ドラゴンクエスト ユア・ストーリー 続   作:こもれび

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第十一話 そして……

 ゴンズの剛腕によって、ゲーム筐体は粉々に粉砕された。

 まだ通電されている関係で、スパークが走り、火花が出て煙も出ているそこから、ゴンズはその大きな腕を引き抜いた。

 そこに、ジャミがゆっくりと近づく。

 

「どうだ? 奴らは死んだのか?」

 

 そう相棒でもあるゴンズに問いかけると、巨大なモンスターはめちゃくちゃになったゲームの箱の底を覗き込んでから言った。

 

「もういねえ」

 

「死んだってのか?」

 

「いや、なんもねえんだ。消えちまった」

 

 とぼけた感じでそう会話している二体へと、今度は大画面に大写しになったままのゲマが声をかけた。

 

『もう良い。多分連中はこちらの世界へと『てれぽーと』したのだろう。そうとなれば、私が仕留めれば良いだけの事よ』

 

 そう事も無げに言ったゲマへと、白色のジャミが問いかけた。

 

「でも、大丈夫ですか、ゲマ様。ゲマ様は万全を期して奴らをこちらの世界と、そちらの世界と両方とも殺してしまおうとおっしゃられていましたが?」

 

 それに、ゲマは薄く笑みを浮かべた。

 

『そのとおりですよ。あくまで万全を期して……ですよ。そのために私は他にも手をすでに打ってあります』

 

「へ? なにかしたんですか?」

 

 とぼけた顔で、ゴンズがそう問えば、ジャミはさも愉快そうに言った。

 

『ええ、やりましたとも。私は、すでに、ラインハットもグランバニアも消し去りましたよ。つまり、どのみちどう足掻こうとも、リュカはこのゲームをクリアできなくなっているということですよ、ほっほっほ』

 

「ぐへへ、そりゃあ完璧だぜ。ぐへへへへ」

 

「流石ゲマ様だ。はははははは」

 

 暫くそのまま笑い続けた二人の部下モンスター。

 その二人へと、ゲマは冷酷な瞳で見据えて言った。

 

『良いですかあなたたち? 今回の事も含めてことは予定通りに進んでいます。だから、万事抜かりなきように』

 

「分かっていますよゲマ様。エビルマウンテンが完全に出現するまで、事を起こすなってことですね」

 

「少なくとも朝までは、街へは攻みませんて。へへへ、分かってますよ。奴らが騒ぎ出すと煩そうですからね。こちらの準備が整うまでは、俺らがしっかり見張ってますよ。ただ……」

 

 そこまで言ったところでジャミはその口角を大きく吊り上げて笑った。

 

「ここをのぞき見するような奴は遠慮なく……」

 

『好きに殺しなさい』

 

 げへげへと、二人の部下モンスターは笑った。

 そして、それを満足げに見たゲマはスクリーンの中で後ろを向く。

 そして独り言ちた。

 

『我々がどんな存在であろうとかまいません。人間を弄ぶこと、人間の恐怖する顔を見て楽しむこと、人間を殺すこと……こんな甘美な快楽を我々はもう知っているのです。全ての人間どもの恐怖をミルドラース様への供物としましょう。さあ、間もなくです。この世界を我々の手で……』

 

 微笑む彼は、そのままゲームシステムに巣食う、ウイルスと同化したミルドラースとコンタクトをとりはじめた。問うのは、あのリュカたちの所在。

 システムと同化した今のミルドラースであれば、この世界に存在するほとんどの物の位置を特定できる。

 その場所を特定出来次第、ゲマは直ちにリュカを殺すことに決めていた。

 

 だが、それは上手くはいかなかった。

 なぜなら……

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 そこは酒場だった。

 

 目を開けた僕の前には大きな木の丸テーブルがあって、その上には酒の注がれた金属製のグラスと、肉や魚の料理の載った皿が置かれていた。

 そのテーブ席には、僕の他には、キョトンとした表情のフローラと、無造作に肉料理を食べ始めたエスタークさんの二人が。

 奥の方を見れば、バニーガール姿のウェイトレスが手にトレイを持って各テーブルへと忙しなく料理や酒の入ったグラスを運んでいた。

 そのテーブルに座っている面々はどんな連中かといえば、斧や剣を帯びた甲冑姿の戦士や兵士、それに魔導書を広げたローブ姿の人も居れば、筋肉質の腕で大きなジョッキを持ち上げている稽古着姿の人もいた。

 その情景に、どうやら目的地に辿り着けた様であるとホッと安堵する。

 それから、現状を思い出して、自分の身体に異常がないか、慌てて確認するも、どうやら特に問題は無いようでホッと一安心。

 

「あの……旦那様? ここはいったい……」

 

 不安そうに僕を見てそう声を出したフローラ。

 まあ、無理もないよね。

 何しろ突然場面転換した上に、何故かこんな店にいたのだもの。

 僕もこれについては多少驚きはしたけどね、まさかこの『店』の中だとは。

 

「ええとね、ここは『ルイーダの酒場』だよ」

 

 僕はそう店名を彼女へと教えてあげた。

 でも、それを聞いても彼女は首を傾げるばかり。

 

「ルイーダの酒場ですか? あのグランバニアの?」

 

「あ、いや、そうじゃなくて……」

 

 彼女へ更に詳しく説明してあげようとしたのだけど、そうしようとしたところで目の端にある階段を誰かが昇って来ていることに気が付いた。

 みしりみしりと木製の階段を踏みしめる音に合わせて、その『黒髪』の人物の姿が徐々に表れてくる。

 僕はその姿を認めて、むしゃむしゃと食事を続けるエスタークさんと不安げなフローラの二人へと向かって言った。

 

「どうやらお目当ての人が出てきたみたいだよ二人とも。これから一気に忙しくなるから覚悟してくれよ」

 

「?」

 

 僕の言葉にやっぱりフローラは小首を傾げていた。

 それから僕とフローラとエスタークさんの三人は立ち上がって、階段を上り切って店内をきょろきょろと見回していた黒髪の彼の元へと歩んだ。

 

 さあて、これから一気に大変になる。

 ゲマたちは多分すぐには動かない。

 現実世界の兵器の存在を危惧していたし、あのビルのエビルマウンテン化もまだ時間がかかりそうだったし。

 となれば、まだほんの少しだけでも時間はある。

 その間に僕らは出来ることをしなければ。

 奴らを倒す為に、僕らに足りない物……

 それをなんとしてでも手にいれなければ。

 

 そう決意をこめつつ、僕は心の内で呟いた。

 

 ビアンカ……もう少しだけ、待ってて……

 

 と。

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