朝、起きたら、何故か白ーい空間にいた。よし、寝よう。俺はどうにもたちの悪い夢を見ているらしい。
「おぉ、異世界を救う勇者よ‥‥‥目覚めるのだ‥‥‥」
中二心をくすぐられる台詞も聞こえない。そう、聞こえない。これは、たちの悪い夢だ。
「‥‥‥ほぉ、ワシの目の前で狸寝入りか?はは、なかなか肝っ玉の据わった奴じゃ」
くそう、狸寝入りってバレてる!ならここどこだ!?このじいさんは誰だ!?母さんは、父さんは、妹は!?
「残念じゃが、会うことはない‥‥‥お主は、死んだのじゃ。強盗に刺されそうになった妹を庇っての‥‥‥」
‥‥‥そうか、皆無事か?
「うむ、お主以外は、な‥‥‥」
そうか、26年か?大して生きてる訳じゃないけど、こんなものか‥‥‥
「潔いのぉ?若いのに感心じゃ」
「諦めがいいだけだよ‥‥‥正直、未練はたらたらだけどな」
「くく、面白いのぉ‥‥‥そんなお主に提案じゃ」
「何だよ?」
「実は、お主には異世界に行ってもらおうと思っておったのじゃ‥‥‥そこで、いわゆるチートを授けようと思ったが‥‥‥どうじゃ、それを不意にしてでも、家族に別れを告げにいくか?それとも‥‥‥」
「家族に会いに行かせてくれ!」
「‥‥‥よいのか?せっかくのチートを不意にして‥‥‥」
それより家族に会いたい。ろくに親孝行できなかったこと謝ってないし、へそくりの場所教えておきたいし‥‥‥
「分かった分かった。家族に会いに行かせてやる。しかし、死者が現世に関与するのは許されん。なので、神の力を使う、それすなわち、もらえるはずだったチートを捨てるのじゃぞ?もう一度、考え直さんか?」
「それより家族に会いたい。これは、何度でも言うぜ」
「はぁ、分かった‥‥‥1時間。それ以上は許さん。では行ってこい」
そして、じいさんが手を降ると、俺の視界は真っ白になったのだった。
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「うぅ‥‥‥--‥‥‥」
「兄さん‥‥‥何で私なんて庇ったの‥‥‥?」
「あのアホ‥‥‥俺たちより先に逝きやがって‥‥‥くそぉ‥‥‥」
‥‥‥入りづらい。すっげぇ悲しまれてるし。多分、ここは、葬式あげるとこか?うーん、1時間しかないし、さっさと行こう。うかうかしてるとすぐ過ぎるからな。
『‥‥‥広い‥‥‥』
広い。いや、俺こんなとこで葬式あげてもらえるくらいの人間じゃないぞ‥‥‥?
「‥‥‥え、今の?」
あ、妹に気付かれたかな?ていうか、あの呟き聞こえたのか。確かに声の方に一直線に行ったけど。さて、いざ何か言おうと思うと、すごく悩むな‥‥‥
『‥‥‥おーい』
結局、これしか思い付かなかった‥‥‥
「え、今のって!?」
「兄さん‥‥!?どこ、どこなの!?」
「アホいえ!あいつは、あいつは死んじまったんだ‥‥‥」
『‥‥‥いや、父さん。そのアホなことが起こってるから今ここにいるんだ』
そう言うと、父さんはすごい顔をして固まった。まぁ、確かに信じがたいよね。息子が死んで蘇ったって‥‥‥蘇ってはないか。
「あんた、本当に--なの‥‥‥?」
『うん、ちっちゃい頃母さんのドレッサーにあった化粧品全部割って怒られたの、覚えてる?』
「‥‥‥あったわねぇ‥‥‥ほんと、懐かしい‥‥‥」
「そういえば、おもいっきり怒られてたな‥‥‥」
『ははは‥‥‥』
「‥‥‥兄さんは、どこにいるんですか?」
『‥‥‥天国?ごめん、多分、そっちからは見えてない。こっちからはよく見えるけどね』
「‥‥‥そう、ですか。ごめん、なさい‥‥‥私のせいで‥‥‥!」
そう言って、妹は泣き出してしまった。
『泣くな。お前のせいじゃないよ‥‥‥俺が勝手にやったんだから‥‥‥』
「でも、でもぉ‥‥‥!」
‥‥‥案外、できるかな?
「‥‥‥え?」
『安心しろ。兄ちゃんはいつでも‥‥‥は、無理か。でも、今はここにいるよ』
「うぅ、にいさぁん‥‥‥!」
そう言って、妹はもっと泣いてしまった。それを、もうちょっとだけ、強く抱き締める。
「‥‥‥お前は変わらないなぁ‥‥‥」
「そうねぇ‥‥‥」
『変わらないのが取り柄だからね‥‥‥』
「うぅ、にいさん‥‥‥!」
あ、ちょっと落ち着いてきたかな?
『大丈夫?もう、辛くない?』
「‥‥‥辛いですよ、バカにぃ‥‥‥」
『懐かしいなぁ、お前が怒ったときは、ずうっとバカにぃって言われたっけ』
「そうですよ‥‥‥辛いですよ、まだ‥‥‥行ってほしくないですもん‥‥‥」
『ごめん、それは無理だ。1時間しかこっちに居られないってさ』
「そうですか‥‥‥」
『ごめん‥‥‥』
「謝らないでくださいよ‥‥‥バカにぃ‥‥‥」
『‥‥‥やっぱり、怒ってるよな』
「当たり前ですよ!ホントにバカにぃ!うぅ‥‥‥」
『ごめん‥‥‥本当にごめん‥‥‥』
「いいですよ‥‥‥バカにぃ‥‥‥」
あのぅ、妹さん?やっぱりまだ怒ってるじゃない。
「もう、いいです。辛いですけど、引きずっちゃダメですから‥‥‥」
そう、か。俺の知らないうちに成長したなぁ‥‥‥
「なぁ、--。お前に、言いたいことがある‥‥‥」
『‥‥‥何?父さん』
父さんは、迷ったような顔をして、その後、こっちを向いて言った。
「俺たちの子供でありがとう‥‥‥!」
「私もよ‥‥‥本当にありがとう‥‥‥!」
『‥‥‥こっちこそ、産んでくれて、ありがとう‥‥‥!』
そう言って、二人を抱き締める。ちょっと狭い気もするけどね。
「暖かい‥‥‥あんた、本当はこっちにいるんじゃないの‥‥‥?」
『いないよ、母さん‥‥‥残念だけど‥‥‥』
「分かってるわよ‥‥‥」
母さんは、今にも泣きそうだ。当たり前だ。息子が死んで、せいせいしたと言う人はいないだろう。
「アホが‥‥‥泣かせやがって‥‥‥!もう少しましに泣かせやがれ‥‥‥!」
『ごめん、もう、できないかな‥‥‥』
「分かってる!でも、お前の結婚祝いだったりしたかったよ‥‥‥」
父もまた、泣きそうになってる。普段頑固な人だけど、こういうときは本気で泣く。
『‥‥‥あぁ、そうだ。みんなに、礼を言いたいんだ』
そう言うと、皆ポカンとした顔になる。言いたかったこと、言わないと。
『俺の家族で、ありがとう‥‥‥!』
「‥‥‥!あぁ、どういたしまして!」
「えぇ、どういたしまして‥‥‥」
「どういたしまして‥‥‥!」
そう言って、皆泣いた。俺も泣いた。そうこうしてると、みんなの顔がぼやけた。不味い、もう、帰らないとか。
『ごめん、もう、帰らないといけない‥‥‥』
「そうか、これで、本当にお別れか‥‥‥」
『うん、それで、もうひとつ言いたいことがあるんだ』
「いったい、何?」
『‥‥‥俺のクレジットカードの番号とかへそくりの場所』
みんなポカンとしてる。何でだ。金は必要だろうに。
「もう、あんたは変なとこで現実的というか‥‥‥」
「まぁ、変な時に空想に逃げないだけましだろ‥‥‥」
「兄さんらしいというか‥‥‥」
くそぅ、何だってそんな反応するんだ?
「あぁ、そうだ。」
『何?』
「天国でも、元気にやれよ!」
『‥‥‥うん、頑張るよ。それじゃあ、さようなら!』
「さよなら、兄さん‥‥‥!」
「さようなら、--‥‥‥」
「向こうでも頑張れよ‥‥‥!」
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「うーん、ここは‥‥‥?」
「黙れ!辛抱ならん!余韻なぞ要らん!さっさと行け!」
「え、何‥‥‥え、何で床あいてぇぇぇぇぇ!」
それを最後に、あのくそったれの甘ガキが見えなくなる。
「くそが‥‥‥!何が家族愛じゃ!人間のあるべき姿ではない!人間のあるべき姿は、本能のままに生きる姿だというのに‥‥‥!」
人間のあるべき姿は、誰彼構わず愛を交わし、食えるものすべて食らい、寝たいときに寝る、そんな本能に忠実な姿だというに‥‥‥!
「あ、あのぉ‥‥‥」
「なんじゃ!」
「ひぃっ!え、えぇと、そ、それが、さっきから転生面談控え室にいる人が、手をつけられなくて‥‥‥!」
ほう、手がつけられない?あぁ、とんだじゃじゃ馬らしい。
「くく、よい。つれてこい!」
それだけ言うと、さっさと使いがその者を連れてくる。
「おい、じじい!さっさと俺を転生させろ!」
「あぁ、よい。チートもつけてやる‥‥‥そうだ。お前は、何のために転生したい?」
「あぁ?んなもん、原作主人公とかいう屑ボコって、まるごとハーレム奪ってやるためだ!」
「くかかか!そうか、そうか!よいぞ、存分にチートにしてやろう!さぁ、行け!お前のための世界が待っているぞ!」
「マジか!ならいい!俺は、最高のハーレム神になる!」
そう言い、男は消えていった。あぁ、あれこそが人間のあるべき姿だ。
「くく、そうだ。あのくそったれの甘ガキと同じ世界に送ってやるか」
そう言って、神が取り出した資料には。
インフィニット・ストラトスと書かれていた。
悲報、一夏氏、及びインフィニット・ストラトスの世界、終了するかも