いや、凄く良かったんですよ?
序盤からの原作ゲームの再現性の高さも良かったですし、ビアンカ、フローラの嫁選択のシーンも納得でした。
私としては、ゲームばれしてからだって良かったのです。
ユア・ストーリーの意味がここで明らかになって目からうろこの気分に浸れましたし。
でも……
一箇所だけ納得出来ない点が。
それは作り物だからこそのキャラたちの扱い。
人権と言っても良いかもしれません。
だからこそ納得したくてこのお話を書き始めたのです。
永遠の繰り返しの中にいる彼女たちの話を。
では、これより、しばしのお付き合い、宜しくお願いします。
『なぜだ! なぜ仮想現実でしかないこの世界を守ろうとする! こんなことをして貴方にいったいなんの意味があるというのだ!』
意味……
心臓が跳ねた。
光り輝く伝説の剣を握るこぶしにも力が入る。
僕にとっての意味……
そんなことを考える間も、悩む間も無かった。
だけど……
目の前で僕の大切な物をただ壊される、それだけは許すことは出来なかった。
思い出されるのは幼いころの自分。
やっと手に入れた大切な宝物のようなあのソフトを起動させて、そこで出会った様々な人々、モンスター、冒険の数々と……そして……
ビアンカ……
ボクの前で真っ白に画きかえられ、消し去られようとした彼女を思い、失いたくないと心から願う。
そう……
だからこそ僕は剣を取ったのだ。
大切な物を失いたくなかったから。
ただそれだけだったから。
「ドラクエは、僕にとってもうひとつの現実なんだあ! でやああああああああああああっ!!」
アドミニストレータと名乗ったスラリンから与えられた金色の剣。
それが、この世界を葬ろうとする、ミルドラースをそのうちに取り込んだ破壊の化身を刺し貫く。
けたたましい絶叫をあげたその存在は、もがき苦しむかのように身をよじり、そして消えて行った。
戦いは終わった。
あっけなく。
ほんの一瞬にして。
今ならばこの僕のことが良くわかる。
たくさんのモンスターを倒して経験値を稼ぎ、レベルを上げてたくさんの呪文や特技を身に着けた。
ただ、それでも、本来このゲームをクリアーするために必要な装備やレベルを考えればまったく足りてなんかいなかった。
普段の僕であれば行っていたはずのハードなレベリングもしていないし、強力なモンスターを仲間にもしていない。
カジノだって、すごろくだってしていないから当然最強の武器防具だって手にしていない。
でもしかたないのだ。
ここに居る僕は、僕であって僕ではない。
『リュカ』という僕が設定したアバターであり、このゲームの体感度を高めるために、本来は僕の意識が切り離されていた筈だったのだ。
だから、僕が知っていた『最強への道』のチャートを潜ったりもできなかった。
でも、それで良かったのだ。
ここに来た理由は、ドラクエの世界を『疑似』体感する為。
僕という一個人がこの世界でぎりぎりの戦いをして臨場感を得る。
その為だけに意識を切り離してここに来た。
そのことを僕は、『今』、明確に思い出した。
思い出した僕は僕であって、同時にリュカであって、そして、この世界が作られたものであることを知っていて、それでもなお……
守りたかった。
握っていたはずの光の剣が、消えた。
真っ白に変質していた世界にも色が戻り始めた。
世界が広がっていく。
良く見知った……
そして僕が居てはいけない世界が……
「リュカ!!」
立ち尽くす僕の元へと駆け寄ってくるビアンカ。
何もかも元通りであるように見え安堵する。
もう全て終わったと告げると、嬉しそうに微笑んで抱き着いてくる彼女。
僕はそっと彼女を抱きしめた。
世界は救われたんだ……
でも……