ドラゴンクエスト ユア・ストーリー 続   作:こもれび

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第二十三話 天空城での首脳会議

 天空城へと乗り移った僕達は、天空人達によって用意された広めの会議室へと案内された。

 僕とフローラとエスタークさんで固まってテーブル席の一角に座り、背後の椅子にビアンカとアルスが座る。ゲレゲレも伏せて大人しくそばに控えている。

 上座には人間状態のマスタードラゴン、プサンが腰をかけ、僕たちの対面にはヘンリー達ラインハット国関係者が座り、それに並んで各地の村長や町長たちが席に着いた。

 面々の中にはルドマンさんもいて、背後にはこちらの世界のもう一人のフローラと、アンディらしき長髪のイケメンも控えていた。 

 そのフローラは、僕の隣で楚々として佇んでいるフローラを見て目を丸くしているし、アンディに至っては見た瞬間に顎が外れたのではないかというほどに、大口を開けて驚愕している。ちょっと鼻水も垂れているし、某まんがテイストの顔のせいかせっかくの二枚目が台無しだ。

 まあ、気持ちは分かる。

 同じ人間が二人もいるなんて、普通は受け入れられるわけがないし、そもそもこの世界が自分にとっての現実であるのだろうし、これから先、僕が話す内容だって理解してくれるとは思えない。

 しかし、こうなった以上は理解してもらうしかない。

 もはや、見て見ぬふりをして過ごしていける状況ではなくなってしまったのだから。

 

 この場が設けられる前に、僕はプサンやヘンリーたちへと現状の説明はしてある。

 この世界が作り物でゲームの世界であるということ。

 僕がこの世界を創った側の人間であるということ。

 この世界を冒険していたリュカは僕のアバターであるということ。

 そして、僕が作ったプログラムがきっかけとなって、この世界の住民であったゲマやその手下、モンスターたちが現実世界に出てきてしまい、僕たちの世界もこちらの世界も壊滅の機器を迎えていることを。

 

 ただ、説明はしたが、すんなりと理解できる話では当然ないわけで、ここにいるエスタークさんとフローラが一度肉体を得て現実世界に行ったということも、僕も含めて再度このゲームの世界にやってきたということも、この世界と同様に作られたドラクエⅢの世界で鍛えたということも含めて、全員が首をかしげることになった。

 それでも、なんとか飲み込ませて現状やらなければならないことを伝え、その上でこの場を設けてもらった。

 ともかく全員に現状を飲み込ませるしかないのだ。

 はっきり言って、この事態を引き起こした元凶が僕なわけでそれを想うだけで居たたまれないのだけど、これだけ頑張っているのだから勘弁して欲しいのだけど、許してはくれないよね。

 はあ。

 ともかくこの事態を収束させなければ。

 

 僕のやり方で(○○○○○○)

 

 一同は明らかに訝しい目つきで僕たち三人を見ている中、どう説明したらもっとも簡単に理解してもらえるだろうか、思考を巡らせる。

 そうしていたら、ヘンリーが立ち上がって背筋を伸ばした。

 どうやらこの場の進行は彼が進めてくれるようだ。

 

「全員揃ったな。ではこれよりこの世界が直面している危機について皆に話をしようと思う。知っての通りモンスター達の強襲によって我々はこの天空城へと逃げ込むことになった。なぜこのようなことが急に起こったのか。その理由が、ここにいるリュカ一行の来訪によって明らかとなった。まず全員に伝えなければならない真実がある。心して聞くように」

 

 ヘンリーは一度目を瞑ってから大きく息を吸った。

 そして一同を見回してから発声した。

 

「我々が今いるこの世界は、作り物であるのだそうだ。上位者であるリュカ達によって、この世界、国、街や村、山や湖も、我々も、全て作られた。我々の存在は幻に近いものであるらしい」

 

 ざわりと部屋の空気が震えた。

 卓に着く多くの人が怪訝な顔になり、近くの人と言葉を交わし始めた。

 今いるこの世界が上位者によって作られたものであるということをすんなり受け入れられる人はそうはいないだろう。

 実際、ここに集う人達の多くは、真に受けて焦っているわけではなく、むしろ嘲笑っている感じすらあって、当事者でもあり、視線を向けられている対象になっている僕たちは居たたまれなくて、どんどん居心地が悪くなっていく。ちらと、隣を見れば、しゃんと背を伸ばしたフローラも、腕を組んだままへの字口になっているエスタークさんも、特に同様するでもなく澄ました顔だ。

 どうやら慌てているのは僕だけだ。

 

 このままでは列席の人たちから野次が僕へ集中してしまうだろうということに戦々恐々となっていると、バンと机に手をついたヘンリーがくわっと目を見開いて声を発した。

 

「貴公らは今の話を信じておらぬようだが、私はリュカがもたらしたこの事実は真であると理解した。であるから、そなたらも今後疑うことの無いように」

 

 自信まんまんのヘンリーの言葉に、部屋の空気が一瞬凍る。

 おいおい、そんな説明でみんなが納得できるわけないだろう?

 と、内心焦っていると、案の定、みんながそれぞれヘンリーを糾弾し始めた。

 

「ふざけないでください!」

「そんなの説明でもなんでもありません!」

「言っていいことと悪いことがあります!」

 

 ラインハットの王族が相手であるため、言葉の端々は感情を押さえ込んでいるようだけれど、その面相はいずれも怒りに満ちている。

 そりゃ、仕方ない反応だろうとは思うけど、このままでは話が進まないよ。

 再びヘンリーへと救いの視線を向けてみれば、彼は立ち上がって睥睨し、一喝した。

 

「慌てふためくな! 見苦しい!」

 

「はい!」

 

 と、思わず返事をして背筋を伸ばすと、ヘンリーが訝しい目つきで僕を睨んだ。

 あ、僕の事じゃなかったね。

 思いっきり慌てていたからつい……ね。

 

 静まったその場で彼は口を開いた。

 

「この際、この世界がどうであろうと、創られたものであろうと、本物であろうと偽物であろうとそんなものはどうでも良いのだ。大事なことは、我々が今ここに生きのこっているという現実と、ゲマたち悪に連なる者によってこの世界と、リュカたちの世界の双方が脅かされているということ。そして、そのゲマたちを倒し得る力を、ここに居るリュカたちが持ち合わせているということだ。共に生き残る気があるならば、四の五の言わずに全てを受け入れよ!」

 

「うむ、まったくその通りだな」

 

 大きく頷いたのは、天空人を背後に従えたマスタードラゴン、プサンだった。

 彼は前のめりにテーブルに身を乗り出しつつ、くいとそのメガネを押し上げた。

 

「今が非常時であるということは全員が理解していることであろう。だからこそ理不尽を飲み込まねばならぬ。ヘンリーの申す通りだ。リュカに手段があるのならばそれに縋るしかないのだ。我々にはもはやどうしようも出来ないのだから。

 

 身も蓋もない言い方だけど、二人の言う通りなんだ。

 今この世界にいる人たちがどうあがいても、システムを掌握し、ゲームマシン自体も手にしたゲマたちに対抗する術はこの世界の住民にはない。

 この世界の象徴たるマスタードラゴンの諦観とも思える言葉に一同はがっくりと項垂れることになったが、これで話は一歩進むことになる。

 

 ゲマたちに対抗できる力を手にいれた僕たちが、ここにいるみんなの希望の星となるしかない。

 そしてこの戦いを終わらせなければならない。

 僕の希望に沿う形で。

 

 そのためには、決してあのことを離してはならないのだ。

 

「ヘンリー、いいかな」

 

 僕が小さく手を上げて声を出すと、ちらりとこっちを見たヘンリーが小さく頷いた。

 僕は立ち上がり、不安そうに見上げてくる人たちに向けて声を出した。

 

「初めましての人も、久しぶりの人もいますね。姿は変わっていますが、僕はリュカです。以前ここでゲマたちと戦ったものです」

 

 僕はここに至るまでの話をみんなにした。

 かつて父パパスと世界を旅をしながら勇者を探し、息子アルスが勇者であることを知り、仲間とともにゲマたち一派と戦い、一度は破ったこと。

 そして……

 僕がこの世界をクリアせずに本来の世界へと帰還したことにも触れた。

 現実世界のことを僕は、この世界を創った人たちの世界であり、僕もそちら側の存在であることと、クリエイターの一人であるアドミニストレーター、スラリンと僕の作ったプログラムによって、こちらの世界と現実の世界を行き来できるようになったことと、その技術を用いて復活したゲマたちが現実世界へと現れ戦いを仕掛けようとしていることと、さらに、現実の世界からこちらの世界へと様々な干渉を進めていることも付け加えた。

 つい先ほど、ゲマは、部下であるジャミに僕のアバターを操作させて襲い掛かってきたのだ、それを目撃したみんなからすれば、多少は状況を把握できているようだ。

 しかしやはりというか、ほとんどの人はぽかんと口を開けて僕を眺めているだけだった。

 この世界の外に現実の世界があって、そこと行き来しているだけではなく、この世界の成り立ちそのものが、現実の世界の技術によって作られた架空の存在だなんて、どんなに言葉を重ねても理解するのは難しいに決まっている。

 なにしろ、この世界にプログラムやゲームなんて概念などなく、当然パソコンもないし、プログラマーやエンジニアもいないのだ。

 どのように世界を創ったのかなんて想像もつかない話だ。

 むしろ……実はね、僕たちは神様で、魔法でこの世界を作り上げたんだよ! とか言った方がまだ説得力があるのではないかな。

 ともかく、一通り、説明は終えねばならない。

 

「そういうわけで、僕たちはアドミニストレーターが用意していたもう一つの世界、ドラゴンクエストⅢの世界へと行き、そこでできうる限り自分たちを強化してきたのです」

 

 あの世界をスラリンが用意してくれていてくれて本当に助かったんだ。

 なにしろ、このユアストーリーの世界は今やクリアー寸前の状態でここで一から冒険を始めるにはハードルが高すぎるのだもの。

 ほとんどのクエストが消化ずみの上、重要アイテムの殆どは取得ずみ。さらに、ゲマたちによって多くの街や村や城が滅ぼされているということだし、ここでは本当にどうしようもなかった。

 ドラクエⅢの世界の勇者くんと合流後、最速クリアーを目指して自分を強化していく中で、ゲーム内データとして戦士とされた僕は着々と強くなることが出来た。

 そうは言っても所詮は運動不足のサラリーマンでしかない僕にとって戦闘は本当にきつい。半泣きになりながらケガをしない様に立ち回って、なんとか生きていた。

 まあ、そうは言っても、フローラとエスタークさんが馬鹿みたいに強くなっていったからね、僕はそのおかげで生き残れたわけだ。

 アドミニストレーターが用意してくれた世界は流れている時間がかなり早められていたおかげで、体感で約1年の滞在期間は、現実の世界の時間でおよそ3時間、こちらの世界で約1か月の経過だった。

 この与えられた1年間で、僕たちは出来る限り鍛え、ついにはしんりゅうを倒せるほどになれた。

 

 そして、アドミニストレーターによって与えられた量子ジャンプの能力を持ったラーミアと共に、僕たちはこの世界へとやってきた。

 それぞれが最強の状態となって。

 

 それもこれも、全ては彼女を救いたいがためにね。

 

 それは胸に秘めたままで、一度ビアンカへと視線を向けたあとで、僕はみんなに向き直った。

 

「全てを理解してもらうのは難しいと思います。が、これだけは覚えておいてください。僕たちはゲマたちを倒します。そして、皆さんを救います。だからもう少し頑張りましょう。そして全てを倒した暁にはみんなで力を合わせて新たな街を、国を作りましょう」

 

 僕の言葉にその場のみんなの顔が少しだけほころんだ。

 ただ……

 僕の隣では、フローラが少しだけ困惑した顔に変わっていた。 

  

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