「自分を信じて『夢』を追い続けていれば、夢はいつか必ず叶う!」(D.gray-man×からくりサーカス) 作:チュンチュンお米パラダイス
真夜中、荒涼とした山中の一角の斜面に、石造りの廃墟が連なる虚ろな街。その中でひとりの小さな子供が彷徨っていた。星を散りばめた夜の帳のもとで、青白い三日月が冷たく嘲笑うかのように、その子供を見下ろしていた。フードを目深に被ったその子供は、奇病の為に村の人間達に迫害され、砂と石ばかりの干からびた廃墟の街、マテールに捨てられたのだった。
生まれつきの病で皮膚を侵された醜い子供を、両親はそれでも愛し、守り育ててくれた。だが、両親が流行病で共に亡くなってしまえば、子供を迫害から守るものはない。村人達は村に蔓延しつつある疫病に対する恐れと迷信から、独りになった醜い子供を捕らえ、廃墟に隔離した。
廃墟の合間を歩いていた子供はやがて、壁だけが残った廃屋の石壁に背を預け、膝を抱えて座り込み、満天の夜空を見上げた。子供の見上げる先で、一筋の流星が流れ落ちた。
その姿を、崩れかけの窓から2つの妖しく光る目が覗いていた。
「にんげん……」
マテールから人が去って500年。ずっとずっと、待って待って、待ち続けた。
人影は二本の細い脚で走り寄って、子供の前に立った。
「ぼうや、歌はいかが……?」
冷ややかな月明かりが、二人の姿を写し出す。見下ろすのは、顔の半分が砕かれ片目が剥き出しになった、無残に荒れ果てた人形の少女。これまでにマテールを訪れた人間はこの子供が初めてではない。この廃墟の街に訪れた5人は、同じように"歌はいかが"と聞いた途端、恐れ慄いて彼女を破壊しようとした。
――バケモノ
そう言って彼女を叩きのめした。
この迷い子の少年はどうだろうか。私の姿を見て石をぶつけるだろうか。
「うた?」
少年は少女の方に顔を向ける。その顔は額が歪に盛り上がり、頬は引きつり、片目は瘤の為に塞がれていた。けれど、その目は子供らしい純粋な光に満ち溢れていた。
「僕の為に歌ってくれるの……?」
その顔の両頬が上がり、眼が弓なりに細められた。
「君の歌を聞かせて……!」
初めてのことだった。500年前の在りし日の様に、少女は胸に手を添えて歌いだした。
――かわいいぼうや 愛するぼうや
風に葉っぱが 舞うように
ぼうやのベッドは ひいらりひらり――
少年の片目が見開いた。
――天にまします 神さまよ
この子にひとつ みんなにひとつ
いつかは恵みを くださいますよう――
少年の見開いた眼から、一筋の涙が流れ落ちた。少年の震える唇が呟いた。
「フランシーヌ……?」
その唄をずっとずっと昔から、少年は知っていた。
少女は壊れた顔で、穏やかに微笑んだように見えた。
「――やっと、逢えましたね」
そして二人は時空を越えて巡り合う。舞台の終幕から、新たな出会いと共に歯車が回り始める。