「自分を信じて『夢』を追い続けていれば、夢はいつか必ず叶う!」(D.gray-man×からくりサーカス)   作:チュンチュンお米パラダイス

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・5年前に投稿し忘れた第2話追加しました。
・3話前半と8話後半加筆しました。
・2024/3/31、9話後半加筆しました。

ノリと勢いで書いてるので、一話丸ごと投稿し忘れるし、あとから前の話に伏線くっつけたり、あとで原作読み直して話を付け足したりしている。ダメな筆者。


9,金青色の仮面

 

 

 

 日が落ちて夜になってからは、足長クラウン号は地下へと潜り、地中を進んでいた。土よけのシャッターが閉じられているので外の様子は分からないが、一度掘り進んだ経路を使って走っているのか、車内は想像していたよりも静かだ。

 

「――それで実際のところ、兄さんは何で僕の話を信じようと思ったわけ?何か知ってる?それとも思い出した?」

 金、改めグゾルは口元では薄く笑みを浮かべながら、眼は明晰な学者のそれだ。

 

「……思い出した、というよりは、見た、というべきか。お前のあり得なかった未来の話を聞きながら、ほんの断片的な場面ではあるが、私の記憶としてその光景が脳裏に浮かび上がってきた。200年間の戦いの殆どが、今からほんの()()()に私が生命の水に溶けて死んだあとに起きたことだから、恐らく、その生命の水を飲んだ『しろがね』達の記憶が見えたのだと思う。」

 

 

 数年後、銀は廃墟となったクローグ村を訪れた。金の命令を受けた自動人形達に壊滅させられながらも僅かに生き残っていた村人たちは全て、呼吸困難で死ぬ程の苦痛を味わいながら動くこともままならず死ねなくなる奇病、ゾナハ病にかかっていた。

 

『金よ、人形は……私たち兄弟が作ろうとした人間そっくりな人形は……自動人形は――こんなことのために使うはずじゃなかったじゃないか!』

 

 銀は命の水を生き残りの一人の女性に飲ませ、クローグ村の井戸に柔らかい石を投げ入れて生命の水に変えた。彼女はたちどころに回復して、彼女の子どもと他の村人達を救えると知った彼女は感謝の涙を流した。

 

『礼は言うな!頼むから……』

 

 自動人形は壊さねばならない。だが、銀は既に老いすぎていた。もう一人では自動人形達を探せない、壊せない。故に、銀は哀れな犠牲者である彼らの心すら利用して、

 

『――呪われた運命を押し付けるのだから……!』

 

 ゾナハ病の犠牲者達はあらゆる傷を回復する強靭な身体と人の何倍もの寿命を手に入れる代わりに、その意思を銀に支配され、人形破壊者『しろがね』となった。

 ――つまり、生命の水に溶けた銀は、200年間の自動人形との闘いを、何百人もの『しろがね』の眼を通して見つめていたのだ。

 

 

「なるほどね……ララ、またお前のイノセンスの力かなんかか。」

 グゾルは目を細めて隣のララを見る。

 

「あなたがまた嘘をつこうとなさるからです。」

 なんの事もなげに答えるララに、銀の眼はグゾルの方に向けられる。

 

「嘘……?」

 

 銀の視線に、グゾルはバツの悪い表情になる。

「……嘘をつこうとした訳じゃない。話す順番ってものがあるし、信じてもらえるかどうかも分からなかったから……」

 

「1週間、銀様のことを監視していました。」

 

 間を置かずララの口から放たれた言葉に、グゾルは再び手で目を覆って天を仰いだ。

「それも言わなくて良いんだって……」

 

「……まあ、確かにタイミングが良すぎるとは思った。それに……あのアクマだった患者はゾナハ病に罹っていた。」

 

 数年後のクローグ村の記憶を見るまでは、その正体に気が付かなかった。独特な喘息音の伴う、未知の激しい呼吸困難の発作。あれは紛れもなくゾナハ病だ。

 

「そう、兄さんの言う通り、あれはゾナハ病だよ。もちろん、アクマの魔導式の躯の構造は、人の皮を被っている以外は人間とは全く別物、魔術的に造られたゴーレムに近いものだ。当然、錬金術師の僕が造る自動人形とも、根本的な構造から異なっている。とはいえ、かたや魔術、かたや錬金術といった分野の違いはあれども、アクマも自動人形も機械人形という点では同じだから共通する部分もある。その一つが、躯の駆動に人間で言うところの血液を用いているところだ。だから、アクマの躯にとっての血液たるオイルに、性質の異なる自動人形の体液――つまり、ゾナハ病の病原体『アポリオン』を一定量混入させることで、アクマに動作不良を引き起こさせることが出来る。そういう訳で、僕は『アポリオン』のプログラムを根本から書き換えて、アクマの魔導的神経系統に干渉することでゾナハ病によく似た症状を発症させるように作り変えたんだ。」

 

「教団からの刺客を脅して魔術の基本を教わり、教団のゴーレムを盗んで解析し、アポリオンに応用しました。」

 ララが端的に物騒な解説を付け加える。ここまで来たら、グゾルの方も開き直ったようだ。

 

「ゾナハ病に罹ったアクマは、周りの人々を笑わせることが出来なければ、呼吸困難で死ぬ程の苦痛を味わい、身体が麻痺して永遠に動けなくなる……筈だったんだけど、千年伯爵の方も対策してきたみたいだ。前は動けなくなるまで症状が進行していれば、アクマの躰に転換(コンバート)するのも防げたんだけど、今回は多少動きを鈍らせる程度の効果しかなかった。想定外のことで助けに向かうのも遅れて、兄さんの命を危険に晒してしまった。……本当にごめんなさい。」

 

 グゾルは銀に向かって深々と頭を下げた。

 

「旅の相棒を喪ったのは惜しかったが……それでも私はお前に救われたのだ。多少の過誤は許そう。お前なりにアクマの脅威に対抗する方法を考え、一時期だけとはいえ実際に効果があったのなら、それはとても凄いことじゃないのか?お前でもなければそんな方法は取れないだろう。」

 

 人の皮を被って擬態したアクマは、外見の上では人と変わらず見分けがつかない。それが、ゾナハ病の特徴的な発作の症状によって、人に紛れ込んだアクマを判別出来るとなれば、大きなアドバンテージだ。

 

「そうだね。本当は対アクマゾナハ病を世界中にばら撒いて、罹って動けなくなったアクマを安全に始末するだけで済むようにしたかったんだけどな……どうしても効果範囲には限界があるし、僕の魔術の腕も知識もまだ全然足りてないし、伯爵には直ぐに対策されるし、なかなか上手くいかないもんだね。」

 グゾルは残念そうに肩を竦めて首を横に振る。

 

「上手くいってたら、また世界中にゾナハ病をばら撒くつもりだったのか……?」

 その標的を人類の敵たるアクマに変えて根本的に作り直されたとしても、一度は人類を滅ぼしかけた病原体を再び世界中にばら撒こうというのは、流石に抵抗感を覚えてしまう。

 

 グゾルが宙に手をかざすと、その中心に銀の煙が渦巻いて凝縮し、銀色の液体が球体に集まる。

 

「人の血を糧に増殖するゾナハ病原蟲にして、自動人形の疑似体液『アポリオン』――確かに危険なものだけど、僕らが千年伯爵と戦う為には必要なものだよ。人は人に紛れ込んだアクマを見分けられない。黒の教団のエクソシスト達だって、人の中に隠れ潜む敵に苦しめられて、ただでさえ少ない数を減らしているんだ。でも、これがあればアクマを見つけられる。」

 

 グゾルは球体になった銀の液体を手で掴み取る。握りしめられて形を無くした銀の液体は、グゾルの指の間をこぼれて、再び銀の霧となって空中に霧散する。

 

「まあ、今回あったように、アクマをゾナハ病にしたところで躰の転換(コンバート)を防げないなら、人に擬態したまま発作で倒れて腹をすかせたアクマが真っ先に標的に選ぶのは、最も近くで病人を世話する家族や診察に来た医者になってしまう。それでは却って被害が拡大してしまう可能性がある……とはいえ、千年伯爵自身がそうであったように、ゾナハ病の症状を緩和出来ても根本的な治療方法を見つけたようではないみたいだ。全く使えないわけじゃないけど、改良が済むまでは範囲も効果も限定して、マーカーとしての使用に留めるしかないかな。」

 

「まさか、千年伯爵相手にゾナハ病を使ったのか?」

 銀はジト目になって、グゾルの方を見る。

 

「仕方が無いだろ?三年前僕が伯爵と再会したときはまだ5歳で、アクマとの戦いで壊れかけたララしか居なかったんだからさ。あんな化け物じみた魔法使いに生命を狙われて、相手を退かせるにはそうするしか無かったし、今でも伯爵がゾナハ病の発作で短時間しか戦えないから僕らは逃げ続けられているんだ。……でも、兄さんが危惧するように、感情のままにゾナハ病を使ったことは良くなかったよね。だけど、こっちでゾナハ病を人間相手に使ったのは、伯爵が最初で最後だよ。」

 

「いや、相手が相手だからお前を責める気は無かったのだが、そうか……」

 銀は、グゾルは『フェイスレス』ではないと言い切ったが、フェイスレスだった頃の影響か若干倫理観が緩い。本人に自覚が無いわけでもないようだが。

 

「黒の教団相手に何度かゾナハ病を使おうとしてましたが、私が全力で止めましたので。今ではアポリオンのゾナハ病発症に関する権限は私一人が握っております。ご心配なく。」

 ララは力強く頷く。

 

「ありがとう、ララさん。とても世話の焼ける弟だが、どうかこれからも宜しく頼む。」

 

 銀はララに手を差し伸べる。彼女はそれに少し驚いたようだが、それでも細い手で銀の手を取った。そして、彼女は頼りがいのある力強さ微笑み、しっかりと握手を返した。

 『元フランシーヌ人形』とララは名乗ったが、その表情はフランシーヌとは異なる、強かな意思と豊かな感情に溢れている。決して作り物なんかではない、力強く今を生きるものの本物の笑顔だ。

 彼女が隣にいる限り、余程のことがない限り我が弟グゾルはきっと大丈夫だろう。

 

 ララはふふんと鼻で笑って、グゾルの方を見る。

「私の言ったとおり、兄上様には嘘も誤魔化しも演技も無しで、誠実に全てをお話ししたほうが上手く行ったじゃありませんか?」

 

 グゾルは疲れ切った顔で溜息を吐く。

「ハイハイ。もう僕の負けでいいよ。まったく……お礼なんて言わないからな。」

 

「はぁ?今、何と仰いましたか?」

 ララの眼がかっぴらく。その恐ろしい表情に、グゾルは冷や汗を流してたじろぐ。

「……訂正。一生感謝してもしきれないぐらいだヨ。」

 

 ララは眼をかっぴらいた恐ろしい表情のまま歯を見せて、邪悪な笑顔になった。なんかもうドス黒い後光が差しているようにすら見える。

 

 怖い。

 

 怖いが…………きっと大丈夫だろう。グゾルとララの二人の行く末に幸あれ。

 

 銀は無意識のうちに、ララに向けて十字架を切っていた。

 

 グゾルはそれを絶望的な面持ちで見ていた。

 

 

 

 長話で夜も更けてきたころ、銀とグゾルの二人は夕食にララお手製のスモークサーモンのサンドイッチを頂いた。アクマに追いかけられて疲れた銀は、座席を変形させたベッドに寝そべると、すぐに眠りについた。

 

 銀がベッドに身を沈めて眼を閉じて微睡んでいると、微かに、ララの歌う声が聴こえてきた。

 

 ――天にまします 神さまよ

  この子にひとつ みんなにひとつ

 いつかは恵みを くださいますよう――

 

 ああ、この子守唄は。銀は初めて聴く子守唄だ。けれど、『しろがね』達の記憶の中にある。一体誰が作った子守唄なのだろう?心地の良い歌声にうとうとしながら考えているうちに、銀は眠りに落ちた。

 

 

 その夜、銀は昔のことを夢に見た。百塔の街プラハで、弟の金とフランシーヌと、三人でカーニバルに遊びに行った時の夢だ。フランシーヌに頼まれて、金と一緒に人形劇を代演して、子供の頃の様に兄弟二人で人形を面白可笑しく操って、観客もフランシーヌも笑ってくれて……本当に楽しい思い出だった。フランシーヌと金が、いつまでも、銀に笑いかけていた。

 

 

 銀の目が覚める頃には、終着点までそう遠くないのか、足長クラウン号は再び地上へと戻っていた。開いた車窓を見れば、そこは銀の故郷、中華帝国の山岳地帯の山間を進んでいた。悠久の時をかけて大河の流れで削られた峻厳な断崖の谷には朝霧が立ち込め、崖の頂上は黄金に輝く朝日に照らされ、車窓の景色を流れていく。

 黄山。伝説の仙境を彷彿とさせるような独特な長細い崖が立ち並ぶ風景は、古代より「黄山を見ずして、山を見たというなかれ」と言われる絶景だ。

 

 寝床から起きて身支度を始めたグゾルも、その景色にしばし魅入る。

 

「グゾル、昨日は聞けず仕舞いだったが……アクマを倒せる武器、イノセンスとはどういう物なんだ?」

 グゾルはララがそうであると言ったが、イノセンスが自動人形であるというようなニュアンスでは無かった。

 

 グゾルは支度をするララを呼び寄せると、服を捲って胸のパネルを開けてみせた。

 

「これが……イノセンスか……」 

 

 交差する2つの歯車に囲まれた、淡い碧色の光を放つ正方形の結晶。錬金術の究極の到達点である『柔らかい石』とは異なる、神秘の欠片。

 

「ね、すごく碌でもないカンジがしない?」

 グゾルが屈む銀と肩を組んで顔を寄せ、皮肉っぽく捲し立てる。

「この不思議な結晶がこの世の摂理を捻じ曲げて、500年前の骨董品の人形に生命を吹き込んで、あたかも人間かのように動かして、見た目まで人間のように見せてくれているってワケだ。これは僕が造る錬金術とからくり人形の技術を組み合わせた自動人形とは根本から違うものなんだよ。世界に散らばった109個のイノセンスが引き起こす奇跡は、空を翔ける靴や呪いの妖刀、或いは僕らが探し求めたような自分で話し考える自動人形みたいに、時に各地で伝説として語られることもある。つまりイノセンスひとつひとつの能力は千差万別で、人形に生命を吹き込むのはこのイノセンスのものだけの能力なんだ。どうしてよりにもよって自動人形の生みの親である白金の記憶を持った僕が、そんなものの適合者なんだろうね?」

 

 操り人形に変貌していたララが、胸のパネルを閉じて服の乱れを直しながら、言葉を次ぐ。

「500年前に造られた私が、遥か未来に造られる筈だったフランシーヌ人形の記憶を持っていたのだって不思議な話ですわ。」

 

 席に戻ったグゾルは首を捻る。

「自動人形は部品を取り替えさえすれば、永久に不滅の存在だ。そして、電子情報に変換された記憶は、フェイスレスの記憶がそうであったように、取り替え可能な部品だとも言える。永久不滅の自動人形のイノセンスであるからこそ、自らを強化する為に時空間を超えて記憶という部品を取り替えることが出来るとでも云うのだろうかね?」

 

 銀も立ち上がって、痛む腰を伸ばす。

「理屈はよく分からないが、私があり得なかった未来の記憶を思い出したのも、ララのイノセンスの能力によるものということか。」

 

 ララは仕上げに服の裾をはたいて皺を伸ばす。

「グゾルが私を騙して実験して分かったことなのですが、これまで私の歌声を聴いたすべての人が、知らない未来の記憶を思い出したという訳でもありませんわ。造物主も銀様、そして私フランシーヌ人形も、『生命の水』に身体と記憶を溶かしました。それが時間を超えて思い出す筈のない記憶を思い出す為に必要な条件なのではないでしょうか?」

 

 銀は朝日を背にしてグゾルを見下ろす。

「グゾル……お前は何をやったんだ?怒らないから、言ってみなさい。」

 

 グゾルは顔をこわばらせて席の端っこで縮こまって、両手を小さく上げる。

「路銀を稼ぐ為にララと人形劇をやってたんだ。劇の演目でララの歌が入ったものが人気で、何回も観に来てくれるお客さんも多かった。だから、ララの歌の具体的な効果が気になって追跡調査をしてたんだ。結果、観客達は過去の幸福な記憶が蘇って、不安と疲れは吹き飛び元気ハツラツ、持病の症状も軽減されて、疫病にも罹りにくくなっていた。良い事ずくめだね。僕達みたいに、思い出す筈のない記憶を思い出した人はひとりも居なかったよ。……確かに、ララが自身の歌の危険な可能性を不安に思っていたことは僕も知っていたよ。だけど、僕はララの歌が無闇に悪い影響を及ぼすものではない筈だと信じていたから……それでも、実験のために黙って利用したことは本当に申し訳なかったと思ってるよ。でも、こうでもして証明しなければ、ララも歌うことにずっと不安を抱えてしまうだろう?」

 

 だから人形劇の中に歌の要素を取り込むことで、その不安から目を逸らさせたということか。悪い結果にはならないと信じた上でやったこととはいえ、全くこの弟は……

 銀は溜め息を吐く。 

  

「兄さん、もうそろそろアジア支部につく頃合いだ。僕らは入団希望者として教団を見学する予定だけど、僕はずっと入団を拒んできた厄介者だから歓迎されるとは限らない。だから兄さんは顔は隠して、声も出さず、なるべく自動人形のフリでもしてて欲しい。あと、僕らが兄弟であることは絶対に隠し通して。イノセンスの適合者の身内は、もれなく非道な研究の実験台にされてしまうからね。」

 

 悲劇を材料に造られるアクマとその製造者、千年伯爵。彼らと戦う為に、アクマに唯一対抗しうる力を持ったイノセンスの適合者を求めて強引な勧誘と非道な実験を繰り返す教会の組織、黒の教団。世界の命運を掛けた戦争の中で、銀の持つ『柔らかい石』の存在がどれ程重要か、あり得なかった未来を垣間見た今の銀ならば理解出来る。自動人形と『しろがね』の戦いで柔らかい石が担った役割を考えれば、金が想定している使い方も、決して失われる訳にはいかない理由も理解できる。だからこそ、金が銀から『柔らかい石』を奪おうとせずに、銀自身の目で判断して欲しいと言った意味を、その決断を下すことの責任の重さを理解出来る。

 

 銀は持ち歩いていたカーニバルの青い仮面の紐を後頭部で結びつけ、ペストマスクを被る。

「これで良いか?」

 

「うん、バッチリ。……そうか、ナルミ君が使ってたその仮面、兄さんのだったんだね。」

 

 フェイスレスが兄の面影を重ねた最後のしろがね、加藤鳴海。血塗れになりながら拳を振るい、悪魔(デーモン) の如く自動人形を屠る彼が、子供を怖がらせてしまわないようにと着けていたものだ。

笑った目の下には、血の涙の様な赤色のラインが描かれている。

 

「……因果なものだな。」

 元々は、数年後、銀がクローグ村に戻った際に身に着けていたものだ。銀の眼の前で助けを求める犠牲者達に、個人的な復讐の為に彼らの心を利用することを悟られない様に、銀は仮面を被ったのだ。そして、銀が井戸の生命の水に身体を投げ入れる前に、それを捨て置いたのだ。その記憶を知った後では、この仮面が長い長い旅の末にこの手に戻ってきたように思えた。

 

 金の造った自動人形と、銀の作り出した『しろがね』達の物語はもう終わった筈だというのに、運命の歯車は銀達を新たな悲劇の舞台に誘おうとしているかのようだ。『柔らかい石』の存在が、それに関わった者たちの運命の糸を絡め取って巻き込んでいる。そう思えてならない。

 白金の死から始まったこの舞台は、二度と会う筈のなかった兄弟を引き合わせて、一体如何なる展開を見せようというのか?

 

 




もう少し先の展開までいれる予定でしたが、長くなったので次話に持ち越します。ので、話あんま進んでねぇ〜
次話は近いうちに上げます。

小ネタ
・青金色(こんじょういろ)とは……ラズライト(藍銅鉱)から作られる古代の顔料の色で、紫色を帯びた暗い上品な青色のこと。『紺青 』の古名。
 青金石のラピスラズリから作られる青色ウルトラマリンとは別物。紛らわしい。
 
・青金(あおきん)とは……金と銀との合金で、銀を20パーセント程度含むもの。青色を帯び、美術品・装身具などに使用される。
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