここだけ読まなくてもいいです。

先日、仕事で自分より倍は歳上の営業の方と車に乗って移動することがありまして、まあそんなことは滅多に無いですしめちゃくちゃ上司な訳ですから、私はすごく緊張していました。
そんな私に気を遣ってくれていたのか、上司さんは移動中色んな話を私に振ってくれまして、「ああ、いい上司だなあ」なんて思っていたのです。

そしたら、なんの拍子にだったか忘れたんですが、ドラクエの話になったんですよね。上司さんも8まではプレイしていたようで、それはそれは話が弾みました。
しかし、ここで私に衝撃が走ります。

「君、ビアンカかフローラ。どっち派?」

これ間違えたら雰囲気悪くなるやつだ。

しかし私は正直者なので、自分の好きな方を素直に言うことにしました。そもそもこの上司さんがどっち派なのか解らないし。

「ビアンカ派です」
「おお!君解ってるやん!」

どうやら当たりだったらしいです。ホッと胸を撫で下ろしつつ、この人とは良いお酒が飲めそうだな、と思いました。

「フローラって言っとったら窓から捨ててたわ」

この人と車乗るの怖いなって思いました。
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